2012年2月25日土曜日

議事録のない国、日本

  小学校の生徒会、いやもっと小さなホームルームのようなところでさえ、あるいはPTAの集まりみたいなものでさえ、日本では書記の役割をする者がいて、緊急時であれ、平常時であれ、「会議を開けば議事録はとるもの」と相場が決まっている。なのに、国の運命や国民の安全が左右されるような重要な決定をいくつも下さなければならなかった、政府の原発関連の災害対策会議で、誰も議事録をとっていなかったーーいくら緊急時とはいえ、彼らは小学生以下であったということである。

一昨日WSJのウエブ版に、3.11の原発災害が発生してから最初の10日間の、アメリカのNRCによるフクイチへの対応に関する電話会議についての3000ページに及ぶ議事録が公開された。

http://jp.wsj.com/Japan/node_396779

日本政府の対応がどれほどお粗末であり、東電が非力であったかは、この議事録からも、以下の同じくWSJに掲載されたNRCの日本調査団のトップであったCast氏の弁からも明らかである。

日本側からは原子炉に砂を入れてはどうかなどというような意見が出るほどで、水で冷却しなければならないことをNRCが日本側に教えなければならないようなお粗末な状況だったようである。

その間、のほほんとテレビ出演し、メルトダウンを否定し、直ちに健康被害はないと繰り返し、数々の対策会議を開きながら、その間議事録も作らなかった原子力工学の専門家や当時の官房長官をはじめとする閣僚、保安院をはじめとする関係省庁の官僚に、いまなお日本の国の原発政策を左右する程大きな発言権・決定権を持たせていることに疑問を感じるのは薔薇っこだけなのだろうか。

原発災害が発生してからの議事録がまったく何もなかったということについて、当時の政務3役をはじめとする関係閣僚や原発担当官僚、災害対策関連会議に出席していた主要メンバーは、当然全員引責辞任または、公文書管理法違反で処分されるすべきである。しかし、辞任どころか、それについて、ほぼ1年たった今も、一切お咎めなしで済まされている。実に不思議な国である。

政府や関連機関が議事録をきちんと保存し、国民にそれを公表することを義務付けているアメリカに比べて、日本はなんと民度が低い国かと思われても、われわれの社会がこういうことをずるずる黙って許している限り、まったく反論の余地もないのではないか。

青木理は、一貫して圧力に臆せず、日本の原発をとりまく政策やシステムの問題点を明らかにしてきた数少ない勇気あるジャーナリストである。

その彼は朝日ニュースターの青木理の眼で、「議事録を残さなかったのは、歴史に対する裏切り」である。「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的財産」「公文書は政治家・官僚のものではなく、国民のもの」と述べている。

東京新聞ウエブページによれば、藤村官房長官は、これをあたかも他人事のように「遺憾」という言葉一つで片付けてしまっているが、あまりにも軽々にすぎるのではないか。

こんな民主主義の根幹を揺るがすような悪行に手を染めた政党を私たちはいつまで与党として黙認し続けるのか、「一国の総理大臣がころころ変わるのは対外的に恥ずかしい。とにかく誰でもいいから、続けてやってもらいたい」という意見を持った人が多い。

しかし、そんな理由で国のビジョンも何も持たず、有権者への約束を反故にし、大企業と官僚の手先になってただ増税と原発再稼働にやっきになっている烏合の衆に、小学校のホームルーム以下のことをやっているような人たちに、私たちの将来を託してよいものだろうか。


一国の命運を左右する首相が「庶民的な泥臭いイメージで、墓穴を掘らない詭弁さえ弄することができれば、誰だれでもいい」わけはないはずである。

http://jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/9508/

FEBRUARY 22, 2012, 9:50 AM JST

U.S. Nuke Official: ‘This Is Too Big for Tepco’


Talk about tough assignments: Chuck Casto, a veteran U.S. nuclear regulator, arrived in Japan on March 16, 2011, to figure out what was going on at the Fukushima Daiichi nuclear plant and help Japan fix its problems.

