2011年6月28日火曜日

他山の石:チェルノブイリ事故25周年

チェルノブイリ原発事故から25年、今も放射線への不安が続くという。各国はチェルノブイリや福島原発から多くを学んだというのに、日本はチェルノブイリを対岸の火事と見過ごし、他山の石としてこなかったばかりか、福島からも何も学ばず、途上国並みにいつまでも安上がりな原発に頼ろうとするのだろうか。


東海道新幹線のグリーン車で無料配布されている、アッパーミドルクラスの情報誌を標榜するJR東海の機関紙Wedgeの7月号には、「それでも 原発動かすしかない」という大見出しが躍る。

決して原発事件のつけが安上がりではないことを百も承知しながらーー。



チェルノブイリ事故から25年、今も続く放射線への不安

2011.04.27 Wed posted at: 09:48 JST

(CNN) 史上最悪となったチェルノブイリ原子力発電所の事故発生から25年目を迎えた26日、ウクライナの首都キエフで追悼式典が行われ、同国のヤヌコビッチ大統領、ロシアのメドベージェフ大統領らの一行が原発の跡地を訪れた。

式典は現地時間で事故発生時刻の同日午前1時23分に始まり、25回の鐘が鳴らされた。

福島第一原発の事故が収束せず、原発の安全性に対する不安が改めて世界に広がる中、ヤヌコビッチ大統領は「あれから25年が過ぎ、原発事故は住民にとてつもない結末をもたらした」「1国だけではこのような大惨事に対応できないことを世界が思い知った」と指摘。メドベージェフ大統領は、原発事故の再発を防ぐために新たな国際基準が必要だと訴えた。

原発から約50キロ離れたスラブティチの町でも慰霊碑前で追悼式典が営まれ、参列者が花束やろうそくを供えた。事故で犠牲になった作業員の多くはこの町に住んでいた。

現場周辺では、1986年4月26日の発生から25年たった今も、放射線への深刻な安全不安が消えていない。爆発が起きた4号炉を覆う石棺は老朽化が進んでひびやさびが生じ、建て替えが必要になっている。

国際原子力機関(IAEA)によると、当時事故処理に当たった作業員など28人が直後に死亡。強い放射線を浴びた20人以上がその後数年以内に死亡し、事故の影響によるがんで死亡した人は推計4000人に上るとみられる。放射性物質は当時のソ連や欧州にまで飛散した。

福島第一原発の事故を受けて、ドイツなど反原発の世論が高まっている国もある。しかしそれほど裕福でない国が大量に電力を必要とする場合、安上がりな原発に依存するほかないという現実もあるとの意見もある。

こんな国際協力って許されるのでしょうか?:あなたは汚れたものを弱者にあげますか?

私は今日も開いた口がふさがらない。政府が、26日ODA予算から、被災地でとれたサバやサンマなどの水産物の加工品(缶づめなど)を優先的に買い上げ、それを途上国に送ること、そして風評被害対策の一環として外国人研修員を被災地に受け入れるという方針を打ち出したからである。

たしかに途上国から義捐金を送ってもらわなければならないような状況にあるときに、見えをはって今年もODAに1兆何千万円もの国際援助を行うのはどう言うことなのかと前にブログにも書いた。

この方針は途上国を援助し、被災地の復興にもつながるから一挙両得と手放しで喜ぶ人もいるかもしれない。

しかしこの世の中には、やっていいことと悪いことというものがある。

震災のときに、汚れた下着や洋服をそのまま避難所に送りつけるような心ない人間がいるということが神戸のときにも、今回も問題になった。そのためか、今回は被災地に衣類を送る人々に対して、「新品か、それに準じるもの以外は送るな」というような指示がテレビ等を通して度々出されていた。

しかし、もし自分が避難者の立ち場で、着の身着のまま洗濯もできず、寒い避難所で震えているような状況であれば、きれいに洗濯さえしたものであれば、ぼろぼろに破れていたり、穴があいていたり、ジッパーが壊れたりしていない限り、古着であれ、なんであれ「送って下さる方々の行為を有難く思うし、自分の身体のサイズに合うものであれば、新品じゃないから嫌だとか、あれこれえり好みせず喜んで使わせて頂きたい」と思うのではと思う。

ちなみに私は、高校時代に来ていた古着を何十年たった今でも毎年引っ張り出してきて普通に愛用しているし、外に着て出て、お世辞とはいえ人に褒められることすらある。バブル期ならばいざ知らず、一般庶民は、皆苦しい家計をやりくりし、高い税金を払い、将来大きな不安を抱えながらなんとか生活しているような時代に、「被災地に、新品、またはそれに準じるものでなければ送ってはいけない」というのは、本当にどういうことなのかと個人的には思ってしまう。

