2012年12月18日火曜日

Who profits from Japan's Election: W. Pesek, Bloomberg


http://www.bloomberg.com/news/2012-12-10/hedge-funds-may-profit-most-from-japan-s-election.html

Hedge Funds May Profit Most From Japan’s Election

This may be the election that Japan bears such as J. Kyle Bass have been waiting for.
Hedge-fund managers betting against Japan in recent years, including Bass of Hayman Capital Management LP, are counting on a doomsday scenario: a widening trade deficit, a plunge in the yen and a devastating surge in yields in Japan’s $12 trillion bond market. Bass made $500 million from the U.S. housing market meltdown. Will his team be right about Japan?
William Pesek

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William Pesek is based in Tokyo and writes on economics, markets and politics throughout the Asia-Pacific region. ... MORE
Time will tell, of course, but the return of Shinzo Abe’s Liberal Democratic Party after the Dec. 16 election, as polls suggest, might nudge Japan closer to a winning hand for the likes of Bass.
No, Japan isn’t the next Greece, as a few have suggested in recent years. Japan’s household savings exceed the size of the government bond market, with more than 90 percent of the national debt held domestically. That minimizes the risk of a run on yen assets and offers Tokyo a huge cushion that Greece lacks.
But Abe’s economics will probably put Japan on shakier footing. Its duel tenets -- aggressive fiscal and monetary stimulus -- are right out of the playbook the LDP honed over more than a half century of rule before being tossed out of power in 2009. Only this time Abe plans to push into the kind of uncharted territory that may unnerve investors and credit-rating companies.

Market Buzz

That isn’t the conventional take at the moment. Markets are abuzz with expectations that Abe will follow through on his pledge to rewrite the Bank of Japan’s charter. He would replace BOJ Governor Masaaki Shirakawa with a monetary yes man and demand a 3 percent inflation target with the goal of ending deflation. Abe would reopen the public-works spigot at a time when Japan should be trimming debt.
In another time and place, this might make sense. But Japan is in far worse shape today than it was in 2006, when Abe had his first crack at prime minister. He inherited an economy experiencing its longest expansion in 60 years thanks to the reforms of predecessor Junichiro Koizumi. When Abe stepped down 12 months later, the revival was over.
Why voters would give Abe a second chance is beyond me. His party amassed the world’s biggest debt among developed nations, created a huge real estate and stock market bubble and failed to figure out a way to escape the inertia that followed.
The nation of 127 million people voted the LDP out of office three years ago, finding it guilty of these sins and countless others. It turned to the Democratic Party of Japan to plot a new course and give two-party politics a try. Now, voters seem ready to return to the familiar.
The DPJ hasn’t exactly covered itself in glory: three prime ministers in three years, another recession under way, and a clumsy effort to rebuild the northeastern cities and towns devastated by the 2011 earthquake and tsunami.
But the LDP’s anachronistic ways will be set against a fast-changing global backdrop. Fiscal and monetary easing are Band-Aids that treat the symptoms of Japan’s slump, now in its third decade, not the causes. Deregulating industry, reducing trade barriers and encouraging innovation outside of a handful of corporate champions would do more to fuel growth than building new roads or ordering the Bank of Japan to print yen.

Easy Money

Japan needs to instill greater confidence if people are going to borrow and banks are going to lend. It must figure out whether easy money even makes sense given the fast-aging population. Twenty-six percent of Japanese are 65 or older and won’t be borrowing to buy houses, cars or computers anytime soon. New economic strategies and levers are badly needed.
Until recently, Japan’s politics were viewed as irrelevant because so many Japanese companies were world-beaters, churning out innovative products and huge profits. That’s no longer the case, and with Panasonic Corp., Sharp Corp. and Sony Corp. reeling, policy reforms are essential.
What are the odds of that happening? Abe didn’t acquit himself with anything like distinction the first time. Let’s say he lasts two years in office this time. That’s 24 months squandered on the same old ideas that left Japan with the identical credit rating as China.
It is also a period in which the few big reforms announced in recent years may be repealed. Remember all the excitement in 2007 when Koizumi began privatizing Japan Post, prying the world’s largest bank by deposits from the gasping hands of corrupt politicians? It has steadily been undone, and one can expect the process to gain speed.
Then there was the consumption tax increase sponsored by current Prime Minister Yoshihiko Noda to pay down debt. Abe is hinting it will be scrapped when he assumes power. It also is a safe bet Abe will shelve Noda’s pledge to phase out nuclear power by 2040. The process of rolling back reforms almost guarantees other needed changes won’t happen.
Japanese people have to rank as the world’s most cautious voters. Many now seek a return to the political party they became comfortable with during decades of one-party dominance. Little do they know the real winners could be hedge funds betting against Japan’s future.
(William Pesek is a Bloomberg View columnist. The opinions expressed are his own.)
To contact the writer of this article: William Pesek in Tokyo at wpesek@bloomberg.net.
To contact the editor responsible for this article: James Greiff at jgreiff@bloomberg.net.

