2012年2月29日水曜日

3つの原発調査委員会:単なる形式?それともガス抜き?

原発災害以来、ほぼ1年の時を経る間に、政府よりの大型メディアですら、フクイチで発生した大惨事は、津波による天災による不可抗力な事故などではなく、電力事業者や保安院・安全委員会などの明らかな怠慢によって引き起こされた人災であるという見方がかなり定着してきている。

にもかかわらず、日本政府の司法は、この大惨事を引き起こした者の責任を追及することもしない。中途半端な3つの事故調査委員会を走らせ、やれ国の責任が大きいだの、首相が対話が生まれるような場を提供しなかっただの、電力会社に非があっただの、すでに我々素人が、それぞれのブログで3月の震災当時から、述べてきた陳腐な繰り言を、再生しているに過ぎない感がある。

これだけの大きな災害を発生させながら、いまだに現場の収拾を災害を引き起こした当事者である私企業に任せていることを、海外の先進国の人々は大変奇異に感じているに違いない。

考えてもみればいい。ある食品会社が製造工程で食材の管理を怠り、毒性の強い病原菌が繁殖した食品を大量生産した結果、多くの消費者がその犠牲になって食中毒を起こしたとする。

責任はむろん会社にある。弁解の余地もない。普通ならば、保健所や警察が工場や会社にやってきて、現場を押さえ、会社とは関係のないプロが、工場内の消毒をするとともに、被害状況を明らかにし、サンプルを採取したりして、原因究明のための徹底的な調査を行う。その上で、第三者の手で、病原菌繁殖の恐れがなくなったことを検証し、原因が究明されるまで、会社は営業停止を食らうことになる。

ところが、フクイチに関する限り、なぜか様相がまったく違った。汚染された原発管理を当事者である東電に100%任せっぱなしにして、「汚染は基準値以下だから問題はない」というような気休めにもならないような信憑性の薄い報告に、政府や大のメディアが耳を傾け、100%依存しているという、何とも情けなく、不可思議な状況が、今なお続いているのである。

多額の賠償を請求されることを恐れる企業が、被害を最小限に見せかけようと、都合の悪いことを隠ぺいしたり、被害状況を正直に報告しなかったりするに違いないことは、5.6歳の子供にでも、理解できることだろう。

民間の事故調査委員会の調査には、東電は全く応じなかったというし、政府関係者への聞き取りをしたというが、本来は関係者が参加した様々な会議の議事録をもとにして、聞き取りをやるべきであるにもかかわらず、その大元になる議事録さえないのだから、何をか言わんやである。

それぞれの会議で、誰が議事録をとるべき役割にあったのか、それを管理すべき人物・議事録の確認をすべき役職にいたのは誰だったのか、本来ならば、その辺の具体的な追及から始めるべきである。

国会の事故調は、当事者であるはずの細野原発担当相が、事故調査委員会の長に接触して、ひんしゅくを買うという体たらくである。

そして、政府の事故調は、さすが、マスコミ受けする失敗学の権威が委員長だけのことはある。最終報告はまだまだ先のことなので、どうなるかはわからないが、すでに報じられている情報通りとすれば、大先生を中心としたメンバーは、安全文化論でこの災害の原因をうまくまとめて、手打ちにする算段らしい。

中途半端な事故調査委員会といったが、事故の責任を徹底追及し、厳しい処罰を加え、徹底的に猛省を促さないない限り、そこをうやむやにして、まぁまぁなどと甘いことを言っている限り、同じような事故は必ずまたどこかで繰り返されるに違いないからである。

電力会社も、役人も、原子力ムラの学者たちも、世界最高水準といわれていた日本の専門家集団がどれだけ無為無策であるかが露呈しているにもかかわらず、何が「原発の安全性を確保をして、再稼働」なのか、

3.11のおかげで、一つはっきりしたことがある。

それは、原発の安全性を確保できるような優れた専門家も、大惨事が起こったときに社会に迷惑をかけたと、会社を整理してでも、私財をなげうってでもきちんと賠償をしてくれる会社もなければ、いざとなれば責任をとって国民をしっかり守ってくれる役人も政治家も、今の日本には一人たりとも存在しないということである。

3つの調査委員会、何もやらないわけにもいかないから、一応やったという既成事実を作るために立ち上げられ、憤懣やるかたない国民に若干のガス抜きをさせるためのものに過ぎないのではないだろうか。

本来ならば、原発災害の調査委員会は、原発を規制する立場の専門家集団を核にして、作られるべきであろう。それが3つのどの委員会も共通してなされていないことからも、委員会の中途半端な度合いが知れるというものである。


http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012022690021454.html

原発事故調、海外専門家から批判続出 
2012年2月26日 02時14分
福島第1原発の事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が海外の原子力専門家から意見を聞く会合は25日、2日間の日程を終えた。専門家からは、日本の原発事故への備えの甘さや、政府による「冷温停止状態」宣言の拙速さを批判する声が相次いだ。
 米原子力規制委員会(NRC)元委員長のリチャード・メザーブ氏は、事故現場で線量計が作業員に行き渡るまで3週間もかかったことを問題視し、「信じられない対応だ。もっと早くそろえられたはずだ」と批判した。
 フランス原子力安全局長のアンドレ・ラコスト氏は、1999年の茨城県東海村での臨界事故や、2004年に関西電力美浜原発で起きた配管破裂事故を例に挙げ「日本では5年に一度、事故が起きていた。大事故があるなら日本だと思っていた」と、教訓を十分に生かしてこなかったことが大事故につながったとの認識を示した。
 韓国原子力協会長・張舜興(チャンスンフン)氏は、政府の「冷温停止状態」宣言に疑問を呈し「原子炉内の状態を特定せずに、どうして安全と言えるのか」と、拙速さを批判した。
 事故調も、安全意識の甘さがなぜまかり通ってきたのか、今夏の最終報告で解き明かす考え。委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は「安全文化という考え方に真正面から向き合わなければならないと感じた」と述べた。
(中日新聞)

