2012年12月21日金曜日

アメリカ、日本、韓国のニュー・リーダーの資質



  「昭和の金融緩和と公共事業の拡大でデフレ脱却」といきり立っている安倍自民党政権だが、そんなもので果たして経済再生ができるのだろうか。ここにきて竹中平蔵氏が臆面もなくメディアに浮上しだしたが、小泉構造改革が正しければ、どうして「失われた20年」と言われるような状況が生み出されたのか、900兆円もの借金を作り出したのは、民主党のせいとでも言わんばかりである。

金融緩和をする一方で、正規雇用者の首を容赦なく切って、派遣社員を増やすことで、「雇用が増えた、企業収益が上がった」と小躍りするような弱者切り捨て型の竹中・小泉式構造改革の再現は、ゼネコンと公共事業関連企業ばかりが巨万の富を得て、日本経済自体は益々借金まみれになり、やがて容赦なく来る重い増税によって、消費は落ち込み、庶民の暮らしは一層逼迫するだけなのではないのか。
 
 金子勝氏の見方も悲観的である。メディアは早速アベノミックスだのくだらない造語をつくりだして、お祭り騒ぎのように株価上昇を単純に喜んでいる人間も多いようだが、海外ヘッジファンドの食い物にならないように、願いたいものである。

自民党政権は原発推進の親玉を政調会長に据えたが、これによって、地域独占の電力会社が死守する原発の再稼働に一層拍車がかかり、老朽化した原発を「安全」に稼働させるための耐震補強工事や、核燃料サイクルなどに無駄な公共投資が膨大に行われる一方で、発送電分離や、電力の自由化、省エネ技術の開発や代替エネルギー開発に従事する新しい可能性を持ったエネ関連企業の発展を封じ込めるような政策が推進されるのではないかと懸念する者も多いのではないか。

「とりあえず原発は、特に問題があるところ以外は全部再稼働をさせて、そのうちに新しいエネルギーに転換させていけばいいし、その間できるだけ長くずるずると原発を維持しよう」などと悠長なことをやっている間に、原発維持のために電気料金や税金ばかりが一層釣り上げられ、庶民の生活は益々苦しくなり、消費が落ち込み、電力を大量消費しなければものが作れない大企業ばかりを優遇・擁護し、大きな発言権を与えているうちに、日本は世界に対して、売りにできるものが何もないじりピン状態に陥り、国際競争力を益々失った日本経済は一層失速するばかりではないのか。

ぐずぐずしている間に地震活動期に入った日本で、原発や放射能廃棄物を大量に無防備に抱え込んで、次に何か大きな天変地異が起これば、東京など一溜まりもなくなってしまうのではないのか。そうなれば美しい国どころか、経済再生だの、地球の二酸化炭素の排出量が云々などと言うような議論をするどころの騒ぎではなくなるのである。この国を守るためには、何を一番に考えるべきか、リーダーは今、何と一番戦うべきか、自民党は明らかに優先順位を間違えているのではないか。

日本のメディアが衆院選挙の動向や自民党復活の話題で湧いている間に、アメリカの東部では痛ましい銃乱射事件が起こり、韓国では大統領選挙が行われた。

銃乱射事件は、ノーベル平和賞までとったオバマ大統領も、結局は全米ライフル協会の政治的な影響力を恐れて、銃規制すらできないのかと思っていた矢先の出来事だった。それゆえ、彼が沈痛な面持ちでコネチカットの現場に慰問に訪れたというニュースを聞いた時も、これまでいくつも全米各地で痛ましい銃乱射事件があったにもかかわらず、アメリカ政府が一度として、前向きに銃規制に取り組んでこなかったせいであり、それはオバマ政権も同じではないかと思った。

しかし結局オバマ氏はこの事件を契機に、勇気を持って立ち上げる決意をしたようである。アメリカにおける銃規制は、日本における原発廃止と同様非常に抵抗勢力が巨大なだけに、誰も本気で規制に斬り込んでいった大統領はいない。