 Bloombergのペセック氏のいうように、 第二次安倍政権からもっとも利益を得るのは、日本国民ではなく、「日本経済の終焉」という最悪のシナリオに賭ける海外のヘッジファンドとアメリカ、というような悲惨な結果にならないことを心から願いたい。

 ペセック氏は、Why voters would give Abe a second chance is beyond me. といっているが、
同感だと思っている人間は日本の有権者の中にも多くいるはずだ。今回非常に投票率が低く、結果的にそれが組織票の多い政党に有利に働いたこと、帯に短く襷に長い政党が乱立しすぎたことで、自民党が漁夫の利を得たことなどが、自民党の勝因に繋がったとしか言えない。

 今度の選挙で、1つだけ明らかになったことは、国民視線を無視し、いい気になって目に余るような独りよがりの暴走を続けていれば、いかに国民の高い支持を得た政党であっても、ジェットコースターのように転落の憂き目を見るということである。自民党の政治家には、すでに十分に分かっていることとは思うが、ゆめゆめ「国民を侮るなかれ」とここで、念を押しておきたい。

以下は安倍氏が意気揚々と渡米して、飛んで火にいる夏の虫のごとく、TPPへの加入を急ぐことが、一体誰のメリットになるのか、国の将来を思うならば、TPPの代わりに、今何を考えるべきかについて論じた、金子勝氏のインタビューを転載した。

http://diamond.jp/articles/-/29366


2012衆院選 日本再生の論点
【第13回】 2012年12月13日
著者・コラム紹介バックナンバー



TPPによる規制緩和で経済復活は幻想
RCEPや日中韓FTAを優先すべき
――金子勝・慶應義塾大学経済学部教授インタビュー

選挙の争点となっているTPP(環太平洋経済連携協定)。経済界を中心に交渉参加し、推進すべきという主張が多い。ところが、それは必ずしも日本の国益にかなうものではなく、単なる通商政策と違い日本の国の形を変えるような非常に大きな影響を与えるものだという声もある。それにもかかわらず、そのことが議論されていないという。TPP推進に疑問を呈する金子勝・慶應義塾大学経済学部教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

TPPは国の根幹を揺るがす
大きな変化を伴うものだ

――TPPが選挙の争点になっているが、ここまでの選挙戦において、各党のTPPに対する姿勢をどのように見ていますか。
かねこ・まさる
1952年生まれ、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得修了。専門は財政学、地方財政論、制度経済学。著書に『新・反グローバリズム』(岩波書店)『失われた30年 逆転への最後の提言』(NHK出版)など
Photo by Masato Kato
 各政党は、正面切って態度を表明できないでいる。それは、各論反対が出てきてしまうからだ。交渉のテーブルについてから、国益にかなわないようだったら、交渉から抜ければいいということを言う人もいるが、本当にそれができるのか、疑問だ。
 TPPの経緯をもう一度思い出してほしい。始めは農業問題だった。都内でも大規模なデモが起きた。しかし、徐々にTPPは農業だけの問題ではないという事が交渉分野を見ていくと分かってきた。あの当時は、TPPの全体像を掴んでいなかったのだろう。徐々に、農業以外のものが出てきた。例えば、自動車や医療などだ。
 TPPはアメリカが積極的で、オバマ政権の通商政策の目玉だ。日本に大胆な規制緩和を迫ってくるだろう。アメリカ大使館のホームページに対日要望書があるが、このなかの何が出てきてもおかしくない。
日本政府は、そのことを広く国民に知らせ日本の国の根幹を揺るがすような、非常に大きなものがTPPであるということを説明するべきだ。
日本の企業の活力を取り戻し、20世紀型の産業構造から転換しなければならないということに異論はない。しかし、それはTPPによってではない。私は、通商政策であれば日中韓FTAとRCEP(※)を、TPPよりも優先的に進めていくべきだと考えている。
――TPP交渉に参加したときに、農業以外で日本の国に大きな影響を与えそうな分野は何なのでしょうか。
 たとえば、米韓FTAなどを見ていると、TPPでは医療の問題は交渉分野として出てくるだろう。非関税障壁の撤廃を旗印に、日本の医療制度の変更を迫ってくると見ている。なぜなら、アメリカの産業界にとって、残された数少ない成長分野だからだ。
 もし、日本がTPP交渉の過程で、日本の医療が問題になった場合、何がおこるのか。まず、薬の認可の仕組みが変わっていくだろう。アメリカの製薬業界にとって日本市場に参入しやすいようなルールにかわる。そうなれば、大量の安い薬、また日本で認可されていないような高額な薬等が日本に入ってくる。それは良い薬が入ってくるというプラスの側面もあるが、日本の製薬業界は大きな打撃を受けるだろう。 
 また、最先端の医療器械などでも同じことが起きうるだろう。それは国民健康保険の適用外の治療になる。じつは、この状況は日本の医療制度の根幹を揺るがすことにつながる。
 最先端の医療技術は、最初は保険外であることが多く、普及すれば国民保険適用されるのが一般的だ。昔、CTスキャンは日本に入ってきたときに、国民健康保険適用外だったがいまは保険診療の適用内だ。
 しかし、今回はもし最先端の医療入ってきて、保険適用外になったとき、民間の保険会社がその医療をカバーするような商品を開発し売り出すはずだ。そして、普及したとき、今まで行なわれてきたように国民健康保険の適用内にしようとした場合、民間の保険会社から、「自分たちの商売の領域を侵した」として、TPPにあるISDS条項(投資家対国家の紛争処理手続き)によって、日本政府を訴えてくるかもしれない。
 そうなれば、国民健康保険によって日本の医療制度が保たれていたのだが、漸進的に変わり、高い民間の保険料を払える金持ちの人は先端医療を受けて長生きできて、貧乏人は国民健康保険で受けられる治療のみで、早死にするということにもなる。
 混合診療を解禁せよ、という直接的な言い方で要求してくるかもしれないが、「規制緩和」という名のルール変更によって、徐々に医療制度が劣化する可能性があるのだ。
※RCEP……東アジア地域包括的経済連携。日中韓印豪NZの6ヵ国がASEANと結んでいる5つのFTAを束ねる広域的な包括的経済連携構想。