福島原発民間事故調査委:国の責任感欠如と東電の怠慢が主因


2月28日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所の民間事故調査委員会、福島原発事故独立検証委員会(委員長・北沢宏一科学技術振興機構前理事長)は28日、独自に事故を検証した報告書を公表した。その中で事故を拡大させた主因として「国の責任感の欠如東電の過酷事故に対する備えを怠った組織的怠慢」を挙げた。事故当時の菅直人首相、枝野幸男官房長官ら政府首脳にもヒアリングを行い、官邸や東電の混乱ぶりがあらためて浮き彫りにされた。
北沢委員長は記者会見で「放射能源が過密に配置されていた」ことが事故を深刻なものにしたとし、特に使用済み核燃料プールの配置の問題点を指摘した。
報告書の中で、事故発生直後、東電の清水正孝社長から現場の作業員600人を福島第一原発から第二原発に撤退させたいと政府に再三申し入れがあったことが明らかにされた。これに対し、菅首相が3月15日未明に東電本店に乗り込み、「命を賭けろ。撤退はあり得ない。そんなことをすれば東電は間違いなくつぶれる」と演説したことも盛り込まれた。
北沢委員長は「結果的に吉田所長ら福島フィフティー(50人)が残留し注水などの作業を継続し、事故は収拾に向かった。それが首相の最大の功績だったかもしれない」としながらも、首相官邸の現場への過剰な介入は「評価できない」と述べた。その背景には経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会から情報が伝わらず、「疑心暗鬼」に陥ったとの見方を示した。
報告書は、外国からの助言に聞く耳を持たない原子力安全規制のガラパゴス化、大地震や大津波が過去にあったことを知りながら適切な備えの指示を怠ったことなど、国の責任を「極めて重い」と断じた。
同委員会は約300人にヒアリング調査を実施し、東電にも経営者のインタビューを要請したが、拒否された。報告書は拘束力を持たないが、野田佳彦首相に提出する。
記事についての記者への問い合わせ先: 淡路毅 tawaji@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Yoshito Okuboyokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/02/28 16:10 JST


民間事故調、政府の危機管理を批判


日本が戦後最大の危機に瀕したあの日、政府の中枢で何があったのでしょうか。東京電力、福島第一原発の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が28日、400ページに及ぶ報告書を公表し、原発に関する従来の危機管理のあり方を厳しく批判しました。

 「(菅前首相は)国家のトップとしての戦略や覚悟が希薄だったのでは」(民間原発事故調の会見)
 「安全神話による自縄自縛状態が発生していたということでありました」(民間原発事故調の会見)

 福島第一原発で起こった事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会は、28日午後、400ページに及ぶ報告書を公表しました。

 去年3月の事故直後に政府中枢で何があったのでしょうか。日米の政府関係者らおよそ300人を対象に実施した聞き取り結果から、その実態が浮き彫りとなりました。

 「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った」(枝野経産大臣〔当時の官房長官〕)

 聞き取りにこう話したのは、当時の官房長官、枝野経産大臣です。報告書によりますと、事故の3日後の去年3月14日には福島第一原発の吉田昌郎所長(当時)から「炉心溶融が進み、燃料が溶け落ちる可能性が高まった」との情報が当時の細野総理補佐官に伝えられ、官邸や専門家の間に強い危機感が広がったといいます。

 一方でたびたび問題が指摘されてきた放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」については、菅前総理大臣ら事故対応の中心となっていた政治家が「事故から数日経ち、マスコミから指摘されるまでその存在すら知らなかった」と証言していました。

 さらに民間事故調は、報告書で「SPEEDI」は原発を立地する際に住民の安心を買うための「見せ玉」にすぎなかったと厳しく批判しました。莫大な予算をかけて有事に備えたはずのシステムが、まったく機能していなかったことが改めて浮き彫りとなった形です。

 そして時の総理大臣、菅前総理について報告書はこう指摘しています。
 「菅総理が個別の事故管理にのめり込み、全体の危機管理に十分注意を向けることがおろそかになったことは否めない。『原発に代替バッテリーが必要』と判明した際に、総理が自分の携帯を取り出し、大きさや重さを担当者に質問している状況を見て、同席者の一人は『そんな細かいことを聞くのは 国としてどうなのかとぞっとした』と述べている」(報告書)

 東電や保安院を信じられなくなった官邸側が過剰に介入する結果となり、民間事故調は「統合対策本部ができるまでの官邸の対応は、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていた」としました。

 福島第一原発の事故調査についてはさまざまな見解がありますが、JNNが去年11月に行った取材に対して菅前総理はこう話していました。

 「事業者である東電自身もですね、当事者としてそういう想定をしなかった、準備をしなかったことに大きな責任がある、こう思っています。残念ながら。今回の事故に関しては原子力安全・保安院からですね『こうやるべきじゃないか、ああやるべきじゃないか』と積極的な形で具申されたことがほとんどありませんでした。私の執務室が相談をし判断をする場所にもなった。これは私の立場からすれば、他の機能がきちっと機能していればそこまで直接的にやる必要はなかったでしょうけれども」(菅直人前首相〔去年11月〕)

 なお、今回の調査では事業者である東京電力の幹部が聞き取り調査を拒否していることから、報告書は「さらなる検証は政府、国会の事故調査委員会にバトンタッチせざるを得ない」と結論づけています。(28日17:08)



細野原発担当相、事故調幹部に接触 中立性阻害 国会が厳重注意へ

2012.2.24 01:37 (1/2ページ)
細野豪志原発事故担当相が20日、東日本大震災の東京電力福島第1原発事故を受けた国会原発事故調査委員会の黒川清委員長に「原子力規制庁設置法案の説明」と称して接触していたことが23日、分かった。衆参両院議院運営合同協議会は同日、この事態を問題視し、24日にも藤村修官房長官を呼んで経過説明を求めるともに、厳重注意することを決めた。
事故調の設置法である「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」では中立・公正に原発事故原因を究明するため、利害関係者が同委員会に「接触」することに条件をつけており、接触があった場合は委員会側が公表することを義務付けている。
 
