2012年10月29日月曜日

放射能汚染の魚介類への影響は?

 
 一時期は、フクイチの原発災害による高濃度の放射能漏れによる魚介類への影響が大きく取りざたこともあったが、今年の春以降、とりわけ9月以降ほとんど全くといっていいほど、ニュースにも取り上げられなくなってしまった。うっかりこんなことを書くと、たちまち「風評をまき散らしている」と言論弾圧を喰らいそうだ。

しかし何しろセシウムの流出量が5600兆ベクレルにものぼる、とてつもない量であったこと(読売、3・06・2012)を思えば、それが単純にすべて海流に乗って太平洋にすべて拡散されていったなどとは到底考えにくい。森林に落ちた高濃度のセシウムは雨風や雪解け水とともに大地にしみ込み、地下水や河川とともに海に流れ出ることもありうるだろうし、発電所の近辺の海底土に混ざり、沈殿したままになっていることを完全に否定することは誰もできないのである。原発周辺の海底でプランクトンを食べて生育しているような魚は食物連鎖で汚染されるに違いない。

ところが、ニュースで報じられるのはやれ今年も秋刀魚の季節が来ただの、牡蠣の養殖がどうだの、皆で東北の魚を食べに行こうだといった話題ばかりである。日本近海における魚介類の放射能汚染の話題にふれることは、この国ではあたかもタブーであるかの如くである。

震災から1年間ぐらいの間は、Blue Water Worldのウエブサイトが、海洋汚染の記事を次々に掲載していたが、3月を過ぎてからブログの更新が激減し、特に今年の夏以降はめったに更新されていない。日本政府は、グリーンピースによる海洋調査を許可しなかったし、入ってくるのは、遠いアメリカの科学者の発表ばかりである。

ここに来てWSJが放射線物質に汚染された魚介類の謎という記事を掲載しているが、これもアメリカの研究者による発表で、これまで海洋のセシウムは希釈され、魚介類へのセシウムの蓄積は問題にならないとしていた東大の海洋学者の意に反して、未だに海底から高濃度の汚染に晒された魚介類があることを明らかにしている。これも日本政府が発表したデータに基づいて分析したものにすぎない。

前にこのブログでも引用したように、魚は流水できれいに洗った後、内臓も鱗も骨皮も全部取り除き、きれいな身にしておろしたものの放射線量を測っているそうだから、「ほとんどの魚介類が低線量」という発表の真偽の程は、はなはだ疑わしい。

そして当事者の東電は、なぜか魚介類への影響については、「未だ調査中で評価を行っていない」という。海洋国日本の最良の漁場で、魚介類が放射能漏れによって、どんな影響を受けているのかということは、消費者の健康・安全に関わる重要な問題である。

震災後1年7ヶ月以上立つというのに、「未だ調査中」とは、一体どういうことなのか。東電は国有化され、もはや私企業としての体をなさないのならば、何をおいても、公共の利益を、高い代償を支払わされてきた消費者の健康・安全を最優先すべきではないのか。

以下WSJの記事とBlue Water Worldのウエブサイトを転載する。

http://jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/15044/?mod=Center_jrt

【フクシマウォッチ】放射線物質に汚染された魚介類の謎


昨年の福島第1原子力発電所の事故による近海海洋生物への影響をモニターしている科学者にとって、1つの驚くべき発見が目につく。大量の放射線物質が海に放出された炉心溶解事故からゆうに1年以上が過ぎているが、同発電所の沖合で獲れた魚介類のなかには依然として極端に高い放射線物質の水準を示すものがあるのだ。
Associated Press
福島沖で獲れたタコをチェックする小売り業者(6月25日)
これは魚介類が、放射線物質の汚染にさらされ続けていることを意味するにちがいない、と米マサチューセッツ州ウッズホールにあるウッズホール海洋研究所の海洋化学者ケン・ブッセラー氏は26日号の科学誌『Science(サイエンス)』に書いている。
日本の農林水産省から定期的に公開される魚介類のデータを調査してきたブッセラー氏は「1年以上前とちょうど同じように魚介類が(放射線物質の)セシウム134と137に汚染されているという事実は、セシウムが依然として食物連鎖の中に放出されていることを示唆している」と書いている。
これは多くの科学者の予想に反している。
昨年3月11日の事故で大量に放出されたセシウム137の半減期は30年だ。これは土地の汚染がいつまでも続くという最大の懸念の1つだ。だが海の中では容易に分解し、海流によって希釈される、と東京大学海洋研究所の植松光夫教授は指摘する。ブッセラー氏は、海水魚は淡水魚ほどにはセシウムを筋肉組織のなかに蓄積させない傾向があり、再度放射線物質にさらされなければ、セシウムは徐々に海水で希釈されていくはずだと書いている。
これらの理由から、多くの海洋生物学者らは福島第1原発が放射線物質のセシウムの放出を停止すれば、魚介類にセシウムが蓄積され続けることはないと考えていた、と植松氏は言う。日本政府のデータは福島第1原発近くで獲れた魚介類のほとんどは実際、放射線物質が比較的低い水準であることを示している。ただ、一部の魚介類――多くは海底で生活をするもの――の極端に高い水準が謎となっている。
福島原発を運営する東京電力は、原発施設の海側にあるコンクリートの堤防に入った亀裂をふさぎ、太平洋に面した方の施設の周囲にカーテンのようなスクリーンを設けるなどして、第1原発からの放射線物質漏れを防ぐために懸命に取り組んできた。
だが、植松氏は川や地下水といった多くの未検知のルートから放射線物質が海に流れ込んでいる可能性を指摘する。汚染された土が川に落ち込み、水の流れによって海まで運ばれ、潮の干満によってゆっくりと沖へと流される、と植松氏は話す。『サイエンス』誌でブッセラー氏は、海底の沈殿物に含まれるセシウムの検出報告があると指摘している。これが継続する汚染の源となっている可能性もある。
セシウムは強いガンマ線を放出しており、がんの原因になるとみられている。
東電は、海水や海底土については汚染の低下が確認されているが、魚への影響については現在調査を続けているところで、まだ評価を行っていない、と述べている。
福島第1原発は非常に高い放射線物質の水準から、原子炉建屋内の多くの場所が依然として立ち入り禁止となっており、東電は築40年の原発を解体するうえで困難に直面し続けている。作業員たちは依然として損傷を受けた原子炉の状態をつかみ、さらなる放射線物資の漏出を防ぐことに手探りで対応している。また、来年末までに崩壊しかかっている原子炉建屋の使用済み燃料棒の移送を開始できるよう取り組んでいる。
記者:Mitsuru Obe

