2012年12月19日水曜日

「投票に行こう」報道を選挙日にやらなかった日本の大型メディア各社


 今度の選挙は戦後最抵の投票率のおかげで、自民党が圧勝する結果となった。

大変不思議だったのは、投票日なのに、しかもさしたる大きな出来事が他にあったわけでもないのに、テレビ局各社がNHKを含め、有権者に今日が投票日であることを促すような報道が16日当日一切といっていいほど、行われなかったことだ。普通選挙日だと、朝からしつこいほど何度も、各党の党首が投票所にでかけて、一票を投じる風景が必ずといっていいほど繰り返し報道される。ところが今年はそれがなかった。

前日までは、かまびすしいほどに「投票に行こう」という言葉があちこちで飛び交ってはいたが、当日になると打って変わって何もなかった。本来は、選挙当日こそ、朝から投票所に足をはこぶ人々の姿をニュースで流したり、「今日は選挙日」であることをはっきり視聴者に印象づけるような選挙関連ニュースが、一番に報道される。悠長にお笑い番組や駅伝中継など流しているような時局ではないはずである。

この頃は新聞を定期購読していない人たちも多い。それゆえ、今年の場合、家族連れで年末、混雑した商業施設やデパ地下に買い出しにでかけ、疲れ果てて帰途についた人たちの中には、今日が投票日であったことをすっかり失念し、夕食の後片付けが一段落ついて、テレビをつけてみたら、既に開票速報が始まっていたというケースが、あながち少なくなかったのではないだろうか。

年末の週末は、買い物に出かける人、バイトで長時間働く人、なけなしのボーナスで子供のクリスマス・プレゼントを買いにでかける人、年賀状の準備をする人などなど、有権者はみなそれぞれに何かと忙しい。既得権益の恩恵に浴さない有権者の中には、日曜日朝テレビでニュースを入れて見ても、留置所で自殺した女性のことや、韓国の選挙のことぐらいしか報道しないし、お笑い番組や駅伝中継しかやっていないから、16日が投票日だということをすっかり忘れてしまっていたという人も多いのではないだろうか。

もちろん、「忘れる者が悪い」といってしまえば、それまでだが、自民党の圧勝を願うメディアの大衆操作が選挙当日、こういう形で粛々と行われていたことに気がついたのは、薔薇っこだけだろうか。

ブルームバーグのコラミストのペセック氏は、前回のブログにも紹介したように、「どうして日本人は、一般国民には何の利もない阿部政権に投票したのか、理解に苦しむ」と述べていたが、以下に転載するように、そのからくりが低投票率と今の不平等な小選挙区制にあることを、東京新聞と金子勝氏は、きちんと指摘している。

選挙後、一票の格差問題で、衆院選挙の結果を無効として、弁護士団が提訴した。最高裁は違憲判決を突き付け、政権の正統性をしっかりと問うていただきたいものである。平均支持率20%程度で大量議席を獲得した政党に、原発の再稼働を促したり、憲法を改正したりする権利など与えるべきではないことは自明である。




自民党は小選挙区で有権者の24%の投票、比例区15%の投票で6割を超える議席を得た。投票率が落ちているが、自民党は前回選挙219万票も減らしています支持率20%そこそこの自民党が小選挙区効果で大量議席獲得し、憲法改正していいのか? 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012121802000130.html


