2012年2月29日水曜日

3つの原発調査委員会:単なる形式?それともガス抜き?

原発災害以来、ほぼ1年の時を経る間に、政府よりの大型メディアですら、フクイチで発生した大惨事は、津波による天災による不可抗力な事故などではなく、電力事業者や保安院・安全委員会などの明らかな怠慢によって引き起こされた人災であるという見方がかなり定着してきている。

にもかかわらず、日本政府の司法は、この大惨事を引き起こした者の責任を追及することもしない。中途半端な3つの事故調査委員会を走らせ、やれ国の責任が大きいだの、首相が対話が生まれるような場を提供しなかっただの、電力会社に非があっただの、すでに我々素人が、それぞれのブログで3月の震災当時から、述べてきた陳腐な繰り言を、再生しているに過ぎない感がある。

これだけの大きな災害を発生させながら、いまだに現場の収拾を災害を引き起こした当事者である私企業に任せていることを、海外の先進国の人々は大変奇異に感じているに違いない。

考えてもみればいい。ある食品会社が製造工程で食材の管理を怠り、毒性の強い病原菌が繁殖した食品を大量生産した結果、多くの消費者がその犠牲になって食中毒を起こしたとする。

責任はむろん会社にある。弁解の余地もない。普通ならば、保健所や警察が工場や会社にやってきて、現場を押さえ、会社とは関係のないプロが、工場内の消毒をするとともに、被害状況を明らかにし、サンプルを採取したりして、原因究明のための徹底的な調査を行う。その上で、第三者の手で、病原菌繁殖の恐れがなくなったことを検証し、原因が究明されるまで、会社は営業停止を食らうことになる。

ところが、フクイチに関する限り、なぜか様相がまったく違った。汚染された原発管理を当事者である東電に100%任せっぱなしにして、「汚染は基準値以下だから問題はない」というような気休めにもならないような信憑性の薄い報告に、政府や大のメディアが耳を傾け、100%依存しているという、何とも情けなく、不可思議な状況が、今なお続いているのである。

多額の賠償を請求されることを恐れる企業が、被害を最小限に見せかけようと、都合の悪いことを隠ぺいしたり、被害状況を正直に報告しなかったりするに違いないことは、5.6歳の子供にでも、理解できることだろう。

民間の事故調査委員会の調査には、東電は全く応じなかったというし、政府関係者への聞き取りをしたというが、本来は関係者が参加した様々な会議の議事録をもとにして、聞き取りをやるべきであるにもかかわらず、その大元になる議事録さえないのだから、何をか言わんやである。

それぞれの会議で、誰が議事録をとるべき役割にあったのか、それを管理すべき人物・議事録の確認をすべき役職にいたのは誰だったのか、本来ならば、その辺の具体的な追及から始めるべきである。

国会の事故調は、当事者であるはずの細野原発担当相が、事故調査委員会の長に接触して、ひんしゅくを買うという体たらくである。

そして、政府の事故調は、さすが、マスコミ受けする失敗学の権威が委員長だけのことはある。最終報告はまだまだ先のことなので、どうなるかはわからないが、すでに報じられている情報通りとすれば、大先生を中心としたメンバーは、安全文化論でこの災害の原因をうまくまとめて、手打ちにする算段らしい。

中途半端な事故調査委員会といったが、事故の責任を徹底追及し、厳しい処罰を加え、徹底的に猛省を促さないない限り、そこをうやむやにして、まぁまぁなどと甘いことを言っている限り、同じような事故は必ずまたどこかで繰り返されるに違いないからである。

電力会社も、役人も、原子力ムラの学者たちも、世界最高水準といわれていた日本の専門家集団がどれだけ無為無策であるかが露呈しているにもかかわらず、何が「原発の安全性を確保をして、再稼働」なのか、

3.11のおかげで、一つはっきりしたことがある。

それは、原発の安全性を確保できるような優れた専門家も、大惨事が起こったときに社会に迷惑をかけたと、会社を整理してでも、私財をなげうってでもきちんと賠償をしてくれる会社もなければ、いざとなれば責任をとって国民をしっかり守ってくれる役人も政治家も、今の日本には一人たりとも存在しないということである。

3つの調査委員会、何もやらないわけにもいかないから、一応やったという既成事実を作るために立ち上げられ、憤懣やるかたない国民に若干のガス抜きをさせるためのものに過ぎないのではないだろうか。

