2013年3月24日日曜日

Grief's Five Stages Explain Post-Quake Japan by W. Pesek (Bloomberg News) コピペ


Grief’s Five Stages Explain Post-Quake Japan

The second anniversary of Japan’s monstrous earthquake has me thinking about Elisabeth Kuebler- Ross.
The five stages of grief outlined in her 1969 book, “On Death and Dying,” aptly capture where the collective Japanese psyche has journeyed, and where it hasn’t, in the 24 months since a 9-magnitude quake and giant tsunami forever changed the relationship between nature and the nuclear reactors in the nation’s midst.
William Pesek

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William Pesek is based in Tokyo and writes on economics, markets and politics throughout the Asia-Pacific region. ... MORE
I first learned about Kuebler-Ross from my mother, a bereavement counselor and Catholic chaplain in New York. She met with Kuebler-Ross occasionally to compare notes in the 1990s, and says the psychiatrist “brought death out of the closet” to vastly improve the lot of dying patients.
It has occurred to me over the past two years that just as the terminally ill experience five stages of grief, so, too, has Japan gone through denial, anger, bargaining, despair and ultimate acceptance of the ways their tragedy played out.
Denial arrived in the days immediately after March 11, 2011, when waves as high as 133 feet (41 meters) erased entire towns and overwhelmed a nuclear facility 135 miles from Tokyo. As radiation leaked at the Fukushima power plants, authorities assured the nation’s 126 million people that all was well. Tokyo Electric Power Co., whose negligence led to the worst nuclear mess since Chernobyl, hid the severity of the crisis.

Anger Incorporated

Next came anger amid press reports about just how close Japan came to losing Tokyo. We learned more about how then-Prime Minister Naoto Kan stormed into Tepco headquarters, demanded that its staff gain control over the meltdown and literally saved the city from extinction. The plight of hundreds of thousands in the northeast’s Tohoku region enraged the nation as reconstruction unfolded at a glacial pace.
Japanese wanted change. They wanted leaders to be more transparent and to disengage the autopilot that had been guiding the country for 20 years. They wanted someone at Tepco to go to jail and bureaucrats to be fired. Their fury led to the biggest street protests since the 1960s.
Then Japanese realized epochal change was more than they had bargained for. The specter of finding alternatives to nuclear power and rebuilding the northeast had politicians betting they would wake up and find it was all a bad dream. News reports of shantytowns, radioactive schools and squandered rebuilding funds became less frequent. Stories about the resilience of the Japanese people eclipsed curiosity about the role that ingrained conventions of culture and reflexive obedience played in the crisis.
Despair arrived by the first anniversary of the quake, when it became clear that little would change. Far from altering Japan’s trajectory, March 11 demonstrated the depth of the nation’s political and social inertia. It also was a reminder that many of the biggest risks Japanese face -- earthquakes, Chinese pollution, North Korea’s threats -- are beyond their control. Voters were so disillusioned that they even re-elected the Liberal Democratic Party, which they tossed out in disgust in 2009.
Acceptance is now the norm with Prime Minister Shinzo Abe back at the helm after a dismal 2006-2007 stint in the job. Voters seem resigned to let Abe reopen more than 50 nuclear reactors knocked offline two years ago. Call it the period of “shoganai,” or accepting one’s fate and enduring it.
For now, hopes for Japan’s rebirth are sending the Nikkei 225 Stock Average (NKY) soaring and putting the economy back into the global spotlight. Yet optimism about “Abenomics” is mostly an overseas phenomenon. Even though they elected his party, few Japanese seem to view him as the savior they have been waiting decades for.