細野氏は原発事故発生後、事故収拾に首相補佐官としてあたったことから、
事故調の調査対象者の一人となっており、同氏が中立性を重んじる同委員会に接触を試みたこと自体が問題視されている。利害関係者の接触に条件を付した同法6条に抵触するとの指摘もある。
細野氏が黒川氏らと接触していた事実は、自民党の塩崎恭久元官房長官が21日に把握し、国会事故調に対して「中立性が保持できない」と強い懸念を表明した。それを受けて事故調は急遽(きゅうきょ)ホームページに21日付で「細野豪志環境大臣・原発担当相から説明を受けました。黒川委員長は新組織で原発事故再発防止が可能なのか疑問点を表明」との表題で掲載した。
塩崎氏は国会事故調を設置する法案に携わったことから、21日付の自身のブログで
「事故調査委員会の委員は民間人だ。
政府や原子力業界から総出でプレッシャーをかけられては、
いかに法律上独立していても中立性は保てない」と指摘。
「現役閣僚が事もあろうに独立性がうたわれている国会事故
調に押しかけるとはどういうことなのか」と細野氏の対応を
批判している。
塩崎氏は23日、産経新聞社の取材に「全会一致で成立した事故調法案の精神を細野氏が理解していないのは信じられない」とコメントした。

「調査中なのに理解できない」 国会原発事故調が原子力規制庁設置法案を異例の批判

2012.2.2 17:06 国会
黒川清氏
黒川清氏
国会の東京電力福島第1原発事故調査委員会の黒川清委員長は2日、政府が「原子力規制庁」の4月設置などを柱とする原子力規制関連法の改正案を閣議決定したことに対し、「行政組織のあり方の見直しを含め提言を行う国会事故調が調査の最中にもかかわらず、組織のあり方を定めた法案を決定したことは理解できない」とする異例の声明を発表した。
声明は同日、野田佳彦首相や衆参両院議長をはじめ全国会議員に配布された。政府決定の見直しと「国会における責任ある対応」も求めている。
昨年10月に施行された国会事故調の設置を定めた法律の第10条では、同事故調が事故の原因究明とともに行政組織のあり方の見直しを含めた提言を行うよう定めている。

2012年2月28日火曜日

コピペ:海外専門家からの日本の原発への非難

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012022690021454.html


原発事故調、海外専門家から批判続出 

2012年2月26日 02時14分
福島第1原発の事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が海外の原子力専門家から意見を聞く会合は25日、2日間の日程を終えた。専門家からは、日本の原発事故への備えの甘さや、政府による「冷温停止状態」宣言の拙速さを批判する声が相次いだ。
 米原子力規制委員会(NRC)元委員長のリチャード・メザーブ氏は、事故現場で線量計が作業員に行き渡るまで3週間もかかったことを問題視し、「信じられない対応だ。もっと早くそろえられたはずだ」と批判した。
 フランス原子力安全局長のアンドレ・ラコスト氏は、1999年の茨城県東海村での臨界事故や、2004年に関西電力美浜原発で起きた配管破裂事故を例に挙げ「日本では5年に一度、事故が起きていた。大事故があるなら日本だと思っていた」と、教訓を十分に生かしてこなかったことが大事故につながったとの認識を示した。
 韓国原子力協会長・張舜興(チャンスンフン)氏は、政府の「冷温停止状態」宣言に疑問を呈し「原子炉内の状態を特定せずに、どうして安全と言えるのか」と、拙速さを批判した。
 事故調も、安全意識の甘さがなぜまかり通ってきたのか、今夏の最終報告で解き明かす考え。委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は「安全文化という考え方に真正面から向き合わなければならないと感じた」と述べた。
(中日新聞)

福島原発民間事故調査委:国の責任感欠如と東電の怠慢が主因


 2月28日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所の民間事故調査委員会、福島原発事故独立検証委員会(委員長・北沢宏一科学技術振興機構前理事長)は28日、独自に事故を検証した報告書を公表した。その中で事故を拡大させた主因として「国の責任感の欠如東電の過酷事故に対する備えを怠った組織的怠慢」を挙げた。事故当時の菅直人首相、枝野幸男官房長官ら政府首脳にもヒアリングを行い、官邸や東電の混乱ぶりがあらためて浮き彫りにされた。
  北沢委員長は記者会見で「放射能源が過密に配置されていた」ことが事故を深刻なものにしたとし、特に使用済み核燃料プールの配置の問題点を指摘した。
  報告書の中で、事故発生直後、東電の清水正孝社長から現場の作業員600人を福島第一原発から第二原発に撤退させたいと政府に再三申し入れがあったことが明らかにされた。これに対し、菅首相が3月15日未明に東電本店に乗り込み、「命を賭けろ。撤退はあり得ない。そんなことをすれば東電は間違いなくつぶれる」と演説したことも盛り込まれた。
  北沢委員長は「結果的に吉田所長ら福島フィフティー(50人)が残留し注水などの作業を継続し、事故は収拾に向かった。それが首相の最大の功績だったかもしれない」としながらも、首相官邸の現場への過剰な介入は「評価できない」と述べた。その背景には経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会から情報が伝わらず、「疑心暗鬼」に陥ったとの見方を示した。
  報告書は、外国からの助言に聞く耳を持たない原子力安全規制のガラパゴス化、大地震や大津波が過去にあったことを知りながら適切な備えの指示を怠ったことなど、国の責任を「極めて重い」と断じた。
  同委員会は約300人にヒアリング調査を実施し、東電にも経営者のインタビューを要請したが、拒否された。報告書は拘束力を持たないが、野田佳彦首相に提出する。
記事についての記者への問い合わせ先: 淡路毅 tawaji@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Yoshito Okuboyokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/02/28 16:10 JST