本来ならば、原発災害の調査委員会は、原発を規制する立場の専門家集団を核にして、作られるべきであろう。それが3つのどの委員会も共通してなされていないことからも、委員会の中途半端な度合いが知れるというものである。


http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012022690021454.html

原発事故調、海外専門家から批判続出 
2012年2月26日 02時14分
福島第1原発の事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が海外の原子力専門家から意見を聞く会合は25日、2日間の日程を終えた。専門家からは、日本の原発事故への備えの甘さや、政府による「冷温停止状態」宣言の拙速さを批判する声が相次いだ。
 米原子力規制委員会(NRC)元委員長のリチャード・メザーブ氏は、事故現場で線量計が作業員に行き渡るまで3週間もかかったことを問題視し、「信じられない対応だ。もっと早くそろえられたはずだ」と批判した。
 フランス原子力安全局長のアンドレ・ラコスト氏は、1999年の茨城県東海村での臨界事故や、2004年に関西電力美浜原発で起きた配管破裂事故を例に挙げ「日本では5年に一度、事故が起きていた。大事故があるなら日本だと思っていた」と、教訓を十分に生かしてこなかったことが大事故につながったとの認識を示した。
 韓国原子力協会長・張舜興(チャンスンフン)氏は、政府の「冷温停止状態」宣言に疑問を呈し「原子炉内の状態を特定せずに、どうして安全と言えるのか」と、拙速さを批判した。
 事故調も、安全意識の甘さがなぜまかり通ってきたのか、今夏の最終報告で解き明かす考え。委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は「安全文化という考え方に真正面から向き合わなければならないと感じた」と述べた。
(中日新聞)

福島原発民間事故調査委:国の責任感欠如と東電の怠慢が主因


2月28日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所の民間事故調査委員会、福島原発事故独立検証委員会(委員長・北沢宏一科学技術振興機構前理事長)は28日、独自に事故を検証した報告書を公表した。その中で事故を拡大させた主因として「国の責任感の欠如東電の過酷事故に対する備えを怠った組織的怠慢」を挙げた。事故当時の菅直人首相、枝野幸男官房長官ら政府首脳にもヒアリングを行い、官邸や東電の混乱ぶりがあらためて浮き彫りにされた。
北沢委員長は記者会見で「放射能源が過密に配置されていた」ことが事故を深刻なものにしたとし、特に使用済み核燃料プールの配置の問題点を指摘した。
報告書の中で、事故発生直後、東電の清水正孝社長から現場の作業員600人を福島第一原発から第二原発に撤退させたいと政府に再三申し入れがあったことが明らかにされた。これに対し、菅首相が3月15日未明に東電本店に乗り込み、「命を賭けろ。撤退はあり得ない。そんなことをすれば東電は間違いなくつぶれる」と演説したことも盛り込まれた。
北沢委員長は「結果的に吉田所長ら福島フィフティー(50人)が残留し注水などの作業を継続し、事故は収拾に向かった。それが首相の最大の功績だったかもしれない」としながらも、首相官邸の現場への過剰な介入は「評価できない」と述べた。その背景には経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会から情報が伝わらず、「疑心暗鬼」に陥ったとの見方を示した。
報告書は、外国からの助言に聞く耳を持たない原子力安全規制のガラパゴス化、大地震や大津波が過去にあったことを知りながら適切な備えの指示を怠ったことなど、国の責任を「極めて重い」と断じた。
同委員会は約300人にヒアリング調査を実施し、東電にも経営者のインタビューを要請したが、拒否された。報告書は拘束力を持たないが、野田佳彦首相に提出する。
記事についての記者への問い合わせ先: 淡路毅 tawaji@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Yoshito Okuboyokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/02/28 16:10 JST


民間事故調、政府の危機管理を批判


日本が戦後最大の危機に瀕したあの日、政府の中枢で何があったのでしょうか。東京電力、福島第一原発の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が28日、400ページに及ぶ報告書を公表し、原発に関する従来の危機管理のあり方を厳しく批判しました。

 「(菅前首相は)国家のトップとしての戦略や覚悟が希薄だったのでは」(民間原発事故調の会見)
 「安全神話による自縄自縛状態が発生していたということでありました」(民間原発事故調の会見)

 福島第一原発で起こった事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会は、28日午後、400ページに及ぶ報告書を公表しました。

 去年3月の事故直後に政府中枢で何があったのでしょうか。日米の政府関係者らおよそ300人を対象に実施した聞き取り結果から、その実態が浮き彫りとなりました。

 「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った」(枝野経産大臣〔当時の官房長官〕)

 聞き取りにこう話したのは、当時の官房長官、枝野経産大臣です。報告書によりますと、事故の3日後の去年3月14日には福島第一原発の吉田昌郎所長(当時)から「炉心溶融が進み、燃料が溶け落ちる可能性が高まった」との情報が当時の細野総理補佐官に伝えられ、官邸や専門家の間に強い危機感が広がったといいます。

 一方でたびたび問題が指摘されてきた放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」については、菅前総理大臣ら事故対応の中心となっていた政治家が「事故から数日経ち、マスコミから指摘されるまでその存在すら知らなかった」と証言していました。