Confidence Game

That’s why the acquiescence stage now at hand is so worrisome. The only way to beat deflation is to convince investors, companies and consumers that prices will be markedly higher five years from now. It’s great that Abe is boosting fiscal stimulus and that the Bank of Japan will soon be under new leadership. But it’s a confidence game. Winning it requires more than pumping money into a comatose economy.
Abenomics may look like it’s a new set of economic policies, but it’s really a marketing strategy. Its early effectiveness is evidenced by the yen’s plunge and how it’s cheering exporters. But Abe, too, is falling prey to his own acceptance process: sticking to the same old debt-fueled growth strategies while promising new and improved results.
Unless Abe deregulates the economy, improves a corporate- governance system that produced the fraud at Olympus Corp. (7733), severs the incestuous ties between government and business that enabled Tepco’s incompetence, and finds safer energy sources before the next giant quake, he will just produce Japan’s next asset bubble.
The risk is that the Japanese are giving Abe a blank check to heal their traumatized nation. Without a bigger and better- targeted plan, it may all end in a new cycle of grief.
(William Pesek is a Bloomberg View columnist. The opinions expressed are his own.)
To contact the writer of this article: William Pesek in Tokyo at wpesek@bloomberg.net
To contact the editor responsible for this article: James Greiff at jgreiff@bloomberg.net
http://www.bloomberg.com/news/2013-03-11/grief-s-five-stages-explain-post-quake-japan-william-pesek.html
 ペセック氏の辛口コメント、一番最後の4行が、すべてを言い当てているように思うのは薔薇っ子だけだろうか?

この世の中には、「しようがない」でおずおずと引き下がって良いことと悪いことがある。

臭いものには蓋をして、都合の悪いこと、嫌なことは、「見ざる、言わざる、聞かざる」で、弱者切り捨てで、脇目もふらず、貪欲に、儲けられるときにとことん儲かるだけ儲けようといった生き方に歯止めがかからない限り、近い将来、大多数の国民の生活が、にっちもさっちもいかない最悪の状況に陥るであろうことを、この国の人々はもっとしっかり自覚すべきではないのか。

2013年3月20日水曜日

お粗末な東電の停電騒ぎ:大山鳴動してネズミ一匹

震災以来30時間も停電で冷却装置が止まってしまったフクイチ、原因はネズミ一匹。
まさに大山鳴動して、ねずみ1匹である。

それにしても東電はお粗末すぎる原発災害後2年、その間事故直後に緊急トラックの荷台の上に乗せられたまま屋外におかれた仮設配電盤をそのまま使っていたというのだから、呆れ果ててものも言えない。

国民の血税から多額の公的資金と高い電気料金を貪りとっておきながら、下手をすれば東日本の明暗を分けることにもつながりかねない大切な冷却装置、その冷却装置を稼働させるために不可欠な電気の配電盤が屋外のトラックの荷台に載せられたままの状態で使われていたのである。なんとお粗末なことか、こんな杜撰な企業に原発の管理などできるはずもない。

東電はこの2年、相も変わらず、一番大切なことに公的資金を使わず、官僚やメディアや政治家や御用学者を手なずけるために、国民の血税や高い電気料金をばらまき続けてきたのかと言われても反論の余地はない。


http://www.asahi.com/national/update/0320/TKY201303200151.html


配電盤に端子焦げた跡 福島第一原発、過電流で停電か

 東京電力福島第一原発で停電が発生して冷却設備などが止まった問題で、東電は20日、停電の発端とみられる仮設の配電盤で、端子が焦げているのを見つけたと発表した。何らかの原因で容量を超える電流が流れたとみられる。今後、くわしく調べる。
 東電によると、焦げ跡が見つかったのは、停電の発端と見られる仮設の配電盤。端子の一部が焦げていた。仮設配電盤は事故直後に緊急用にトラックで運び込まれ、そのまま荷台に載せられて使われていた。19日までの調査では、目で見て確認できる異常は見つかっていなかった。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5285760.html

福島第一原発、配電盤に焦げ跡


 20日未明、29時間ぶりにすべての設備が復旧した福島第一原発。トラブルの原因とみられる配電盤の中に黒く焦げたような跡が見つかったほか、ネズミのような小動物の死骸が見つかったことも分かりました。

