2012年9月9日日曜日

ウソと隠蔽で成り立つ日本の原子力行政とそれを支えるメディア

  ロイターは、東電がメデイアや政府の圧力に屈して、フクイチのビデオの公開期間を延長することになったと報じている。しかし、朝日新聞ウェブ版では、公開されるビデオは東電の手によって修正編集したものとなることを明らかにしている。
 うそとはったり、隠蔽と脅しの積み重ねでかろうじて今も成り立っている日本の原子力政策、しかしあちこちからほころびが出ている。

東京新聞は、使用済燃料再処理事業が、嘘で塗り固められてたことを明らかにするとともに、この夏15%の電力不足に陥るため、再稼働をしなければ計画停電も辞さないと消費者に脅しをかけて、強引に大飯原発再稼働を押し切った関電であるが、この夏のエネルギーは原発など再稼働させなくても、十分に足りていたことを明らかにしている。

6日、選挙対策として民主党は、政府への提言として2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとの声明を出したが、これに対する大型メディアからの反発はすさまじい。
パブコメや意見聴取会での電力会社によるやらせ問題については、このブログでも何度か取り上げたが、そのような原発推進派からの画策があったにもかかわらず、結果的に脱原発を志向する意見が圧倒的に多いという結果になったのである。

やらせ行為や上に述べたような電力会社の未だに公然と続けられている隠蔽行為、嘘つき体質を取材し、客観的な立場からしっかり報道・批判することもせず、ひたすら原発推進を強力に打ち出す読売新聞は、さすが正力松太郎の伝統を受け継いだ新聞社だけのことはある。以下に転載するが、読売新聞の社説では、「政府は、国民の意見など、まともに耳を貸す必要などない」という主張を堂々としているのである。

たしかに民主党の提言は明らかに選挙対策のその場しのぎのものである。増税はしない、無駄を削減する、身を切る覚悟をするなどなどとあれだけマニュフェスト破りの限りを尽くしてきた政党の提言など、信じろと言われても、もはや不可能である。ただこのような脱原発への提言に感情的に飛びつき、さしたる論拠もないまま、ただ経済性という論点だけから、原発推進を強く主張する新聞社の態度には、呆れ果てる。

新聞社にとって、地域独占の電力会社や、日立、東芝、三菱重工といった3大原発メーカー、及び原発政策を推進するメインバンクや大型株主である大企業からの多額の広告料収入がなくなれば、死活問題になることはわかる。しかし、だからといって自分たちに都合の悪いことは取り上げず、民主主義国家において、一般「市民の大多数意見を尊重する必要がない」などというような暴言を吐くことが許されていいものだろうか。

 意見聴取会やパブコメの実施について批判をするならば、それが実施される前にしっかりした論点をあげて批判すべきだったのではないか。おそらく、政府関係者同様、推進派側には、「多くの市民は、原発推進派の主張に押されて、つまり原発をやめれば電気代が上がるなどと示せば、政府の思惑通り15%ぐらいの原発依存を認めるに違いない」という目算があったのではないか。

だからこそ、実施前はおとなしく何も言わずに黙っていたのではないのか。予想に反して、自分たちにとって都合の悪い結果になったからといって、やり方に問題があったと難癖をつけるのはいかにも稚拙な議論だといわねばならない。

Japan's Fukushima operator to release more video on disaster

TOKYO, Sept 7 | Fri Sep 7, 2012 7:53am EDT

(Reuters) - Tokyo Electric Power Co (Tepco) , the operator of the wrecked Fukushima nuclear plant, has bowed to pressure from the media and government and decided to release more video footage of staff trying to contain the March 2011 crisis.

The footage to be released may shed light on how Tepco dealt with the No. 4 unit's spent fuel pool, the source of most concern at the U.S. nuclear regulator because it was the sole unit to hold all fuel rods without a solid containment.

It may also answer questions about the deliberate release of radioactive water into the sea by Tepco in early April -- more than two weeks after the earthquake and tsunami that triggered the crisis. Neighbouring countries, including South Korea and China, denounced the release.

"We consider the first month of the disaster as a period of emergency," Tepco said in a statement late on Thursday about the extra footage. It was not clear when it would release the film covering events between March 16 and April 11.

Tepco had released 150 hours of footage covering the first five days after the March 11 quake to media only, prompting criticism that the company was not coming clean on the early days when the situation at the plant almost spun out of control.