http://bww.jp/r/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF/%E6%B5%B7%E6%B4%8B%E6%B1%9A%E6%9F%93/
原発・放射能情報
Blue Water World
マリン情報サイト「ブルーウォーターワールド」では、東電福島第一原発事故による放射能汚染の状況と対策をお伝えし、放射能を正しく怖がるための情報を日々発信しています。特に注意すべきポイントは被曝放射線の積算量土壌汚染内部被曝(食物・吸気の放射能濃度)です。


海洋汚染

 

周辺海域放射能汚染水の測定と拡散予測

太平洋放射能汚染10年間シミュレーション (GEOMAR、ドイツ語サイト。英文解説はこちら)07/22/2012
ドイツ・キールの海洋研究所、GEOMARが2012年7月6日に発表した福島第一原子力発電所の事故によるセシウム137の太平洋への拡散の長期シミュレーション。画面左上の数字は事故(2011年3月11日)からの経過月数を表している。 (日本語解説ブログ | シミュレーションオリジナル動画
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太平洋の放射能汚染シミュレーション(Google Earth) (ASR)03/2012更新
太平洋の放射能汚染の広がりと影響を表した図で、大きな範囲で汚染が広がっているのがわかる。
(ASR社は、世界の海岸線を管理する米国民間企業)
放射性セシウム事故前の100倍に 福島沖プランクトン』(毎日)04/03/2012
セシウム流出量、東電推計の6倍、5600兆ベクレル(読売)03/06/2012
海洋研究開発機構が試算。
ニュース:米研究者チームが分析結果を海洋科学に関する会議(米ソルトレークシティー)で発表02/23/2012
・昨年6月に福島第一原発沖から採取した海水から、『事故前の1000倍のセシウム検出』(CNN)
・『汚染は600キロ沖まで』(MSN産経ニュース)
動画:福島第一原発、海底の土覆う工事へ(01/30TBS) 02/01/2012
(クリックすると動画のポップアップウインドウが開きます)
東京電力は、福島第一原発付近の海底の調査を行った際の動画を公開した。2月上旬には放射性物質を拡散させないため、底の土を覆う工事を行うことにしているという。
海洋への放射能汚染が心配される中、早急に「地下(遮蔽)ダム建設の着手を」との声が昨年春には有識者らから上がっていたにもかかわらず、東電は何ら手を打たないまま水処理施設から汚染水が漏れるなどの問題を起こしており、遅きに失した感は否めない。
動画:知られざる放射能汚染~海からの緊急報告(01/15NHK) 01/18/2012 必見!
(クリックすると動画のポップアップウインドウが開きます)
NHKスペシャル「シリーズ原発危機」。海だけでなく山奥の湖にいる淡水魚にまで汚染が進行している事実が明るみに。放射性物質はどのように運ばれ魚介類に濃縮され、私たちを脅かしていくのか、海・湖沼・川・東京湾の調査を行い、その知られざる実態に初めて迫ったNHKの渾身のレポート。NHK解説ページ
グリーンピースによる放射能調査結果(国際環境保護NGOグリーンピース)
要チェック!! グリーンピースは、原発事故が起きた直後の3月末から放射線調査チームを結成し、福島で放射能汚染の実態調査を行っている。海洋と陸上についての独自の環境モニタリングとスーパーなどに流通している魚介類などの食品放射能汚染調査など。
動画:海のホットスポットを追う(11/27/2011/NHK ETV特集)
(クリックすると動画のポップアップウインドウが開きます)
海底の放射線量は毎時1.72マイクロシーベルトを計測、海水からウニへおよそ50倍と濃度が高まっていく生体濃縮も確認されるなど・・・。海に流れ出た放射性物質は、どのように広がっているのか、魚介類にどのような影響を及ぼしているのか、海の汚染の実態を検証。NHK解説ページ | 参考サイト「SAVE CHILD」
太平洋の放射能汚染シミュレーション (11/23/2011)
海に流出した放射性セシウムが、原発から東に約3500km離れた太平洋海域(日付変更線付近)まで達している可能性が高いことが、海洋研究開発機構の分析で判明した。
