2012年5月27日日曜日

WHOの被ばく線量推計を批判できるの?

WHOがこのほど発表した原発災害による被ばく線量の推計は日本の試算を上回るものであった。

藤村官房長官は、WHOが日本の水産物の出荷制限などを考慮していないと、この推計を批判した。

しかし3.11以降、日本政府は東電と一体になって情報隠蔽を繰り返し、原子力災害と放射能汚染の過少化を事故直後から絶えず行い国民の目を欺き続けてきた。

その上に高濃度の放射性物質に汚染された食料を摂取することに健康上の不安を頂き始めた国民の消費行動を「風評被害」と厳しく非難した。形ばかりの出荷制限の網をくぐり抜け産地偽装、県外漁港への水揚げなど様々な手段で、全国にばらまかれ、巧に加工・消費されてしまった農・水・畜産物は数知れない。

計測のノウハウを持っている国際的な環境保護団体が福島県沖の海洋生物の放射能汚染度の計測を申し出たが、政府はこれを拒絶し続けた。このような国民の健康を守ることから逆行するようなことをしておいて、WHOの推計を批判できるような立場にはないはずである。

食品に関して言えば、ドイツでは危険とされているような基準値のものが、日本では、今日も当たり前のように流通しているのである。

特にセシウムと心臓疾患の関係については、ベラルーシの医科大学の元学長である医師が、チェルノブイリの事故から蓄積したデータに基づいて、警告を発しているが、日本の放射線防護学の専門家は、その影響を否定している。

何が正しいかは歴史が教えてくれることだろう。

しかし、日本の総人口が激減してからでは遅い。今からでも除染不可能な地域の住民を即刻、集団疎開させるような政策を策定すべきである。

危険な4号機の燃料プールからの燃料取り出し、廃炉作業など、福島県民が枕を高くして寝られるようになる状態にするまでには、積み残された課題は山積みであり、フクイチの放射能災害の真の収束からは、まだまだ程遠いというのが偽らざる現状なのであるから。

http://www.47news.jp/47topics/e/229608.php
浪江町で10~50ミリシーベルト WHOが被ばく線量推計


世界保健機関(WHO)は23日、東京電力福島第1原発事故による国内外の被ばく線量の推計値を発表した。内部被ばくと外部被ばくを合わせた全身の被ばく線量が最も高かったのは福島県浪江町と同飯舘村で10~50ミリシーベルト。2町村を除く福島県全域は1~10ミリシーベルト、同県を除く日本全体では0・1~10ミリシーベルトだった。
 WHOは「情報量が限られている上、屋内外で過ごした時間など多くの仮定を基に計算している」と説明。被ばく線量の過小評価を防ぐため、数値が過大になっている可能性もあるとしている。
 報告書によると、推計値は昨年9月までに日本政府が公表したデータを基に、外部被ばく線量と、呼吸や食品を通じた内部被ばく線量を計算。原発から20キロ圏外の計画的避難区域の住民は事故後に大半が避難したが、推計では4カ月間住み続けたと仮定した。
 福島県内で数値が高かった地域は外部被ばくによる影響が大きかった。日本以外の地域は0・01ミリシーベルト以下だった。
 1歳児の甲状腺の被ばく線量は、浪江町で100~200ミリシーベルト、それ以外の福島県では10~100ミリシーベルト、日本各地では1~10ミリシーベルトとした。
 今回の推計に対し、内閣府・原子力被災者生活支援チームの福島靖正(ふくしま・やすまさ)班長は「福島県産の海産物の出荷制限など政府が取った防護措置が考慮されておらず、実際の被ばく線量よりもかなり過大になっている」と話している。(佐分利幸恵)
 (2012年5月23日、共同通信)

