2012年2月19日日曜日

良心的なジャーナリズムへの圧力か:朝日ニュースターの消滅

国会は昼の時間帯に中継されるだけであり、たまにまともな番組が放映されると思えば、隠れるように深夜に放送される。

テレビの世界は、低俗なお笑いや内容のないバラエティー、一色に毒され、ニュース番組のほとんどは、政府寄りの報道をリピートするばかり、たまに骨のあるキャスターや、ゲストが問題提起につながるような発言をしたところで、議論は深まるどころか、すぐさまCMが入ったり、スポーツや芸能記事で、混ぜ返しが図られ、巧妙に誤魔化されて終わってしまう。

新聞も、広告やスポーツ、どうでもいいような記事にばかり多くの紙面が割かれ、購読するに耐えない末期症状を呈している。

その中で、朝日ニュースターは異色の存在だった。

他の大型テレビ放送局とは異なり、権力に迎合するわけではなく、タブーとされるものにも臆せず、堂々と立ち向かおうとする姿勢が見えた。健全な民主主義国家にふさわしいメディアの在り様が、この朝日ニュースターの存在によって、かろうじて保たれていたといっても過言ではない。

その朝日ニュースターが消える。圧力に屈したのであろうことは、容易に推察されることであるが、
ニュースターのような番組をしっかり支えなかった視聴者のメディア・リテラシーの低さも、これに相俟っている。朝日が、新たにどんな番組編成をするのか、視聴者のメディア・リテラシーを育むような番組編成にするのか、それとも愚民化政策に与するつもりなのか、しっかり見守る必要がある。

以下J-Castのウエブサイト、イキイキ箕面通信のブログの一部を転載する。

http://www.j-cast.com/2011/11/12112795.html?p=all


来年3月でスタッフ全員退職 「朝日ニュースター」事実上消滅

2011/11/12 10:00

CS放送の「朝日ニュースター」が2012年3月いっぱいでスタッフが全員退職し、事実上「消滅」する。
   「記者クラブ問題」などメディアへの自己批判や、最近では積極的な「反原発」報道を繰り返すなど、「異色」の報道専門チャンネルとして熱心なファンを抱えている。テレビ朝日に事業を譲渡する形になるが、スタッフが全員退職することもあり、特色が薄れるのではないかと残念がる向きも出ている。

「ありきたりなチャンネルになってしまうのかな…」

朝日ニュースター、「事実上消滅」に惜しむ声も(写真は、朝日ニュースターのホームページ)
朝日ニュースター、「事実上消滅」に惜しむ声も(写真は、朝日ニュースターのホームページ)
   「朝日ニュースター」を運営する「衛星チャンネル」は、2012年4月1日付でCS放送事業をテレビ朝日に譲渡することで、2011年7月29日に基本合意した。衛星チャンネルは解散。スタッフも全員退職する。
   衛星チャンネルは、「正社員については、割増退職金の支給などを盛り込んだ希望退職を募ったところ、ほとんどの社員から応募がありました。再就職先も、最大限の努力をしています」と明かし、解散に向けての作業は粛々と進んでいる。
   「朝日ニュースター」はこれまで、討論番組や時事解説などに多くの時間を割いたり、記者会見の生放送や、ビデオジャーナリストによる取材を取り入れたりするなど、報道スタジオからニュースを伝える従来型のニュース放送とは異なるスタイルをとってきた。
   マスコミの検証番組やメディアへの自己批判などを取り上げることも少なくなく、ネットなどでは、
「ノーカット、リアルタイムの東電や保安院の記者会見など、これまでのニュース番組にはないものがあった」
「制作スタッフがすべて入れ替わってしまうと、今までのような内容で今後も放送されるのか」
「ありきたりなチャンネルになってしまうのかな…」
といった、惜しむ声が綴られている。

