2012年9月15日土曜日

規制庁の田中さん、4号機の問題を黙って放置するのですか?

 19日鳴物入りの規制庁がとうとう発足した、あの頼りがいのある保安院さんがほとんどみなさん横滑りで規制庁に入庁なさったという。なんという税金の無駄遣いだろう。原子力ムラに対して、脱原子力ムラもあると反発していた田中氏は、ここに来て原子力ムラというレッテル貼りをしないで欲しいと反発したそうである。あの原子力委員会の委員長代理まで務めておきながら、何が原子力ムラではないのか。

 原子力ムラかそうでないかなどの、くだらない弁明をしている暇があれば、現地に毎日出かけて4号機の問題を一刻も早く収束すべく現場の指揮・監督に勤めるべきではないのか。東京から高見の見物をしているだけでは現状把握さえ十分にできまい。

以下は、元スイス大使の村田光平氏の4号機の危険についての記事を転載する。このテーマについては、米上院議員ワイデン氏の報告として今春、このブログでも取り上げたが、日本の元政府筋の有識者が、メディア向けに発信したという点で大変意義深く、再度取り上げておきたい。



「現代ビジネス」
永田町デープスロート

脱原発を訴える「反骨の外交官」が緊急寄稿!
村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」
2012年9月14日(金)

 福島第一原発の事故から1年半。実は今、同原発の「4号機」が、さらなる放射性物質を地上に撒き散らし、人類を未曾有の危険にさらそうとしている。それなのに国と東電にはまるで危機感がない---。外交官時代から脱原発の志を貫いてきた信念の人・村田光平さん(元駐スイス大使)が、その空恐ろしい実情を語る。

驚くべき杜撰さが明らかになった

村田光平氏(元駐スイス大使)

 去る8月31日、「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」が衆議院第一議員会館で行われました。私も特別スピーカーとして出席しましたが、この集会で驚くべきことが判明しましたので、急ぎご報告したいと思います。

 一言で言うと、ここで明らかになったのは、呆れ果てるしかない原発事故処理体制の実態です。事態は放置できないレベルに達しており、世界的な一大事になりつつあります。少なくとも、今の事故処理体制の信じがたい杜撰さが、国内外から根本的に厳しく問われることは必至です。

 こういうと、多くの人は「福島第一原発の事故処理は一段落したんじゃないのか?」といぶかしく思うかもしれません。しかし、実態はまったく違います。一段落どころか、これまでの量をはるかに上回る放射性物質による汚染が、明日にでも起こる可能性があるのです。まずはこのことから説明しましょう。

「福島4号機」の崩壊が招くメルトダウンと世界の破局

 今、世界を脅かしている大問題があります。それは福島第一原発の「4号機問題」です。4号機には使用済み核燃料プールがあり、そこに残っている1535本の核燃料棒がさらなる惨事を引き起こす可能性があるのです。

 昨年3月11日の東日本大震災で福島第一原発が大事故を起こしたのは周知の通りですが、4号機の建屋は、このときの水素爆発で大変傷んでいます。しかも地盤に不等沈下があって、倒壊する危険もあります。

 現在、4号機のプールにある1535本の核燃料棒はかろうじて冷却されていますが、もし4号機が倒壊すれば、冷やす術はありません。そうなると、最悪の事態---核燃料棒が溶け、メルトダウンが起き、膨大な放射性物質が撒き散らされるという、いまだ人類が経験したことがない悲劇が起こります。

 そうなれば、これまで放出された分の数倍、数十倍の放射性物質が拡散し、福島第一原発の一帯には誰も近寄ることができなくなります。すべての人員が原発から撤退しなければならなくなるのは言うまでもありません。その結果、4号機のみならず、1号機から6号機までの事故後処置も難しくなり、全機がメルトダウンを起こす可能性もあります。

 今、4号機も含めて、福島第一原発に残されている核燃料棒の総数は1万4225本にのぼります。米国の核科学者ロバート・アルバレス氏によれば、チェルノブイリの85倍のセシウム137が福島第一原発に存在するそうです。4号機に限っても、セシウム137の量はチェルノブイリの10倍になるのだとか。

 したがって4号機の崩壊は、日本のみならず、世界的な広範囲の汚染を招くでしょう。「究極の破局に繋がることは確実」と多くの科学者は見ています。

政府と東電は「4号機は震度6強の地震に耐えられる」としていますが、逆に見ると、この震度を超える地震が発生したらきわめて危険ということです。しかも、傷んでいる建屋が本当に震度6強までの地震に耐えられるかについては、何の保証もありません。

