2012年10月19日金曜日

メディア、自公、復興予算の乱用は初めから分かっていたことでは?


 昨今、連日連夜、メディア各社や自民、公明によって喧しく、復興予算19兆円の乱用が大きく取り沙汰されている。

「現代ビジネス」10月15日付で高橋洋一氏は、自民や公明、そしてメディアが今頃になって、復興予算の乱用を批判する資格があるのかという記事を書いている。以下それを転載する。

高橋洋一氏は国民が、「所得税2,1%上乗せ25年間などの「復興増税」をあえて選択した」と書いているが、それは正しくない。

政府の被災地復興、絆で国民一致して助けあおうなどというスローガンや、メディア各社による増税を正当化する相次ぐ報道にころりと惑わされ、増税もやむなしと思い込んでしまった国民がいなかったとはいわない。

しかし、このブログの中でも度々記してきたように、経済不況の中での増税の実施は消費行動をますます鈍化させるばかりであり、日本再生にとってむしろマイナスのほうが大きいと主張する経済学者も少なからずいたし、増税に反対意見を持つ国民は決して少なくなかった。

省庁の無駄を徹底的に削減した上で、何にどれだけの予算が必要か使途を、明ラカにした上で、増税すべきであるという考え方も、また、先に総選挙をして国民に信を問うた上で、増税するかどうかを決断すべきという考え方も多くあった。

高橋氏はそうした事実を全て捨象し、あたかも彼一人が早くから増税に疑義を示し続けてきたかのような書き方をしている点には疑問を禁じえない。

日本の納税者は、納得して復興増税を受け入れたのではなく、好むと好まざるとにかかわらず、機能不全に陥った日本の議会制民主主義の弊害によって、否応なしに増税という煮え湯を飲まされたというべきである。

前の選挙で、愚かにも自公民に投票してしまった選挙民が圧倒的多数であったがために、有無を言わせぬ財務省の横車によって、増税という愚かな選択肢を無理強いされたに過ぎないというのが正しい。

とはいえ、「復興予算が乱用されることは、自民、公明もメディアにも初めから分かっていたはずであって、この期に及んで、批判する資格などないと厳しく糾弾している点は評価すべきであろう。

東京新聞も、復興予算の流用は、納税者を裏切る不誠実だとし、国会審議の形骸化と政府に対する監視機能低下を改めて厳しく指摘し、府省庁が、一般会計として扱ってきた事業に関して、一般関係の予算査定が厳しくなる中、復興予算に付け替えて、被災地とも、震災復興とも無関係な無駄な事業継続を図っていたことを明らかにしている。

省益のため、ひいては自己の出世のために、国民から血税を絞り上げ、湯水のごとく無駄遣いをする霞が関官僚の暴挙に真っ向から対峙して、しっかり歯止めをかけていくだけのガッツと政治的手腕を兼ね備えたリーダーが今の日本には、何よりも求められている。

自公民の政治家たちには、所詮シロアリと手を携えてうまくやっていく事以上の芸当はできないことを、我々はここ何年かの間に、はっきり確信している。維新の会に期待する声もわずかにあるようだが、民意に耳を傾けず、政権維持のためには朝令暮改で口先三寸、ころころ主張を変え、詭弁をとれば何ひとつ残らない、今の野田政権の二の舞になる可能性は高い。

この辺で、日本にも、国民が真に信頼できる、まともなリーダーが出現しない限り、日本の復興再生に未来はない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33798

