2012年5月28日月曜日

核燃の「秘密会合はまっとう」と主張する読売社説は妥当?

一昨日、国内メディアに4号機の内部が初めて公開された。すでに遡ること数ヶ月前に、他国の議会の議員に公開されていたものが、国内メディアに対しては、事故後13ヶ月もたった今になるまで公開されなかったとは一体どういうことなのか。

アメリカの国会議員が今春フクイチの内部を視察し、その結果、米政府に4号機の危険性と日本政府への支援の必要性を訴えていたことは、先週のブログの中で取り上げた通りである。

13ヶ月もたって、無残に破壊されたままの4号機の姿を見れば、素人にも、日本の原子力技術の限界は自明であり、何があろうが、自然災害が多発するこの国で、原発の再稼働などありえないとしか言いようがない。

以下に金子勝氏のブログと5月26日付けの読売新聞の社説を引用する。

読売新聞の社説は、核燃勉強会という秘密会合は、電気事業者を始めとする原子力ムラのメンバーばかりを集め、小委員会の会議の方向性を決める上で重要な資料を作成していた問題を正当化している。

資料作成に際して、反対派を会合から排除している事実についても、事務局が反対派からは事前に意見を聴取しているから、妥当だという。しかしその事務局がどんな事務局かが問題である。

社説では、「小委員会のまとめた報告は、推進側に有利とはとても思えない」とある。このような書き方では、いかにも秘密会合で提示された資料は民主的に作られた公正なものであり、「核燃料サイクルを即刻廃止して、脱原発に向かう」という推進派にとって不利な筋書きで報告書を作成したかのように、読み違えてしまう。しかし、それは事実ではない。5月24日の毎日新聞によれば、報告書は、再処理有利に書き換えられていたのである。

勉強会のメンバーは、国税をどぶに捨てるような核燃料サイクルにさっさと見切りをつけ、自らの手で潔く放棄する考えなどさらさらない。彼等が小委員会に何を提示したかは、毎日新聞によってスクープされている。その詳細については先週のブログの中に提示したとおりである。

また読売社説では「事業者にしか分からない数字をぬきに、小委員会の議論は成り立たない」と言っているが、そもそも、国のエネルギー政策に関する重要な情報を、私企業にすぎない電力会社の人間が独占している現行制度にこそ問題があるのではないのか。

加えて「原子力の一定の知識を持たない職員では事務局の作業が遅れ、手間取る」したがって、電力会社の社員を出向させるのは妥当という主張にも、大きな飛躍がある。原子力の知識を持たない人間が、素案をまとめる作業に従事すべきなどと言っているわけではない。

取り返しのつかない深刻な放射能災害を引き起こしながら、未だその現場の保全を速やかに行う知恵すらない原子力ムラの住人らが、読売や日経など主要メディアの擁護を盾に、未だに我がもの顔に、この国の原子力政策決定のプロセスに深く関与していることが、最大の問題なのである。

細野原発相は、原発ムラの秘密会合について、「一定の時期を見て、推進派の事業者を電力会社を始めとする所属機関に戻したい」と言ったが、「時期を見て」というのは、いかにも曖昧な表現である。

新しい国のエネルギー政策を考えなおさなければならない岐路にある今、即刻、現行の勉強会を解散し、利益相反行為に抵触しない専門家を事務局に出向させるべきではないのか。

新しい規制庁も、原子力ムラの村人たちが多数入省・出向するようなことでは、保安院・安全委員会の二の舞である。規制庁ができれば、再稼働を認めると言っている首長もいるが、どんなメンバーが入省するのかを見極めた上でなければ、看板と建物を代えただけで、中身は何も変わらないひどい組織をそのまま温存させることになりかねない。


金子勝氏のブログより


原子力安全委と保安院が機能麻痺に陥る中で、原子力委員会が原子力ムラの「最後の砦」です。原子力委員会の体質が社会問題化すると、大飯原発をはじめ原発再稼働がますます遠のく。さらに事務局体制や事業者の影響力の排除という本質を問題にしない新原子力規制庁の国会審議のインチキも露呈します。2012年5月27日 - 20:14 webから


読売社説は、原子力委員会が「秘密会合」を開いていたことを妥当とする巨額の税金・電気料金を注ぎ込んでドブに捨てている核燃サイクル。電力会社、日本原燃、原子力機構、担当官庁を一堂に集めて技術的な正確性だけをチェックしていた?ゴミ売り新聞?
2012年5月27日 


茂木自民党政調会長が、原子力規制庁設置法案について3条委員会(独立委員会)の自民、公明案なら国会審議に応じると。しかし利害関係者の事務局を持ち、「秘密会合」を開く原子力委員会も独立委員会です。皆で原子力ムラ温存図り、再稼働急ぐつもり?
2012年5月27日 - 18:05 webから · 


原発推進の前原政調会長が、大飯原発の「政治決断」はタイムリミットが近いとして、能力の低い政治家の「政治判断」で再稼働するという。前原を含め、斑目委員長も辞めさせず、保安院の言うがままにして安全行政とルールを壊した政治責任こそ問われるべき
2012年5月27日 - 17:48 webから


http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120526-OYT1T01111.htm


核燃「勉強会」 原子力委の情報収集は必要だ(5月27日付・読売社説)

内閣府の原子力委員会が、経済産業省や電力の関係者を集めた勉強会を昨年11月から23回開いていたことに、原子力発電推進に偏った姿勢だ、とする批判が出ている。
原子力委は、有識者による小委員会を設けて、原子力発電所から出る使用済み核燃料の処理方法を巡る核燃料サイクル政策について検討してきた。
 勉強会の目的は、この小委員会の会議資料の準備である。必要なデータの提出依頼や確認を行い、資料内容の技術的な正確性を点検することにあったという。
 正確なデータに基づく資料を会議の事務局が作成するのは当然のことであり、何ら問題はない
小委では、核燃料サイクル政策を変更した場合のコストが焦点となっている。使用済み核燃料の量や経費見積もりなど、事業者にしか分からない数字を抜きにしては小委での議論は成り立たない。
 勉強会の開催を色眼鏡で見るのは間違っている。
批判する側は、この勉強会の場で、作成途上の小委の報告書の素案が配布されたことを、特に疑問視している。
勉強会での原発推進側の意見を踏まえ、報告書案が事業者に有利になるよう書き換えられた、という主張である。それが事実なら確かに問題であろう。
これに対し、原子力委は、「事業者の意見を反映して書き換えた事実はない」と反論している。
実際、小委がまとめた報告書は、推進側に有利な内容とは、とても思えない。
推進側が後押しする現行の政策を変更した方がコスト安、との試算が明記されている。核燃料サイクルを放棄し、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムの利用をやめた方が核拡散防止に寄与する、との見通しも載せられた。
報告書の素案は、推進側だけでなく、小委に所属する脱原発派の委員に対しても事務局が事前に提示し、意見を聞いている。
小委の会合でも、全ての委員の意見を踏まえて修正を加え、最終報告書としている。
 手続きはまっとうと言える。
細野原発相は、原子力委事務局に事業者からの出向者が職員としていることも中立性に問題があるとして、出向者を出身組織に戻す方針を示している。
 だが、原子力に関する一定の知識がない職員で置き換えれば、事務局の作業は遅れ、手間取るのではないか。細野氏には、慎重な判断を求めたい。
(2012年5月27日01時42分  読売新聞)