2012年9月5日水曜日

原発災害はもう終わったのですか?:報道しなくなったメディア

 オリンピックや尖閣問題がクローズアップされた頃から、一段とフクイチの原発災害のニュースが全く日本のメディアに取り上げられなくなった。MBS も、9月からの番組再編を口実に、国で唯一、3.11以降、地道にまともな原発情報を継続的に放送し続けてきた種蒔きジャーナルを廃止しようとしていることは、すでにこのブログでも取り上げたとおりであり、これは大型メディアが、やすやすと電力会社の権力に屈しようとする1つの象徴的な出来事ともいえる由々しき事態である。

 フクイチの水位が下がっていようが、そして夏に政府が実施したエネルギー政策に関するパブリックオピニオンにおいて、今日転載するような、中国電力のヤラセ問題が浮上しようが、原発推進をもくろむ政府や電力会社の暴走ぶりや、細野原発相によるフクシマの県民に対する全ゲノム解析の調査を始めるという表明などなど、被災地で生じている新たな問題についても、また、今も潰えることなく全国各地に広がり続けている市民による反原発のデモ行動についても、全くと言ってよいほど、取り上げられなくなった。

恐るべし日本の大型メディアである。

原発災害から1年半たって、電力会社、原発メーカー、及びその恩恵に浴するシロアリどもは、とうとう、日本のメディアを懐柔し、黙らせることに成功したようである。唯一、今も変わらず批判的な視点から、世の中のできごとを様々な角度から批判的にとらえた記事を掲載しているのが、講談社の「現代ビジネス」である。

 ここにきて、野田政権の不信任案が可決して、自民、民主の総裁選挙、衆議院選の話題がにわかに大きく湧き上がっている。民主は原発を推進路線をひた走りに走ってきた細野原発担当相を新総裁候補として持ち上げようとし、自民は、原発関連企業から多くの物的支援を受け取ってきた石破氏、石原氏を代表に擁立しようとするようであるが、彼等は自民党政府が、40年余にわたって進めてきた原子力政策についてどのような侘びと謝罪を国民に対して行うのか。原発災害の政治的な責任は、現政権に向けられるの留まってはならないはずだが、両政権は水面下で手を結び、原発関連産業や組合、メインバンク、大株主の支援をバックに、国民が望まぬ民意を無視した政治を強引に進めようと画策している。

新勢力として台頭した橋下大阪市長も、昨日まで反原発と言っていたものが、選挙に当選するや朝令暮改で、前言をやすやすと翻し、平気の平左で大飯原発の再稼働を是認すような、腹の座らない御仁である。選挙前に選挙民に対して熱心に語った公約を反故にすることなど、選挙にさえ勝てれば、何とも思っていないことは、すでに市長選において、立証済みである。

要するに自らが政権をとるためには、その場しのぎの思いつきで何でも言うし、利用価値がありそうなものとは節操なく手を結ぶーー信念のかけらもなく、彼ほどしたたかで、分かりやすい政治家もいない。古賀茂明氏のような人物がなぜ橋下氏の手中に落ちてしまったのか。彼にいいように翻弄されているのは、メディア各社もまた同様であるがーー。

今日は枝野経産相が、あろうことか、脱原発で光熱費が3万円超という政府試算を発表した。こんなくだらない試算をして国民を欺こうなどと無駄な徒労に税金を注ぎ込む暇があれば、発送電分離を軌道に乗せ、電力を自由化するための準備を少しでもよいから前に進めてもらいたいものである。もはや、日本の国民はこのような脅しに乗せられることはないのだからーー。

脱原発で、光熱費が3万円超!? 政府試算に騙されるな!と疑問の声
                                  2012年9月4日 16:00  
                                     

「大停電」の次は「光熱費」?政府が2倍UPの試算
3日、将来の原発ゼロへ向けた課題と影響などをまとめた政府文書が明らかとなり、2030年の総発電量のうち、原発比率をゼロとすると電気代など、家庭で使用される光熱費が月額で最大3万2243円となる試算が出た。

野田首相の指示のもと、枝野経済産業相がまとめた同文書は4日午前、閣僚で構成されるエネルギー・環境会議にて議論される予定だ。

共同通信社の取材によると、政府は策定中のエネルギー・環境戦略に原発ゼロを目標として明記することを検討、目標達成に向けた課題や解決案を議論し、原発ゼロに対する姿勢をアピールする狙いだ。