福島で基準値超え水産物多く

2012.5.19 21:08 放射能漏れ
 4月に食品中の放射性セシウムの新基準値が適用されて以降、5月17日までに全国の自治体などから計2万3657件の検査結果が厚生労働省に報告され、うち622件が新基準値を超過している。
いずれも野菜や魚などの一般食品(同100ベクレル)だった。
 検査結果を食品群別で見ると、基準値超えが最も多いのは農産物で370件。水産物は245件だった。
 都道府県別では福島が最も多く、検査した3601件のうち256件が超過した。水産物は707件を検査し、約25%にあたる175件が超過。ヒラメやマコガレイなど35種に及ぶ。一方、農産物は、1558件検査して、超過は約5%の80件だった。
 
福島、宮城、岩手の被災3県では、農産物計2168件を検査し、超過は253件で約12%。一方、水産物は、計1186件を検査し約17%にあたる196件が超過した


http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2012/05/20120526s01.htm


放射能大量放出/原子炉損傷の原因究明を

 深刻な放射能汚染をもたらした東京電力の福島第1原発事故。原発の外に放出された放射性物質はどれほどだったのか、東電がようやく明らかにした。
 昨年3月中だけで、総量は90万テラベクレルになるという。経済産業省原子力安全・保安院が2月にまとめた量(48万テラベクレル)のほぼ2倍になる。
 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(520万テラベクレル)と比較すると、その6分の1程度だが、膨大な放射能であることに変わりはない。
 東電はいつ、どこから放出したのかも推計を示した。だが、なぜそうなったのかの説明は不十分だ。ほどんどのケースについて「原子炉建屋からの放出」と言っているにすぎない。
 原子炉圧力容器や格納容器の損傷はどう進んでいったのか。炉心溶融(メルトダウン)によるのか水素爆発によるのか、それとも別の要因なのか、放射能放出と原発の健全性に関わる検証を徹底的に行うべきだ。
 今回の放出量は、実測された放射能や気象のデータを基にモデル計算して出した。対象になった物質はヨウ素131とセシウム134、137、さらに希ガス(クリプトンとキセノン)の3種類。
 時系列でみると、ヨウ素とセシウムの放出量は昨年3月14日夜に一気に増え始め、20日ごろまで断続的に大量放出が続いている。
 東電によると、格納容器内の気体を抜くベントや水素爆発の際の放出量は少なく、ほとんどすべてが格納容器からの漏れだという。
 理由として、格納容器上部のふたが高温と高圧で損傷した可能性が指摘されている。原子炉の本体である圧力容器の中でメルトダウンが起き、その外側にある格納容器も高温になったためだとされる。
 だが格納容器内に放射性物質が充満しなければ、損傷だけでは大量放出は起きない。ヨウ素やセシウムはもともと圧力容器の中にあった物質であり、圧力容器やその配管などが損傷して漏れ出たとしか考えられない。
 損傷を受けた原因はメルトダウンや水素爆発の衝撃、さらに地震など可能性はさまざまに想定できる。いずれにせよ、圧力容器も含めて健全性がどうだったのか、きちんと検証されるべきだ。
 東電の資料によると、事故後に最も早く放出されたのは希ガスで、12日未明から朝にかけて1号機から2万テラベクレルもが放出された。だが、まだ水素爆発は起きず、ベントも行われていなかった。
 東電の中間報告によると、1号機の圧力容器内の圧力は12日の午前中、一気に低下したことが分かっており、希ガスの放出と時間帯がほぼ一致する。
 地震の半日後には早くも、1号機の圧力容器などが重大な損傷を受けたことを意味する。メルトダウンの衝撃だけでなく、もともとの強度や地震の揺れの影響も含めて、損傷の原因を解明すべきだ。
2012年05月26日土曜日

    http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/8780463ce90b6ad4cd1f8567f548dcfb/

    セシウムによる健康被害を解明したベラルーシの科学者が会見、心臓や甲状腺への蓄積を深刻視(1) - 12/03/22 | 18:17

    福島第一原発事故をきっかけに始まった福島県による「県民健康管理調査」――。同調査の進め方を議論する「県民健康管理調査検討委員会」が配布した資料には次のような記述がある。