2012年2月27日月曜日

日本の政治家は電力会社や規制機関より知識があるのかもしれないが。。。:NRCメザーブ氏

元NRCの委員長、メザーブ氏によれば、原子力規制機関は電力会社を管理するだけではなく、事故後の対応の責任を負うべきといい、総理のベント指示について、「日本の政治家は、電力会社や原発に関与する公的機関よりも知識があるのかもしれないが」と皮肉った。

なにかというと菅元総理をスケープゴートにしようという動きがあるようだが、稼働中の浜岡原発を停止させたこと、災害現場を放棄して、社員を撤退させるなどというような提案を打診してきた東電本社に乗り込んで、檄を飛ばしたことは、彼が首相としてやった唯一の貢献といっても過言ではない。財務省や経済界へのご機嫌取りをすること以外に脳のないどじょう内閣の元で、この大きな原発災害が起こっていたら、今頃日本は、東京はどうなっていただろうかと思うだけでも背筋が凍る。

総理が動かざるを得なかったのは、原子力ムラが無能でまったく機能しないことをいち早く認識したからであろう。安全神話に酔いしれるばかりの電力会社の原発担当も、保安院も、それを支えるはずの御用学者もみんなまごつくばかりで、全電源喪失という事態に対して、適切な対応ができるだけの英知を備えた専門家が原子力ムラの中に誰一人としていなかったことは、NRCの議事録を見ればよくわかる。

その菅総理とともに原発の災害対応に当たっていたのは今の経産大臣である枝野氏と、3月15日以降、東電本店に常駐して菅総理の手足になって動いていた今の原発担当相の細野氏であるが、両名は共同責任を問われないばかりか、この分野に関して全くのど素人であるにもかかわらず、いまだ原発再稼働や、国の原子力政策決定に大きな権限を持つ立場に君臨していることに、メディアが何も疑義をさしはさまないのは非常に大きな疑問である。

ストレステストは津波・地震対策用であり、このテスト自体の、あるいはそれを実施・チェックする仕組みの問題性、欺瞞については、京大の小出助教や、元原発設計者の後藤氏らが繰り返し指摘しているところであるが、細野氏に至っては、立地自治体や周辺自治体に対して、丁寧に「原発の安全性と必要性」を説明しさえすれば、大手を振って再稼働に舵を切ってもよいと考えているようである。

しかし、原発の安全性とは一体何なのか。隣国がミサイルを一機突入させたときに、宇宙ゴミと化した人工衛星の大きなかけらが降ってきたときに、あるいは航空機が事故で墜落した場合に、あるいは想定外の大きな津波や地震が原発を震源地として発生した場合に、日本の原子炉はどこまで安全といえるのか、

アメリカはテロや航空機突入に対する対応の義務化を10年前に実施しているというが、日本はそれについてもこれまで資料を国民に公開しなかったばかりか、まったく何ら対応してこなかったという。
アメリカやフランスと異なり、原発の立地にとって致命的な地震・津波大国であるという点を全く考慮せず、いったいどんな根拠をもってして、安全といえるのか。

再稼働についての丁寧な説明とは、立地・周辺自治体にどれだけ新たな税金をばらまき、生活保障をするかというネゴシエーションを意味するのだろうが、そういう非生産的な税金の無駄遣いは、いい加減に辞めてもらいたい。それだけの費用があれば、電力の自由化に注いでほしい。一時的な国有化をしてほとぼりが冷めたころにゾンビ企業を復活させるようなムダは廃して、さっさと東電に破たん処理をやらせ、その過程で発送電の分離を実施し、再生エネルギーの開発事業に全力をあげてもらいたいものである。そうすれば、そこに新たな雇用の場も創出されるはずである。

3.11ではっきりわかったことは、結局原発災害が発生したとき、放射能汚染の不安にも脅かされたうえ、最終的に高いつけ回しの被害を被るのは、電力会社でも、株主でも、取引銀行でも、大企業でもなく、立地・周辺自治体以外の地域で生活する勤労者なのである。ゆえに、立地自治体の意向などよりも、本来は、それ以外の地域に住み、所得に対する納税率が高い中流の納税者層の意向を何よりも優先させるべきではないのか。


http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/environment/544986/

原発再稼働容認3町村のみ 原発相「地元の理解が重要」

2012/02/08 00:32

 産経新聞が原発立地自治体に行ったアンケートで、ストレステスト(耐性検査)により安全性が確認された原発の再稼働を「容認する」としたのが3町村にとどまったことについて、細野豪志原発事故担当相は7日の閣議後の記者会見で、「原発のあり方そのものを含めて、地元の自治体の理解が非常に重要。できる限り丁寧な対応が求められる」と述べ、政府として地元に対する説明責任を果たしていく必要性があるとの認識を示した。
 枝野幸男経済産業相は同日の会見で、「地元の説得にあたっては安全性が確認されることが前提で、まだ安全性が確認されているものはない。(説得は)その次の段階」と述べた。
 ストレステストは、想定を上回る地震や津波が起きた場合の原発の安全性を確かめるもので、11原発16基の報告書が経済産業省原子力安全・保安院に提出されている。
 本紙アンケートに対して再稼働を容認すると答えたのは、東京電力柏崎刈羽原発がある新潟県刈羽村、関西電力高浜原発がある福井県高浜町、九州電力玄海原発がある佐賀県玄海町の3町村にとどまった。
 細野氏は「保安院でストレステストについて確認したうえで、地元の皆さんに説明していく」としたうえで、「できるだけ丁寧に多くのみなさんにご理解いただくことが重要」と述べ、立地自治体だけでなく周辺自治体の理解も求めていく考えを示した。

