2011年9月1日木曜日

電力会社は預言者か?

 3.11以来、地震学の常識、津波の常識は完全に覆されたと地震学の権威たちはいう。もっといえばスマトラ沖地震で、これまで起こりえないと思っていたような場所で大地震が発生し、これまでの地震学が根底から揺さぶられたという。

確かに、東京地震や東海地震については長年あれこれ指摘されてきたが、神戸に地震が起こるなどということも専門家は誰も予知できなかった。東北の太平洋沿岸に大きな地震が来るという人はあってもせいぜいマグニチュード6か7程度のことで、未曽有の大地震が来ることを言い当てたのは、預言者だけであったという。

東大の物理学者は、そもそも今の科学の力で地震の予知など行うことは無理であると言い切っている。

にもかかわらず、2日前、原発関連の機講と電力会社は、以下のような非常に興味深い見解を公表している。

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201108300364.html

活断層を再評価「原子力施設の安全性、影響なし」

関連トピックス

 東京電力など電力会社8社と日本原子力発電、日本原子力研究開発機構、日本原燃は30日、東日本大震災を踏まえて活断層を評価しなおしても、原子力施設の耐震安全性に影響はないとの見解を公表した。今回の震災で東電が活断層ではないとしてきた断層が動いたため、経済産業省原子力安全・保安院が検討を求めていた。
 震災の影響で、東北地方を中心に地下にかかる力が変わり、従来とは逆の東西に引っ張る力が働くようになった。4月11日にはこの影響とみられるマグニチュード(M)7の地震が福島県で起きている。
 このため、東電は福島第一、第二原発周辺の五つの断層が動く可能性を否定できないとして新たに評価。動いたとしても想定を超える地震の揺れは起きないと結論づけた。原発の西数キロを通る双葉断層南部については従来同様、地震を起こさないとした。
 日本原電も東海第二原発(茨城県)について同様の評価を公表。東北電力も東通原発(青森県)や女川原発(宮城県)について、地殻変動はあるものの過去の調査から断層の活動は否定できるとした。
 北海道電力や関西電力などの遠くの原発は、東日本大震災による影響は小さいとしている。九州電力は同様の結果をすでに報告済み。(佐々木英輔)

一体何の根拠があって、彼らはこんな断定ができるのだろうか。彼らは強力な予知能力を持った預言者でも抱えているのだろうか。

想定が崩れたときは、国民がどうなろうと、3人前に並んで「申し訳ございませんでした」と2,3度テレビカメラの前で頭を下げておきさえすれば、それで済まされるのだから、自分たちにとって都合のいいことばかりをでまかせに言っていればいいと思っているのかもしれないが、こうした発表を黙認して、後で泣きを見るのは決まって国民であることを我々は忘れてはなるまい。



今日は9月1日、関東大震災があった日だということで、この日になると毎年、地震と防災訓練がセットで論じられる。今日もその例外ではなかった。NHKの時論公論でも、何を言うのかと思ったら、これまでの地震・津波の常識が3.11以降全く覆されたので、それに対する抜本的な見直しが必要だといっただけであった。

大地震・大津波によって引き起こされる危険性が大きい最も広範囲かつ、経済的なダメージが大きく、長期にわたって国内はもとより国外にまで深刻な影響を与える事象は、何かといえば、6ヶ月たっても、収束するどころか逆に死亡者や高線度の被爆者を出し続けている他でもない原発の崩壊である。

にもかかわらず、原発と地震・津波の安全基準の問題があたかも別次元の問題のようにしか取り扱われず、大方のメディアもその尻馬に乗っていることは実に興味深い。

たとえば、原発に対して実施されることになったストレステストも、本来、地球環境学の専門家らによる安全基準の抜本的な見直しを行い、新らたな基準を設け、テスト項目を根本的に1から作成し直した上で、初めて実施されてこそ、一定の意味を持つものであるが、保安院さんのストレステストはそんな抜本的な見直しもせず、従来の安全基準がそのまま使われるそうである。

今日のモーニングバードで玉川徹氏のそもそも総研を録画しておいたのを見たが、この番組だけは別で、名古屋大学の地球環境学教授古本氏にインタビューを行い地震学の観点から、日本で原発を設置することがいかに荒唐無稽なことであるか、新しい地震学の常識に基づいて語らせている。

産業技術総合研究所の吾妻氏もまた、通常動きにくい活断層が動くことによって、断層の常識も変わったという。たとえば、福井の敦賀原発の真下には、いくつもの活断層があり、近くで大きな地震があれば、これが誘発されかねない危険性を孕んでいることを指摘していた。




放射性物質はどうしていつもセシウムだけなのでしょう?

