2012年1月22日日曜日

コスタ・コンコルディア vs. フクイチ原発

イタリアの大型クルーズ船、コスタ・コンコルディア号の海難事故は、日本人乗客も多数いたためか、大きく報道された。マスコミ各社は中国の新幹線隠蔽事故同様、興味本位に船長の無責任な対応ぶりを報道したが、薔薇っ子的には、日本のフクシマ第一の原発災害と一体どこが違うのという印象を持たざるを得ない。

震災後2日めの15日、東電は、フクイチの災害現場から社員の全面撤退を政府に打診したという。それをめぐって、朝日新聞の連載記事に詳細が述べられていたことに反発して、先ごろ東電から、全員撤退とは言っていないという弁明がなされたという。以下、関連記事を転載する。

いずれにしても、社員を撤退させなければならないような深刻な状況であることがわかっていたならば、先に考えるべきは、社員の身の保全などではなく、広範囲にわたる住民の避難と、ヨウ素剤の服用の徹底をも含めた安全確保ではなかったのか。

悠長に、東電本社の高給取りの社員に、誰が読むのかもしれないTEPCOニュースなどをアップさせ、「全員撤退と言ったかどうか」などという次元の低い弁明をやらせている暇があれば、フクシマに出かけていって、どぶさらえの除染ボランティアでもやらせているほうがはるかにましである。

マスメディアには英雄と持ち上げられた吉田所長は、武藤副社長と共に、大津波の危険性が想定される報告が出ていたにもかかわらず、それをまともに取り上げようとはしなかった張本人の一人である。事故調査委員会の中間発表で、その事実が露呈する寸前に、唐突に健康上の理由で船を降り、姿を消してしまったことに対して、誰も不自然さを感じないのだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120118-OYT1T00049.htm?from=main1


「船を離れた、沈みそうだから」と携帯で伊船長


【ローマ=末続哲也】イタリア中部ジリオ島沖で大型クルーズ船「コスタ・コンコルディア号」が座礁、浸水した事故は、通常航路を大きく外れて同島に異常接近した際に起き、17日までに11人が死亡、多数が行方不明となっている。
 日本人乗客43人も命からがら難を逃れた。危険な航路を選び、避難誘導よりも自身の脱出を優先させたフランチェスコ・スケッティーノ船長(52)による悪質な「人災」の疑いが濃厚になってきた。
 ◆救助放棄?
 「船を離れた。船が沈みそうだから」。伊メディアによると、同船長は、ほぼ横倒しとなった船を望む島の岩場から、港湾当局者に携帯電話で話していた。事故発生から、わずか約3時間後のことで、船内では乗客多数が救助を待っていた。
 港湾当局の係員が「船に戻ってほしい」「家に帰りたいとでもいうのか」などと迫ると、船長は「大丈夫だ。戻る」と答えていたが、船に戻ることはなかった。
 これに先立ち、船内では衝突時、「ドスン」というごう音が響き、地震のような衝撃が伝わった。レストランの食器が床に落ちて散乱し、停電も起きた。船員は衝撃の直後、機関室に大量の海水が流入した事実を船長に報告していたという。
 ところが、船長は当初、港湾当局と電話で何度も会話しながら、「技術的な問題にすぎない」「停電にすぎない」などと、重大事故の発生を隠そうとするかのような連絡に終始していた。
 乗客らの証言によると、乗員たちも「電気系統のトラブルにすぎない」「船は安全だ」などと繰り返した。船長が乗客らに脱出指示を出したのは事故発生から約1時間後。すでに、船体の傾斜は約20度に達していた。
 初動の遅れは乗客約3200人にパニックをもたらした。救命ボートを下ろす作業が遅れ、待ちきれず海に飛び込む乗客もいた。統率のとれた避難誘導はなく、船体が時間とともに傾く中、一部乗客は船内に取り残され、ヘリコプターで脱出する事態となった。
 ◆事故原因
 地元検察当局は14日、船長を過失致死や、救助作業の途中に船を離れた疑いで拘束し、取り調べを始めた。船長が海外逃亡を考えていた疑いもあるという。
 島に異常接近した理由について伊メディアは、船長が乗員に郷里の島を見せるためだったと伝えている。事故直前、船長室に呼び出された同島出身のウエーター長は「もうすぐ島ですね」と船長らと話したという。
 船長は事故後、「海図にない暗礁があった」と主張したが、この暗礁が海図に記載されていたことも後に確認された。コスタ・クロチエレ社は、船長の「人為的なミス」だと認めている。