2012年2月25日土曜日

議事録のない国、日本

  小学校の生徒会、いやもっと小さなホームルームのようなところでさえ、あるいはPTAの集まりみたいなものでさえ、日本では書記の役割をする者がいて、緊急時であれ、平常時であれ、「会議を開けば議事録はとるもの」と相場が決まっている。なのに、国の運命や国民の安全が左右されるような重要な決定をいくつも下さなければならなかった、政府の原発関連の災害対策会議で、誰も議事録をとっていなかったーーいくら緊急時とはいえ、彼らは小学生以下であったということである。

一昨日WSJのウエブ版に、3.11の原発災害が発生してから最初の10日間の、アメリカのNRCによるフクイチへの対応に関する電話会議についての3000ページに及ぶ議事録が公開された。

http://jp.wsj.com/Japan/node_396779

日本政府の対応がどれほどお粗末であり、東電が非力であったかは、この議事録からも、以下の同じくWSJに掲載されたNRCの日本調査団のトップであったCast氏の弁からも明らかである。

日本側からは原子炉に砂を入れてはどうかなどというような意見が出るほどで、水で冷却しなければならないことをNRCが日本側に教えなければならないようなお粗末な状況だったようである。

その間、のほほんとテレビ出演し、メルトダウンを否定し、直ちに健康被害はないと繰り返し、数々の対策会議を開きながら、その間議事録も作らなかった原子力工学の専門家や当時の官房長官をはじめとする閣僚、保安院をはじめとする関係省庁の官僚に、いまなお日本の国の原発政策を左右する程大きな発言権・決定権を持たせていることに疑問を感じるのは薔薇っこだけなのだろうか。

原発災害が発生してからの議事録がまったく何もなかったということについて、当時の政務3役をはじめとする関係閣僚や原発担当官僚、災害対策関連会議に出席していた主要メンバーは、当然全員引責辞任または、公文書管理法違反で処分されるすべきである。しかし、辞任どころか、それについて、ほぼ1年たった今も、一切お咎めなしで済まされている。実に不思議な国である。

政府や関連機関が議事録をきちんと保存し、国民にそれを公表することを義務付けているアメリカに比べて、日本はなんと民度が低い国かと思われても、われわれの社会がこういうことをずるずる黙って許している限り、まったく反論の余地もないのではないか。

青木理は、一貫して圧力に臆せず、日本の原発をとりまく政策やシステムの問題点を明らかにしてきた数少ない勇気あるジャーナリストである。

その彼は朝日ニュースターの青木理の眼で、「議事録を残さなかったのは、歴史に対する裏切り」である。「公文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的財産」「公文書は政治家・官僚のものではなく、国民のもの」と述べている。

東京新聞ウエブページによれば、藤村官房長官は、これをあたかも他人事のように「遺憾」という言葉一つで片付けてしまっているが、あまりにも軽々にすぎるのではないか。

こんな民主主義の根幹を揺るがすような悪行に手を染めた政党を私たちはいつまで与党として黙認し続けるのか、「一国の総理大臣がころころ変わるのは対外的に恥ずかしい。とにかく誰でもいいから、続けてやってもらいたい」という意見を持った人が多い。

しかし、そんな理由で国のビジョンも何も持たず、有権者への約束を反故にし、大企業と官僚の手先になってただ増税と原発再稼働にやっきになっている烏合の衆に、小学校のホームルーム以下のことをやっているような人たちに、私たちの将来を託してよいものだろうか。


一国の命運を左右する首相が「庶民的な泥臭いイメージで、墓穴を掘らない詭弁さえ弄することができれば、誰だれでもいい」わけはないはずである。

http://jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/9508/

FEBRUARY 22, 2012, 9:50 AM JST

U.S. Nuke Official: ‘This Is Too Big for Tepco’


Talk about tough assignments: Chuck Casto, a veteran U.S. nuclear regulator, arrived in Japan on March 16, 2011, to figure out what was going on at the Fukushima Daiichi nuclear plant and help Japan fix its problems.

Chuck Casto
Nuclear Regulatory Commission official Chuck Casto led the U.S. commission’s Japan response.
Mr. Casto plays a starring role in transcripts released Tuesday of phone meetings involving U.S. Nuclear Regulatory Commission headquarters and its people in the field. Barely sleeping, Mr. Casto, the head of the NRC team dispatched to Tokyo, briefs his bosses with often-harsh assessments of Tokyo Electric Power Co.’s initial response.
“This has really overwhelmed Tepco,” he said late Wednesday, March 16, U.S. time. “You know, this is too big for Tepco.”
Mr. Casto and other U.S. officials found fault with Tepco’s initial effort to pour water on the plant from helicopters, saying it was doomed to failure. On Thursday, March 17, U.S. time, Mr. Casto told headquarters, “We don’t want to be like them in terms of just throwing solutions at the problem.”
Mr. Casto was a central figure in the U.S. decision to call for a 50-mile evacuation zone with his repeated insistence that a pool with spent-fuel rods at reactor No. 4 was likely empty and spewing radiation.
In an interview Tuesday, Mr. Casto told JRT that the only evidence Japan could show for water in the pool was a handful of still frames from a video that the Japanese side refused to hand over. The frames seemed to show a glint of water in the pool, but Mr. Casto wasn’t persuaded.
“I said, ‘I just don’t see it,’ and I didn’t,” he recalled in the interview. He placed more credence in U.S. evidence that seemed to show the pool was destroyed.
In the transcripts, he says, “I’m ever more convinced that there’s nothing there. … And I just have to stake my career on it.”