    「チェルノブイリ原発事故で唯一明らかにされたのは、放射性ヨウ素の内部被曝による小児の甲状腺がんの増加のみであり、その他の疾病の増加については認められていません」(昨年7月24日に開催された第3回検討委員会配布資料)。

    こうした見解とは真っ向から異なる研究結果を盛り込んだ著書『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響――チェルノブイリ原発事故被曝の病理データ』(著者はユーリ・バンダジェフスキー・元ゴメリ医科大学学長)の日本語訳(合同出版刊)が刊行され、大きな注目を集めている。

    同書に関心が持たれているのは、バンダジェフスキー氏による研究がほかに類を見ない独創性を持つうえ、その内容が衝撃的なことにある。

    バンダジェフスキー博士やゴメリ医科大の研究スタッフは高濃度の放射性物質に汚染されたベラルーシのゴメリ州で死亡した400人を上回る患者の遺体を解剖。各臓器のセシウム137蓄積量を測定したうえで、
    特に心血管系疾患で死亡した患者の心筋に多くのセシウム137が蓄積されていたことを突き止めた。

    「チェルノブイリ事故後に突然死した患者の剖検標本を検査したところ、99%の症例で心筋異常が存在することが明らかになった。とくに注目すべき所見は、びまん性(広範囲に広がっている状態)の心筋細胞の異常で、これはジストロフィー病変と壊死の形態をとり、毒作用が働いている証拠である」と同書は指摘。

    「(ベラルーシの)ミンスクの子どもの体内セシウム137濃度は20ベクレルキログラム以上であり、彼らの85%が心電図に病理学的変化を記録している」とも述べている。

    国際放射線防護委員会(ICRP)が昨年4月4日に公表した「ICRP Publication111」(全文はhttp://www.icrp.org/docs/P111(Special%20Free%20Release).pdf)の21ページには、「1日に10ベクレルのセシウム137を摂取し続けた場合の体内での蓄積状況」についてグラフが示されている。

    このグラフによれば、約500日で体内のセシウム137蓄積量は1400ベクレルに到達する。体重が50キログラムであると仮定した場合、1キログラム当たりの蓄積量は28ベクレルに相当する。

    1日10ベクレルの摂取は、食品安全委員会が定めた4月からの新基準(一般食品の場合で1キログラム当たり100ベクレル以下、乳児用食品および牛乳の場合で1キログラム当たり50ベクレル以下)での許容量に照らしてもきわめて小さい数値だ。セシウム137を体内に摂取したことによる健康被害が、ごくわずかな摂取量から起こるとしたら、福島第一原発事故による影響はきわめて深刻になりかねないと言える。

    セシウムによる健康被害を解明したベラルーシの科学者が会見、心臓や甲状腺への蓄積を深刻視(2) - 12/03/22 | 18:17



    また、甲状腺はセシウム137が最も多く蓄積する臓器であることもバンダジェフスキー氏による調査で判明。「チェルノブイリ事故後の甲状腺異常は、(物理学的半減期が約8日の)放射性ヨウ素だけでなく、生体内や甲状腺に持続的に取り込まれた放射性セシウム(セシウム137の半減期は約30年)と、甲状腺ホルモンに結合するさまざまな免疫グロブリンの能力にも関連すると考える」とバンダジェフスキー氏は著書で指摘している。

    バンダジェフスキー氏は、ボランティアグループ「放射能防御プロジェクト」(木下黄太代表)の招きで来日。東京や札幌、仙台など全国5カ所で開催された計9回にのぼる一般向け講演会の来場者は4500人に達した。そして3月19日には、衆議院第一議員会館内でマスコミ向け記者会見および国会議院や政府関係者、マスコミを対象とした院内講演会が開催された。