 今年3月、私は参議院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、この4号機問題には世界の安全保障問題として最大限の対応が必要であることを訴えました。8月24日から3日間、広島市で開催された核戦争防止世界大会でも、世界に向けて4号機危機への注意を喚起するスピーチを行いました。

 私たちの訴えは各国で少しずつ聞き入れられていき、今や4号機問題は世界の安全保障上、最も重大な関心事になっているのです。

「水では消火できない」ことを知らなかった国と東電

 冒頭に述べた「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」は、このような背景で開催されるに至りました。13人の国会議員が呼びかけ人となり、脱原発政策実現全国ネットワークの主催で行われました。

 第1部では、アメリカの原子力技術者アーニー・ガンダーセンさんが講演を行い、私は特別スピーカーとしてコメントを述べました。第2部では、経産省から資源エネルギー庁の課長と、東電から課長クラス7名が出席し、彼らに対するヒヤリングが行われました。

 あらかじめ、東電に対しては、飛散防止剤の影響や鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて、質問書を提出してありました。また原子力安全・保安院(資源エネルギー庁の特別機関)に対しては、企業任せの事故処理を改めて国が前面に出て迅速に対応する必要があることや、国際技術協力チームが必要であることなどにつき、やはり質問書を提出していました。

 第1部でガンダーセンさんは、以下のような重要な指摘をしました。これが後に、処理体制の驚くべき実態が明らかになることにつながります。

①4号機の燃料プールの水が地震で抜け、燃料棒がむき出しになると、1535本の燃料棒に火がつく。このことはアメリカで、すでに実験によって確認されている。
②その火がついたときの破壊力は、核兵器程度ではすまない。東北、関東圏は壊滅し、放射能で人がいなくなれば、福島第一原発の1、2、3、5、6号機も管理不能となり 核の暴走が勃発する。
③燃料棒に一度火がつくと、燃料棒を包むジルコニウムが水を分解し、そのときに生じる酸素で発火が起こり、水素爆発に至る危険がある。したがって、消火に水を使用することは許されない。
④消火のための化学製品はアメリカで開発されているので、これを用意しておくことが望まれる

集会が第2部に入ると、ガンダーセン氏は東電の7名に対し、

「最悪の事態に備えて、(第1部で説明した)化学製品の活用を考えていますか」

 と質問しました。これに対し、東電側からの答えは以下のような趣旨のものでした。

「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ない」

「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」

 これを聞いて、会場に集まった人々は一様に愕然としました。東電の面々は、水による消火が問題外であることなど、まったく理解していない様子だったのです。世界中が固唾を呑んで見守っている4号機問題という重大問題について、当事者である東電の認識があまりにもお寒いものであることが暴露された瞬間でした。

会場から「全然わかってない!」と罵声

 会場からはたちまち罵声や怒号、叱声が次々と起こりました。

「何をバカなことを言ってるの?」「燃えるものがあるだろう!」「想定外じゃすまないんだよ!」

 騒然とした雰囲気の中、資源エネルギー庁の課長が話を引き取って、次のような趣旨の発言をしました。

「万が一、プールが損壊して水が漏れた場合、コンクリートポンプ車を用意して水を・・・」

 課長はこの発言を最後まで続けることができませんでした。会場から遮るように、「ガンダーセンさんの話を聞いていたの?」「水はダメだって言ってるじゃないか」「全然わかってないだろう!」といった罵声が次々と上がったからです。

 そう、東電だけでなく、国の実務責任者も「燃料棒の消火に水を使うことが許されない」という重要な事実を知らなかったのです。

 注目を集めたのは、菅直人前首相の政策秘書・松田光世氏の発言でした。松田氏は、ガンダーセン氏が述べた消火のための化学薬剤に関して、こんな趣旨のことを述べました。

「福島第一原発の事故の直後、日本政府はアメリカ軍にこの消火薬剤を送ってもらっている。だが、東電にはまだ渡していない。東電には管理能力がないと判断しているので、消火薬剤の到着を知らせてもいない。

 もし、4号機の燃料棒に火がつくような事態が起きたら、米軍機が山形空港から飛び立って、4号機の燃料プールに消火薬剤を投げ入れることができるようになっている。だが、そのことにさえ反対する国会議員の勢力がある」

