2011年10月4日火曜日

東電の経営・財務調査委員会、やらせと同じでは?

 東京電力の経営実態を調査してきた政府の第三者委員会の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が報告書を出した。メディアは朝霞の公務員宿舎の問題ばかりを取り上げ、この第3者委員会の報告については、さらっと流すばかり。


「本当に第3者による委員会なのか」と目を疑うような、官僚寄り、東電寄り、株主寄り、金融機関寄りの陳腐な結果である。所詮、政府の審議会や委員会のたぐいは昔から、政府に迎合する都合のよい人材ばかりを集め、官僚の書いたシナリオをいちいちごもっともと首を振らせるだけのためにあるものと相場が決まっているといえばそれまでだが、この調査委員会もその例外ではなかった。


つまり、電力会社の「やらせ」と同様のことが、この国では、永々と繰り返されてきたし、少数の人間が書いたしょぼいぼろぼろのシナリオを仲間うちだけで集まって承認し、それでもって、大きな政策の方向性を決定してしまうという、デモクラシーに反するとんでもないやり方がまかり通っているのは、誠にもって嘆かわしい。

 メディアの中で、問題意識を持ってこの調査結果に対して踏み込んだ議論をしているのは、管見の限りでは、今のところ中日新聞ウエブ版のみであるため、以下転載する。併せて今日の金子勝氏のツイッターも貼り付ける。

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2011100402000013.html

中日新聞ウエブ

東電経営報告 延命の数字合わせだ         2011年10月4日

 政府の調査委員会が東京電力の経営報告書をまとめた。福島第一原発の廃炉費用を抑え、賠償に充てる政府からの資金支援も反映していない。東電を資産超過にして延命させる意図が透けてくる。
報告書を作成したのは、弁護士ら第三者で構成する「東京電力に関する経営・財務調査委員会」。政府の指示で福島第一原発周辺から避難している人たちの就労不能や放射性物質による農林漁業の風評被害など、賠償額を四兆五千億円と積算した。
 この巨額の損害賠償を抱えながら、調査委は貸借対照表を基に二〇一一年三月の東電の財務状況を債務超過ではなく、資産超過との判断を導き出している。
事故を起こした原発の廃炉費用として見込んだ額は一兆一千五百億円。原子炉建屋が水素爆発によって損壊し、燃料棒が溶けて圧力容器の底から外部に漏れ出すメルトスルーの疑いさえある事故の収束を一兆円で賄えるのか。
加えて、純資産の積算では肝心の損害賠償を考慮していない。政府の資金交付で賠償負担は相殺されるとしたためだ。さらに、政府への資金返済に充てる特別負担金も計上していない。
 東電を資産超過にするために、あえて廃炉費用を低く抑え、国から借りた資金の返済も除外したのではないか、という疑いさえ生じる。資産超過だと、東電が四兆円の融資を受けている金融機関に債権放棄や債務の株式化などを要請しなくても済むからだ。
 債務超過に陥れば東電の法的整理が現実になる。最初から東電の延命ありきで財務状況の数字合わせをした感が否めない。
 一方で、報告書は同じ東電の柏崎刈羽原発の今後の再稼働状況や、電力料金の値上げ幅を組み合わせた九通りの東電の経営予測を示し、「再稼働しなければ四兆~八兆円の資金不足が生じる」「著しい値上げをしない限り事業は極めて困難になる」とまで言い切った。原発再稼働への環境を整える意図が潜んではいないか。
国民負担の最小化をうたいながら、報告書通りならば、結局は消費者への負担が重くなる。原発は国策でもあった。国も東電と同様に身を削って賠償に努める覚悟が求められる。
野田首相は原発依存度の引き下げを表明した。経済産業省などの官僚OBらが天下って役員を務める原発関連の独立行政法人向け予算を、賠償費用に振り向ける方策を検討してもいいのではないか。

東電負担の原発事故賠償額、4兆5402億円と推計=調査委

2011年 10月 3日 20:01 JST
報告書では今後、電気料金の値上げがなく原発再稼働がなければ今後10年間に約8兆6000億円の資金不足が発生する一方、早期に原発を再稼働し電気料金を10%値上げすれば同不足額は7500億円に止まるとした。下河辺委員長は「柏崎刈羽など再稼働することが可能性として十分見込める原発が数基ある。10年間全く原発が稼働しなかった場合にファクトとしてどうなるかを示しているが、委員会として原発の再稼働問題の評価は入れていない」と説明した。 
4兆5402億円の賠償費用の内訳は、1)事故収束までの期間に要した賠償額として初年度分で1兆0246億円、2年度目分以降で年間8972億円、2)財物価値の喪失や風評被害など「一過性」の損害で2兆6184億円としている。東電が福島第1原発の1─4号機の廃炉費用約6100億円について、4700億円の費用拡大リスクがあるとして、廃炉費用合計で1兆0817億円を見込む。
また、報告書は東電は金融機関に対し「金利減免や債権放棄は要請しない」という内容を記載した文書を送付していたといたことも明らかにした。報告書は「2011年3月末で実態連結純資産が1兆2922億円と試算され東電が資産超過の状態であることからすると、金融機関に債権放棄や債務の株式化を要請することは困難」と指摘している。
(ロイターニュース 浜田健太郎)

金子勝氏 ツイッター
財務評価委員会が、東電は原発再稼働しないと電気料金上がると言っています。電力不足になるよ、料金が上がるよ…。原発動かすために、きちんと安全投資したら電気料金は上がらないの?静かな脅迫?やっぱり電力会社の地域独占と総括原価主義を止めないと。