2011年11月13日日曜日

福島原発の初公開

 福島原発が昨日事故後8ヶ月にして初めて初公開されたという。

これだけの大事件を起こしながら、8ヶ月もの長い間、ここを東電が全面的に管理し、原子力ムラの面々以外、警察もメディアも誰も現場に立ち入れなかった事自体が異常であり、その異常性について、誰も言及しないことはもっと異常である。

東電が自社の力で、発電所の安全操業を行い、国民の生活になんら支障を与えていないならばいざしらず、国民の生活を不安に陥れ、国の力に頼らなければ、アメリカやフランスの技術を借りてこなければ、手も足も出ないような、完全に当事者能力を失っている状況にありながら、何が立ち入り禁止なのか、なにが公開なのか。政府はいつまで、このような杜撰な私企業にそのような権限を付託するつもりなのだろうか。

 驚くのは、発電所の責任者である吉田所長と作業員を称えるメディア報道である。
とりわけ、吉田氏は福島原発の人災事故を起こした最高責任者である。死ぬかと思ったことが何度かあるとか個人的なことをぺらぺら話している様子が大変場違いに映った。

吉田氏は、メディアを入れたのならば、まず国民に対して、今回の発電所の大事件について、真剣にお詫びするのが第一なのではないのか。欠陥のある老朽化した福島原発を、それと知りながら、今年3月、さらに10年間の運転延長の申請をした責任者は他ならないこの吉田氏である。
そして線量の高い原子炉近くで作業をさせられ、過酷な労働状況の中で亡くなっていった、何人かの名もない作業員の方々の死を悼み、責任者としてどう考えるのかについて語ってもらいたかった。吉田氏が2010年7月に出来上がったばかりの立派な免震重要棟の中で、どれだけ累積内部被曝をしたかなどということなど、些末なことである。

メディア各社は、福島原発のあまりに悲惨な状況に唖然としたと報じた。福島のこんな状況を目にしてまだ原発再稼働を促すつもりなのか、こんな状況でまた大きな大地震が起きた場合の危機管理体制はどうなっているのか、何も十分に論じられていない。

ドイツは福島原発を教訓に原発廃止に向かって着々と歩を進めている。緑の党も躍進しているという。一方当事者である日本は、何ひとつ教訓にせず、一部の人間の既得権益を死守することだけに暴走し続けている。大変嘆かわしいことである。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111112-OYT1T00760.htm

福島第一原発、事故後初公開…レベル7の爪痕


激しく崩れ落ちた原子炉建屋、大津波で大破した設備、見えない高線量放射線の恐怖――。
12日、東京電力福島第一原子力発電所の事故後初めて報道陣に公開された原発敷地内は、8か月が経過した今も生々しい爪痕をさらけだしていた。全面マスクと防護服の完全防備で、変貌した姿の原発に近づくと緊張感が体を覆った。
原発へは、南に約20キロ・メートル離れた事故復旧拠点「Jヴィレッジ」からバスで向かった。着用していたゴムと綿の2重手袋、つなぎの防護服の中で、汗が噴き出す。手前3キロ・メートルのところで全面マスクの装着を求められた。内部被曝ひばくを防ぐためだが、息を吸うたびにマスクが顔を圧迫し、息が詰まる。これで作業するのは大変と痛感する。
正門では完全防護姿の職員数人が出入りの車両のチェックに目を光らせる。バスに同乗する放射線管理要員が「現在、毎時20マイクロ・シーベルト」と刻々と放射線量をアナウンス。緊張が高まっていく。
事故のすごさを目の当たりにしたのは、撮影のため設定された海抜34メートルの高台。手前に高さ45メートルの4号機が鉄骨の骨組みをわずかに残し、大きく崩落した姿を現した。見えるはずのない、圧力容器から燃料を取り出す緑色の大型クレーンがはっきり見えた。その奥の3号機はさらにひどく、ひしゃげた鉄骨がむきだしになっていた。
3月14日に水素爆発した3号機から流れ出た水素で4号機も爆発したとされる。放射性物質の漏れを防ぐ「最後のとりで」の原子炉建屋は、厚さ約1メートルのコンクリート壁。それを吹き飛ばす爆発の破壊力に圧倒されるとともに、作業員がよく巻き込まれなかったと感じる。
「(毎時)40マイクロ・シーベルト」の声が飛んだ。原子炉建屋とほぼ同じ高さの海抜10メートルの海岸線エリアにバスが到着。タービン建屋がある海側は、津波で全面が水没。爆発時のがれきの処理は、陸側に比べて進んでいない。
その時、線量計が急に跳ね上がった。4号機タービン建屋前「800マイクロ・シーベルト」、3号機建屋前「1ミリ・シーベルト(1000マイクロ・シーベルト)!」。
東電職員は「水素爆発で飛び散った放射能を帯びたがれきが散らばり、破れた建屋から放射線が出ているため」と解説する。報道陣の被曝量を抑えるため、バスは人が走るくらいのスピードに上げた。
タービン建屋脇には、車輪が12個も付いた大型トレーラーが数台、前部が地面に突き刺さっていた。食堂などが入る「厚生棟」は、1階部分が根こそぎなくなっていた。
対照的に、タービン建屋の低層階の壁は傷がなかった。津波の威力に耐える強固な建造物だったが、すき間からの海水の侵入は防げなかった。非常用電源が地下に設置されていなければ、水没を免れ、未曽有の事故には発展しなかったとの思いがわく。
福島第一原発の吉田昌郎所長らが陣頭指揮をとる免震重要棟。2階には復旧班など約100人の職員が詰める「緊急時対策本部室」が設置され、敷地内で作業する約3000人に指示を出していた。
同行した細野原発相は免震重要棟に集まった職員に「ここまでこられたのは、作業員のがんばりだ。世界が見ている。年内に何としてもステップ2を達成しよう」と激励した。
原発施設内の移動はすべてバスで、滞在したのは約3時間。携帯した線量計の積算値は75マイクロ・シーベルトを表示。胸のレントゲン撮影の1・25倍を被曝した。Jヴィレッジに戻った時は、暑さと疲れから気分が悪くなった。(科学部 安田幸一)
(2011年11月13日01時05分  読売新聞)