また脅しか……国民の反応は意外にも冷静
一か月の光熱費が3万円超ともなると、10年実績(1万6900円)の約2倍に跳ね上がるということで、国民にとっては戦々恐々だが、twitterなどでは政府の試算を疑問視する声も多く上がっている。

「これ言う時は原発20%でも1.7倍になることを言わなきゃだわ。」

「また脅しですか…(嘆息)」

「この数字を導き出した計算式や根拠データを総て開示することができるか?原発事故のコストは福島が収束しない現在、上限が計算不能な巨額と指摘されている。」

「あくまでも、今の電力会社から買えばの話。もう原発動かしたい情報にはあきあき」

「また始まった!政府のなんとも都合のよい試算が!騙されるなよ!」

「こんな試算を誰が信じるのだろう」

「脅しだなー。ま、電気が足りないなんて試算も外れたわけだし。」

「海外で原発のない国もある。何故こんな数値になるのか判らない。よほど効率の悪い発電をしているのか?原材料を高く買っているのか?シロアリ共に搾取されているのか?不明」

「試算の中身がわからないので、信用度ゼロ。」

「出た!脅し作戦。政府の試算なんて全部嘘。今年の夏も一番暑い時期は過ぎたけど、結局電力不足になることは無かった。原発は必要ない。」


Twitterユーザーの反応は極めて冷静そのものといった様子だ。政府文書の試算が実際に信用に値するものなのかは謎だが、国民がいっそう節電・省エネに努めなければならないことだけは明らかなようだ。

外部リンク

共同通信社
http://www.47news.jp/


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33344

全国民注目!原発ポチたちの「やらせマニュアル」をスクープ入手、中国電力の内部文書に書かれた呆れた中身 まだこんなことやってんのかよ

                          週刊現代 2012年8月28日(火)

懲りない面々である。意見聴取会への出席の次は、パブリックコメントへの意見の提出を社員に促していた電力会社。国民の不信感を高め、自らの首をしめることになると、なぜ気づかないのか。

文書には「社内限り」の印

「あまりに膨大な数でした。正直に言うと、国民の原発問題への関心の高さを、甘く見すぎていたかもしれない。寄せられた意見が多すぎて、こちらの対応が追いつかないほどです」(内閣府中堅職員)

 約9万件。内閣府が7月2日から募集した「〈エネルギー・環境に関する選択肢〉に対する御意見」、いわゆる「原発依存度についてのパブリックコメント」に投稿された意見の総数である。

 今回のパブリックコメントは、2030年時点での日本のエネルギー政策について、「原発依存度をゼロにするか(ゼロシナリオ)、15%にするか(15シナリオ)、それとも20~25%にするか(20~25シナリオ)」、どれが一番ふさわしいと思うかを国民に問うものだった。

 内閣府は過去にも様々な政策についてパブリックコメントを募集してきたが、「集まってくるのは多いときでもせいぜい1000件程度だった」(同・中堅職員)というから、9万件という数字がどれだけ大きなものであるかお分かりいただけるだろう。

 現在内閣府ではその集計が急ピッチで行われている。その結果については8月16日現在では報じられていないが、「おそらく原発比率はゼロ、とする声が6~7割を占めるでしょう」とこの中堅職員は予測する。7月14日より日本各地で開催された「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」でも、前出の3つの選択肢のなかからどれを選ぶべきか、意見の交換が行われたが、意見を表明した人の約7割がゼロシナリオを支持しているからだ。

 国民の多数が「将来的には原発ゼロ」を望んでいることは明々白々。しかし、この国民の声に対して露骨な嫌悪感を示し、総力を挙げてゼロシナリオもしくは15シナリオを阻止しようとする勢力が存在する。電力会社の面々である。

 去る7月16日、名古屋市で開かれた意見聴取会に中部電力の社員が出席し、原発擁護発言をして世間からの批判を浴びたのは周知の通り。だが、電力会社の〝世論への介入〟はそれだけに止まっていなかった。

 管内に島根原発と建設中の上関原発を抱える中国電力は、原発の必要性を分かりやすく解説した資料と、社員に対してパブリックコメントに意見を提出するよう、暗に求める文書を作成していたのだ。

「社内限り」の印が押され、各部署の長のみにしか配られなかったというこの内部文書が流出することなど、中国電力側は考えもしなかったのだろう。本誌は中国電力の関係者の協力を得てこの文書を入手したが、ここには合計50ページにもわたって、電力会社のホンネと、社員への要請が記されているのだ。

