2011年11月29日火曜日

http://mainichi.jp/select/science/news/20111130k0000m040020000c.html


玄海原発1号機:専門家「廃炉を」 保安院小会合で検討へ

玄海原発1号機(右)=佐賀県玄海町で、本社ヘリから田鍋公也撮影
玄海原発1号機(右)=佐賀県玄海町で、本社ヘリから田鍋公也撮影
 経済産業省原子力安全・保安院が29日に開いた原発の老朽化(高経年化)対策に関する意見聴取会で、九州電力の原発で最も古い玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の劣化の問題が取り上げられた。専門家からは、圧力容器の想定以上の劣化が明らかになったとして、廃炉を求める意見も上がり、劣化に関する現行の安全評価を見直すべきか小会合を設置して検討することを決めた。
 75年に運転が開始された玄海1号機は、炉心から出る中性子を浴びて圧力容器がもろくなる「脆化(ぜいか)」の進行が従来予測を大幅に上回っていることが判明し、急激に冷却すると圧力容器が壊れやすくなっているとの指摘がある。
 同1号機は来月1日から定期検査入りするが、小会合が安全評価の結論を出すのは来年3月末までの予定で、少なくともそれまでは再稼働が厳しくなる可能性が出てきた。また結論次第では九電の「安全性に問題はない」との説明を揺るがしかねず、廃炉を求める声が一層強まりそうだ。
 この日の意見聴取会では、井野博満・東大名誉教授が「予測をはるかに超えた劣化が進む玄海1号機を廃炉にすべきだと思う」と主張し、定期検査後の再稼働は「聴取会での議論もクリアすべき必要条件だ」と指摘。他の委員からは「圧力容器の安全性を評価する従来の手法そのものも見直す必要がある」との意見が出た。【阿部周一】
毎日新聞 2011年11月29日 19時19分(最終更新 11月29日 20時20分)

この国と原発:第3部・過小評価体質/4 耐用年数「限りなく」

製造中の圧力容器。老朽化しても取り換えが困難とされている=広島県呉市のバブコック日立呉事業所第2工場で07年11月、宇城昇撮影
製造中の圧力容器。老朽化しても取り換えが困難とされている=広島県呉市のバブコック日立呉事業所第2工場で07年11月、宇城昇撮影

 ◇「老朽」と呼ばぬ理屈

 「そちらの質問で初めて知りました」。10年12月、金属材料に詳しい井野博満・東京大名誉教授は、経済産業省原子力安全・保安院の課長補佐の回答にあっけにとられた。
 質問したのは、九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町、75年運転開始)の老朽化を巡る問題。九電が1号機の圧力容器について、09年時点の状況を分析したところ、炉心からの中性子を浴びることで材質がどの程度もろくなったかを示す「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」が「98度」と国内最高を記録し、未知の領域に入った。この数値が高いと、事故時に圧力容器が損傷する恐れがある。93年時点の56度から一気に跳ね上がり、九電内では「こんなに高いなんて」と驚きの声が上がったという。
 原発の老朽化対策は新品への交換が原則だが、圧力容器は交換が難しい。九電は「(国も認める)規定で評価した結果、損傷が起きる状態まではかなり余裕がある」と説明する。だが、規定が示す損傷の予測式は、定められた条件下での試算でしかなく、井野名誉教授は「前提条件を変えたり、別の式で評価すると、それほど余裕はない」と話す。
 そもそも予測式自体が改定を重ねている段階で、確定した式ではない。長谷川雅幸・東北大名誉教授(原子炉材料学)は「規定に十分な実績があるとはいえない。予想外の温度は何かの兆候かもしれない。慎重に対応すべきだ」と指摘する。
 こうした「老朽化」を日本の原発関係者は「高経年化」と呼ぶ。「必要に応じて設備などを取り換えており、理論上、原発は限りなく寿命を延ばせる。老朽化することはない」(原子力安全基盤機構の資料)との理屈だ。
 国内で原発建設が始まった60~70年代ごろ、主要機器の耐用年数は30~40年と想定されていた。だが、原発の新増設が難しくなってきた90年代後半、通商産業省資源エネルギー庁(当時)は、60年運転も視野に長寿命化へかじを切る。30年目を迎える原発は国に運転継続の認可を申請し、その後は10年ごとに申請する仕組みだ。
 今、運転30年を超えた原発は福島第1原発の全6基を含め19基に上り、うち日本原子力発電敦賀原発1号機など3基は40年を超えている。これまでの原発の歴史は「想定外」の連続だった。圧力容器内の隔壁や蒸気発生器など、設計時に交換を想定していなかった重要機器で、取り換えが必要になったケースは枚挙にいとまがない。
 今注目されている課題の一つは、原発1基で総延長2000キロにも及ぶ電気ケーブルだ。絶縁体がもろくなって断線すれば、原発を制御できなくなる。全ケーブルの確認は不可能で、細いケーブルは現場で調べる方法すら確立していない。
 原子力資料情報室の上澤千尋さんは「ボロボロだが何とか生き延びさせるという発想は、老朽化を軽視している」と批判する。
 野田佳彦首相は就任会見で「寿命がきた原発は廃炉にする」と明言した。だが「寿命」の定義は定かでない。現在、関西電力美浜原発2号機が40年超の、四国電力伊方原発2号機が30年超の認可を求め、保安院の審査を受けている。=つづく