http://www.youtube.com/watch?v=e7Lhz0MEDAQ



金子勝氏 ツィッターより

作業員も政治家(大臣まで)も出入りしている場所にも入らず、大臣の後にバスでぞろぞろ付いていき、また原発所長や東電「社員」は英雄的に頑張っている、工程表通り進んでいるとの報道を始めた。東電経営陣の責任も救済スキームも、原発再稼働テストのいい加減さも、原子力ムラの除染も追及せず…。
昨日、福島第一原発の様子が初めて報道陣に「公開」。細野大臣についての同行取材ということらしいが、米艦に同乗してイラク戦争を「政府広報」していた米メディアを思わず思い出してしまいました。東電、原発、原子力ムラに無批判な報道もうなづけます。 


http://www.jiji.com/jc/rt?k=2011110800410r

ドイツ緑の党、「選ばれない党」から「避けられない党」に

 【ベルリン7日ロイター時事】ドイツの「緑の党」運動は、ドイツの一般国民の環境意識を高め、最近も一段と発展しようとしている。これは既に世界で最も成功した環境保護運動だ。同党(正式には「90年連合・緑の党」)は2013年の総選挙でキングメーカーになる可能性もある。
緑の党は連邦レベルでは30年ほど前に発足した。1968年の学生運動、「原水爆禁止」活動、既存の環境保護活動、それに男女同権主義運動などの出身者によって組織された。その後、98年から2005年の間、当時のシュレーダー首相率いる社民党(SPD)と連立を組み、初めて中央政権を担った。
しかし、同党は過去1年間、独自の力を見せるようになっている。地方選挙で力強い支持を集め、初めて16州全てで議席を獲得したほか、保守的なバーデン・ビュルテンベルク州で、ウィンフリート・クレッチュマン氏がメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)を破り、同党初の州首相になった。
 ドイツ政界では「グリーン化」が進行中だ。今年3月の福島第1原子力発電所の事故後、メルケル首相までもが脱原発にシフトし、原発の閉鎖を急いでいる。これを受け、緑の党は幅広い支持を集めて主流派に成長した。
緑の党のクラウディア・ロート共同代表はロイター通信とのインタビューで、「経済成長と環境保護が互いに矛盾しないということをわれわれは示した。これは大躍進だ」と語った。同氏は「昔は『景気の良いときは緑の党を支持する余裕があるが、経済成長のための仕事となると、必要なのは緑の党でない』と言われてきた」と述べた。
世論調査の同党の支持率は、09年の総選挙時には10.7%だったが、ここ1年で15?20%と記録的な水準にまで上がった。現在、中央でCDUと連立を組む自由民主党(FDP)を超え、CDU(32%前後)、SPD(最大で30%)に次ぎ、3番目に高い。英アストン大学のサイモン・グリーン教授(政治学)は、「次回の総選挙で再び政権党になる可能性は十分にある」と述べた。
大半のアナリストは、緑の党にとって選択肢はSPDとの提携の公算が最も大きいことで一致している。ロート代表も、SPDが同党にとって最初の選択であることは「疑いない」と述べた。ただし、同党が場合によってはSPDではなくCDUと手を結ぶ可能性もないわけではないとの姿勢を示している。[時事通信社](2011/11/08-12:40)