Bloomberg News
Tepco officials receive a safety inspection from the Nuclear and Industrial Safety Agency at the Fukushima Daiichi nuclear plant on Feb. 20.
Ultimately, Japan concluded there was water in the pool the whole time. In the interview, Mr. Casto partly conceded the point, but said he still believes the problems at No. 4 may have been more severe than Tepco thinks.
“I don’t think that the complete story is out. Until you pull the fuel out, you don’t know what happened,” he said. He also questioned Tepco’s theory that the March 15 explosion at No. 4, which was the source of the concern about damage to the fuel pool, was caused by a leak of hydrogen from reactor No. 3.
“It needs to be proven to me still,” said Mr. Casto, who wondered whether damage to fuel rods in No. 4 could have set off the explosion.
Mr. Casto gave much higher marks to Tepco for its response after the first 10 days. Around March 22, the U.S. started getting access to high-level Japanese officials at daily meetings. According to Mr. Casto, his team helped Japan develop the road map that resulted in the plant being declared officially under control in December.
“They were knocked to their knees, but then they got up and started walking and running,” he said.
深刻さ認識 米緊迫 福島事故で規制委

2012年2月23日 朝刊
【ワシントン=共同】東京電力福島第一原発事故で、米原子力規制委員会(NRC)が公表した電話会議などの議事録で、原発から三百キロ以上離れた場所にいる米国民についても、自主避難を呼び掛けるかどうか議論していたことが二十二日、明らかになった。
 実際には、米国による避難勧告は半径八十キロ以内だったが、自国民の安全確保を最優先に、さまざまな検討を行った様子が浮き彫りになっている。
 昨年三月十三日の議事録によると、第一原発から百八十五キロ離れた海域で、米側が通常の約三十倍の放射線量を検出した。
 当時、日本は半径二十キロを避難指示、二十~三十キロを屋内退避としていたが、同十六日の電話会議の出席者は「もはや日本の避難勧告には同意せず、原発から五十マイル(八十キロ)以内の米国民に避難を勧告する」と伝えた。
この日の別の電話会議では、ある出席者が「第一原発から二百四十~三百二十キロで場合によっては一~二レム(一〇~二〇ミリシーベルト)の被ばくになる」との予測を示し「この水準の被ばくを避けるため、自主的な避難を勧告するのが理にかなうことではないか」と主張した。
 議事録には、別の出席者が否定的な考えを示したにもかかわらず、なおも「正しいのは、被ばくを合理的に達成可能な限り低く抑えることだ」と食い下がる様子が克明に記録されている。
同十七日の議事録には、米国民を避難させる飛行機の手配に関するやりとりも。ある出席者は、フライトの半分は大使館員用、もう半分は一般の米国民用と説明。さらに「避難は自己判断だが、できるだけチャーター機を準備しようとしている」と述べた。
藤村修官房長官は二十二日の記者会見で、米原子力規制委員会が、東京電力福島第一原発事故発生直後から炉心溶融の可能性を指摘していた内部文書を公表したことに関し「当時の対応は政府や国会が検証中で、コメントすることはない」と言及を避けた。
 原発事故当事国として、震災関連会議の議事録が作成されていなかったことに関しては「記者会見などで情報発信はしたが、文書で随時記録されていなかったことは事実。誠に遺憾だ」と述べた。

2012年2月23日木曜日

脱原発のドイツが原発国フランスに電力輸出:原発擁護論の謎

原発の安全神話が崩壊した去年の3月以降、原発推進の御用学者やそれにつながる大型メディアから、私たちはことあるごとに、原発は安定した電力供給が可能な唯一のもっとも安価なエネルギー源であり、原発という選択肢を選ばなければ、たちまち電力不足に陥り、日本の経済は空洞化すると吹き込まれてきた。

しかし本当にそうなのだろうか、あまりにも疑問点が多い。

まず、原発災害の直後にアメリカ政府が、原発に頼らなくても、日本のエネルギー供給には問題がないと発表したことについては、このブログにも関連記事を転載した。

これは、国家間の安全保障にも関わる重要な事項であり、米政府の関係機関が、日本の夏の猛暑や極寒の冬を想定もせずに、あてずっぽうにはじき出した試算ではないはずである。日本政府はこの報道について何も反応をせず、やっと今年になって枝野経産相が遅まきながら、今年の夏の電力は全原発が停止しても、問題はないと公式の場で認めた。そして、この発言についても、いまだ誤りであったとの撤回はなされていない。

この2つの情報だけをとってみても原発などなくても、(現存の火力、揚力、水力発電所、あるいは企業の自己発電だけで)、十分にやりくりができるということを示していると言えるのではないのか。

もちろん、九電の火力発電所のように発電所が事故など起こせば、たちまち電力不足をきたす。しかし、大きな火力発電所や水力発電所が大事故を起こしたところで、その収束の容易さは原発災害とは、時間的にも、経済的にも、まったく比較にならない、取るに足りないものであることを私たちはフクイチの原発災害で思い知った。

風力発電のプロペラの軸が折れようが、火力発電所が爆発しようが、発電所とその周辺何十キロにも及ぶ家や、森や、大地や、海や、水や、生物のすべてが汚染にまみれ、事故の収束に何十年もの歳月と、何十兆円という費用がかかったり、立地自治体、周辺住民の健康被害どころか、狭い国土に生きる大多数の国民が汚染の不安に駆られるようなことにはなりえないからである。

しかし彼らはいうだろう。「今ある発電所のどこかで、事故が起こればたちまち電力供給ができなくなるから、やっぱり既存の原発の再稼働は不可欠だ」と。

ところが、この種の説明も、もはやまったく説得性をもたない。2月に起きた九電の大分火力発電所の事故のときは、電力不足であるはずの関西電力や東電が、九電に電力供給をしたというではないか?
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201202/2012020300145

そのことについては、薔薇っこの過去のブログの中でもニュースを転載してきたし、以下に掲げる「Web論座」の竹内敬二氏記事(抜粋)の中でも論じられている。

確か、電力関連のお偉い専門家の概説によれば、西と東は電圧が違うので、電力の融通はできなかったはずなのでは?「できない、できない」といっておきながら、いざとなれば、ちゃんと、できているではないか?ここにも何か嘘があるようである。

もうひとつ、「原発の電力安定供給」 という点についても、大きな疑問がある。

電力の7割を原発が占めており、電力の安定供給ができるばかりか、他国に輸出までしている原発大国フランスが、フクイチを教訓に脱原発をめざしているドイツから、この冬電力供給を受けなければ、やりくりできない状況が現実のものとなっているのである。