オバマ氏は日本に対しては、強硬路線をとっているが、ひたすらアメリカ国民の福祉や安全を守るために、粉骨砕身し猛然と勇気を振り絞って改革を進めていく実行力を持つ、国民にとっては頼もしいリーダーとしての資質を備えた政治家であると言える。周辺諸国のご機嫌ばかりを伺って、自国の利益を守らない、国民の安全や幸せを犠牲にしても、自分と自分が帰属する集団の既得権益を守りたいという、どこかの国の腐り果てた政治家どもとは大違いである。

 韓国でも、女性初の大統領が選出されたが、大変慎ましい。
メディアを呼んで断髪式をやってみせたり、手を変え品を変えブランド物で身を固め、口先三寸のメディア受けする議員や、若さと可愛さしか売りがない何とかガールズとは非常に対照的である。

個人的には、自らが経営する企業の収益の半分を低所得の子供たちに惜しみなく寄付するような、ソウル大学の医師である安哲秀氏の出馬に期待をかけていたため、彼が大統領選挙を降りてからというもの、韓国の選挙に対する興味関心がすっかり薄れてしまった。

しかし投票率70%以上という、羨ましいほど政治関心の高い韓国国民の支持を受けて、朴槿恵氏は対抗馬の文氏を破った。日本以上に女性の社会進出の速度が緩慢な韓国では、実に革新的な出来事といえる。

朴氏も非常に毛並みの良い2世議員であることに変わりはない。しかし、WSJによれば、大統領選挙当選後の第一声として、「国民を幸せにする大統領になりたい」と所信表明を行ったという。彼女もオバマ氏同様、あくまで、国民目線である。

 失われた20年のせいで、際限なく、もがき苦しむ庶民の幸せなど全く二の次で、「戦後レジュームからの脱却」や、「美しい国、強い国」の再生にばかり、意欲を燃やす、どこかの国のリーダーとは大きな違いである。

以下、金子勝氏のツィッターとWSJに掲載されたオバマの銃規制、朴女史の大統領選挙当選に関連する記事を掲載する。



【滅びの日本1】2012年の貿易赤字額は11月までの累計で6兆円を超えた。1979年以降で、過去最大の赤字額になる。「失われた20年」の犯人・自民復帰で古い産業構造のまま売るモノがなくなり、アジアで孤立していけば滅びが加速するだろう。 


2012年12月19日 - 20:06 · 詳細

【滅びの日本2】GEは原発を見切りエネルギー・コンピュータに投資。今度はビル・ゲイツが、シュレーディンガー社に2000万ドルの追加融資。製薬・バイオテクノロジーに必要な最先端の化学シミュレーション・ソフトウェアの開発事業が加速するだろう。 
2012年12月19日 - 20:07 · 詳細

【滅びの日本4】経団連が2013年春闘の交渉指針を示す「経営労働政策委員会(経労委)報告」の最終案で、「定期昇給(定昇)制度の見直しを聖域にすべきではない」とし、実質的な賃下げ交渉の可能性に言及しました。デフレはみんな日銀のせい? 
2012年12月19日 - 22:12 · 

ドイツ政府が脱原発は順調に進んでいるとの報告書を出す。省エネが進んだこともあり再エネの比率が20%から25%に上昇。2022年までに全原発廃止の方向は変わらない。深刻な原発事故を起こした当事国の日本では、誰も責任をとらず逆戻りの動き…。
2012年12月20日 - 5:24 ·
発送電分離改革について協力するふりをしていた電力会社がしだいに抵抗し始めています。原発推進の親玉・甘利明自民党政調会長が消極的な姿勢を示したので、追い風と思っているのでしょう。形だけの「改革」にして、電力の地域独占を守るだけに終わる?
2012年12月20日 - 17:06 · 

政治的圧力の中で、日銀は金融緩和を10兆円追加した。だが、バブル崩壊以降、格差の拡大とともにずっと賃金・ボーナスとも下落を続けています。どうしてインフレ期待が発生し、消費を増やせるのか?格差や貧困を作り出した「構造改革」論者は語らない。 
2012年12月20日 - 17:10 


http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324277004578190163975778832.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsSecond#articleTabs%3Denglisharticle

Obama Backs Push For New Gun Laws


WASHINGTON—President Barack Obama on Wednesday said all gun buyers should be subject to background checks and that he would push "without delay" ideas for remolding the nation's mental health and gun laws, setting up a potential fight with gun-rights advocates.