    以下の内容は記者会見および東洋経済記者の単独インタビューによるものだ。

    ■以下は記者会見での質疑応答

    ――バンダジェフスキーさんは突然死やさまざまな心疾患、放射性セシウムの体内蓄積について研究してこられた。昨年から今年にかけて福島県内でも高校生の突然死が起きている。セシウムとの因果関係については何の表明も報道もされていないが、亡くなった方の臓器のセシウムを測定することに意味があるか。

    環境に高いレベルで放射線があるところで暮らしていると突然死の可能性がある。ゴメリ医科大の学生でもそういう例があった。

    放射性セシウムは特に心臓に激しい攻撃を加える。心筋細胞にセシウム137が取り込まれると、エネルギーの産生(合成)ができなくなり、突然死につながる。

    実際に解剖して測定すると、セシウム137の蓄積が確認できる。
    セシウム137は20~30ベクレルキログラムという低レベルの蓄積でも心拍異常が起きている。それが突然死の原因になりうる。
    福島第一原発事故の被災地では、子どものみならず大人も対象に被曝量に関する調査が必要だ。

    ――福島原発事故でも、放射性物質を体内に取り込む内部被曝への懸念が強まっている。日本に来日して、原発事故の深刻度をどのように感じているか。

    残念ながら日本人は情報が少なすぎる。(政府当局は)情報を隠している。今のような形で情報を隠し続けると、(対策の遅れによって)数十年後に日本の人口は激減してしまう。この悲劇を小さな事故だと見なしてはいけない。

    福島第一原発事故ではさまざまな放射性核種が飛散し、非常に高い汚染レベルの地域が広がっている。
    しかし、体内に取り込んだ放射性核種の量をきちんと測定していないのは大きな問題だ。

    セシウムによる健康被害を解明したベラルーシの科学者が会見、心臓や甲状腺への蓄積を深刻視(3) - 12/03/22 | 18:17



    日本の医師や学者のチェルノブイリ事故での研究成果を私は知っている。1994年にゴメリ医科大学ではシンポジウムを開催したが、そこにも日本から専門家が来てくれた。その中で私たちが

    発表したセシウムが心臓に非常に危険であるという

    ことを日本の方々は理解してくれた。その経験が生

    かされていない。

    このように情報がない状態でどうやって、国民の救済ができるのか。沈黙を強いる政策の結果、ロシアやベラルーシでは人口統計上悲惨な結果が起きた。私たちが経験したことを日本はもう一度繰り返そうとしているように思える。

    津波で散乱したがれきは放射性物質を含んでいる。汚染源のがれきは大至急廃棄すべきであり、日本全国にばらまくべきではない。

    このような沈黙を強いるやり方が旧共産党政権下で行われているならばわかるが、21世紀の今日、民主主義国である日本で行われているとは信じがたい。

    ――4月から日本では食品に含まれる放射性物質について新しい基準値が設定される。これをどう評価しているか。

    食品中に放射性物質が含まれていること自体が非常に危険だ。新基準で食品に含まれるのを許容するベクレル数を引き下げたことは肯定的な動きだが、ベラルーシでは1999年から用いられている基準のおかげで国民は放射性物質を摂取し続けている。

    食品を通じて体内に取り込んだ放射性物質は体のさまざまなシステムに影響を与える。このことは(放射線の照射である)外部被曝と比べても数段危険だ。

    ――仮に内部被曝をきちんと管理できた場合、土壌汚染地域で安全に生活できる閾(しきい)値はどれくらいか。具体的には(年間の積算放射線量が数ミリシーベルトに達する)福島市や郡山市、二本松市で生活することに問題はないか。

    牛乳を例に取ってみると、クリーンな牛乳は50ベクレルキログラム以下とされている。しかし、それ以下であれば安全という基準はない。基準以上であれ以下であれ、両方とも危険だ。基準とはあくまで運用上のものにすぎない。