Tepco had previously acknowledged in 2007 that it covered up safety lapses for years. (Reporting by Risa Maeda; Editing by Ron Popeski)

http://news.tv-asahi.co.jp/news/web/html/220906046.html

批判を受け、公開期間を延長する方針です

 福島第一原発事故のテレビ会議の映像について、東京電力は、これまで事故発生から3月16日までの150時間分だけを公開していました。しかし、当初から事故原因究明のためにはさらなる公開が必要だという批判が相次いだことを受け、東京電力は公開部分を4月11日までの1カ月分に拡大する方針であることが分かりましたただ、これまで同様に音声や画像処理などを行うために、公開は早くても来月になるということです。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012090502000123.html

「ウラン節約」ウソだった 再処理「原発維持のため」

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 原子力委員会が原発推進側を集め昨年十一月に開いた秘密勉強会の場で、電力各社でつくる電気事業連合会(電事連)の幹部が、使用済み核燃料の再処理事業は、原発に使用済み核燃料がたまって稼働できなくなるのを防ぐため、と明言していた。国も電力会社も、再処理はウラン資源を節約し、エネルギー面の安全保障のためだと再三強調してきたが、虚偽の説明だったことになる。

 発言者は電事連の原子力部長。内閣府の検証チームが集めた議事資料などによると、昨年十一月二十四日の会合で、原子力委の鈴木達治郎委員長代理が「電力会社としては、コストが高くても再処理する理由があるのか。とりあえずは(使用済み核燃料を)処理できるということがメリットか」と部長に質問した。

 これに対し、部長は「その通り」と即答し再処理路線でなければ、使用済み核燃料の受け入れ先がなくなり、原発が止まってしまうことになる」と述べた。

 本紙の調査で、国内約六割の原発では、稼働させれば数年内に使用済み核燃料プールが満杯になる。核燃料が交換できなくなり、それ以上は稼働できず、行き詰まった状態になると判明している。

 鈴木氏の質問は、電力各社にとって再処理を続けるメリットは、プールにたまった使用済み核燃料を減らし、原発を維持することかどうかをただす趣旨。部長の答えは、まさに電力会社の本音を語ったものだ。

 ただし、日本の原子力政策の建前は、再処理で出たプルトニウムを使い、混合酸化物燃料(MOX燃料)にしてプルサーマル発電で再利用。それが「資源小国の日本にとってウラン資源の節約につながる」ということだ。その建前で十兆円もの巨費を投じてきたが、再利用の輪は完成しておらず、MOX燃料の利用計画も立てられなくなっている。

 政府・与党は近く、将来の原発比率をどうするか結論を出す見通しだが、再処理を含め原発を維持しようとする動きは根強い。政府からは、原発ゼロにした場合、光熱費がアップするなど否定的な側面だけを宣伝する動きも強まっている。

 だが、これまでの再処理の建前はうそで、原発を運転し続けるための方便ということがはっきりしたことで、再処理事業の存続意義はますます揺らぐことになりそうだ。

 電事連は「(秘密勉強会の)出席者や発言者の確認をしていない」として、検証チームへの資料提出を拒否している。


再稼働不要裏付け 今夏消費5~11%減    2012年9月7日 07時12分

政府は、関西、四国、九州の三電力管内に求めた夏の節電の数値目標を七日午後八時に解除する。家庭と企業に節電の意識が浸透。実際の消費電力は電力各社の事前の予想を大きく下回った。中で「15%の電力不足に陥る」と主張していた関西電力の需要予測は過大だったことが明らか。専門家からは「大飯原発(福井県おおい町)の再稼働は必要なかった」との声が出ている。 (吉田通夫)

 電力各社は四月に政府の要請を受け、二〇一〇年並みの猛暑と、平年並みの場合とに分けて夏の電力需給見通しをまとめていた。

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 実際の電力各社の電力消費をみると「猛暑」の想定より5・2~11・1%少なく、「平年並み」の想定に対しても東北電力を除く全社で2・2~9・1%少なかった。

 気象庁のまとめでは七月の気温は全国的に高く、特に下旬は猛暑日を観測する地域も多かった。八月も沖縄県を除いて気温は初旬と下旬に平年を大きく上回り、月間平均でも平年を一度上回った。今年は「暑い夏」だったのに、実際の電力消費は平年並みを前提にした予想も下回り、夏の電力不足の恐れを強く主張していた政府と電力会社への信頼が揺らいでいる。