海洋研究開発機構推定の拡散状況(2011年11月22日/読売新聞)
太平洋の放射能汚染
(拡大)
一方、下の動画は米ASR社が発表している太平洋の放射能汚染の広がりと影響を表したもので、大きな範囲で汚染が広がっているのがわかる。
 (ASR社:世界の海岸線を管理する米国民間企業)
画面右下の拡大マークをクリックすると全画面になります↑
ASR社のサイトのGoogle Earthで見る
セシウム海洋流出、東電公表の20倍…仏研究所(2011年10月29日/読売新聞)
2万7000テラ・ベクレル。過去に経験したことのない規模の放射性物質の海洋流出。なお、電力中央研究所が9月にまとめたデータでは東電発表の3倍(下記9/17記事参照)だった。
放射能、海への汚染拡散報告 京で学会(2011年10月18日/京都新聞)
海底土の汚染は、「セシウム137はかつてないほど高濃度で、海底土の汚染と海底土から海洋への再供給などを考える必要がある」。
汚染水、3月26日から流出 東電の推定より早く(2011年9月17日/47NEWS)
海への流出量を3500テラベクレル(テラは1兆)と推計、東電発表の3倍以上。
海底の魚から規制値超す放射性物質(2011年7月16日/TBSニュース映像)
(クリックすると動画のポップアップウインドウが開きます)
福島県沖の漁は自粛されていて市場には出回っていないが、今週、アイナメやヒラメなどから規制値を超える放射性物質が検出された。海の中で今、何が起きているのか。
福島汚染水の太平洋横断をCGで予測(2011年6月24日)
放射性物質を含む汚染水が、太平洋を横断する様子を予測したコンピュータ・グラフィックスを日本原子力研究開発機構が公開。高濃度汚染水と空からの放射性物質は海流に乗って3年後にハワイをかすめ、約5年後にはアメリカの西海岸に到達すると予測。
太平洋における放射能濃度分布のシミュレーションについて
海水中のセシウム137の濃度分布アニメーション
YouTube映像:ANNニュース
海域における放射能濃度のシミュレーション(文部科学省、独立行政法人日本原子力研究開発機構)
福島第一原子力発電所沖合におけるモニタリング結果をもとに、独立行政法人海洋研究開発機構の「数値海況予測システムJCOPE2」を使ってスーパーコンピューターで計算、放射能濃度分布のシミュレーションを実施。

放射性物質の海洋(海流)への拡散予測(英文サイト)
国際原子力機関(IAEA)の要請でSIROCCO Group(フランス国立科学研究センターとトゥールーズ大学)が実施。
「原発から海へ排出された汚染水の動き」と「空気中の放射性物質の降下」についてアニメーション表示。
関連解説ブログ:福島第一原発海流の予測-フランスのSIROCCO by LiveMore International Inc.
その他の関連ニュース
放射性セシウム:海底濃度を連続計測 東大が開発』(09/07/2012)
「点」でしか計測できなかった海底汚染を、「線」で測ることが可能に。
の魚、『セシウム濃度の違いなぜ?』(05/21/2012)
1平方メートルあたり約2万7200ベクレル。昨年夏からの約7カ月間で、『東京湾のセシウム、7カ月で1.7倍 流れ込み続く』(05/10/2012)
福島県、海の放射性物質は深海へ拡散する傾向があるほか、魚のえさとなるエビなどの放射線量は下がってきているが、魚種によっては横ばい状態が続いている。『海底のセシウム拡散』(05/09/2012)
海は確実に汚染されている。食物連鎖でセシウムが蓄積し、最終的には人間に返ってくる。『放射性物質による海洋汚染の現状』(04/25/2012)
2011年暮れに、原発の処理施設から海に漏れ出た汚染水問題。一部海に流出、汚染水濃度は法定の366万倍!(01/17/2012)
原発の汚染水処理施設から汚染水が漏れた問題。 汚染水、海へ150リットル…260億ベクレル(12/07/2011)
小出氏(京大)が、今回、海へ漏れ出た汚染水のセシウムとストロンチウムの海洋汚染の違いについて説明。また、除染で出た汚染土の海洋投棄トンデモ案を批判。 『12/5たね蒔きジャーナル(YouTube音声と文字起し)』 (12/07/2011)