2011年5月23日月曜日

公務員給料カットや増税の前にまずやるべきこと!:復興・福祉・年金財源はどこから?

 政府がどんなに努力をしても、どうしても復興財源がないというのならば、あるいは年金・福祉政策を破綻させないために、国民は「消費税の増税もやむなし」と思うに違いない。

しかし新しい政権は事業仕分け、再仕分けの対象となったはずの8~9割の無駄な事業の復活を座視するだけで、何ら対応をしてこなかった。国会議員の定数を大幅に減らすという議論については全く俎上に上がる気配すらない。

財務省が、会計方式を変えて、累積180兆円以上といわれている特別会計余剰金の取り崩しを図れば震災復興予算などなんとでもなる話である。さらに、60兆円もの米国債があるのだから、まことに逼迫しているならば、それを売却すればよい。

ところが「金がない、金がない」といいながら、日本政府は、アメリカに対して、米軍への思いやり予算を今後5年間に1兆円も拠出することをやすやすと確約している。

それどころか、この未曽有の国難の最中に、途上国援助のODA予算として5700億円以上も計上し、公共事業費として、元森総理のお膝元である北陸新幹線に1800億近い公共事業費をつぎ込もうとし、それらのつけをすべて公務員の給料カットと消費税の増税で賄おうとしているのである。

ただでさえ消費が落ち込んでいる状況下で、給料カットや消費税増税が消費をますます鈍化させることは必至である。

政府は特別会計は取り崩せないと主張しているが、国債整理基金を復興に回してもなんら支障がないことを、以下に元内閣参事官の高橋氏が明らかにしている。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110421/plt1104211621002-n1.htm


国債整理基金から10兆円を復興に回しても支障はない 財務省の言い分は間違いだ

2011.04.21
 日曜日(17日)朝のフジテレビ報道番組で、江田憲司みんなの党幹事長が、「国債整理基金の余りカネ10兆円を大震災復興のためにあてよ」と発言した。これに対して、岡田克也民主党幹事長は「国債整理基金への繰入があるから国債の信認が保たれているのでできない」と言った。

この言い分は財務省そのままだ。もちろん正しいなら問題ないが、間違った意見をそのまま鵜呑みにするのは政治家としてまずい。

まず国債整理基金の仕組みを整理しよう。国債整理基金(特別会計)は国債の償還や利払いを行うための区分整理会計である。この特別会計は、いろいろな特別会計からの繰入が多く、特別会計の間の「結節点」になっているもので複雑だが、国債の償還・利払いだけに着目すれば、構造は簡単だ。

その歳入は、借換債発行による収入、一般会計からの繰入、前年度からの剰余金で、歳出は国債の償還、利払いとなる。借換債発行によって国債の償還をするということからわかるように、満期が到来した国債はロールオーバーされている。

一般に国債発行というと、今年度予算では44兆円といわれるが、これは新規国債というもので、ロールオーバーのための借換債が110兆円発行される。このほかにも財投債14兆円が発行され、総計169兆円発行される。

新規債、借換債、財投債といっても、マーケットではまったく同じ条件なので、マーケットの人はそもそもどれを扱っているかさえもわからない。

国債整理基金の国債償還の部分は、おおざっぱに言えば、借換債110兆円、一般会計から20兆円、前年度からの剰余金10兆円が収入で、償還120兆円、利払い10兆円が支出になって、次年度への剰余金が10兆円となる。

だから、国債整理基金の収入のうち10兆円を震災復興に回しても、次年度への剰余金がなくなるだけで、国債償還には支障ない。

問題は、岡田幹事長のいうように、10兆円を回したら国債の信認が失われるかだ。このように国債整理基金を作り一般会計から一定額を繰り入れる仕組みを減債制度というが、この仕組みは日本だけのもので海外にはない。だから、この仕組みによって国債の信認を得ているという説明は海外ではまったく通用しない。

国債の信認は日本経済の実力やマクロ経済運営の巧拙などから出てくるのだ。このような奇妙な日本の仕組みを説明すると、日本はマクロ経済運営で重大なミスをしてそれを隠蔽するために、変な口実をしていると勘ぐられるのがオチだ。

民主党は、さっそく復興増税を言い出すなど財務省に完全に操られている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)