「現代ビジネス ニュースの深層」             2012年10月15日(月)高橋洋一

「日本再生」というばらまきに群がった官僚や政治家たち!「復興予算の乱用」を自民や公明、そしてメディアが今ごろになって批判する資格はあるのか


 東日本大震災の復興予算(2011年度から5年間で19兆円)の多くが被災地以外に支出されていたという。もともと9月9日に放映された「NHKスペシャル追跡 復興予算19兆円」が話題になったのがきっかけだ。そこでは、沖縄の国道、反捕鯨団体対策費、国立競技場補修費、国内立地補助金等が具体例として取り上げられた。
 復興のために、国民は所得税2.1%上乗せ25年間などの「復興増税」をあえて選択した。それを被災地以外に使うと何ごとか、という怒りが根底にある。
 政府の行政刷新会議が検証に乗り出したり、財務省も実態調査へ動き出しているが、対応が生ぬるいとマスコミは批判する。
 昨日14日のフジテレビ番組「新報道2001」では、当時閣僚だった片山善博元総務大臣がばらまきだと批判。これに対し、民主党の細野豪志政調会長は「復興予算は被災地以外に使わない」との意向を示した細野は、「昨年は(震災で)日本経済が破綻する瀬戸際だった。当初は被災地に限定することを考えたが、自民党からも意見をいただいて日本全体で付けようと判断した」とし、「この判断は全体としては間違ってなかった」と説明した。
 同番組に出演した自民党の甘利明政調会長は、細野氏の民・自の共同責任発言をあえて否定せず、「復興庁が現場のニーズをくみ取り、助ける作業から始めるべき。年次をまたいで自由に使える基金をつくるべきだ」と指摘した。
 他方、この問題を審議しようとしていた11日の衆院決算行政監視委員会の小委員会が与党民主党による欠席で流会になったことについて、自民党は問題にしている。

当初から被災地以外にばらまくつもりだった

 ともあれ、まずは今回の復興予算問題について、震災以降の事実関係を整理してみたい。被災地以外に支出は許せないというマスコミや片山元大臣の意見は妥当か、官僚が国民を騙して予算を作ったのか、与党、野党の政治家は知らなかったのか知っていたのか、さらに、そもそも復興増税は正しかったのかなどを考えてみよう。
 復興予算は震災直後から精力的に検討された。政府、財務省主導の下で東日本大震災復興構想会議を立ち上げ、復興増税を提唱した。同会議の庶務は財務省出身の内閣官房副長官補のところで、事実上財務省が事務局を仕切っていた。増税と同時に各省庁への配慮から復興予算をばらまく思惑もあった。
事実、2011年5月10日の「復興構想7原則」の原則5で、「被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す」と書いている。
 つまり、当初から復興予算を被災地以外にばらまくつもりだったのだ。
 これを受けて、6月24日に成立した「東日本大震災復興基本法」の第2条(基本理念)に、「単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策」という文言がある。
 この基本法は、政府から提案された「東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案」を撤回し、民、自、公による共同提案を成立させたモノだ。
 政府提案の法案では、基本理念は「単なる災害復旧にとどまらない抜本的な対策」となっていた。「日本の再生」という文言はないものの、復興構想原則のとおり、被災地以外にばらまくという当初の考え方は踏襲されているこの意味で、細野氏がテレビでいった「当初は被災地に限定することを考えた」というのは、政府提案を見る限り正しくない。
 ちなみに、復興基本法案の採決は参議院サイトにあるが、みんなの党と共産党以外は賛成している。

「復興特需」のうま味を吸いたいと漏らした政治家

 さらに、これらを受けた7月29日の政府の「東日本大震災からの復興の基本方針」では、「被災地域の復興は、活力ある日本の再生の先導的役割を担うものであり、また、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はないとの認識を共有する」とされている。
 いずれも、被災地の復興だけではなく、「日本の再生」というバラマキに都合のいい文言が盛り込まれている。
 これらの事実から、被災地以外へのバラマキは、政府、民、自、公では当初から首尾一貫している。その当時、この復興増税による政府方針に対して、マスコミは賛成の立場だった。今になって批判するのは、あまりに調子がいい。
まして、これら復興会議、復興基本法の国会審議、政府方針の決定に閣僚として関わった片山氏は、被災地以外へのバラマキを批判する資格はない。さすがに、この点、細野氏が一緒にやったでしょうとやんわりと片山氏を批判していた。
 では官僚が国民を騙したのか。官僚としては正統な手順を十分に踏んだと言いたそうだ。少なくとも形式的には言えるかもしれない。しかし彼らが復興構想会議をコントロールした実態を見た筆者としては文句も言いたい。筆者が「復興構想会議が官僚にコントロールされている」実態をテレビで発言したら、テレビ局に対して執拗な抗議をしてきたのが官僚だった。指摘が図星だと官僚は本気でむかってくる。
 こうした舞台裏について、民、自、公の政治家は知らなかったのか。そんなことはない。よく知っていた。中には、この際「救国連立」にして復興特需のうまみを吸いたいとホンネをいう政治家までいた。