活断層の上にある核燃料プール

 思わぬ情報に身を乗り出して聞く会場に向かって、松田氏は続けました。

「4号機の建屋の下の、南側3分の1くらいのところに活断層がある。核燃料プールはその上にある。大震災のとき、4号機は80㎝も右に傾いた。そこに東電は40本の棒を打ちこんで補強した。

 しかし、60㎝沈んだところや40㎝沈んだところもあって、地面はあちこちが凸凹になっている。それを東電の報告書では『平均58㎝の地盤沈下』と言っているが、いったい何のことやら、実態を反映していない。

 コンクリートもひびが入ったので、底が割れないようにさらに厚くしたが、鉄筋も入れず、ただ厚くしただけ。だから横揺れには弱い。そういうことを、国と東電は正直にすべて言うべきではないか。データを公開すべきだ。

 現行の国の基準では、活断層の上に原子炉を建ててはならないことになっている。しかし、その建てられないところに4号機の建屋がある。原子力安全・保安院ですら、『4号機の建屋が震度6強に耐えられるかどうかは言えない』と言っている。情報をもっと世の中に真面目に公表してほしい」

 この松田氏の発言にショックを受けた議場からは、さまざまな発言が飛び出しました。中でも

「燃料棒に火がついたら、私たちが受ける被害は広島の原爆の数千倍になる」

「震度6強を上回る地震が起こる可能性は十分にある。スマトラでは、マグニチュード9の地震の起きた18ヵ月後に、マグニチュード8.4の余震があった」

といった発言が印象に残りました。

なぜ、今すぐ燃料棒を取り出さないのか

 そんな中、ガンダーセン氏から次のような提言がありました。

国は来年12月から核燃料棒を運び出すと言っているが、それでは遅すぎる。実は、もう、燃料棒の3分の2が十分に冷えているのだから、今から1年半ほどかけて、冷えているものから順に取り出せばいい。それが終わる頃には、残りの3分の1も冷えているだろう。そうやって一刻も早く、効率的に取り出すことを考えるべきだ。地震は待ってはくれない

 また現状のプランでは、水中から取り出した燃料棒を100トンのキャニスター(核物質を入れる容器)で運ぼうとしているが、これは40トンから50トンくらいに小さく分けて回数を多く運ぶ方がよい」

この提言に対しても、東電側は冷淡でした。彼らの言い分は、

「放射能の拡散の問題があるから、現状の屋根がない状態では、燃料棒を取り出す作業はできない。屋根をつける作業を先にする今は、100トンの重量の燃料棒をクレーンで上げられる機械を企業に発注し、作ってもらっているところだ」

 というもので、早急な問題解決への積極的な意欲が全然と言っていいほど感じられませんでした。燃料棒の取り出しがいかに急を要するものであるか、その認識がまったく欠けた回答ぶりでした。私はこの件について、東電に強い不満を表明しました。

米国の専門家も東電の言い分に「戦慄した」と

 今回の集会で判明した二つの重要な事実を整理しておきます。

 第一に、世界が安全保障問題として注目している4号機問題につき、経産省と東電が、事故から1年半を経てもその重大さを理解しておらず、最悪の場合の想定も対策も一切考えていなかったことが明らかになりました。会場が罵声と怒号で包まれたのは当然です。この体たらくにつき、私のもとにもすでに全国から怒りと失望の反響が伝わっています

 第二に、原子力の現場を熟知した専門家アーニー・ガンダーセン氏は、「今すぐ4号機からの燃料棒の取り出しが可能だ」と指摘しました。来年末まで待つことなく作業を始められる。との見解が示されたのです。

 実は、現場で事故処理に携わる会社の責任者も、私にこう語ったことがあります。

「処理の予算を東電が半分に削ったりするような現状を改め、国が全責任を担う体制にすれば、ガンダーセンさんの提言に沿うことは、困難が伴うかもしれませんが実行が可能です

 集会の後、ガンダーセン氏は私宛のメールの中で、次のような意見を述べてきました。

①東電は最悪の事態が発生しうることを想像できていない。そのため、対策の必要も感じていないことが今回の集会により証明された。
②「4号機の冷却プールに燃えるものは何もない」という東電側の言い分に戦慄を覚えた。原発事故が起こった後も、東電の世界観は事故の前と一切変わっていない。
③「独立した専門家が必要」とのご意見には賛成するが、IAEA(国際原子力機関)の専門家は排除すべきである。