 さらに民間事故調は、報告書で「SPEEDI」は原発を立地する際に住民の安心を買うための「見せ玉」にすぎなかったと厳しく批判しました。莫大な予算をかけて有事に備えたはずのシステムが、まったく機能していなかったことが改めて浮き彫りとなった形です。

 そして時の総理大臣、菅前総理について報告書はこう指摘しています。
 「菅総理が個別の事故管理にのめり込み、全体の危機管理に十分注意を向けることがおろそかになったことは否めない。『原発に代替バッテリーが必要』と判明した際に、総理が自分の携帯を取り出し、大きさや重さを担当者に質問している状況を見て、同席者の一人は『そんな細かいことを聞くのは 国としてどうなのかとぞっとした』と述べている」(報告書)

 東電や保安院を信じられなくなった官邸側が過剰に介入する結果となり、民間事故調は「統合対策本部ができるまでの官邸の対応は、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていた」としました。

 福島第一原発の事故調査についてはさまざまな見解がありますが、JNNが去年11月に行った取材に対して菅前総理はこう話していました。

 「事業者である東電自身もですね、当事者としてそういう想定をしなかった、準備をしなかったことに大きな責任がある、こう思っています。残念ながら。今回の事故に関しては原子力安全・保安院からですね『こうやるべきじゃないか、ああやるべきじゃないか』と積極的な形で具申されたことがほとんどありませんでした。私の執務室が相談をし判断をする場所にもなった。これは私の立場からすれば、他の機能がきちっと機能していればそこまで直接的にやる必要はなかったでしょうけれども」(菅直人前首相〔去年11月〕)

 なお、今回の調査では事業者である東京電力の幹部が聞き取り調査を拒否していることから、報告書は「さらなる検証は政府、国会の事故調査委員会にバトンタッチせざるを得ない」と結論づけています。(28日17:08)



細野原発担当相、事故調幹部に接触 中立性阻害 国会が厳重注意へ

2012.2.24 01:37 (1/2ページ)
細野豪志原発事故担当相が20日、東日本大震災の東京電力福島第1原発事故を受けた国会原発事故調査委員会の黒川清委員長に「原子力規制庁設置法案の説明」と称して接触していたことが23日、分かった。衆参両院議院運営合同協議会は同日、この事態を問題視し、24日にも藤村修官房長官を呼んで経過説明を求めるともに、厳重注意することを決めた。
事故調の設置法である「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」では中立・公正に原発事故原因を究明するため、利害関係者が同委員会に「接触」することに条件をつけており、接触があった場合は委員会側が公表することを義務付けている。
 
細野氏は原発事故発生後、事故収拾に首相補佐官としてあたったことから、
事故調の調査対象者の一人となっており、同氏が中立性を重んじる同委員会に接触を試みたこと自体が問題視されている。利害関係者の接触に条件を付した同法6条に抵触するとの指摘もある。
細野氏が黒川氏らと接触していた事実は、自民党の塩崎恭久元官房長官が21日に把握し、国会事故調に対して「中立性が保持できない」と強い懸念を表明した。それを受けて事故調は急遽(きゅうきょ)ホームページに21日付で「細野豪志環境大臣・原発担当相から説明を受けました。黒川委員長は新組織で原発事故再発防止が可能なのか疑問点を表明」との表題で掲載した。
塩崎氏は国会事故調を設置する法案に携わったことから、21日付の自身のブログで
「事故調査委員会の委員は民間人だ。
政府や原子力業界から総出でプレッシャーをかけられては、
いかに法律上独立していても中立性は保てない」と指摘。
「現役閣僚が事もあろうに独立性がうたわれている国会事故
調に押しかけるとはどういうことなのか」と細野氏の対応を
批判している。
塩崎氏は23日、産経新聞社の取材に「全会一致で成立した事故調法案の精神を細野氏が理解していないのは信じられない」とコメントした。

「調査中なのに理解できない」 国会原発事故調が原子力規制庁設置法案を異例の批判

2012.2.2 17:06 国会
黒川清氏
黒川清氏
国会の東京電力福島第1原発事故調査委員会の黒川清委員長は2日、政府が「原子力規制庁」の4月設置などを柱とする原子力規制関連法の改正案を閣議決定したことに対し、「行政組織のあり方の見直しを含め提言を行う国会事故調が調査の最中にもかかわらず、組織のあり方を定めた法案を決定したことは理解できない」とする異例の声明を発表した。
声明は同日、野田佳彦首相や衆参両院議長をはじめ全国会議員に配布された。政府決定の見直しと「国会における責任ある対応」も求めている。
昨年10月に施行された国会事故調の設置を定めた法律の第10条では、同事故調が事故の原因究明とともに行政組織のあり方の見直しを含めた提言を行うよう定めている。