Chuck Casto
Nuclear Regulatory Commission official Chuck Casto led the U.S. commission’s Japan response.
Mr. Casto plays a starring role in transcripts released Tuesday of phone meetings involving U.S. Nuclear Regulatory Commission headquarters and its people in the field. Barely sleeping, Mr. Casto, the head of the NRC team dispatched to Tokyo, briefs his bosses with often-harsh assessments of Tokyo Electric Power Co.’s initial response.
“This has really overwhelmed Tepco,” he said late Wednesday, March 16, U.S. time. “You know, this is too big for Tepco.”
Mr. Casto and other U.S. officials found fault with Tepco’s initial effort to pour water on the plant from helicopters, saying it was doomed to failure. On Thursday, March 17, U.S. time, Mr. Casto told headquarters, “We don’t want to be like them in terms of just throwing solutions at the problem.”
Mr. Casto was a central figure in the U.S. decision to call for a 50-mile evacuation zone with his repeated insistence that a pool with spent-fuel rods at reactor No. 4 was likely empty and spewing radiation.
In an interview Tuesday, Mr. Casto told JRT that the only evidence Japan could show for water in the pool was a handful of still frames from a video that the Japanese side refused to hand over. The frames seemed to show a glint of water in the pool, but Mr. Casto wasn’t persuaded.
“I said, ‘I just don’t see it,’ and I didn’t,” he recalled in the interview. He placed more credence in U.S. evidence that seemed to show the pool was destroyed.
In the transcripts, he says, “I’m ever more convinced that there’s nothing there. … And I just have to stake my career on it.”

Bloomberg News
Tepco officials receive a safety inspection from the Nuclear and Industrial Safety Agency at the Fukushima Daiichi nuclear plant on Feb. 20.
Ultimately, Japan concluded there was water in the pool the whole time. In the interview, Mr. Casto partly conceded the point, but said he still believes the problems at No. 4 may have been more severe than Tepco thinks.
“I don’t think that the complete story is out. Until you pull the fuel out, you don’t know what happened,” he said. He also questioned Tepco’s theory that the March 15 explosion at No. 4, which was the source of the concern about damage to the fuel pool, was caused by a leak of hydrogen from reactor No. 3.
“It needs to be proven to me still,” said Mr. Casto, who wondered whether damage to fuel rods in No. 4 could have set off the explosion.
Mr. Casto gave much higher marks to Tepco for its response after the first 10 days. Around March 22, the U.S. started getting access to high-level Japanese officials at daily meetings. According to Mr. Casto, his team helped Japan develop the road map that resulted in the plant being declared officially under control in December.
“They were knocked to their knees, but then they got up and started walking and running,” he said.
深刻さ認識 米緊迫 福島事故で規制委

2012年2月23日 朝刊
【ワシントン=共同】東京電力福島第一原発事故で、米原子力規制委員会(NRC)が公表した電話会議などの議事録で、原発から三百キロ以上離れた場所にいる米国民についても、自主避難を呼び掛けるかどうか議論していたことが二十二日、明らかになった。
 実際には、米国による避難勧告は半径八十キロ以内だったが、自国民の安全確保を最優先に、さまざまな検討を行った様子が浮き彫りになっている。
 昨年三月十三日の議事録によると、第一原発から百八十五キロ離れた海域で、米側が通常の約三十倍の放射線量を検出した。
 当時、日本は半径二十キロを避難指示、二十~三十キロを屋内退避としていたが、同十六日の電話会議の出席者は「もはや日本の避難勧告には同意せず、原発から五十マイル(八十キロ)以内の米国民に避難を勧告する」と伝えた。
この日の別の電話会議では、ある出席者が「第一原発から二百四十~三百二十キロで場合によっては一~二レム(一〇~二〇ミリシーベルト)の被ばくになる」との予測を示し「この水準の被ばくを避けるため、自主的な避難を勧告するのが理にかなうことではないか」と主張した。
 議事録には、別の出席者が否定的な考えを示したにもかかわらず、なおも「正しいのは、被ばくを合理的に達成可能な限り低く抑えることだ」と食い下がる様子が克明に記録されている。
同十七日の議事録には、米国民を避難させる飛行機の手配に関するやりとりも。ある出席者は、フライトの半分は大使館員用、もう半分は一般の米国民用と説明。さらに「避難は自己判断だが、できるだけチャーター機を準備しようとしている」と述べた。
藤村修官房長官は二十二日の記者会見で、米原子力規制委員会が、東京電力福島第一原発事故発生直後から炉心溶融の可能性を指摘していた内部文書を公表したことに関し「当時の対応は政府や国会が検証中で、コメントすることはない」と言及を避けた。
 原発事故当事国として、震災関連会議の議事録が作成されていなかったことに関しては「記者会見などで情報発信はしたが、文書で随時記録されていなかったことは事実。誠に遺憾だ」と述べた。