 特に大飯原発の再稼働に踏み切った関電の需要見通しは過大だったことが鮮明になった。仮に大飯原発の稼働がなくても最大消費電力を記録した八月三日の供給余力は2・7%あった計算。政府が「最低限必要」と主張する3%は下回ってはいたが「他社から余った電力を購入して供給力を高めることもできた」との指摘もある。

 大阪府と大阪市が設置した専門家らによる大阪府市エネルギー戦略会議(座長・植田和弘京都大教授)は「西日本全体でみると(電力供給に)余裕があった。野田佳彦首相の再稼働の判断は根拠がない」と大飯原発の停止を求めている。

 関電以外の電力各社の管内の電力消費も軒並み予想を下回った理由について東北電力の佐竹勤副社長は六日の記者会見で「省エネ機能を高めた空調機器に交換するなど、当初に想定した二十万キロワットを上回る節電があった」と分析した。

 家庭では窓際に植物を植えるグリーンカーテンや省エネ家電といった節電策が普及。企業や事業所の間にも重油などを燃やして熱を利用する際に発電もする「コージェネレーション(熱電併給)システム」を増やすなど、自衛策が広がったことも節電につながった。

(東京新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120907-OYT1T01528.htm

「原発ゼロ」提言 現実を直視できない民主党(9月8日付・読売社説)

 拙速な議論で「原子力発電ゼロ」の方針を打ち出すのは、政権党としてあまりに無責任だ。

 民主党が「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すエネルギー政策の提言をまとめた。

 原発の新増設は認めず、運転開始から40年での廃炉を厳格に適用するという。だが、高コストや失業増大など経済への悪影響を克服するための具体策は乏しい。問題だらけの内容だ。

 「原発ゼロ」を30年代に実現するという期限についても、党内の議論の終盤で強引に盛り込む乱暴な決め方だった。

 衆院選のマニフェスト(政権公約)を意識し、「原発ゼロ」を鮮明にした方が選挙に有利だと考えたのだろう。大衆迎合主義(ポピュリズム)そのものだ。

 太陽光など再生可能エネルギー拡大に50兆円、省エネ達成に100兆円――。政府のエネルギー・環境会議が示した「原発ゼロ」のコストは膨大である。

 電気代が上昇し、標準家庭の光熱費は、現在の月1万7000円が3万2000円に跳ね上がる。生産コスト増で産業空洞化が加速し、失業は急増するだろう。

 「原発ゼロ」がもたらす悪影響の重大さは、経済界だけでなく政府も認めている。

 しかし、民主党はこうした「不都合な真実」に目をつぶった。提言で明確な打開策を示さず、「政策的に強力な支援を行う必要がある」などとし、政府に対応を“丸投げ”しただけである。

 「原発ゼロ」の時期を明示した場合、原子力の技術者などを目指す若者が激減し、肝心の人材が育たなくなる恐れが強い。

 福島の事故を受けた原発の安全性向上や廃炉技術の確立など、重要な責務を果たせなくなり、日本の国際的な信用も失墜しよう。

 原発再稼働へ地元の理解も得られにくくなる。政府の核燃料サイクル政策を前提に、各地の原発から使用済み核燃料を受け入れてきた青森県が、協力を拒否する事態となれば、全国の原発を動かすことは一段と困難になる。

 現在、原発を代替する火力発電の燃料費は、年3兆円以上も余計にかかっている。再稼働できないと、東電以外の電力会社も大幅な料金値上げを回避できまい。

 政府は来週にも、新たなエネルギー戦略を決める予定だ。選挙目当ての民主党提言にとらわれず、政府は中長期的に原発の活用を続けていく現実的なエネルギー政策を示すべきである。

(2012年9月8日01時45分 読売新聞)

意識調査検証 「脱原発依存」の根拠にするな(8月30日付・読売社説)

 将来の原子力発電比率などに関する国民の意識調査を都合良く分析し、脱原発に政策のカジを切る根拠に使うのは、あまりに乱暴ではないか。

 討論型世論調査などの結果について政府の有識者会議が、「少なくとも過半の国民は、原発に依存しない社会の実現を望んでいる」とする総括案をまとめた。これを踏まえ、政府はエネルギー政策の基本方針を近く決定する。