 東京電力は、燃料プールの冷却装置などが停止した原因を特定するため、20日朝から調査を始めましたが、トラブルの原因の可能性があるとしていた「配電盤」の一部で、端子が熱を持って焦げたような跡や壁にすすがついているのが見つかりました。また、その下に、およそ15センチのネズミのような小動物の死骸が見つかりました。

 トラックの荷台に積まれたこの配電盤は事故直後から屋外に設置されている仮設のもので、今月中に本格的な設備と交換される予定でした。

 Q.(ネズミが)感電してショートした?
 「その可能性も含めて検討、確認をしている」(東京電力の会見)

 東京電力は、ネズミが端子に挟まってショートした可能性があるとして因果関係を調べています。(20日17:32)

http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000002315.html

停電の原因はネズミ?すすけた配電盤のそばに死骸(03/20 17:39)

停電の原因とみられる配電盤には、すすけた跡があり、近くでネズミのような死骸が見つかりました。

 東京電力、尾野昌之原子力・立地本部長代理:「(配電盤の)壁のところがすすけているということが分かりました。一番下のところに小動物が落ちていることが確認できた」
 福島第一原発で起きた停電によるトラブルは、20日午前0時すぎ、約30時間ぶりにすべての施設で復旧しました。その後の東京電力の調査で、3号機と4号機の配電盤にすすけた跡が見つかり、その配電盤の下のほうには全長25センチほどのネズミのような小動物の死骸が見つかりました。東電は、この小動物による影響で停電が起きた可能性があるとみて、原因の特定を進めています

2013年3月18日月曜日

懲りない自民党政権の原発対応


 最初からなにも期待していたわけではない。けれども、あまりに反省のない懲りない自民党政権である。

フクイチでは、昨晩から原因不明の停電で燃料プールの冷却システムが止まったまま。
フクイチの原発災害は何も収束なんかしていないのに、報道各社は、NHKと全く同じ1分程度の短い報道を繰り返すばかり。悠長に明後日の丸の内のKitteのオープンなんか報じていていいの?

今回の冷却システムのトラブルに関しても、東電は、発生から3時間もたってから報道をするという相変わらずの隠ぺい体質は何も変わっていない。

ところで折しも、昨日南海トラフの被害想定が示された。東日本大震災の10倍違いの被害だというが、ここには原発災害はまったく計算外だという。あれから、たった2年しかたっていないのに、フクイチの原発災害からこの国が学んだことは何一つないのだろうか。

参院選挙後の原発の再稼働をもくろんでいる暇があったら、動いている原発をさっさと止めて、さっさと全原発の廃炉、八送電分離への道順をさっさと決めていくのが、何にもまして大震災にもっとも必要な備えなんじゃないんでしょうかしらね、安部さん
既得権益ではなく、この国が本当に大切だと思うのならば。・

黙ってみてきましたけど、相変わらず懲りないですね、経産省も、自民党も。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130319/t10013294511000.html


停電で燃料プールの冷却システム止まる
3月19日 4時26分

東京電力福島第一原子力発電所で、18日夜、停電が発生し、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールの冷却システムなどが止まりました。
東京電力は原因が分かりしだい復旧作業に入ることにしていますが、福島第一原発では、事故から2年たっても原因不明の電源トラブルで冷却システムが止まるという不安定な状態が続いています。
東京電力によりますと、福島第一原発で、18日午後7時前、廃炉作業の拠点となっている免震重要棟で瞬間的に停電が発生し、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールや、敷地内にある使用済み燃料を専用に保管している「共用プール」で、冷却システムが止まりました。
プールの水温は、18日の午後6時現在で14度から25度ですが、4つのプールには合わせて8500本余りの使用済み燃料が入っていて、最も温度が高い4号機のプールで社内の規定で定めている65度を超えるまでに4日程度と見込まれています。
東京電力は原因が分かりしだい、冷却システムの復旧作業に入ることにしていますが、トラブルから半日近くがたっても原因が分かっていません。
東京電力は、外部の送電線から電気を受けている3つの配電盤で何らかのトラブルが起きたとみて原因を調べています。
このトラブルで、1号機から3号機の原子炉への注水に影響はなく、原発の周辺で放射線を測定するモニタリングポストの値にも変化はないということです。
福島第一原発では、事故から2年たっても原因不明の電源トラブルで、冷却システムが止まるという不安定な状態が続いています。
このトラブルは、発生から3時間以上たってから発表され、
東京電力は「設備の状況を確認したうえで発表しようとしたが、確認に時間がかかり大変申し訳ない」と話しています。
福島第一原発では、去年1月に送電施設のトラブルで3つのプールの冷却システムが1時間程度止まったほか、去年6月には4号機のプールで冷却水を循環させるポンプが故障し、およそ30時間冷却が停止するなどのトラブルがありました。