【東京電力】「プロメテウスの罠」に反論 「全員撤退の申し入れ事実は無い」

2012年01月15日18時00分


「全員撤退については、考えたことも、申し上げたこともありません。」

東京電力は1月13日、「朝日新聞朝刊連載『プロメテウスの罠』について」と題する「TEPCOニュース」をサイトにアップした。

内容は、「プロメテウスの罠」において、東電清水社長(当時)が、「福島第一原子力発電所から全員撤退したいと申し入れた」という記事に対し、そういう事実はないとするもので、

東電原発事故調査・検証委員会中間報告書での経緯

「全員撤退」については、12月26日に公表された「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の中間報告書において「Ⅲ 災害発生後の組織的対応状況 2)福島原子力発電所事故対策統合本部の設置」でその経緯が報告されている。
「中間報告書」によれば、清水社長は、吉田所長が、状況次第で必要人員を残して退避することも視野に入れていることを武藤副社から聞かされ、
同日15日未明にかけて、寺坂保安院長等に電話をかけ、「2 号機が厳しい状況であり、今後、ますます事態が厳しくなる場合には、退避もあり得ると考えている」旨報告。このとき、清水社長は、プラント制御に必要な人員を残すことを当然の前提としており、あえて「プラント制御に必要な人員を残す」旨明示しなかった。
とする。

つまり、「全員撤退」とは言わなかったし、「プラント制御に必要な人員を残す」とも言わずに、「退避もあり得る」と言ったというが、そのような伝え方があるのだろうか?もしそれが事実なら、東電は「全員撤退」と言った事実は無いと強調するより、「状況次第で必要人員を残して退避する」と言わずに「(状況次第で)退避する」と政府に報告した清水社長に問題があったと認識すべきなのではないのだろうか?

「中間報告書」では、「寺坂保安院長等に電話をかけ」となっていて、枝野幸男官房長官(当時)の名前は挙げていない。
「枝野幸男前官房長官は7日、読売新聞のインタビューで、東京電力福島第一原子力発電所事故後の3月15日未明、東電の清水正孝社長(当時)と電話で話した際、作業員を同原発から全面撤退させたい、との意向を伝えられたと語った。」
(2011年9月8日11時01分 読売新聞 YOMIURI ONLINE)

前首相の東電乗り込み、危急存亡の理由が


枝野幸男前官房長官は7日、読売新聞のインタビューで、東京電力福島第一原子力発電所事故後の3月15日未明、東電の清水正孝社長(当時)と電話で話した際、作業員を同原発から全面撤退させたい、との意向を伝えられたと語った。
 東電関係者は、これまで全面撤退の申し出を否定している。菅前首相や海江田万里前経済産業相は「東電が作業員の撤退を申し出てきた」と説明してきたが、枝野氏は今回、撤退問題に関する具体的な経過を初めて公にした。
 枝野氏は、清水氏の発言について「全面撤退のことだと(政府側の)全員が共有している。そういう言い方だった」と指摘した。
 枝野氏によると、清水氏はまず、海江田氏に撤退を申し出たが拒否され、枝野氏に電話したという。枝野氏らが同原発の吉田昌郎所長や経済産業省原子力安全・保安院など関係機関に見解を求めたところ、吉田氏は「まだ頑張れる」と述べるなど、いずれも撤退は不要との見方を示した。
 菅氏はこの後、清水氏を首相官邸に呼んで問いただしたが、清水氏は今後の対応について明言しなかったという。このため、菅氏は直後に東電本店に乗り込み「撤退などあり得ない」と幹部らに迫った。
 枝野氏は菅氏の対応について「菅内閣への評価はいろいろあり得るが、あの瞬間はあの人が首相で良かった」と評価した。
(2011年9月8日11時01分  読売新聞)





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