中立性のある事故調査委員会は?

原発事故に関する調査委員会は、事故後いくつも作られている。

まず失敗学の畑村氏を委員長にする責任の所在を究明しない曖昧な調査委員会が作られた後、当事者である東電が内部に調査委員会を作り、続いて民間が調査委員会を作り、さらに今頃になって、国会が新しい事故調査委員会を作るという。

どの調査委員会のメンバーを見ても、最初に結論ありきの恣意的な人事であることが気になる。

大きな災害を起こし、嘘を積み重ねてきたような電力会社が作成した事故調査報告の信ぴょう性を疑わないのは、原子力神話に洗脳されてしまった原発関係者ぐらいのものであろうし、論外である。

しかし、それ以外の委員会についてみても、まず委員長に失敗学や腎臓の専門家など、それぞれの専門分野では功なり、名を遂げた科学者ではあっても、原子力工学に関しては全くの素人をトップに据えている点が特徴的である。

第2の特徴は、民間有識者と称して、元霞が関官僚や、原発推進企業と関わりのある企業や機関に関係する、あるいは原発推進、擁護に関して大きな発言力を持つビッグマウスの大学人や企業人、そうでなければ田中耕一氏など、これまた分野違いの有名な科学者を起用して、何とか権威性を顕示しようと腐心している点である。

そしてもう1点共通するのは、原発に詳しく、かつ事故の原因を企業や電力会社の利害からは離れた立場で解明できる京大の今中氏や小出氏や、元原発設計者の後藤正志氏らが、どの調査委員会にも全く起用されていない点である。

このような真の専門家をあえて起用しない素人集団の寄せ集めのような委員会、事故の責任を徹底的に追究しない調査委員会をいくつ作ってもどれほどの意味があるのであろうか。すべて無駄である。

いずれも調査委員会の結論は始めから見えている。原発の再稼働にしか目のない東電や政府の調査委員会は、責任の所在を不明にしたまま、地震の影響ではなく津波の影響で原発は壊れたと結論することは自明であるし、民間の調査委員会に関しても、脱原発をよしとしない出資者の思惑を反映した人選が巧妙になされ、そのような集団が最終的に出してくる結論は決まりきっている。

多くの国民がこれほど甚大な被害を受け、日々健康不安に苛まれているというのに、一部の心ある弁護士の方々を除いて、司法はただ手をこまねいて高見の見物をしているだけである。