    長い間汚染された地域に住む人が放射性核種を体内に取り込むとさらに危険が増す。最も危険なのは食品を通じて臓器に放射性物質が取り込まれることだ。

    病気が誘引される放射性物質の濃度や放射線量ははっきりしない。ただ、子どもの場合、体重1キログラム当たり10~30ベクレルのセシウム137を取り込んだ子どものうち約6割の子どもで心電図に異常が出ている。

    セシウムによる健康被害を解明したベラルーシの科学者が会見、心臓や甲状腺への蓄積を深刻視(4) - 12/03/22 | 18:17


    さらに
    蓄積量が多くなると、心臓の動きの悪い子どもの


    数がどんどん増加していることがわかった。ベラルーシの汚染


    地域ではそういう子どもがたくさんいる。だから子どもの死亡が


    多い。

    チェルノブイリ原発から30キロメートルにあるウクライナのイワンコフ地区では人口1000人当たり30人が1年間に死亡している。キエフ州全体では18人だが、これも多いほうだ。


    ■以下は東洋経済記者による単独インタビュー

    ――福島県では県民を対象とした健康管理調査が始まっている。ただ、この調査に基づく健康診査は原発事故の避難区域に住んでいた住民および推定被曝線量が高いとみなされた住民のみが対象であり、健診の項目も0~6歳の乳幼児の場合、身長や体重、血液検査に限定されている。甲状腺検査も2年に1度にとどまる。

    健診は必要だ。汚染地域の住民全員を対象にしなければならない。汚染地域は放射性物質が少量でもあるところも含まれる。東京も該当する。体内に取り込んだ汚染の濃度を調べないといけない。甲状腺や心臓、腎臓、肝臓、血液の検査が必要だ。頻度は半年に1度とすべきだ。

    ――福島原発事故による内部被曝の影響についてはきちんとした調査が行われていない。医学界や医療界は健康影響を深刻に受け止めているとは言いがたい。このような状況はどうすれば打開できるか。

    世論や国会議員の意思で、健康被害を予防するためにきちんとした健康影響調査を義務付けるべき。被害を未然に防ぐためにも、今こそ行動を起こすべきだ

    ドイツ放射線防護協会、1kgあたり8ベクレル(Bq)以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことを推奨

    未成年者は1kgあたり4ベクレル(Bq)以上、成人は1kgあたり8Bq 以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことを推奨
    ドイツ放射線防護協会が、福島原発事故の発生後の日本において、放射線核種(放射性物質)を含む食物の摂取による被ばくの危険性を最小限に抑えるため、チェルノブイリ原発事故の経験をもとに考察・算定を行い、以下の提言を行っている。
    1‐放射性ヨウ素が現在多く検出されているため、日本国内に居住する者は当面、汚染の可能性のあるサラダ菜、葉物野菜、薬草・山菜類の摂取は断念することが推奨される。
    2‐評価の根拠に不確実性があるため、乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4ベクレル(Bq)以上のセシウム137を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kgあたり8Bq 以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことが推奨されるべきである。
    3‐日本での飲食物の管理および測定結果の公開のためには、市民団体および基金は、独立した放射線測定所を設けることが有益である。ヨーロッパでは、日本におけるそのようなイニシアチブをどのように支援できるか、検討すべきであろう。
    飲食物を通じた放射性物質の摂取は、長期間にわたり、身体にもっとも深刻な影響を与え続ける経路となる
    飲食物を通じた放射性物質の摂取は、原子力災害後、長期間にわたり、身体にもっとも深刻な影響を与え続ける経路となるとし、半減期2.06年のセシウム134、半減期30.2年のセシウム137、半減期28.9年ストロンチウム90、半減期2万4,400年プルトニウム239といった、長期間残存する放射性物質に対して、長期的に特に注意を要するとしている。
    日本の野菜・穀物・肉類のセシウム規制値は500ベクレル(Bq)/kg
    暫定規制値
    日本の野菜・穀物・肉類のセシウム規制値は500ベクレル(Bq)/kgとドイツの成人の約8ベクレル(Bq)/kgと比べて極めて高い基準である。日本で「直ちに影響はない」として流通している野菜等もドイツ基準では危険となる。
    被ばくの程度が高いほど、がんによる死亡率は高くなる
    ドイツの被ばく線量の限界値が年間0.3mSvなのに対し、日本では原発事故後に、1mSvから20mSvに引き上げられた。福島県放射線健康リスク管理アドバイザー・山下俊一長崎県大学教授に至っては、過去「100mSvまでは大丈夫」と発言していた。
    国際放射線防護委員会(ICRP)は被ばくを年間0.3mSv受けた場合、後年、10万人につき1~2 人が毎年がんで死亡すると算出している。しかし、ドイツ放射線防護協会が広島と長崎のデータを独自に解析した結果によれば、その10 倍以上の10万人のうち、およそ15人が毎年がんで死亡する可能性があるとし、被ばくの程度が高いほど、それに応じてがんによる死亡率は高くなると結論づけている。