購入者の身辺調査徹底を−オバマ大統領、規制法案の作成指示


  【ワシントン】オバマ米大統領は19日、全ての銃購入者を身辺調査の対象にすべきだと述べるとともに、銃所有と国民のメンタルヘルス(精神衛生)に関する法律の改正を目指す取り組みを「遅滞なく」推進すると強調し、場合によっては銃所持の権利を擁護する人々との対決も辞さない姿勢を示唆した。
Getty Images
オバマ米大統領(右)と、銃規制対策チームの陣頭指揮を取るバイデン副大統領
 同大統領はホワイトハウスで、「今回は言葉が行動につながらなければならない」と述べ、コネティカット州の小学校での銃乱射事件以降の発言の中で最も具体的な提案を行った。同大統領は「この問題が複雑だということは、もはや何もしない言い訳にはならない」と付け加えた。
  同大統領の求めるように、全ての銃購入者を対象にした身辺調査が実現すれば、法律の抜け穴が閉じられることになる。これは銃規制支持派から長年要求されてきた一方、銃所持権を擁護する人々からは反対されてきた。現在、銃の見本市などでは、個人が身辺調査なしに他人に銃を売り渡せる。これについて銃規制支持派は、銃が間違った人の手に渡るのを可能にしていると指摘している。
 また、同大統領は、殺傷力の高い武器を禁止する法案を成立させ、軍用スタイルの銃が市中に出回らないようにしたいと述べた。
 同大統領は、バイデン副大統領が指揮を取り、議員、閣僚、それに関連団体から、どうしたら銃暴力を防げるかといった考えを募る計画であることを明らかにした。
  この発言の5日前には、コネティカット州ニュータウンの小学校で銃が乱射され、子ども20人を含む26人が犠牲になった。容疑者は銃乱射後に自殺した。事件後、銃とメンタルヘルスに関する法律の見直しを求める声が広範囲に広がっている。同大統領は早急な対応を求める声に理解を示した形だ。この日もニュータウンで、犠牲者の葬儀が行われた。
 同大統領はバイデン副大統領や閣僚に対し、遅くとも来年1月までに具体的なアイデアを示すよう求めると述べ、その後、この提案を「遅滞なく」押し進めると強調した。そして、法案が提出され次第、連邦議会が早急に採決を行うよう促した。
  また、同大統領は議会がアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)の局長を承認していないことを非難した。同ポストは6年間空席になっている。 ATFは違法な銃器が犯罪者の手に渡るのを防ぐ活動をしている。同大統領は新局長の承認が来年の議会の最重要課題の一つになるべきだと述べた。
  バイデン副大統領は、銃とメンタルヘルスに関する法律の改正案を成立させる上で不可欠な人物かもしれない。同副大統領は上院議員として数十年やってきた経歴を持ち、オバマ氏が議会から支持を集める際に頼りにしている人物だからだ。オバマ大統領は、今回の銃改正論議でバイデン氏を起用したのは、同氏が起草した1994年成立の犯罪法が暴力の減少につながったためでもあると語った。
 オバマ大統領は、米国が「あまりにしばしば銃と暴力を崇高化する」文化を是正する必要があると述べ、「われわれの取らなければならないいかなる行動も、それぞれの家庭、そして心の奥底から始まらなくてはならない」と付け加えた。
  ホワイトハウスは18日、銃所持権を強く支持するジョー・マンチン上院議員(民主、ウェストバージニア州)と電話会談を行ったことを明らかにした。同上院議員によると、同上院議員とオバマ大統領は「米国民かつ親として、われわれの全ての子どもがわれわれ全てに属しており、大切な子どもたちを守るために協力しなければならないとの見解で一致した」という。
  マンチン議員は「全米ライフル協会(NRA)に所属する人々や、憲法修正第2条を擁護する人々も、そのような取り組みに参加するだろう。なぜなら、ニュータウンの遺族のことを考えると、彼らも全ての米国民と同じように心を痛めているからだ」と述べた。
  オバマ大統領の過去4年間の任期中、銃乱射事件が何度か発生している。同大統領は以前、銃が間違った人の手に渡らないようにする措置を求めたが、結果として状況はほとんど変わっていない。同大統領自身が銃規制について本格的な行動を取っていないのではないか、との記者団からの質問に対し、コネティカット州の乱射事件があらゆる人に対する警鐘を鳴らすものだと答えた。
 NRAは今週、事件発生以降保ってきた数日間の沈黙を破り、銃乱射事件が今後起こらないようにするために「意味ある貢献をしたい」と述べた。NRAは米国で最強のロビー団体の1つで、21日に記者会見を開くことを発表した。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324277004578189690745047054.html?mod=WSJJP_hp_LEFTWhatsNewsCollection


