2011年5月5日木曜日

事故調査委員会のメンバーは原子力村以外の人材を

飲食店が食中毒を出せば、直ちに店は営業中止になり、保健所による立入検査や消毒が始まる。食中毒を出した飲食店の社員が勝手に食中毒を起こした病原菌はうちで計測したところ基準値以下になったから、うちで作ったものを食べても健康被害はないと言い放ったり、自社で勝手に営業再開に向けての工程表を作ったりするなどということは常識では考えられないことだ。店任せにしていては、1日でも早く営業再開をしたいばかりに、虚偽の申告をするかもしれないし、当事者で徹底的な消毒ができるかどうかは疑わしいと考えるのが当然だろう。

ところが、おもしろいことに、話がこと原発になったとたんになぜか状況は一転する。ちょうど5日ほど前、青山繁晴氏が福島第一に入って取材したときに、「事故以来、外部の原子力の専門家は誰一人として現場に来ていないし、来ようともしていない」という話を、発電所の職員から聞いたと報告していた。つまりこれほどの事故があったにもかかわらず、政府は何の疑念も持たずに、加害者から挙がってくる報告のみを信じ、それを唯一の事態収拾に向けての意思決定の判断材料にしていたということになる。


現場対応についても、むろん、東電が自分たちで処理できる力を持って迅速に収拾できるのであれば、外部から専門家を入れても船頭多くして船山に登るような結果になるかもしれない。しかし、東電は明らかに当事者能力を失い、消防隊や海外から力や知恵や機械を借りなければ、自分たちだけでは対応できない状況に陥っていたのである。

ならば、少なくともそれが明白になった時点で、一刻も早く保安院と原子力安全委員会のお歴々が、直ちに健康被害のない福島第一の現場に駆けつけ、陣頭指揮を執るか、それができないのならば、少なくとも東電が数値をごまかしてはいないか、計測が正確に行われているのか、計測器は正常に作動しているのかどうかを厳しくチェックし、ベントや注水の作業が適切に行われているか否か、現場で監督・指示・報告する責任があったのではないのか?

レベル7の深刻な事態は、短期間で収拾できるめどさえ立たないことが明白になったのだとすれば、一日も早く事故調査委員会を立ち上げるべきであろう。

事故調査委員会のメンバーは、原子力安全委員会やそれを取り巻く原子力村の御用学者や関連企業の代表者などは一切排除すべきであろう。中村幸一郎氏や小佐古敏荘氏、小出裕章氏や武田邦彦氏など、この国の中にもまだ人材はあるし、国内で足りなければ全世界から広く人材を求めればいい。なんとなれば、福島原発の事件は、国のボーダーを越える類例を見ない世界的な事象なのだから。

米国原子力規制委員会のヤツコ委員長は4日アメリカの下院で福島原発の事態はほとんど改善していない」と証言している。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20940820110505

当事者が示す工程表なんて何の意味もない。気休めにすらならない。「思いの外、作業に手間どった」といえば、いくらでも言抜けはできるのだからーー。それよりも現場の状況を何も見ないで本店で作られたような工程表が、現場の枷になり、それが原因で大きな事故を引き起こすような事態に至らぬことを祈りたい。