 4号機について、フランスの有力誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』は8月、「最悪の事故はこれから起きる」とするショッキングな記事を掲載しました。この記事では、北澤宏一元JST理事長など、4号機の施設のデータを分析した専門家を取材し、「北半球全体が長期にわたって深刻な汚染にさらされ、現代日本は滅亡する」と指摘する声を伝えています。

また同誌は、この事態の危険性を日本の政府やマスコミはいっさい伝えていないが、欧米諸国では早くから危惧されてきており、米上院エネルギー委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員が昨年6月、ヒラリー・クリントン国務長官に深刻な状況を報告した---と指摘しています。

「原発ゼロ政策を確立せよ」と野田首相に手紙

 前述したように、私は8月下旬、広島で開催された核戦争防止世界大会に出席しスピーチをしましたが、海外の出席者が4号機問題に寄せる関心は高まる一方でした。特に、日本政府が世界を脅かすこの大問題への対応を東電に委ねたままで最大限の対応をしていないことや、放射能汚染による加害国としての罪悪感に欠けることについて、海外から厳しい批判の目が向けられています。

 以上のことを踏まえ、私はこのたび野田首相宛に手紙を出し、広島、長崎、そして福島を経験した日本が当然打ち出すべき脱原発政策の確立と、日本の名誉挽回のため、次の諸点を要望する旨を申し入れました。

①原発ゼロ政策を確立すること
②事故収拾については国が全責任を負い、4号機からの燃料棒取り出しの作業を早急に開始すること
③4号機問題の解決に人類の叡智を動員するため、中立評価委員会及び国際技術協力委員会を設置すること

④福島事故は、原発事故が人類の受容できない惨禍であることを立証するものであるから、そのような事態が起こる可能性を完全にゼロにする必要があると世界に発信すること

 今、「原発の存在自体が、倫理と責任の欠如に深く結びついたものである」という認識が、急速に国際的に広がりつつあります。それなのに日本では、福島第一原発事故の後も原発推進体制が改められることなく、原発輸出や再稼働などによって国は「不道徳」の烙印を押されたも同然で、名誉は大きく傷つけられています。

 先の集会でわかったように、原発事故の収拾体制に驚くべき欠陥があると露呈したことで、上記4項目は、一刻も早く実現しなければならない最優先の国民的ミッションとなったのです。

村田光平(むらた・みつへい)

1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=RCCTctlJegQ

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=mUopQRPEeQQ



<原子力規制委>「ムラ」批判に反発…田中委員長

毎日新聞 9月19日(水)23時59分配信


 原子力規制委員長に就任した田中俊一氏(67)は福島市出身。1967年、東北大工学部原子核工学科を卒業し、日本原子力研究所(旧原研、現日本原子力研究開発機構)に入った。一貫して原子力畑を歩み、同副理事長のほか、内閣府原子力委員会委員長代理などを歴任。こうした経歴が「原子力ムラ」との批判を浴びたが、旧原研はもともと基礎研究が主で、電力会社や商用原発を監督する経済産業省とは関係が薄い。委員長就任は、「ムラ」からの距離感も考慮されたとみられる。

【初会合では】原子力規制委:原発再稼働、新基準策定まで不可能

 99年に発生したJCO臨界事故(茨城県東海村)では、旧原研東海研究所副所長として収束作業に従事。昨年4月には、福島原発事故を反省する専門家16人の緊急提言を取りまとめた。細野豪志・原発事故担当相は「JCO事故では真っ先に陣頭指揮を執り、福島事故では福島県除染アドバイザーとして先頭に立って除染活動を担った人物」と高く評価する。

 その一方で、原発事故の地元・福島県では「除染が中途半端で線量が下がらない地域もあり、地元を混乱させた」(飯舘村住民)との声があるほか、反原発団体は「日本原子力研究開発機構は高速増殖原型炉もんじゅを運営しており、原子力ムラの中心人物だ」と辞任を求めるなど、評価は分かれる。


 19日の就任記者会見で田中氏は「原子力ムラ」批判について「出身や仕事によって十把一からげに判断することには反対だ」と述べ、レッテルを貼られることに反発した政府の革新的エネルギー・環境戦略が掲げる「原発ゼロ」方針が迷走していることへの見解を尋ねる質問には、「何もコメントしない」と慎重な発言を繰り返した。【中西拓司】 





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