これで法治国家と言えるのだろうか。もっとも8ヶ月半もあれば、既に都合の悪い証拠は関係者の手で十分にもみ消された後であろうから、今更司法が動いたところで、後の祭りであろうがーー。


http://www.asahi.com/politics/update/1130/TKY201111290732.html

ノーベル賞の田中耕一さん起用へ 国会原発事故調委員





 東京電力福島第一原発事故を検証する国会の事故調査委員会の委員に、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一・島津製作所フェロー(52)の起用が固まった。衆参両院議院運営委員会は合同協議会を12月1日に開いて承認し、衆参両院議長が2日にも任命する。
 田中氏は1983年、東北大学工学部卒。島津製作所に入社し、2002年にたんぱく質の質量や立体構造を解析する方法の開発でノーベル化学賞を受賞した。現在は内閣府総合科学技術会議専門委員も務めている。原子力は専門外だが、「原子力村とは違う科学的な視点で事故を検証してもらう」(民主党議員)との観点で選ばれた。
委員長には黒川清・元日本学術会議会長が内定している。

11月24日 「非常用復水器が止められた理由」小出裕章(MBS)


2011年11月24日(木)、小出裕章氏が毎日放送「たね蒔きジャーナル」に出演。東京電力が発表した非常用復水器が機能しなかった可能性について、言及しました。




千葉「はい。えーそれでは次ですけれども。国会に設置された福島第一原発事故調査委員会の委員長が、この度、最終調整に入ったというニュースが伝わって来ているんですが。この委員長に、起用される方向になった方というのが、黒川清さんという方で、元日本学術会議会長さんなんだそうです。で、え、東大医学部卒のお医者さんで、内科腎臓学が専門で、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授などを勤められた経歴を持っているかただということですが。小出さんはこの人事、どう思われますか?」
小出「はい。申し訳ありませんが、私は医学に関しては素人で、黒川さんというかたについても、よく知りません。え、ただし、福島原子力発電所の事故、というものは、むしろ医学とは関係のない、え……工学であるとか、まあ、そうですね、海洋学であるとか、気象学であるとか、まあそういうところが関連して起きているわけで。まあ最終的には人間の被曝生物の被曝ということまで問題になりますけれども。やはり私は機械としての原子力発電所の事故と、いうことをきちっと解明することのほうが先だと思います」
千葉「うーん……。なるほど……。そうしたらやっぱりそういう方向で人材を選んでいかないといけないということですね」
小出「私としてはそうだろうと思うのですが。えー……う……沢山の方を束ねて審議をしていかなければいけないので、それなりの力量を持った方でなければいけないと思いますし。難しい判断だろうと思います」
千葉「はい。それからこういうニュースも入っております。東京電力はおととい、福島第一原発1号機で、緊急時に原子炉を冷やす、非常用復水器が、津波が到達した後に十分機能していなかった可能性があるとの調査結果をまとめたということなんです。まずこの、非常用復水器というのは小出先生、なんですか?」
小出「はい。えー……、原子炉ってのは常に冷やしておかなければ壊れてしまうというそういう機械なのです。ただし今回の事故の場合には、地震と津波によってすべての電源が奪われてしまいましたので、ポンプを動かすことができなくなった、のですね。で、そういう時に備えて、この非常用復水器というのがありまして。電気がなくてもいい、ポンプが動かなくてもいい、とにかく原子炉の中で蒸気が発生したその蒸気の力で、えー原子炉を冷やせるようにしようという、かなり特殊な機械だった、のです。えーそれが全く動かなかったということはもう事故の当初からわかっていまして、え、なぜそれが動かなかったということをきちっと解明しなければいけない課題、でした。」
千葉「はい。で今回ですね。東京電力は熱交換で発生する冷却水が60%残っていたため、冷却機能が不十分だったと正式に認めたということなんですが。」
小出「はい」
千葉「本来ならこの機械がこんな状態ではだめなんですよねえ」
