2011年7月28日木曜日

日本より中国メディア・政府対応の方がまだ健全かも


 こんなことはできれば書きたくない。昨日のブログで、日本のメディアはこそって中国の高速鉄道事故を大きく取り上げ、中国政府の対応の酷さ、技術の未熟さを力説しているが、フクシマの原発災害と中国高速鉄道事故の原因や、災厄に対する政府対応に大差はないということを書いた。しかし、中国メディアや一般市民たちは政府の厳しい統制下にあっても、言わなければならない主張は続けているし、遺族たちも高額な賠償金でおとなしく引き下がるのではなく、カネと権力には屈しないと抗議の声を上げているのである。
 日本は戦後言論の自由が憲法で保証されたデモクラシーの国になり、言論統制に縛られている中国とは異なる自由でいい国だ。今の中国人は金儲けさえできれば、どんなことでもする。そんなイメージを持っていたが、ここ1,2日の中国の高速鉄道事故に対する中国メディアや犠牲者の対応を見て、日本よりましなのではとさえ思うようになった。
このような背景には中国政府内部の指導者権力抗争のようなものがあることは言うまでもない。
日本の問題は政治の世界に健全な形の大きな対立がないこと、与党も野党も大差はなく、ほとんどの政治家が、大企業の献金や寄付、組合の組織票にすがるという点で完全に利害の一致を見るという点であり、官僚もメディアも御用学者も、この大企業のカネに繋がる権力には抗しがたいという点である。
九電の見苦しい会見の記事を、以下に転載したが、これがおよその電力会社の経営陣、役員会の面々に通じる共通認識であろう。彼らが今も得ている法外な高い給料や役員報酬の代償として、国民は今、暑い夏に命がけで節電を迫られ、高い電気料金を支払わされているのである。
電力会社が、我々が支払っている高額の電気料金を、地域住民、地元自治体、官僚、御用学者の買収に湯水のように使わず、アメリカやドイツ並みの再生エネルギー開発や天然液化ガス発電所の建設に投資してさえいれば、せめて多額の税金をかけて建設した既存の火力発電所や水力発電所をきちんとメンテしてさえいれば、何がいくつ止まろうが、壊れようが、一般市民までに節電を呼びかけるような事態には至らなかったはずである。
中国高速鉄道追突事故 中国の平均年収の約15倍の賠償金を発表 遺族からは怒りの声
(07/27 18:22)
幕引きを急ぐ中国政府の対応に批判の声が上がっている高速鉄道の衝突脱線事故で、政府の次の一手は、平均年収の15倍もの多額の賠償金だった。
このやり方について、遺族はさらに怒りを募らせている。
27日午後1時すぎ、事故で夫を亡くした女性は、「優しかったあなたが、若くして死んでしまうなんて。(事故原因がわからず)娘に『お父さんは高速鉄道の事故で亡くなった』としか言えないなんて」と話した。
また、遺影を手にした男性は、「こんなやり方、よその国ではあり得ないよ。政府の賠償金発表のやり方に怒りが収まらないよ」と語った。
27日午後1時すぎ、事故現場の近く温州南駅には、事故で家族を亡くした人たちが当局に抗議するために集まった。
遺族らが持つ横断幕には、「真相を」、「死者に尊厳を」などの文字が見られた。
200人以上が死傷した中国高速鉄道の追突事故で、中国政府は事故車両を穴に埋め、批判を受けるとすぐに掘り出すなど、幕引きを急いでいる。
その次なる一手、27日に当局から発表されたのは、中国国民にとって多額の賠償金だった。
遺族に対する賠償の金額は、標準50万元(日本円でおよそ600万円)と発表があった。
特段、交渉が行われた様子もないまま、50万元という金額だけが早くも示されてしまった。
賠償金の額は、早期に和解に応じた場合の奨励金を含め、日本円でおよそ600万円と、これは中国の平均年収のおよそ15倍にあたる。
遺族は、金で口封じをするような当局に対し、怒りが収まらない。

