2012年2月3日金曜日

電力改革

http://www.asahi.com/business/update/0204/TKY201202030746.html
電気代の原価、経産省が圧縮求める 人件費や広告費など

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図:東京電力の料金原価の内訳拡大東京電力の料金原価の内訳
電気料金の原価のあり方を見直していた経済産業省は3日、電力会社が原価としてはじく費用のうち、人件費や広告費の圧縮を求める報告書案を示した。3月に最終決定する。東京電力が今春に予定する家庭向け料金値上げの申請時には、経産省は新たな基準で査定する。値上げが認められるのは夏以降になりそうだ。
今回見直したのは、人件費や修繕費など電力会社の経営判断で費用を抑えられるものが大半だ。一方で、原価の7割程度は、燃料費や設備投資の減価償却費など、簡単にけずれないものが占める。今回の見直しによって値上げ幅をどの程度圧縮できるかは不透明だ
見直し案は、この日の「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」で示した。会議は、電力会社が見積もる費用をもとに料金を決める「総括原価方式」について、何を原価に含めるべきかの基準づくりを、昨年11月から議論していた。

電気料金:人件費2割安で算定 政府、見直し案提示

政府は3日、家庭向け電気料金制度の見直しに関する報告書案を、経済産業省の有識者会議に提示した。料金算定の根拠となる「原価」に計上される費用について、人件費を現行より2割安い基準を使って算定することや、広告宣伝費や寄付金を除外することなどを盛り込んだ。有識者会議は3月上旬までに報告書をまとめ、今春以降に適用される。
 東京電力は、見直し内容を踏まえて家庭向け電気料金の値上げ幅を決める。報告書案では電力業界について「地域独占の下で競争リスクがない」と指摘。原価に計上される人件費の算定基準を、電力会社の平均年収677万円(基準外賃金除く)ではなく、従業員1000人以上の一般的企業の543万円(同)とし、ガスや鉄道など他の公益企業の人件費も参考にして計算するよう求めた。また、電力会社は営業活動の必要性が低いことから、広告宣伝費を原価から除外すべきだとした。寄付金や団体への会費も「優先度は低い」と認めない立場を示した。さらに、火力発電の燃料費削減に向け、他社やガス会社などと燃料を共同調達することを提言。時間帯別に料金を設定してピーク時の使用電力を減らすメニューを提供することも求めた。
 電力会社は発電、送電、販売にかかる約50項目の費用に、一定の利益を上乗せする「総括原価方式」で料金を決めている。東電の福島第1原発事故後、経営が悪化した東電の値上げ問題が浮上し、有識者会議が総括原価方式の枠組みの中で改善すべき点を議論している。【立山清也】
毎日新聞 2012年2月4日 東京朝刊

社説


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社説:電力制度改革 競争促して効率化を

経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会」の「電力システム改革専門委員会」(委員長・伊藤元重東京大学大学院教授)が、電力制度改革に向け、議論を始めた。
 改革は10年前にも議論されたが、電力業界などの反発から中途半端な自由化に終わった。しかし、東京電力福島第1原発の事故以降、電力問題は切実さを増している。
 新たな制度では、競争を促して電気料金を引き下げる一方、電力の安定供給も確保しなければならない。困難な課題を克服する政策のベストミックスを求めたい。
 委員会の大きなテーマは、大手電力の発電部門と送電部門を切り離す発送電分離だ。現在は、大手電力社内で発電部門と送電部門の会計を分ける「会計分離」方式が採られている。新規参入の電気事業者(PPS)は送電設備を利用する際、大手に使用料(託送料)を支払うが、小規模事業者にとっては割高で、大きな参入障壁になっているという。
 その結果、自由化とは名ばかりで電気を使う企業に選択の余地はほとんどなく、料金も大手電力の「言い値」で決まっているのが実情だ。市場原理が働くよう、大手の独占体制を見直す必要性は大きい。
 委員会は送電網の所有権は大手に残し、運用を中立機関に委ねる「機能分離」を中心に検討する見通しだ。中立機関は、東日本と西日本に一つずつ作る案が浮上している。
しかし、太陽光や風力など不安定な自然エネルギーを受け入れる余地を増し、地域間の電気の融通をより円滑にするためには、全国的な統合運用も検討すべきではないか。
克服すべき課題も多い。第一は、安定供給の確保だ。電力業界は「安定供給には発送電一体の整備・管理が不可欠」と主張している。分離後に大停電を引き起こした米カリフォルニアの例もある。最終的な供給責任を誰が負うのか、明確にすることが必要だ。
 中立機関の運営のあり方も問題になる。新設で余計にコストがかかるようでは、本末転倒だ。発送電分離は、電力の安定供給と料金引き下げのための手段であって、目的ではないことを強調しておきたい。
一方、需要側が主体的に電力の使用量を調節できる制度設計も検討する必要がある。ピーク時の使用電力を抑制すれば発電設備に余裕が生まれ、需給安定や料金引き下げにも資するからだ。
 需給の逼迫(ひっぱく)度に応じた料金設定、消費電力や料金を常時に計測できる次世代電力計(スマートメーター)の普及など、電力を効率的に利用する仕組みづくりにも意を尽くしてほしい。




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