テレ朝「番組編成は現在検討中で、まだお知らせできない」

   衛星チャンネルは1989年10月に放送を開始したCS放送事業者の老舗。視聴契約世帯数は約570万世帯にのぼる。現在は朝日新聞の子会社で、テレビ朝日からも出資を受けているものの、テレビ朝日グループには属していない。
   2012年4月からはテレビグループ入りし、CS放送事業は「テレ朝チャンネル」との2チャンネル体制になる。
   テレビ朝日は「デジタル5ビジョン」(経営計画2011~13)の柱として、地上波テレビ放送を中心にBS放送やCS放送などの放送メディアやその他のメディアと、相乗的かつ有機的に連携してコンテンツを展開していく考えで、「朝日ニュースター」の事業譲受はそれを具現化したもの、と説明する。「最適な選択肢であると判断している」という。
   とはいえ、CS放送の2チャンネル化となれば、よほどそれぞれの特色を打ち出さないと視聴者は獲得できない。「新生・朝日ニュースター」は、いったいどんな番組編成になるのだろう。また、現行の番組で放送が継続されるものはあるのだろうか――。テレビ朝日に聞いてみたが、「番組編成、番組の内容については現在検討中であり、まだお知らせできる段階ではありません」と、コメントするだけだった。
   (追記)当初、見出しで「全員解雇」とありましたが、衛星チャンネルの指摘で、「全員退職」に変更しました。



昨日発売の「週刊現代」(12月10日号)に、「朝日ニュースターが消滅」というニュースが掲載されました。「どうなるの? CS朝日ニュースタースタッフ『全員解雇』」という記事です。朝日ニュースターに問い合わせると、「来年4月にテレビ朝日へ事業が譲渡される」ことが確認できました。しかし、「何が原因なのか」や、今後、番組内容がどうなるかについては「わからない」の一点張りでした。
 週刊現代の記事によると、視聴率が低迷し、親会社「朝日新聞」からの補助がなければやっていけない経営状態だったようです。しかし、まともなジャーナリズムがわずかに生き延びている「証し」と評価していただけに、少なからずショックを受けました。

人気番組の「愛川欽也 パックインジャーナル」や「ニュースの深層」などで、上杉隆氏らが、「脱原発」や「反TPP」を強く打ち出していました。それだけに、「体制側からは狙われるだろうな。危ないな。生き延びさせるには、視聴率を上げるのが一番だろうけど、多くの人が視聴してくれるだろうか」と、危惧していたのです。

朝日ニュースターには、おそらくさまざまな圧力がかかったのだと推測します。たしかに経営状況も苦しかったとは思いますが、親会社は朝日新聞です。なんとか持ちこたえられないものだったのか。親会社がテレビ朝日に変われば、経営は好転するのか。何の変哲もないありきたり番組なら、スポンサーがつくのか。

メディアを育てるのは、私たちだとつくづく感じます。権力を持つものは、メディアを「宣伝の武器」として利用します。政治的プロパガンダの道具です。普段は、お笑い番組や芸能番組などで、大衆の「愚民化」を徹底します。これは統治の基本的な手口です。ローマ時代に、皇帝はローマ市民に芝居や競技を提供しました。それが、大劇場「コロッセオ」や、映画「ベン・ハー」で知られる大競技場「チルコ・マッシモ」などです。

 政治的な鋭い批判がそらされるように、いろいろ苦心します。そして、現代の日本は見事にそれが結実しています。まともなジャーナリズムは息絶え絶えです。今回、朝日ニュースターの息の根を止める”力”が働きました。具体的に、たとえば「電通」などと名指しはしないことにしましょう。しかし、「電通」などがスポンサーをストップすれば、メディアの経営がたちまち干上がるのも事実です。

私たちは、政治的なセンスを磨きたいものです。私たち自身の現在のレベルは、とてもとてもの段階です。「お上任せ」「お任せ民主主義」が濃厚です。選挙で投票率が5割を切るのはザラ。時には30%台というのすら珍しくない。大多数の有権者が関心を持たない。そうした国がおかしくなり、沈没するのは自業自得です。そんな国を、次代の人々に残そうとしています。