2011年7月10日日曜日

ストレステスト、ヨーロッパ版より短く?:安全委員会さんが関与ですか?



 すべては今日明らかになるようだが、日本の原発のストレステストはどうやらEUのストレステストの短縮版を作るそうで、かの「私は何だったのでしょう」発言で名高い原子力安全委員会さんがこれに関与なさるらしいということが、以下のロイター、WSJの記事から推察される。


確かに、テスト信仰の厚い日本人を黙らせるには、テストがもってこいである。しかもヨーロッパでやっているテストを導入するんだといえば、素人は誰しも「そんな国際的なテストにクリアしたのなら、再稼働させても文句ないんじゃないの」と判断してしまうだろう。


それじゃ一体、EUでやっているストレステストってどんなものなの?


不思議なことに、この報道が発表されてからというもの、様々な報道にちょろちょろ目を配っているが、管見の限りでは、誰もEUのストレステストがどんなものであり、それがどのようになされるかを詳しく論じてくれるものがない。


EUの原子力関係の文献資料などを引っ張り出してきて読めばすぐにわかるのかもしれないが、日本ではそれをそのまま使うわけではないらしいから、今知識不足の中で、軽々にEUで実施されているテストの項目や実施方法について、あれこれ議論するつもりはない。


そんなことよりも気になるのは、政府がEUのテストより短期間でできるものを原子力安全委員会に作らせ、再稼働に拍車をかけるための切り札に利用しようとしている点である。


日本の原子力安全委員会が、国民の安全のために原発の安全性をチェックする機関ではなく、原子力ムラの安寧のためにありとあらゆる努力をする機関であることは、残念ながら、3.11以降、もはや国民の誰の目にも明らかになっている。そんな安全委員会に関与させるというのであるから、テストそのものの妥当性も、アセスメントの客観性についても、結果はやる前から見えているようなものである。


しかも、EUで実施されているテストは時間がかかり過ぎるので、短縮版を作るのだという。なんというご都合主義だろう?


結局は、体裁だけ整えて、表向き「とりあえずチェックしました」ということにするだけのことらしい。これでは、保安院さんの意味不明な安全チェックと何も変わらない。


そんないい加減なテストを実施するために、またもや膨大な費用や手当が我々の税金から流出してしまうのだろうか。


 確かドイツはこのストレス・テストの1つの項目であるドイツの原発のテロに対する脆弱さを、脱原発に舵をとる大きな理由の一つとしていた。テストは何をどう測るかということも大切であるが、テストの結果を誰がどのような観点から分析し、そこからどんな結論付けに至るかというところが最も重要である。


初めから「再稼働ありき」のシナリオに沿って作られ、実施されるようなテストなら、やるだけ無駄であるし、「ストレステストは政権延命のための単なる時間稼ぎ」と言われても首相は全く反論できまい。


世界で類をみない最悪の原発災害を引き起こし、汚染物質を今なお世界中に撒き散らしている当該国であり、大地震・大津波に見舞われる可能性が高く、原発立地には適さない小さな島国日本においては、EU以上の厳しい安全基準に基づいた査定が行われてしかるべきである。


それにはカネと権力に魂を売り渡した原子力ムラのお歴々ではなく、国民の健康と安全を守るという最も重要な観点から原発について考えることのできる専門家集団が、テストの作成、実施、分析を実施し、結論だけを示すのではなく、どのような根拠のもとにどんな調査項目が作られ、どういった方法でアセスメントがどのように行われているのかを国民に明示することが重要である。


海外の原子力推進派ではない専門家も招きいれ、世界の専門家集団に示しても恥ずかしくない、世界の原発の安全基準の基となるような立派なテストを作ってもらいたいものである。たとえそのテストを実施することによって、日本の原発を全部止めなければならなかったとしても、安全大国日本が名誉挽回するチャンスは、もはやそれぐらいしかないのだから。



http://jp.reuters.com/article/kyodoPoliticsNews/idJP2011071001000538


原発耐性テスト、欧州より短期に

2011年 07月 10日 18:40 JST


民主党の岡田幹事長は10日、原発再稼働をめぐり政府が実施を表明したストレステスト(耐性評価)に関し「欧州連合並みの長期間のテストでは産業、国民生活面で影響が及ぶ。日本版テストをどのように作るかだ」と述べ、評価期間短縮を検討すべきだとの認識を示した。岩手県で記者団の質問に答えた。岡田氏は耐性評価を再稼働の前提とすることに否定的考えを示していたが、再稼働の条件とする政府方針を容認する姿勢に転じた。


http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_269939


追加テスト、事実上義務付け=11日に統一見解―原発再稼働

政府は9日までに、定期点検中の原発の再稼働について、欧州連合(EU)が行っているストレステスト(耐性評価)を参考にした安全評価を設け、その実施が「望ましい」とする統一見解をまとめた。これまで経済産業相の判断で可能だった再稼働に、追加の基準を事実上義務付けることで、より安全性を高めるのが狙い。基準策定に内閣府の原子力安全委員会を関与させる方針も固めた。
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働問題で混乱を招いたことから、政府は統一見解の文言を慎重に詰め、11日に公表する方針だ。
菅直人首相は9日の民主党全国幹事長会議で、統一見解について「国民に納得してもらえる、安心してもらえる手続きをどのように取るのか、方針について週明けにはきちっとした方向性を出すことができる状況だ」と強調。細野豪志原発事故担当相も同日のNHK番組で、「遅くとも11日には、枝野幸男官房長官と海江田万里経産相と私で見解をしっかりまとめて示したい」と述べた。 
[時事通信社]