復興増税ではなく、現在ならどうだったのか

 ここまで書いてくると、なぜこうなったのかという根本問題がでてくる。これに対する筆者の直感は、財務省がはじめに「復興増税」ありきという流れを作ったからと思う。
 復興増税だけでは財務省の一人勝ちになる。他省庁が歳出増の分け前を求めるのに応えようとしたが、「被災地に限定」では少なすぎた。そこで被災地以外にも予算をつけられる「日本の再生」という「チエ」がでて、それに民、自、公の政治家が群がったのだ。
 筆者は、震災当初から「増税」ではなく「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」を主張していた(2011年3月14日付け本コラム「「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を菅・谷垣「臨時増税」検討に異議あり」)。
 もちろん、被災地でのインフラは絶対必要なので、公共投資を全否定するつもりはない。しかし、日本の財政政策は、財政支出の割合が多く、(給付金を含む)減税系が少ない(2010年1月18日付け本コラム)。
 前者は、特定関係者の利害に大きく関係するが、後者は広範囲の人が便益を受けるためにあまり特定関係者の利害を考慮する必要がないので、財政のフェアを追求するのであれば、後者の減税系を指向すべきである。筆者の震災当初の提案はその考えに沿っている。
今のマスコミが行っている批判は、被災地以外に増税を使ったということで、支出のムダとはすこし違った角度になっている。もし、復興増税でなかったら、どうだったのか。それに、政府支出ではなく、国民への減税系だったら、どうだったのか少し冷静に考えてみると、違う世界が見えてくるだろう。

不適切な予算の宝庫

 ただ、こうした説明をマスコミにしても、中にはそんなことはどうでもよく、目先のネタを求める人もいる。そういう人たちへは、2011年10月21日の財務省サイトの平成23年度補正予算(第3号)の概要を紹介しよう。
 ここで東日本大震災関係経費11兆7335億円のうち、「8.全国防災対策費5752億円」、「9.その他の東日本大震災関係経費2兆4631億円」はほとんど被災地以外の復興予算だ。
 その他の項目を並べると以下の通りだ。
 立地補助金5000億円、雇用対策3780億円、住宅関係3112億円、節電エコ補助金等2324億円、水産業の復旧・復興1576億円、自衛隊施設及び装備品等の復旧等1470億円、森林・林業の復興1400億円、医療、介護、福祉等1231億円、自律・分散型エネルギー供給等に拠るエコタウン化事業840億円、中小企業対策452億円、復旧・復興に向けた教育支援等411億円、資源の安定供給確保283億円、警察・消防関係229億円、農業関係197億円、世界に開かれた復興177億円、災害に強い情報通信ネットワークの構築等169億円、震災関係資料の収集、デジタル化の促進、被災実態調査等28億円、その他1953億円。
 その中身を見ていけば、いくらでも記事が書けるだろう。
 しばしば、マスコミが掲げている「不適切な予算」が次々にでてくる。
 そもそも、新聞は「本紙の調べによると」となどとしているが、1年前の政府の公表文書に書いてあることに過ぎない当時は、復興増税、復興策に賛成しながら、今になって叩くのは、マスコミならでは変わり身の早さか。
いずれにしても、今回の復興予算乱用の問題は、セオリーを無視した「復興増税」から出てくる馬鹿げた事件としか思えない。「寄付金税額控除」にしておけば、支出先を選択するのは国民である。
「増税」で国民からカネを巻き上げて支出先の選定を政府に委ねるのは、賢い方法にはとても思えない。(道州制先取りの地方主導で)被災地に必要なインフラ経費は「復興国債の日銀直接引受」にしたら、今回のような問題は起きなかっただろう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012101902000157.html