http://mainichi.jp/select/news/20130319k0000m040015000c.html


南海トラフ地震:被害想定220兆円 避難者950万人

毎日新聞 2013年03月18日 18時52分(最終更新 03月18日 23時14分)
都道府県別被害額
都道府県別被害額
南海トラフ巨大地震による揺れ
南海トラフ巨大地震による揺れ
 国の中央防災会議の作業部会「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(WG)は18日、南海トラフ巨大地震に伴う経済やライフライン、交通など第2次の被害想定を公表した。被害額は計220兆円で従来想定の約3倍、国家予算の2倍超。ピーク時の断水被害人口3440万人▽停電2710万件(契約数)▽避難者950万人−−と推計された。被災する可能性のある人口は国民の過半数の6800万人に上り、中・西日本の太平洋側の住民が深刻な被害を受ける。
 報告は、耐震化率を現在の79%から100%にするなど対策を進めると被害額は半減するとして、防災対策の重要さを強調している。
 被害額はフィリピン海プレートと陸側プレートの境界のより陸側で地震が起き、東海地方が津波の大きな被害を受けるケースで推計。揺れや津波、火災による直接的な被害は東日本大震災の約10倍の169.5兆円となる。生産の低下やサプライチェーンの断絶などによる間接的被害の50.8兆円と合わせて220.3兆円に上る。
 都道府県別の直接的被害では愛知県が30.7兆円で最大。大阪府24兆円、静岡県19.9兆円が続く。多くが住宅や企業、工場の損壊によるもので、公共施設では港湾や下水道の被害が目立つ。間接的な被害では、対GDP(国内総生産)比で自動車産業や鉱業の影響が大きくなった。
 ライフラインについては、太平洋側沿岸の県で全世帯の約9割が停電、断水する他、被災直後には全国180万戸で都市ガスの供給がストップ。930万回線の固定電話が不通になり、携帯電話も固定電話とほぼ同じ区域で不通となる。都市ガスを除いたライフライン被害は東日本大震災の3〜15倍に上る。
 避難者が最大になるのは発生約1週間後で約500万人が避難所に殺到。発生直後にはターミナルなどに京阪神と中京圏で計1060万人が一時滞留し、それぞれ270万人と110万人が帰宅困難者となる。飲料水は1週間で1億リットル以上が不足。インフラも大打撃を受け、道路は約4万カ所、鉄道は約2万カ所、港湾の防波堤は135キロが損傷する。
 原発については、発生直後に自動停止するとして被害は想定しなかった。また、高層ビルなどを大きく揺らす長周期地震動を考慮した被害は推計していない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34979
現代ビジネス「ニュースの深層」
                                           2013,2,26       町田徹
原発再稼動問題を先送りし続ける安倍政権の「電力システム改革」に電力各社が拒絶姿勢!
もし、これも参議院選挙向けの"実行力の演出"だとしたら、これほど芸達者な政権は過去にないのではないだろうか。経済産業省は、専門委員会がまとめた報告書を盾に、電気事業法の改正方針を花火のように打ち上げながら、肝心の「発送電分離」の実現性が低くなっているのだ。
元凶は、安倍晋三政権が、議論の発端になった原発問題の方向性を決めずに放置していること。廃炉にしろ、再稼働にしろ、結論を先送りして、今後の経営負担の青写真を描けない状態のまま、すでに火力発電の燃料調達負担で軒並み最終赤字に陥っている電力会社に対して、新たに大きなコストがかかる発送電分離を迫る格好になっているからだ。
その結果、1年前、「法的分離」という生温い方式ならば、受け入れる構えを見せていた電力各社は態度を一変し、経営と安定供給に悪影響がでかねないとして発送電分離を拒否する姿勢に転じている。