朴氏が大接戦を制し当選、韓国初の女性大統領誕生

 【ソウル】韓国大統領選挙は19日に投開票が行われ、保守系の与党セヌリ党の朴槿恵氏(60)が最大野党・民主統合党の文在寅氏を破り、当選を決めた。韓国史上の女性大統領となる同氏は1960、70年代に大統領だった朴正煕氏の長女。一方の文氏も盧武鉉前大統領の側近だったため、選挙戦では将来に向けた両氏の施策より過去の大統領とのつながりに多くの関心が集まった。
 朴氏は選挙結果が判明した同日深夜、ソウル都心に集まった支持者を前に「経済再生を願う国民の勝利だ」と勝利宣言をするとともに、「約束を守り、国民に幸せをもたらす大統領」になると誓った。
 ただ、初の女性大統領になることへの感想を求められた際には、「国民を大事にする大統領」を目指すと答えただけだった。
REUTERS
当選した朴槿恵氏(19日、ソウル)
 選挙当日はこの冬一番の冷え込みとなったが、投票所で長い列を作る有権者の姿が各地で見られるなど、選挙への関心の高さが示された。暫定的な集計データによると、投票率は75.8%と、今回を含めた過去3回の大統領選では最高の数字となった。
 朴氏は07年の前回大統領選では、ハンナラ党(現セヌリ党)の予備選で李明博(イ・ミョンバク)現大統領に苦杯を喫した。大統領就任は2月下旬で、任期は法律で多選が禁じられているため5年となる。
 朴氏の勝利でひとまず胸をなで下ろしたのは、中小企業や消費者を犠牲にして富を集めているとして選挙中に批判を浴びた財閥などの大企業だろう。朴氏も財閥規制の強化を検討しているが、文氏の提案より穏健な内容になりそうだ。朴氏は出身党のセヌリ党が支配する議会とこの問題に取り組むことになる。
 さらに、北朝鮮への対応をめぐり同盟国である米国との間に摩擦が生じる可能性も低くなった。朴氏は北朝鮮問題について外交的な取り組みを復活させることには賛成だが、文氏が提案したような無制限の経済支援は考えていない。北朝鮮が推進する核兵器開発に焦点を当てたい米国は経済支援には真っ向から反対姿勢を示していた。
 北朝鮮の国営放送はここ数カ月、朴氏や保守路線のセヌリ党を厳しく非難するなど、文氏の大統領就任を期待する姿勢を明確に示してきた。ただ、韓国の有権者は北朝鮮の声明を無視し、先週の大陸間弾道ミサイル打ち上げにも動じなかったと、アナリストらは指摘した。
 投票所でインタビューを受けた多くの有権者は、誰に投票するかを決める要因として経済問題を挙げた。例えば、天安市の投票所を訪れたある大学生は、高額な学費と家計の債務が一番の心配事だと語った。また3人の子供をかかえる父親は、特に児童福祉など、福祉政策(の提案)に注目していると答えた。
 過去の大統領との関係についてお互いに非難を浴びせあった朴氏と文氏であるが、経済問題などでは考え方で共通する部分も多い。両氏とも所得格差の是正を重要視し、貧困層への支援なども含めた福祉関連政策を数多く提案した。朴氏は選挙戦後半、がんや脳卒中などの疾病の治療費を政府が負担すると公約した。
 また、人口の高齢化が進む中で成長率が減速している現状が数年後には日本のような経済停滞を、日本より低い経済水準で起こすのではとの懸念に対し、両候補とも処方箋を示さなかった。韓国経済の今年の成長率は2.4%と昨年の3.7%から減速することが予想されている。エコノミストらは、朴氏が景気刺激のために財政支出を増やす可能性があるとみている。