冬のフランスは寒い、しかし、ドイツも負けず劣らず寒い。だから今年のフランスは例年になく寒いからなどという気象条件はまったく理由にはならない。

今は、その種の番組はすっかり姿を消したが、一時は、日本のエネルギー問題をめぐって、専門家が、お茶の間のテレビ番組に登場し、討論を繰り広げることが、昨年の春から夏にかけて何度かあった。

自然エネルギーの推進、あるいは脱原発の主張をする、どちらかといえばおっとりした能弁とは言い難い専門家に比べて、原発擁護派はしっかりした論客をそろえていることにも薔薇っこは大きな疑問を感じた。

しかしそれ以上に、前者がドイツを例にあげて日本でも脱原発は可能だと言うと、たちまちその議論を遮って、後者の御用学者の方々が、小馬鹿にしたような口調で、「ドイツは脱原発といってはいるが、フランスの原発で作った電力を輸入できるから、脱原発なんて言ってられるのです。日本は島国で、ドイツのように隣から融通してもらうなんてことできないんです」とばっさり斬り捨てておられたことが、今も記憶に(DVDにも)しっかり残っている。

しかし事実は全く異なるではないか。おまけに、原発推進派のサルコジは現在苦戦中で、対抗馬と目されているフランソワ・オランド大統領候補はフランスの原発依存のエネルギー政策に歯止めをかけようとさえしているのである。

原発推進派、擁護派の議論は様々な現実の中ですでに完全に破たんをきたしている。安全でもなく、安定供給ができるわけでもなく、安くもない原発を一体だれのために再稼働させる必要があるのか。

最近は何かといえば、立地過疎地の住民の声が焦点化され、原発をとめられると生活できなくなるからという報道が意図的に流されている感がある。

私たちは、全国の過疎地にある原発立地自治体やそこに居住する、わずかな住民の生活を守るためだけに、国民の健康や安全を犠牲にし、原発事故によって生じる膨大な負債のつけを延々と支払わなければならないとでもいうのだろうか。

オルタナティブがあるならば、そして今のように原発をめぐる目を覆いたくなるような事実が白日の下にさらされていれば、薔薇っこは断じて東電の汚い電気など、びた一文たりとも買わなかったであろうし、これからも断じて買いたくない。たとえ原発を利用しない主義の電力会社に、2倍、3倍の電気料金を支払わなければならないとしても。

それは決して薔薇っこがリッチで、生活にゆとりがあるからではない。

夏の電力節約術については前にブログにもいろいろ書いたので、何度も繰り返さないが、それに加えて、ヘアドライアーや洗濯物の乾燥機を、自然乾燥に代えてでも、冬の寒さをガス暖房に変えてでも、そうしたいと思うし、そうしなければならないと思う。

もちろん電力会社が送電線の独占を放棄し、発送電分離が理想的な形で行われ、スマートグリッドなどの制度が速やかに導入され、原発以外のエネルギー利用の推進が国を挙げて積極的に進められさえすれば、オルタナティブの会社に2倍の電気料金を支払わなければならないような事態も生じないはずであるけれども。

以下関連記事を転載する。


http://mainichi.jp/select/world/news/20120220dde001030011000c.html

ドイツ:脱原発しても…電力輸出超過 再生エネ増、消費減で
【ブリュッセル斎藤義彦】東京電力福島第1原発事故後に「脱原発」を決め、国内17基の原発のうち約半数にあたる8基を停止したドイツが昨年、周辺諸国との間で、電力輸入量よりも輸出量が多い輸出超過になっていたことが分かった。脱原発後、いったんは輸入超過に陥ったが、昨年10月に“黒字”に転じた。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの増加と、全体のエネルギー消費量を抑える「効率化」が回復の要因だという。厳冬の影響もあり、電力不足の原発大国フランスにも輸出している。

 ◇「原発大国」フランスへも

欧州連合(EU)加盟27カ国など欧州の34カ国の送電事業者で作る「欧州送電事業者ネットワーク」(ENTSO-E、本部ブリュッセル)の統計。冬はエネルギー消費量が最も多いことから、ドイツ政府は「(脱原発決定後の)最初の試練を乗り切った」(レトゲン環境相)としている。
ドイツは昨年3月の福島第1原発事故後、17基の原発のうち旧式の7基を暫定的に停止し、その後、1基を加えた8基を昨年8月に完全停止した。震災前は周辺国との電力収支が輸出超過だったが、昨年5月に輸入超過に転落した。フランスからの輸入が前年の3割増になるなど昨年9月まで輸入超過の状態が続いた。
しかし、昨年秋に入ってから好天が続き、太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電に有利な条件が整った。また、ドイツ政府が住宅の断熱化などエネルギー効率化を推進したのに加え、原油価格の高騰も手伝って、エネルギー消費量が前年比約5%減になった。このため昨年10~12月の電力収支は輸出超過を回復。11年の通年で約4200ギガワット時の輸出超過になった。
今年2月に入り、欧州各地で氷点下10度を下回る厳冬になると、電気暖房が全体の3分の1を占めるとされるフランスで原発をフル稼働しても電力が足りなくなった。このため、2月の17日間のうち6日間は電力需要の多い午後7時ごろを中心にドイツからフランスへの輸出超過になり、電力の7割を原発に頼るフランスが脱原発のドイツに依存する事態になった。
昨年のドイツの発電量に占める原発の割合は約22%から18%弱程度に低下する一方、再生可能エネルギーは約20%に上昇した。さらに、褐炭、石炭、ガスなどが微増しており、原発の目減り分を補っている。
一方、日本では再生可能エネルギーによる発電量(10年度)は全体の約10%にとどまり、太陽光や風力など水力以外の新しいエネルギーは約1%に過ぎない。
毎日新聞 2012年2月20日 東京夕刊


