2012年8月21日火曜日

フクシマの事故で原発を廃止するのは、害のある政策か?

 何を言うのも言論の自由であるし、どんな国にも御用学者はいるものである。

原発災害発生後、日本の原子力ムラの住人の旗色は、フクシマ原発の隠蔽された事実が小出しに明るみになるにつれて、日々悪くなり、国民の反原発に向けての声は高まるばかりであり、メディアがどんなに情報操作をしようとしても、抑えきれない状況である。

そのような状況のもと、ここにきて、日本の脱原発に向けての舵取りをよしとしない米国の原発政策を支持する御用学者による、原子力ムラへの援護射撃が、20日、WSJによって行われたことは大変興味深いことである。

以下、竹内カンナという記者によって書かれた記事を転載するが、「比較的安全で地球環境に優しい原発」を廃して、「便利なものであっても、危険なものは認めない」という日本の一般市民の反原発を求める声が、あたかも、非科学的で、非経済的で、無知蒙昧な愚考であるといわんばかりの論調である。

これまでに、薔薇っ子は、このブログでなんども繰り返してきたが、それほど、「フクシマの原発災害による高線度の放射能漏れの人間の身体に与える健康被害が微小なものである」と豪語するのであれば、なぜに原子力ムラの御用学者らは、今すぐ東電のフクシマ第一原発の災害現場の最前線で、今すぐ現状改善のために自ら死力を尽くして陣頭指揮をとろうとしないのだろうか。日夜、フクイチの放射線管理地域に入って、原子力工学の、あるいは幻視力防御学の研究を行うべきではないのか。

フクシマの状況が「危険でない」、「影響がわずかである」と豪語するのなら、いつまでも遠いところから高みの見物を決め込んでいないで、自らフクイチの現場で廃炉にむけての作業の指示を行うことこそが、これまで何十年にもわたって、高い電気料金や税金から、多額の寄付や助成金を受け取り、電気事業者と結託して安全神話を作り上げてきた御用学者の、せめてもの国民に対する償いと考えるのは薔薇っ子だけだろうか。

すでに事故後、1年半近い長い時間が流れているが、原子力ムラの御用学者は一体、延べ何十時間、その現場の最前線に身を置いて視察・研究を行ったというのか。日本政府に買われた御用学者ならば、当然国民のために事故現場に出かけて、調査・研究を行うべき立場にあるのではないか。

彼等が、放射能汚染を恐れて、いつまでも高みの見物を決め込んでいる限り、放射能汚染の被害を過少評価する科学者のどんなご高説も、空疎にしか響かない。


フクシマの事故で原発を廃止していいのか=米科学者

東京電力福島第1原発の事故で放射線を浴びた人々への健康被害は、長い期間にがんになる確率を少し上げるといった形で表れるものであるため実感はない。だが、反原発を唱える数万人規模のデモが何度も国会や首相官邸を取り囲み、参加者は将来の世代のために原発を廃止すべきと訴えている。また多くの世論調査で、原発を廃止すべきと考える人が圧倒的多数を占めている。

Bloomberg News

こうした日本の現状に対し、カリフォルニア大で物理学を教えるリチャード・ミュラー教授は「未来の大統領のためのエネルギー政策(Energy for Future Presidents)」と題する新著で、原発事故後に広い地域の住民を長期にわたって避難させ、原発を停止させた日本政府の政策は、益よりも害の多い政策だったと批判している。

同教授はウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、過剰反応だったと考える根拠として、米コロラド州デンバーの住民は同地の花こう岩に含まれるウランが放出するラドンガスのため、常に多量の放射線を浴びているが、米国の他の地域よりも健康だという例を挙げている。

米国民が普通に浴びる放射線に加え、デンバーの住民は年0.3レム(人体への影響を示す古い単位:1レム=10ミリシーベルト)の放射線を余計に浴びている。だが、デンバーのがん罹患率は米国の他の地域に比べ低い。これを基に、低レベルの放射線は健康にいいと解釈している学者もいるという。ただ、ミュラー教授自身はこれをライフスタイルの違いではないかと考えているという。

デンバーに比べると、福島の原発事故で「ホットスポット」となった地域では放射線が0.1レム程度増えただけではるかに低い。

放射線は、年25レム浴びると、「自然な」理由によってがんになる確率である20%が1%上昇するという。放射線量が増えるに従ってがんになる確率も上がり、50レムなら2%、75レムなら3%増加する。こうしたがん罹患率の研究は広島、長崎の被爆者の研究によって確立されている。

最近、福島のチョウの研究で、放射線によって昆虫などの奇形が増えていることが確認されたが、ミュラー博士これは以前からわかっていたことで、広島、長崎での被爆者の研究で、人間のような高等動物に放射線によって奇形が生じたといった結果は出ていないという。

では、原発事故による被ばくで何人ががんになるのか。仮に被ばく量が2レム以上だった地域の約2万2000人が全員、最大レベルの22レム被ばくしたとする。原発事故がなくても、20%つまり4400人はがんにかかるが、放射線によってさらに194人が、がんになる、とミュラー教授は推定する。

ただ自然な原因でがんになった人々も、放射線でがんになったと思うだろう。広島・長崎の約10万人の被爆者のうち約2万人が自然な理由でがんにかかったが、原爆によってがんになったのは約800人だけだった。しかし、はるかに多くの人が自分のがんが原爆によるものだと考えていた。

福島の原発周辺の人口は約4万人。平均被ばく量は1.5レムだった。放射線でがんになる人は24人ということになる。

こうしたところから、ミュラー教授は、放射線によるがんで死亡する人の数は津波による死者に比べはるかに少ないと指摘し、これが原発政策上、中心的な論点になるべきではないと主張する。

また、教授は、原発は想定可能なものすべてに耐えられるように設計されなければいけないものだろうかと問題提起する。小惑星や彗星(すいせい)が地球に衝突する危険もあるし核戦争の危険もある。

その上で、ミュラー教授は、福島の最大の悲劇は日本が原発をすべて停止してしまったことによる影響や経済的な損失だとしている。住民のためを思った策ではあったが比較的安全で豊富、かつ、ほかのエネルギー源に比べ地球環境に優しい原子力の将来が危うくなってしまったことを考えると益よりも害の多い政策だったと述べている。

同教授のような主張は、日本でも産業界や科学者には多い。世の中には危険ではあるが便利なものだとして存在を許されているものがいろいろある。だが、経済や科学に基づいた原発擁護は、圧倒的な反原発の声にかき消されてしまっている。