小選挙区24% 比例代表15% 自民 民意薄い圧勝

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 戦後最低の投票率となった十六日の衆院選は、自民党が定数(四八〇)の六割を超える二百九十四議席を確保する圧勝で終わった。しかし小選挙区で自民党候補の名を書いたのは全有権者の約四分の一、比例代表に至っては15・99%だった。自民党の勝利は、必ずしも民意を反映したものではない。多党乱立と低投票率が自民党を利した結果であるということが、はっきり分かる。
 衆院選の投票率は小選挙区で59・32%。戦後最低を記録した。
 一方、自民党の得票率は小選挙区が43・01%。比例代表は27・62%。ただし、これは投票した人の中での比率だ。
 全有権者に占める比率は24・67%、比例代表は15・99%となる。選挙区でも比例代表でも自民党候補や党名を書いた有権者は「少数派」だ。
 ところが、自民党が獲得した議席は小選挙区で定数の79%にあたる二百三十七議席、比例代表は、同31・67%の五十七議席だった。
 現在の衆院選挙制度は、小選挙区制と比例代表の並立制を採用している。民意を集約して二大政党制に導く小選挙区制で自民党は、有権者全体に占める得票率の三倍以上の議席を獲得。信じられないような世論との乖離(かいり)が生じた。
 民主党は、小選挙区で自民党の約半分にあたる22・81%の得票だったが小選挙区での獲得議席は自民党の一割強の二十七にとどまった。ここで両党が明暗を分けた。
 このようなずれは、十二党が乱立した今回の衆院選で、多くの候補が票を食い合ったことが最大の要因。特に、最大の争点の一つだった原発政策で「原発ゼロ」を公約する政党が小選挙区で競合し、結果として原発を容認する自民党を利した形だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012121802000115.html

「一票の格差」一斉提訴 弁護士ら 衆院選無効求める

衆院選の無効を求めて提訴後、記者会見する升永弁護士(中)ら=17日午後、東京・霞が関で
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 人口比例に基づかない選挙区の区割りで「一票の格差」が是正されないまま行われた十六日の衆院選は違憲だとして、弁護士グループが十七日、東京1区など計二十七選挙区での選挙無効を求め、全国十四の高裁・高裁支部すべてに一斉提訴した。
 最高裁は昨年三月、格差が最大二・三〇倍だった二〇〇九年の衆院選を違憲状態と判断。国会は先月、小選挙区で格差を是正する「〇増五減」の法律を成立させ、衆院選挙区画定審議会が区割り改定作業に取り掛かったが、衆院選には間に合わなかった。
 その結果、有権者の数が最も少なかった高知3区と最も多かった千葉4区で格差は二・四三倍に広がった。グループは、公職選挙法の規定に基づき、高裁と最高裁は百日以内に速やかに無効判決を出すべきだと主張している。
 十七日は、中心メンバーの升永英俊弁護士らの呼び掛けに応じた全国の弁護士たちが東京や名古屋など地元の高裁、高裁支部を訪れ、訴状を提出した。
 東京高裁に提訴後、記者会見した升永弁護士は「違憲状態の選挙で選ばれた正当性のない議員が法律をつくり、首相を選ぶなど国家権力を行使するのは許されない」と語った。
 一方、別グループに属する広島県の弁護士らも同日午前、今回の衆院選の無効を求める訴訟を広島高裁に起こした。

◆「無効判決あり得る」識者

 「違憲状態」のまま行われた今回の衆院選を、識者はどう考えているのか。元最高裁裁判官の泉徳治弁護士は「違憲状態とした昨年の最高裁判決から一年半以上たっており、是正のための合理的期間は過ぎている。最高裁は次のステップとして主文で違憲と宣言すべきだ」と主張する。
 過去の判例では、格差が著しく不平等な場合が違憲状態、その状態が相当期間続いている場合が違憲と判断されてきた。衆院選ではこれまでに違憲二回、違憲状態三回の最高裁判決が出ているが、選挙無効を認めた判決はない。
 国会は衆院解散直前に小選挙区定数を「〇増五減」する選挙制度改革関連法案を成立させた。格差是正に向けた努力との見方もあるが、今回の衆院選には間に合わなかった。泉弁護士は「会期末にドタバタやったという印象はぬぐえない。判決後、すぐに取り掛かれば、間に合ったはず」と手厳しい。「利害関係者である国会議員たちは自ら抜本的に変えようとはしない。違憲立法審査権を与えられている最高裁がやらないと直らない問題」と断じる。
 無効判決が出る可能性を指摘する憲法学者もいる。上智大法科大学院の高見勝利教授は「最近の判例の傾向を見ると最高裁は国会へのいら立ちを募らせており、無効にまで踏み込むことはあり得る」と話した。