原発稼働ゼロでも「夏乗り切れる可能性」=枝野経産相

2012年 01月 27日 11:46 JST




[東京 27日 ロイター] 枝野幸男経済産業相は27日の閣議後会見で、原子力発電所の稼働が全くない場合でも電力需要に対応できる可能性はあるとの認識を示した。同相は「電力使用制限令や日本の産業に大きな影響を与えることなく乗り切るための検討は進めている」と述べた。

現在全国の原発54基のうち稼動しているのは3基。4月末に北海道電力(9509.T: 株価,ニュースレポート)泊原発3号機が定期検査に入り、他の原発の再稼働がないと国内で稼働する原発はゼロとなる。枝野経産相は原発の再稼働について「原発がこの夏どのくらい利用されるのかされないのかは、安全・安心という(電力需給とは)全く別次元で結論が出るので、どうなるかわからない状況だ」と述べた。

政府の試算では、原発稼働ゼロで一昨年夏並みの猛暑となった場合、最大電力に対する供給力が全国で7%不足する。稼働ゼロで夏の需給を乗り切れるかどうかについて枝野経産相は、「もし全ての原発が利用できないと電力需給は相当厳しいと予想されている。節電のお願いはしなければいけないが、電力使用制限令によらずに乗り切れる可能性は十分にある」と述べた。根拠については「数字も含めて様々な検討を進めている」としたが、具体的には示さなかった。

東京電力(9501.T: 株価ニュースレポート)への公的資本注入に関して同相は、「全く決めていない」としながらも、「東電の話ではなく、一般論として税金を利用して、(対象企業に対する)権限や責任を負わないのは納税者に対して無責任だと思う」と述べ、東京電力に公的資金を注入するには、議決権の確保が必要との認識を示した。

(ロイターニュース、浜田健太郎)

節電と全国融通で「原発ゼロ」を乗り越える。送電容量は「埋蔵金」                  2012年2月20日        
                  朝日新聞論説委員 竹内敬二氏

福島原発事故から4カ月後の昨年7月13日、朝日新聞は「原発ゼロ社会への提言」という論説主幹論文を出し、その中で「20~30年で原発ゼロをめざそう」と主張した。筆者も論説のメンバーとして議論に参加した。「原発を厳しい目で見るが、存在を否定しない」というそれまでのポジションとは大きく異なるもので、かなりの議論を重ねて出した決断だった。
それから半年、「運転原発ほぼゼロ状態」がこんな形で来るとは思ってもみなかった。そのゼロへの道のりは、劇的なものではない。定検で原発が順番に止まっているうちにここにたどり着いたもので、政治や社会の「一大決定」があったわけではない。ただ、「できれば原発を減らしたい」「簡単には再稼働して欲しくない」という意識は背景にあるだろう。
いま、多くの人はあっけにとられているのではないか。気がつけば、54基の原発がほぼ止まり、それでも社会が平穏に動いている。そして、この夏についても、「強制的な節電令を出さなくても乗り切れる可能性が大きい」(枝野幸男経産相)という。どういうことなのか。あまり使われなかった火力発電所がいかに多かったかを示している。節電の貢献も大きいだろう。
ただ、今後も原発の大量停止が続くかどうか。社会の大議論を経ているわけではないので、ストレステストが「妥当」とされ、保安院の「安全のための30項目」について「ほぼクリアできている」とされ、さらには「中期的にはもっと安全にする予定」などとなれば、雪崩のように再稼働が続くかもしれない。どちらに進むかは、社会における今後の議論にかかっている。
再稼働の考え方としては、1)安全性と需要面からの原発再稼働の必要性は分けて考える。2)この夏の需要を厳しく考え、ぎりぎりで供給力がいくら足りないのかを割り出す。
この二つだろう。2)についていえば、カギは「節電」と「広域融通」である。この可能性を最大限探るべきだ。
関西電力は「この夏20%の供給力不足が考えられる」といっている。これは、とんでもない猛暑だった「一昨年の真夏のピーク需要」と、「原発の再稼働がなかった場合の供給力」を比べたときのものだ。
この想定によると、9電力のうち6社で供給力不足が起き、日本全体でも9%の不足と計算される。
しかし、東日本を中心に節電が行われた「昨年夏の需要ピーク」と「昨年夏の供給力」を比べると、供給力不足は4社に減り、日本全体では供給力に4%の余裕がでる。
さらに、「東3社」(北海道、東北、東京)、「中西部6社」の2グループで考えると、どちらも余裕が出ることになる。つまり、50ヘルツ帯で電気を融通し、60ヘルツ帯で電気を融通できるとすれば、停電は完全に回避されるということになる。
昨年は関電を含む中西部ではあまり節電は進まなかった。今年、「ピーク需要を削れば料金が安くなる」ような制度を整えれば、問題は起きないという計算になる。「節電」と「融通」はきわめて強力な停電回避策である。
日本の送電網は、電気を広域融通できない分断された送電網になっている。欧州では欧州全体で一つの送電網をつくろうとしているが、日本では各電力会社ごとに国土を分割して営業し、送電網も分割されている。各社の送電網をつなぐ連系線も細く、自由な融通ができなくなっている。
そういわれてきた。しかし、最近、あっと驚く事態が起きた。2月3日、九州電力の新大分発電所(LNG、230万キロワット)が急に止まり、九電は、急きょ、全国に助けを求め、東電を含む数社から計240万キロワットを確保し、結果的には210万キロワットが融通された。
これは驚くべきことだ。公表されている連系線の容量でいえば、九電に入る量は30万キロワットしかない。なのにいざとなると240万キロワットが入るのである。
電力業界の説明では、『運用容量』は30万キロワットだが、設計上の能力である『送電容量』は557万キロワットだという。だから無理をすれば、240万キロワット程度は使えるのだという。しかし、いつもは30万キロワットだけを示している。それにしてもあまりに数字が違い過ぎる。「できれば連系線を使いたくない」という電力業界の思いが、「あまり融通できない」というポーズにつながっているのだろう。