 後手後手の放射能汚染の調査結果報告、しかもいつも出てくるのはセシウムの数量ばかり、どうしてというと、ヨウ素より半減期が長いから、セシウムの線量は重要だという答えしか返って来ない。まるで放射性物質はヨウ素とセシウムしかないかのように。

前からこのブログで繰り返し指摘しているストロンチウムはなぜに公表されないのか。

7月から8月にかけて行われた広域モニタリングの結果にも、納得の行かない点がいくつもある。
どうして、広域モニタリングの範囲が、警戒区域と計画的避難区域の人の集まる場所に限られたのか、警戒区域や計画的避難地域の中にはホットスポットではない場所も多く、指定区域を外れた地域でも高線量のホットスポットがあるのであれば、警戒区域と計画的避難区域に限ったモニタリングはナンセンスである。

しかも専門家の言うように、人がたくさん集まるような場所より、草や木が生い茂ったような場所に放射性物質が溜まっている可能性が高いし、スピーディの風向きの方向に飛散したのであれば、
警戒区域、計画的避難区域外の様々な地点に対する詳細な調査を行い、その結果を即時公表すべきなのではないか。

一旦250ミリシーベルトに引き上げた作業員の放射線量を100ミリシーベルトに引き下げることを検討しはじめるというのもおかしな話である。関係がないとはいわれるものの、8月16日に作業員が突然の急性白血病と全く因果関係がないと言われれば、逆に、何かあるのではないかと考えてしまうのは、単なる下衆の勘ぐりだろうか。


http://jp.wsj.com/Japan/node_298103?mod=MostPopularBlock

福島原発周辺の広い地域に放射性セシウム汚染-初の包括調査

福島第1原子力発電所の事故に伴う周辺地域の土壌の放射能汚染に関する初めての包括的調査結果によると、調査した2200地点のうち旧ソ連が移住の基準とした量を超える放射性セシウムに汚染された地点が33カ所に上っていることが明らかになった。
Reuters
土壌サンプルを採取する福島県職員(今年5月、福島県相馬市)
 調査対象となったのは、福島第1原発から半径100キロ圏内。1986年のチェルノブイリ原発事故の際にソ連当局が強制移住させた際の基準だった汚染量(セシウム137で1平方メートル当たり148万ベクレル)を超えた地点が33カ所あった。また、ソ連当局が自主的な避難を呼び掛け、農業を禁止した際の基準(セシウム134と137の合計で55万5000ベクレル)を超えた汚染地域は132地点あった。 
 当局によると、最も汚染がひどい地点はすべて、原発の半径20キロの現行警戒区域内と、既に高度の汚染がみつかっている原発の北西方向の一部地域だった。
 当局は先週、原発周辺地域の放射能水準は、自然減と除染作業を通じて2年以内に半分に減少すると予想していると述べていた。
 しかし、今回の調査では、セシウムが水に押し流されて他の地域に広がり、河川、低地、海洋を汚染している可能性を示している。
 例えば群馬県は29日、県内の川で捕った魚から、法律で許容されている量を上回る放射性セシウムが見つかったと発表した。原発のある福島県以外で基準値を超えるセシウムが発見されたのは初めて。 
TEPCO/Agence France-Presse/Getty Images
原子炉格納容器に入る作業員(29日、福島第1原子力発電所)
 セシウム137の半減期は30年。これは、放射能が30年後でも半分しか減らず、数世代にわたって環境に影響することを意味する。セシウム134の半減期は2年のため、長期的な問題はそれほど大きくないとみられている。 
 今回の土壌汚染調査は原発から半径100キロ以内の土地について、2平方キロごとに土壌サンプルを採取した。調査は6月から7月の間に実施され、全国から400人以上の研究者が参加した。これまでは、航空機を使用したり地上での放射能測定を通じて土壌汚染を推定していただけだった。
  調査結果を発表した文部科学省の幹部はブリーフィングで、「土壌分析結果は、汚染に関するわれわれの推測を確認した」と語った。
 一方、東京電力は30日、原発で今月7日間働いていた40歳の作業員が急性白血病で死亡したと発表した。この作業員の累積放射線被ばく量は0.5ミリシーベルトで、許容量をはるかに下回っていた。東電は、死亡は原発での作業と関係ないとみられると述べている。
 これとは別に厚生労働省は30日、福島第1原発の作業員について年間250ミリシーベルトに引き上げていた被ばく限度を100ミリシーベルトに戻すことを検討していると述べた。250ミリシーベルトという水準は、同原発の作業員だけを対象に緊急時の被ばく限度として3月に設定されていた。

立ち入り制限区域、最高線量は避難基準の36倍

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 政府の原子力被災者生活支援チームは1日、東京電力福島第一原子力発電所事故によって立ち入りが制限されている警戒区域、計画的避難区域の約2700地点で、空間の放射線量を計測した「広域モニタリング」の結果を初めて公表した。
 地面から高さ1メートルの空間で最も線量が高かったのは、第一原発から南西に約1・5キロ離れた福島県大熊町夫沢で、毎時139マイクロ・シーベルト(年間推定被曝ひばく線量約730ミリ・シーベルト)。住民避難の目安となっている毎時3・8マイクロ・シーベルトの約36倍に相当する値だった。
 調査は、7月4日から8月20日にかけて、警戒区域の同県双葉町、大熊町、富岡町など9市町村の1572地点と、計画的避難区域の飯舘村、南相馬市の一部など5市町村の1124地点で、公民館や病院など人が集まりやすい場所を中心に、高さ1メートルと1センチの放射線量を測った。高さ1センチで最も高かったのは、双葉町松ざくの毎時368マイクロ・シーベルトだった。
 空間線量が特に高い地域は、原発の北西方向に約32キロにわたって延びていた。文部科学省が8月30日に公表した放射性セシウムの土壌汚染の分布図と、おおむね一致している。同じ警戒区域でも、原発北側に2、3キロ離れた海岸沿いでは、毎時1マイクロ・シーベルト以下になるなど、区域内で線量の分布にばらつきが出た。
 政府は、結果を除染対策の検討などに役立てる。地図や各地点の計測データは、http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/20110901.htmlで公表している。
(2011年9月1日22時41分  読売新聞)