2011年8月4日木曜日

茶番の更迭劇 : お粗末過ぎるパフォーマンス

 まことにもってお粗末なパフォーマンスである。先週総理が3人の更迭に検討に入ったという話を聞きつけて、官邸に人事介入などされてはなるまいと、あわてて更迭を発表した海江田氏だが、記者会見の席では、「人事権は私にある」を繰り返すばかりで、「人材の一新」以上に、何ら更迭の理由さえまともに述べられないという情けない状態であった。

更迭といえば、一見官僚トップに責任をとらせたように見える。しかし、松永、保坂、細野の三氏は、既にどこかに美味しい天下り先が決まっているような立場の方々で、トカゲの尻尾切りどころか単にご勇退をなさるだけのことであり、この更迭劇は、経産省の見え透いた組織防衛にすぎないことを元官僚の岸氏が朝日系のテレビ報道の中でも、明らかにしている。

実際、この更迭人事が人材の一新どころか、経産省の体質改善に何らつながってはいない。それについては、時事通信で指摘されているとおり、資源エネ庁出身の経産政策局長をそのまま次官のイスに据えるという、お決まりの官僚主導の後任人事が進められるらしいことからも、自明である。

経産省にとっての巨大権益である原発を擁護することで、海江田氏は、官僚と経済界にすり寄り、更迭劇のパフォーマンスをすることで、国民へのアピールと時期総理のイスを狙っておられるのかどうかは知らない。

けれどもこの茶番劇や、辞任をほのめかしながら、一向やめる兆しがなかったり、ちょっと個人的な追及を受けただけで、女々しく泣き崩れるなど、国の将来や日本の経済産業の運命を預かるリーダーとして、あまりにお粗末であり、情けなすぎる。

「人事権は私にある」のであれば、そして「民意を重視する政治家」なのであるならば、これまで経産省が更迭・退職勧奨したような反骨精神を持った官僚や、元官僚で、あるいは民間からの登用で組織のトップ集団を固めるぐらいの英断をしなければ、これで「人材の一新」では、片腹痛い。

何でもいいが、経産省、資源エネ庁、保安院のような、トップを辞めさせなければならないような問題のある官僚組織に、未だに国のエネルギー政策や、電力問題について大きな発言権を与え、原発再稼働のための安全チェックを任せていることの問題性について、誰も論じようとはしないが、これほどの疑問があるだろうか。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011080400994&j4


難しい「体質改善」=次官ら更迭でも-経産省

 政府は4日、経済産業省の松永和夫事務次官(59)ら幹部3人の更迭を決めた。表向きの狙いは東京電力福島第1原発事故の対応の遅れや電力各社への「やらせ」要請など問題の根底にある電力業界とのもたれ合いの解消。しかし、次官の後任は、安達健祐経済産業政策局長(59)という「次期次官の指定席」からの登用だ。しかも安達氏は電力業界と関係の深い資源エネルギー庁電力・ガス事業部長を務めた経験まである。
 海江田経産相は「安達氏は電力の問題に柔軟な考え方を持っている」と強調。実際に安達氏は電力自由化を進めた村田成二元事務次官(66)に近く、事務局を務めた審議会で電力会社の発電部門と送電部門の分離を打ち出すなどしている。
 とはいえ「経産省嫌い」の菅直人首相の求心力低下を見据え、官僚組織が海江田経産相を抱き込んで「官僚主導」の人事を貫徹したとの見方もできる。経産省の「体質改善」が一筋縄で進まない実態をあらわにしたともいえそうだ。(2011/08/04-21:42)



  
http://getnews.jp/archives/133579



海江田経産大臣による「更迭人事」は浅はかな演出

2011.08.04 15:42:05 by 深水英一郎
海江田経産大臣が4日朝に発表した更迭(こうてつ・中央省庁官僚に対する左遷のこと)人事。いかにも人材一新を図る、という口ぶりでの発表だったが、この3名はそもそもこの夏の人事異動で「勇退」するであろうとされていた方々らしい。「勇退」とはつまるところ、どこかへ天下りしていく、ということ。それは「更迭」ではなくて「花道」とでも言うべきなのでは…じゃぁわざわざ「更迭人事」を演出するのは何故だろう。元経産官僚で、慶応義塾大学大学院教授の岸博幸さんにきいたところ、コメントをいただくことができた。

岸博幸さんのコメント:
今回の人事は海江田経産大臣の政治決断でも何でもなく、経産省の事務方と一緒に作った出来レースに他ならず、その狙いは経産省の組織防衛だということです。
官僚の側からは組織防衛のための防衛線を構築でき、海江田大臣の側からすれば政治的な手柄を作れるという、両方にとってメリットのある行動なのです。
本来更迭された3人は、定期異動で辞めておかしくないヤツばかり。それが辞めるのは更迭でも何でもありません。国民はこんな浅はかな演出に騙されてはいけません。
※岸さんのツイッターアカウントでも関連のツイートを読むことができます
https://twitter.com/#!/hiroyukikishi [リンク]
古賀茂明氏を事務次官に
今回、更迭される3名は以下の方々。
・松永和夫(事務次官)
・寺坂信昭(原子力安全・保安院長)
・細野哲弘(資源エネルギー庁長官)
特に松永次官は、改革派の古賀茂明氏に対して法的根拠のない「クビ宣告」をおこない「とにかく早く辞めろ」と迫った人物として有名だ。また「津波に弱い」発電所の原因となった津波想定5.7メートルを認めた当時の原子力安全・保安院長でもある。それらの人物に対しての更迭劇が海江田大臣の「手柄」のための「演出」だったとすれば、まさに私たちの目を欺いているとしか言いようがない。昔ならマスコミとのアウンの呼吸でそのような手も使えたかもしれないが、今やネットで事情に詳しい方のさまざまな意見をきくことができる。また、検索すればさまざまな資料をすぐにひっぱりだせる時代だ。例えば、歴代の事務次官がどこに天下っているかは、数秒でリストを引き出せ、実態を知ることができる( http://bit.ly/nFQe57 )。そんな時代である。わたしたちに疑念をいだかせるような出来レース人事に意味があるのだろうか。
もちろん、松永次官の後任として改革派の古賀茂明氏を就任させる、というサプライズでもあるのであれば、海江田大臣の言う「事務局の人心一新を図りたい」は本気だと捉えることもできるが……。失点続きの中「経産省の解体」という話もきかれる昨今ではあるが、更迭された人達の行く先と、後任人事に注目だ。
経済産業省