    チェルノブイリ原発から西へ約70km離れたウクライナ・ナロジチ地区---。この地域への支援を長年行ってきたNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」理事の河田昌東氏が言う。
    「ナロジチ地区中央病院から提供してもらった、子どもたちの健康状態に関する実数データがあります。これを見ると、大人と子どもでは病気の発症率に数十倍から100倍近い差があるのです」
    よく指摘されるように、チェルノブイリ事故後、周辺地域で幼児の甲状腺がんが急増したのは、母親の母乳を通じて放射性ヨウ素が子どもの甲状腺に集まった結果だった。事故の汚染地では、通常の小児甲状腺がんの数十倍以上の発生率を示したケースもあった。
    だが、河田氏は「本当に恐ろしいのは甲状腺がんだけではない」と言う。
    「甲状腺がんは事故から10年後が発生のピークでしたが、それ以降は減っています。そのかわり、それ以外のがんを含む全体のがん発生率は事故後から10倍以上に増えているのです。ナロジチ地区中央病院における児童1000人あたりの人口罹病率では、'08年で新生物(がん)は12・3人。じつに100人に一人以上の子どもが何らかのがんに罹っている計算になります」
    がん以外の多くの疾患でも、この20年あまりで子どもたちの罹病率は驚くほど増加している。
    「呼吸器系疾患は'88年に1000人あたり116人だった罹病率が、'08年には603・6人になっています。これには風邪も含まれているので数が非常に増えていますが、放射線被曝によって免疫力が低下したことが原因です。
    心臓血管系疾患は、およそ2倍に増えている。この多くは放射性セシウムの内部被曝による影響です。最近の研究で、セシウムは体内に入ると心臓にもっとも濃縮されることがわかっています。心臓は鼓動することによってエネルギーを消費するわけですが、その細胞の中にはエネルギーを生み出すミトコンドリアという細胞内構造物がたくさんあります。セシウムはこのミトコンドリアの機能を破壊することがわかっている。その結果、子どもだけでなく大人にも心臓血管系の病気が増えているのです」
    2011. 4. 6

    チェルノブイリ事故調査結果を基に長崎大の山下俊一教授が明言

    「放射性セシウム汚染で疾患は増えない」


    福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーを務める長崎大大学院医歯薬学総合研究科教授の山下俊一氏が4月5日、日本財団主催の緊急シンポジウム「福島原発事故~“誰にでもわかる”現状と今後~」で講演。いま環境中に放出されている放射性物質の健康影響について、「その線量は極めて微々たるもので、全く心配が要らない量だ」とし随時モニタリングされ適切な対策がなされている現状では、「いまの日本人に放射性降下物の影響は起こり得ない」と断言した。現在、世界保健機関(WHO)緊急被ばく医療協力研究センター長でもある山下氏は、1986年4月に起きた旧ソ連邦ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所の事故後20年間、現地での医療支援活動や健康影響調査に携わってきた被曝医療の専門家。