広域系統運用機関の設立は今秋に間に合うはず

 本コラムで以前に取り上げた日本原電保有の原発の廃炉問題なども含めて、これ以上、臭いものに蓋をしたまま、政権に実行力があるかのように振る舞うことは許されない。
 まず、経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)が今月8日にとりまとめた報告書の内容を押さえておこう。
同報告書の内容を、新聞各紙は「60年ぶりの大改革」(日本経済新聞)と持ち上げたが、これ自体はそれほど大きな前進とは思えない。
何よりも悠長なことに、①電力会社の地域の枠を超えて電力を融通する「広域系統運用機関」の設立、②小売りの全面自由化、③発送電の分離---の3つの柱の実現に、今後最長で7年もの歳月をかけるとのんびり構えている。
 このうち広域系統運用機関とは、福島第一原発事故と東日本大震災をきっかけに各地の原発が稼働停止した際に、電力各社の地域独占がネックになって電力の融通が円滑に進まなかった反省に立って、より広い地域での電力需給計画を構築し、その融通を実現しようという機関だ。
 筆者は、広域系統運用の必要性そのものを否定する気はないが、そのための機関の設立を2年後の「2015年目途」としている点には首を傾げずにいられない。
 システム開発には1、2年の時間がかかっても不思議はないだろうが、設立そのものは、開催中の今通常国会に根拠となる法改正案を提出、可決さえすれば、十分、今秋に間に合うはずである。
 2000年にスタートしながら、いまだに大口(全体の62%程度)にしか適用されていない「小売りの自由化」の「亀の歩み」の是正も、経済産業省は行わない構えだ。目玉のはずの「全面自由化」を、3年後の「2016年目途」としているからだ。少なくとも、それまでは、一般消費者に「電力会社を選ぶ権利」を認めないということになる。経済産業省とその専門委員会の委員をつとめた"お抱え学者"たちの改革に賭けるスピード感の無さに改めて驚かざるを得ない。

電力各社は報告書に拒絶姿勢

極め付きが、発送電分離問題である。過去の類似事例と比べても、「2018~2020年目途」というほどの時間をかける必然性はまったく見い出せない。
 ここで過去の類似事例というのは、それまでの20年越しの「分離・分割論議」に終止符を打ったNTT(日本電信電話)の再編問題だ。
 NTT持ち株会社の下に、NTTドコモやNTT東西をぶら下げる再編は、今回の報告書が発送電分離の実行法として打ち出した「法的分離」と酷似しているが、NTTの場合、旧郵政省が議論に決着を付けた「野中裁定」を盛り込んだ「再編の基本方針」を公表したのが1997年12月。これを受けて、法改正して、新生NTTが誕生したのは、それからわずか1年7ヵ月後、1999年7月のことである。
この例を見れば、今回の報告書が発送電分離の実施までに5~7年もの歳月を費やすとしていることが、いかに悠長で、やる気がないかが浮き彫りになったと言える。
 しかも、法的分離までの間も、その実現後も、実際の電気の料金設定を大きく左右する「託送料金」や「卸電力料金」については、経済産業省のコントロール下におくことばかりが強調されており、如何にしてそれらの料金の高騰を抑えるか、さらに踏み込んで引き下げるか、そのための目途の水準はどれぐらいか(例えば、英米並みに抑えるとか)といった肝心の議論にはまったく触れていない。
 さらに、今回、大きな問題として指摘しなければならないのは、こうした報告書の生温さではない。
発送電分離を、より踏み込んだ「資本分離」とせずに「法的分離」にとどめることなど、報告書全体を生温いものとすることと引き換えに、1年前の専門委員会の発足直後から受諾を言明していた電力各社が態度を豹変し、この程度の報告書にさえ拒絶姿勢を示していることが、問題にすべき新たなポイントだ。