抗議に来た遺族は、「わたしたちは、賠償金の交渉をするために、ここに集まったわけではない。真実を知りたい」、「事故をお金だけで解決しようとしないで」と話した。
さらに、事故で家族5人を失った男性は、「今は僕1人しか残っていない。家族5人の命が事故で奪われた。妻は妊娠7カ月だった」と話した。
さらにブログには、「金と権力には屈しない」との書き込みをしていた。
遺族が求めるのは、お金ではなく真相究明だった。
一方、真相究明を求めている中国の記者たちに、中国共産党の宣伝部から送られたとされるメールがある。
そこには、「感動的な出来事を多く報道してください。事故原因については追及しない」、「関係部門の発表をもとに報じ、反論をしない」などと、報道規制とも取れる内容が書かれていた。
一方、中国国営テレビでは、追突した列車の乗務員が「もし彼(運転士)が緊急停車しなかったら、この列車がどうなっていたか、想像できません」と話すインタビューを放送していた。
中国国営テレビでは、死亡した運転士を英雄視する報道もされていたが、上海の地元紙では、乗客の証言として、「急ブレーキをかけたような揺れは感じなかった」と掲載、事故の2秒前も車内の速度表示は、時速118kmだったという乗客の証言を報じている。
温州市内の貨物駅には、大破した車両の残骸があり、内部の素材も見えていた。
中国政府は、最高人民検察院の担当者を現地に派遣して、事故原因だけではなく、関係者の刑事責任を追及する姿勢を見せている。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110725/mcb1107251005028-n1.htm

【中国高速鉄道事故】ネット世論沸騰「落雷のせいにするな」「死傷者少なすぎる」

2011.7.25 10:04
    
処理される中国高速鉄道の事故車両の残骸=24日、中国浙江省温州市(ロイター)
処理される中国高速鉄道の事故車両の残骸=24日、中国浙江省温州市(ロイター)【拡大】
 【温州(中国浙江省)=河崎真澄】中国浙江省温州で23日に起きた高速鉄道の列車追突事故に対し、中国のインターネット上では安全性より建設のスピードを重視した問題や、汚職がからむ手抜き工事などへの疑惑から「人災だ」と指摘する声が相次いでいる。鉄道省ではこれまで「高速鉄道の安全は全く問題ない」(何華武技術主任)としてきたが、重大事故の発生でネット世論は沸騰し始めた。
 ネット上では「人災を落雷のせいにするな」「現場のひどさに対し発表された死傷者数が少なすぎる」などと鉄道当局を批判する言葉が渦巻いている。「業績を急いだ指導者が最大の事故責任者だ」「鉄道相らを即刻更迭せよ」と当局者の責任を問う声も大きくなってきた。
 24日深夜に温州で記者会見した鉄道省報道官は「落雷による設備故障」が原因と改めて強調したが、ネット上では、「運転士や運行管理センターは何をしていたのか」「設計自体に問題があったのではないか」との疑問も広がっている。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/519721/

中国高速脱線 当局、独自報道認めず

2011/07/25 08:33 産経新聞


中国のメディア関係者は25日までに、浙江省温州市で起きた高速鉄道の列車追突事故について、中国共産党中央宣伝部国内メディアに対して独自報道をしないよう求める通知を出したことを明らかにした。鉄道省報道官は24日深夜、死者は43人ではなく35人として国営通信新華社の報道を事実上修正。当局が情報管理や世論の動向に神経をとがらせていることをうかがわせた。
 関係者によると、通知を受け取ったのは事故翌日の24日午前。事故の報道は新華社の配信記事を使用し、独自取材に基づく報道をしないよう要求している。事故に対する当局の責任を問う声を封じ込める狙いがあるとみられる。新華社は24日夜、救助隊が新たに8遺体を発見したと報道。確認されていた死者35人と合わせ計43人となったが、鉄道省報道官は同日深夜の記者会見で、死者は35人と言明、負傷者も211人から192人に修正された。(共同)