もちろん、救援物資のために新しいものを買う人が増えて、繊維業界の景気を煽る一助にはなるかもしれないけれども。

もちろん被災地の人々の自尊心を守ってあげなければという気持ちはわかるし、「洗濯をするのが億劫だから」と不潔な衣類を被災地に送りつけるなんてことは、もってのほかである。ただ、多少垢やシミのついたしわだらけの衣類が送られたとしても、それを身につけることで避難者の健康が著しく損なわれるような危険性はまずないし、それで暖をとれるならば、ないよりあった方がいい。

しかし、被災地の水産加工食品は、人々の健康が著しく損なわれないという保証はどこにもない。
被災地の食品を摂取することの危険性については、武田邦彦氏がそのブログで度々訴えている。
京大の小出助教は、6月11日付で、「海の汚染を調べれば被災地の漁師の生活を壊す。私は躊躇する」とさえ言う。
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/06/22/tanemaki-jun2/

政府は、海の汚染に関して、3.11から100日以上もたった今なお、風評を払拭させるような説得性のあるデータ収集・開示の努力はなんら行ってはいない。

いつ、どこで、誰が何をどんなふうに採取して、どんな状態のものを、どういうやり方で、どこのどんな装置をもって測定したのかもわからないようなごくわずかなデータのみを提示し、「基準値以下だ、安全だ」と繰り返すばかりである。

グリーンピースなど海洋調査のノウハウをもっている複数の国際的な調査機関と連携をとりつつ、被災地から数メートル間隔に広範囲に生えている海草を細かく採取し、世界に通用するような方法で、徹底的に汚染濃度の推移を測定し、世界の専門家の目から見ても、素人の目から見ても、誰が見ても安全であることを明示してこそ、初めて何が風評であり、何が風評でないか、何がどれほど安全なのかがおのずから明確になる。

現状では、当事者である東北地方の養殖業者や漁業関係者さえも、水産養殖業復興後、果たして本当にその地方でとれた水産物を全国の消費者がこれまでどおり買い続けてくれるのか疑問を呈しているぐらいである。

そのような状況下、東北の水産業者の復興を支えるがために、日本人が放射能汚染を恐れるような被災地の水産品を加工して、途上国に与え、国際協力を行うというである。

被災地の人々の自尊心は尊重するけれども、外国に暮らす弱者に対しては「何を与えても、すぐに死ななきゃそれでいい」ーーそれを国際協力などと言うことができるのだろうか。

もうひとつ、福島原発の作業員の被曝量が日々増加していくことで、危険な場所で作業する作業員不足の危機が近い将来、いつか訪れることは目に見えている。今回の国際協力の方針案は、その人員不足を、外国人研修員の受け入れで補おうとでもいうのであろうか。

一昔前、アメリカで知り合った女性の夫は、読み書きのできない黒人男性だった。しばらく定職がないため家でふらふらしていたが、仕事を始めたという。「どこで働いているの?」と誰かが聞くと、「原発に雇われたの」と答えた。

周りの人たちが彼女に聞いた。「えっ、ご主人、本当にあんなところで働いて大丈夫なの? 危なくない?」私の知人は「大丈夫じゃないかもしれないけど、給料がいいから。彼をそんな給料で雇ってくれるような場所は他にないからさ」と平然と答え、淋しげにほほ笑んだ。私はそのときの彼女のさびしげな様子がなぜか今も忘れられない。

「私の国では、そんな弱者の安全や命を札束で買うような阿漕なことはやっていない。やっていたとしてもそれは犯罪者と呼ばれる特異な人々だけである」とそのときは、自分の国を少し誇らしく思ったものだ。同じようなことが、自分の国の中でも長く行われてきたことを私は不覚にも何も知らなかった。

しかしこれからは、それがもっと国際的な規模で、国際協力という美名のもとに露骨におこなわれようとするのだ。ほんの一握りの人たちの莫大な既得権益を守らんがためにーー。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011062702000024.html

ODAで復興支援

2011年6月27日 朝刊
政府開発援助(ODA)配分など二〇一一年度の国際協力重点方針案が二十六日、判明した。東日本大震災被災地の水産加工食品などを購入して途上国に提供するなど、国際社会にも「開かれた復興に資するためのODA活用を最優先課題とする」と明記。被災地に外国人研修員を積極的に受け入れることで風評被害防止にも取り組むとした。
政府は二十七日に決定する。震災復興に巨額の経費がかかることからODAを削減すべきだとの意見が出ていることを意識し、復興への貢献を前面に打ち出した形。一部は一一年度第三次補正予算案に盛り込む考えだ。津波被害にあった宮城県の気仙沼、女川や青森県八戸など各漁港はサバやサンマの缶詰など水産加工品の産地で知られる。
方針案は、こうした加工品をODA予算で優先的に買い上げ、食料支援に充てることを想定。放射性物質の安全検査も実施し、輸入規制のかかっている国にも提供を働き掛ける。
円借款を含む全体の供与目標額は一兆三千七百七十五億円、地域別ではアジアが最多の八千六百五十億円と設定した。