 だが、世論の過半が「脱原発依存」だと結論づけた総括案は説得力に欠ける。

 政府は意識調査の結果を過大評価せず、一定の原発利用を続けていく現実的なエネルギー政策を推進すべきである。

 2030年の原発比率に関する「0%」「15%」「20~25%」の三つの選択肢のうち、討論型やマスコミ各社の世論調査で0%と15%を選んだ割合を合計すれば7~8割に達する。「脱原発依存が過半」とした総括案の根拠だ。

 とはいえ、「0%」以外を選んだ比率も、合計すると5~7割になる。一定程度は原発が必要と考える人も相当に多い。

 有識者会議で「原発に依存しないというより、原発を減らしたいと解釈できる」との指摘が出たのはもっともだ。「脱原発依存」が多数派とは断定できまい。

 さらに、討論型世論調査などの参加者には原発政策に進んで意見を言いたい人が多く、主張が脱原発に偏る傾向がある。こうした数字をもとに、全国民の世論を推し量るのは無理がある。

 有識者会議でも「討論型世論調査が国民全体の意見になるという実証的な検証はない」「比率をそのまま正しいと考えるのは危険」など、数字の偏重を戒める意見が多く出された。

 総括案が原発比率の方向性を打ち出し切れなかったのは、そういう事情もあるのだろう。

 政府が示した三つの選択肢は、再生可能エネルギーの見積もりが過大で、非現実的だ。選択の幅が狭く国民が選びにくいなど、政府による「国民的議論」の欠陥も指摘されている。

 せっかく世論調査の専門家を集めた有識者会議もわずか3回で終わり、論議は深まらなかった。

 この会議を主導した古川国家戦略相は開催前から、「原発に依存しない社会を作る方向性で戦略をまとめる」と述べていた。

 これからどういう経済社会を築いていくのか。そのグランドデザインも示さないまま「脱原発依存」に誘導するのなら無責任だ。

(2012年8月30日01時38分 読売新聞)

エネルギー選択 「意識調査」はあくまで参考に(8月26日付・読売社説)

 国の命運を左右するエネルギー戦略を、人気投票のような手法で決めるのは問題である。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、「脱原発」を求める声は少なくない。

 だが、エネルギー政策では、原発の安全性に加えて、経済性や安定供給なども重要だ。資源小国の日本が電力を安定確保するには、原発を含む多様な電源が要る。

 政府は、原発を中長期的に活用するという現実的なエネルギー政策を推進すべきである。

 2030年の電源に占める原子力発電の比率を「0%」「15%」「20~25%」とする三つの選択肢について、政府が行った複数の意識調査の結果がまとまった。

 11回の「意見聴取会」と「パブリックコメント(意見公募)」、新たな手法の「討論型世論調査」は、いずれの調査も「原発0%」の支持が最多だった。

 ただし、この結果をもって原発政策に関する“世論”が示されたと考えるのは早計だろう。

 意見聴取会やパブリックコメントの参加者は、原発問題で積極的に意見を言いたい人が多いため、脱原発に偏る傾向がある。

 討論型世論調査も、最初の電話調査は無作為抽出だが、その後の討論会は希望者参加で、人数も約300人と少なかった。

 政治が国民の意見を聴くのは大切だが、受け止め方によっては、場当たり的な大衆迎合主義(ポピュリズム)に陥る恐れがある。

 調査結果を分析する政府の有識者会議では、「世論調査だけで物事が決まるなら、政治は不要だ」といった意見も出た。

 これらの調査結果はあくまで参考にとどめ、政策へのダイレクトな反映は避けるべきだろう。

 一方、政府にとっての課題も判明した。討論型世論調査で「原発0%」の支持は、討論前の41%から討論後は47%に上昇した。

 エネルギー政策で、「安全の確保」を最重視する人が、討論前より増え、最終的に8割に達したことが影響したようだ。

 ただ、誰しも「安全」への関心が高いため、「安定供給」や「地球温暖化防止」を選ぶ比率が低くなったのではないか。

 原発ゼロでは、日本経済が失速し、失業増や貧困拡大を招く。最大の被害者は国民だが、なぜかこうした認識は浸透していない。

 政府は原発の安全性向上に一層努めるとともに、的確なエネルギー選択に資する情報を、国民に提供することが求められる。

(2012年8月26日01時28分 読売新聞)