http://diamond.jp/articles/-/13334

中国高速鉄道事故で国民が鉄道部に怒り狂う背景には、これだけの伏線がある




鉄道部のこうした行動には、日本の311原発事故が発生した後、東電が見せた隠ぺい体質と「原子力村」と呼ばれる産官学からなる利権集団の行動パターンに似通ったものがあったが、ただその特徴はより乱暴的で、より赤裸々で、より貪欲なものだといえるだろう。その意味では、中国に「鉄道村」のような利権集団が存在していると思ってもおかしくない。

http://mainichi.jp/select/world/news/20110728ddm001030020000c.html


中国:高速鉄道脱線 運転士「停止指示された」 人為ミスの可能性

 【温州(中国浙江省)隅俊之】中国浙江省温州市の高速鉄道事故で広東省の週刊誌「南都週刊」(電子版)は27日、追突された列車の運転士が「(運転指令に)停止を指示された」と乗客に話していたと伝えた。後続列車は時速115キロ前後で追突しており自動制御装置が機能しなかったのはほぼ確実。証言は事故が制御系統の不備と人為ミスの複合要因で起こったことを示すとみられる。
新華社によると、現地に派遣された中国最高人民検察院(最高検)の担当者は政府調査団に合流する。「人災」の見方が強まる中、刑事責任追及を視野に入れている模様だ。
毎日新聞 2011年7月28日 東京朝刊

九電会長「信頼できる会社」強気会見2時間超
 やらせメール問題の責任を問われる立場にありながら、発言は強気だった。「原子力に関して九州電力はとりわけ信頼できる会社だと思われている」。メール問題の第三者委員会が発足した27日、九電の松尾新吾会長は会見で断言。真部利応(まなべとしお)社長と自らの進退も「白紙」と強調した。一方、経営トップ2人と並ん第三者委の郷原信郎(ごうはらのぶお)委員長は「大震災以降も変わらない九電の体質に問題の本質がある」と、問題の背景を指摘した。
 九電本店内の会議室。会見開始8分前、一番先に姿を現したのは松尾会長だった。会長の会見出席は異例。100人を超す報道陣を前におうような笑みを浮かべた。
 「今回の件の関係者、取締役の処分については第三者委員会の評価を踏まえ、あらためて取締役会で審議します」。社長らの進退について口火を切ったのも、松尾会長だった。
 隣には対照的に疲れた表情の真部社長。辞任について「私個人の思いは決まっている」。一方、思想家内村鑑三の「天の声に従って行動せよ」という言葉を引いて「天の声は世論なのか、大臣なのか、取締役会なのか。何が天の声なのか考えたい」とした。
 これを聞いた松尾会長は「社長個人の意思と、それが通るか通らないかは別。(進退は)取締役会の専決事項」と断言。「辞めないという結論もある」と強調した。
 会長は社長をかばい、社長は会長に一任する。2週間前、やらせメール問題を「社会常識」に反すると総括した真部社長の会見とは一変。この日のトップ2人には、責任の自覚は見えなかった
 真部社長の辞任届提出を松尾会長が明かしたのは、会見が始まって1時間半が過ぎてから。一存で預かり、他の取締役には知らせていないとも述べた。ある取締役によると、この日午前の取締役会では、議長の松尾会長から社長欠席の理由説明はなく、社長や自身の進退にもひと言も触れなかったという。
 「(福島第1原発)事故前の感覚で対応したところに問題の本質があるのではないか」。メール問題の原因について郷原委員長が個人的見解を述べる間、真部社長はうつむいてノートをめくり、松尾会長は前を見据えていた。耳を傾けているのか、いないのか。
 記者が重ねて問うた。「辞任届を自分の一存で伏せているような会社に、原発の運転を任せて大丈夫と住民は考えると思うか」。松尾会長は「九州電力はとりわけ信頼できる会社だと思われている」と言い切った。
 2時間15分が過ぎるころ、松尾会長は真部社長に耳打ちし、間もなく会見は終わった。
=2011/07/28付 西日本新聞朝刊=