小出「そうです。はい。あの、沢山の蒸気を冷やすために、その冷却水の方もどんどん減ってくはずだった、空っぽになるまでむしろやらなければいけなかったわけですけれども。途中の段階で、本来まだ働く力が残っているのにとめてしまったという状態、になっているわけですね」
千葉「ふー……。この非常用復水器は地震が起きたときに自動で動き出したのに、運転員が手動でとめて再起動させたと伝えられているんですけれども」
小出「はい」
千葉「これは適切なやり方なんですか?」
小出「えー、まあ色々なマニュアルがあるのですけれども。今回のような大変な非常事態ですから、とにかく原子炉を冷やすということを最優先にしなければならないはずでしたし。多分運転員もそのことは十分知っているはずだと、思います。え、それでも非常用復水器を止めてしまったということには、なにか別の原因があったのではないかと、私は思います。えーその1番、考えられるというか、重要な原因というのは、どこか配管が破れてしまっていて、その非常用復水器を動かそうとするとむしろ冷却材が流れていってしまうので、仕方がなくてその、回路を閉じたということではないかなと私は推測しています」
千葉「うーん。藤田さんいかがですか」
藤田「そうですね。あの、この発表がですね。もうその、事故の発生から8ヶ月以上も立ってるわけでしょ」
小出「はい」
藤田「で、それだけの期間が立たないと、こういうことがわからないものなのですか」
小出「そんなことはありません。もう当初から分かっていたはずですし。なんでこんな今頃になって、言い出したのかなと私はむしろ不思議に思いました」
藤田「うーん。やっぱりなにかその、人災的な、その都合の悪い問題があってですね、今まで公にしなかったの、ではないかと、そう勘ぐられても仕方のないようなですね、あの、時期だと思うんですが」
小出「そうです。私は今、その、うん、運転員がそれを止めたのはどこか配管が敗れていたせいではないかと思っているとお伝えしたわけですけれども。その配管が敗れているということの、また1番大きな原因は、多分地震、だと思います。え……これまで政府と東京電力は、地震では壊れなかったけれども津波によって電源が奪われたから壊れてしまったのだと、地震の方は問題ないというその1点張りで来たわけですけれども。実は、そうではなくて、地震によってその非常用冷却、復水器のほうも実はやられていたと、いうこと、なのではないかと私は疑っています」
藤田「なるほど……。しかしもし、その地震によってそういう被害が出たとすれば、これは非常に大きな問題ということになりますよね」
小出「そうです。そうです。そういう事を解明しなければ本当はいけない、し、もっと東京電力が早くにそのことを公表して、今日までに検討を続けてこなければいけなかったと思うのですが。もう8ヶ月以上もたって、ようやくにしてそういう事が出てくると、いう状態……になっているわけですね」
千葉「あの小出先生、もう1つですね。東京電力の原子力立地本部長代理は、この非常用復水器がずっと動いていたとしても最終的には炉心損傷に至ったと判断していると説明しているんですけれども。」
小出「(笑)」
千葉「これはどう思われますか」
小出「それはそうだと思います。えー、非常用復水器が仮に全部動いたとしても、え、今回のようにですね。1週間も10日もわたって、電源がないという状態であれば、いずれにしても炉心は融けてしまっただろうと、そのことは私はそう思います。ただし、えー、非常用復水器という系統が、地震でもし壊れていたということであれば、それはそれで重要な問題ですので、きちっと解明しておかなければいけません
千葉「はい。分かりました。小出先生どうもありがとうございました」
小出「はいありがとうございました」



http://jp.reuters.com/article/jp_quake/idJP2011112801001909

津波対策、多くの疑問

2011年 11月 29日 05:17 JST

津波対策、多くの疑問


東京電力福島第1原発事故について、東電が設置した社内調査委員会の中間報告書の全容が28日、判明した。地震の揺れによる主要設備の損傷は確認されず、2号機で爆発はなかったとの見解をあらためて示したが、なぜ十分な津波対策をしてこなかったかなど多くの疑問を残す内容となった。津波が主要な建屋に流れ込み、機器類が機能を喪失したことが直接の事故原因とした。近く正式に発表する。