安倍政権は電力システム改革に本気か否か

 深刻なのは、電力会社の豹変に、それなりの説得力が存在することである。
 その喫緊の課題が、原発の再稼働問題だ。安倍政権は発足から2ヵ月あまり経ったにもかかわらず、いまだに、どの原発を再稼働させるのか、すべての原発が結果的に早期の廃炉に追い込まれるのか、再稼働と廃炉の線引きをどうするのか、原子力規制庁の安全基準と再稼働の関係をどう整理するのか、廃炉となった場合の使用済み燃料を含めた処理コストの分担をどうするのか、といった様々な問題の先送りを続けている。
 そうした問題の一つとして、日本原電の敦賀、東海第2発電所問題が待ったなしの状況にあることは、1月15日付の本コラム『待ったなしの日本原電の資金繰り! 安倍政権は不都合な真実を隠さず、今こそ原子力政策全体の改革を断行せよ』でも指摘した通りである。
 加えて、原発に代わる火力発電所の燃料調達費の増大で、電力大手各社は東電を除く9社のうち7社が2012年4~12月決算で最終赤字に転落しているにもかかわらず、申請中の値上げについて、経済産業省が圧縮を検討していることも、電力各社の政府不信に拍車をかけている。
 実際、こうした状況を踏まえて、電力会社の業界団体である電気事業連合会は8日、今回の報告書のとりまとめにあわせて意見表明を行った。文書を公表し、法的分離そのものには正面から反対しないものの、「足元の原子力再稼働の遅延による需給逼迫や財務状況の悪化に加え、今後のエネルギー政策や原子力リスクが不透明な中で、組織形態の見直しを判断することは、経営に多大な影響があり、ひいては安定供給にも影響が及び得るものと考えています」と、安倍政権に原発政策や電気料金政策の見直しを迫ったのだ。
 加えて、八木誠電事連会長(関西電力社長)が15日の定例記者会見で「原子力の再稼働やエネルギー政策の動向などを十分に踏まえ、事業環境の見通しが明らかになった段階で判断することが、社会全体の利益にかなう選択であると考えております」と、現状では政府に従えないとダメを押した。
電力業界の言い分には、相変わらず、発送電分離の技術的困難など、欧米諸国がすでに取り組んでいることをエクスキューズにした部分があり、にわかに信じ難い面が残るのは事実だ。
 とはいえ、1つの公社を5社に分割・民営化した日本郵政の例を見ても、システム開発を中心に2005年度からの3年間で約3,000億円の費用がかかっている前例もあり、コストについては曖昧にできる問題とは言えない。
 しかも、一連の電力制度改革論議の発端でもあった原発問題の解決に向けた方向性をなんら示さないまま、電力制度改革だけを成果としてアピールしようとする政府の姿勢は、明らかに無責任である。そもそも、電力システム改革に本気か否か、疑問符を付けざるをえない。
安倍政権の今回の対応は、成否を握る成長戦略(構造改革)やTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加問題を先送りしたままアベノミクスを喧伝する姿勢や、普天間基地の移設問題を解決しないまま日米同盟の復活を声高にアピールする姿勢と重なって見える。
国論を2分しかねない難問を封印したまま、参議院選挙向けの甘い夢を振りまく姿勢は、もうこれ以上、許されないはずだ

著者:町田 徹
『東電国有化の罠』
(ちくま新書、税込み798円)
重版決定!