復興予算流用 納税者を裏切る不誠実

 東日本大震災の復興予算「流用」ともいえる不適切な支出が次々と明らかになっている。復興へのこじつけは不誠実極まりない。復興増税に応じた国民と被災者との「助け合い」機運にも水を差す。
 復興予算は二〇一一年度から五年間で少なくとも十九兆円。
 財源は所得税や住民税、法人税などを増税して充てる。日本国民全体で被災地復興を支援する仕組みだからこそ、国民は長期(所得税増税は二十五年間、住民税増税は十年間)にわたる増税を受け入れたのだろう。
 その復興予算が、被災地に直接関係あるとは言い難い事業に流用されていたとしたら、納税者に対する裏切りに等しい。
 例えば、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する安全対策費(二十三億円)、核融合エネルギーの実用化を目指して七カ国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)研究支援事業(四十二億円)だ。ほかにも多くの流用が指摘されている。
 反捕鯨団体対策は「南極海の鯨肉の安定供給が、鯨肉加工の盛んな石巻市周辺の復旧・復興に」、ITER研究支援は「日本全体の復興に」つながるのだそうだ。こうした官僚の説明を詭弁(きべん)という。
 確かに、復興基本方針では被災地と「密接に関連する」地域の事業や、被災地以外で緊急性が高い防災事業も復興予算として認められている。だからといって、野放図な使途拡大は霞が関の暴走だ。
 野田佳彦首相は「真に必要な事業に絞り込む」と表明した。復興との関連を厳しく審査した上で、未執行分は凍結し、執行済み分は関係省庁の一三年度予算から減額する厳しい措置が必要だ。本当に必要な予算なら一般会計予算として別途要求すればよい。
 復興予算流用をめぐり、参院では十八日、決算委員会が開かれ、平野達男復興担当相らが出席して質疑が行われた。十九日には行政監視委員会も開かれる。国会閉会中だが、必要なら審議に臨むのは国会議員としては当然の責務だ。
 政府が提出した予算案の中に不適切なものがあれば、それを正すのは国会の仕事である。
 ただ、現在流用が問題となっているのはすでに国会の審議・議決を経て成立した一一年度補正予算と一二年度当初予算だ。なぜ審議の段階で問題点を指摘できなかったのだろうか。
 国会審議の形骸化と政府に対する監視機能低下が指摘されて久しい。あらためて猛省を促したい。
 

復興へ付け替え横行 省益優先 予算奪い合い

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 東日本大震災の復興予算が被災地の再建と無関係な事業に使われている問題で、各府省がこれまで一般会計として扱ってきた事業に関し、復興予算に付け替えて継続を図っていたことが分かった。一般会計の予算査定が厳しくなる中、省益優先とばかりに、関連性のない復興予算獲得に飛びつき、野放図に認められていたのが実情だ。 (中根政人、岩崎健太朗)
 典型的な事業は、外務省の青少年国際交流事業だ。
 震災発生前の二〇〇七年度からの五年間、「二十一世紀東アジア青少年大交流計画」の名称で、中国や韓国などの若者を招いた。毎年度平均で約七十億円の事業予算が一般会計から支出され、一一年度に終了予定だった。
 ところが、復興のための一一年度三次補正予算に「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流」(七十二億円)と名称を変えて盛り込まれた。震災の実態を米国や中国、韓国など約一万人の若者に伝えるのを目的としているが、実際は被災地での滞在は十日前後のうち実質三日。主に東京や名古屋、京都など被災地と関係のない大都市や観光地を回る内容だった。
 外務省は「震災全体の正しい姿を伝えるための事業。復興予算からの支出は適正だ」と話している。
 このほか、文部科学省は一二年度予算の復興特別会計に所管する独立行政法人・日本原子力研究開発機構の核融合エネルギー研究費として四十二億円を計上した。この事業は被災地の復興に直接関係なく、〇七年度から一一年度までは一般会計として扱われてきた。
 内閣府は復興のための一一年度三次補正予算に、自殺防止対策として「地域自殺対策緊急強化基金」に三十七億円を盛り込んだ。事業費は被災地だけでなく、全国の相談業務に充てられる。〇九年度に三年間分として、一般会計に計百億円が計上されていた。
 防衛省は同三次補正予算に自衛隊輸送機の購入費計四百億円を盛り込み、執行した。当初は一五年までに一般会計から購入する計画だった。