交渉を途中で抜けるなど
日本にできるはずがない

――しかし、国益が損なわれるようであれば、交渉から離脱すればいいと指摘する識者もいます。
日本政府に、交渉から抜ける決断ができるのか。過去の動きを見ていれば、それができないのではと思うことが多い。イラク戦争だって、アメリカに見捨てられるのが怖いからといって、欧州各国やカナダなど世界中の国が反対しているにもかかわらず、アメリカの言いなりになって戦争に参加した。オスプレイも、ハワイ州が反対しているのに、日本は受け入れた。最近では沖縄でアメリカ軍関係者による犯罪が多発しているが、
日本政府からは日米地位協定の改定等の発言が、まったく聞こえてこない。
アメリカが強く推し進めているTPPに、日本が交渉参加して、途中で抜けるなんていう事ができると、本気で思っているのだろうか。
――TPP交渉参加で、コメ等の農業に対する影響はどうみているか。
TPPに参加し、今までの発想のまま日本のコメを守ろうとした場合、今の2倍も3倍も農家に対する所得補償が必要になる。規模を拡大して日本の農業の高度化をすべきという声も聞くが、冷静に考えてみてほしい。アメリカの農家は平均200ヘクタールの農地を持ち、オーストラリアに至っては3000ヘクタールだ。日本はわずか1.9ヘクタール。これを増やせと言ったって、増えても各国の規模から考えれば誤差の範囲だろう。
一方で農業に関してはアジア諸国とは衝突しにくい。中国の農家はまだ日本と同等程度の小規模零細農業が中心だからだ。中国は1.4ヘクタールだ。生産性は日本のほうが高いが、中国は圧倒的に労賃が安い。そして、中国などのアジアの金持ちたちは、日本の農産物を高い金払って贈答用に買っていく。日本の農業は発想を変えて、農産物の輸出国にならなければならない。
 もちろん、一定量が海外から日本へ入ってくる。その影響は所得補償などで日本の農家を守っていかなくてはならない。農業の壁が取り払われて、農産物の輸出国となれば、通商政策での他の分野の交渉がやりやすくなる。

いまの日本に規制緩和を迫るのは
風邪っぴきに乾布摩擦と同じこと

――日本の成長力が落ちており、アジアの新興国の成長を取り込まなくてはならないという事は多くの識者が指摘しています。その方法がTPPによるものではないとするなら、具体的に他にどのような方法が考えられるのでしょうか。
 11月にバリで行なわれたASEAN会合で、アジアの包括的な経済連携を進めようと言う事が合意された。TPPに対抗する形でRCEPも本格的に話が進み始めた。アメリカ主導での貿易ルールを嫌って、ASEAN・中国が中心になって動いている。
 私はTPPよりも日中韓FTAを早期に進めるべきだと思うし、RCEPでアジアの国々主導でルールを作るべきだと思う。
そこにアメリカが入ってくるなら、アメリカ側がアジア諸国のルールにあわせてくださいよ、というのが正しい道筋だろう。
――TPPをきっかけに規制緩和し、農業や産業のイノベーションを呼び起こそうという声もある。
 TPP云々の話ではなく、いま日本に求められているのは日本の産業構造をどう変化させて、活力を戻すかということだ。アメリカのルールに従って、規制を緩和し、ある意味ショックを日本経済に与えるということをTPP賛成派は言う。
 しかし、それは風邪をひいた人に、乾布摩擦して直してこいと言っているようなものだ。ショックを与えれば、何かが出てくるというものではないことは、小泉「構造改革」で証明済みである。
もしアメリカから学ぶべきことがあるとすれば、むしろ90年代の情報スーパーハイウェイ構想のような戦略的思考ではないのか。TPPなどのように、単純な抽象化した市場モデルから考えるのではなく、具体的な産業や経済の実態に即して、現実の日本経済の問題点を洗い出して、そこから成長戦略を練り上げていくのが、日本がやらなければならないことだ。