驚くべき「上から目線」

 この文書ではまず、

〈政府のエネルギー・環境会議は、「エネルギー・環境に関する選択肢」を決定し提示しました。

 政府は、この選択肢に基づき国民的議論を展開し、国民各層の意向を総合的に把握した上で、今後のエネルギー・環境政策を8月中に決定するとしています。

 今般の国民的議論は、我が国のエネルギー・環境政策の決定内容を大きく左右するものであり、当社としても、電力の安定供給という責任を担う当事者として、自らの意見を表明していくことが重要と考えています〉

 と現状を説明した後で、

〈今般の選択肢の内容・問題点、選択肢に対する当社の考えについて理解を深めていただくため、職場会議等を通じて資料1~3を全所属員に周知してください〉

 という指示が書かれている。その資料1~3には、原発の比率を下げれば下げるほど、電力会社の経営が窮地に陥っていくことが丁寧に説明されており、「ゼロシナリオ、15シナリオ」が選ばれた場合、電力会社も国民も厳しい規制と負担に直面するとして、次のように「中国電力の見解」がまとめられている。

〈今回の選択肢のうち、「ゼロシナリオ」は、エネルギーの多様性確保、実現可能性、およびエネルギーコストの抑制といった観点から、選択肢たり得ないと考えます。提示された選択肢の中から、あえて一つを選ぶとすれば、原子力の安全確保を大前提に、「20~25シナリオ」は選択肢となり得ると考えます〉

 これが「社としての考えを社員・職員に周知徹底する」だけの文書ならば、そこまで問題視することはない。

 しかし同文書には、見逃してはならないこんな記述がある。

〈政府は国民全体での議論を呼びかけており、社員が自分の意思で意見聴取会への応募やパブリックコメントへの意見提出等を行うことは自由です。各人の選択肢に対する考えについて、意見提出等をしていただければと考えています〉

 このように、社員にパブリックコメントの提出を呼びかけるような文言があるのだ。

 文面上は「どんな意見を提出してもいい」とされているが、膨大な資料を使って原発の必要性を説明し、さらに「社としては最低でも20~25シナリオ」と表明した上で「意見提出を」となれば、社員に「原発賛成の意見を送るように」と指示しているようなものではないか。

 中国電力広報部門は本誌の取材に対して「あくまでも社員個人の考えを出すことは自由で、応募を働きかけたということではない」と回答するが、ジャーナリストの大谷昭宏氏はこう呆れる。

「この文面を見ると、『みなさん、パブリックコメントを出してくださいね』と、会社が社員に要請していると受け取られても仕方がない。いくら社内文書とはいえ、この繊細な時期に臆面もなくこうした文書を配るのは、『俺たちが、なにも分かっていない連中に原発の必要性について教えてやらなければならないんだ』という、電力会社特有の〝上から目線〟体質が、原発事故以降もまったく変わっていないことの現れといえるでしょう

 この文書が中国電力幹部に配られたのは7月12日のこと。7月16日には中部電力社員が意見聴取会に出席して世間の批判を浴びたが、その直後にはこんなドタバタがあった、と中国電力の社員が明かす。

「さすがに『あの内部文書には問題がある』と思ったのでしょうか。7月19日には新しい文書が配られました。そこには『意見聴取会やパブリックコメントの募集において、会社として社員に対し応募や提出を促すことは、これまで同様一切行いません』との一文が記されていた。万が一内部告発などが起こった場合を想定して、急遽作成したのでしょうが、『あれで〝提出を促さなかった〟はないよな』との声が社内でも上がりました」

 それだけではない。中国電力は幹部社員に対して、次のようにも要請している。

〈各所において日頃からお付き合のある社外のオピニオンリーダーのうち、電力に理解のある方々を対象に、(中略)選択肢の内容および当社の考えを説明してください〉

 オピニオンリーダーとは、大学教授や地元政治家らを指しているようだが、彼らにも「原発は必要」という意見と主張を広めることに一役買ってもらおうとしているのだ。

「文書を作成した経営企画部門と広報部門は、実際にオピニオンリーダーに説明したかを報告するように幹部らに求めました。社員が説明した相手には、パブリックコメントに親原発の意見を送ることを期待していたようです」(同・中国電力社員)

 電力会社が第三者に対してパブリックコメントを送るように要請したり、原発は必要というメッセージを発するように要請したのなら、これはれっきとした「やらせ」ではないか。

国民の声を無視する技術

 ご丁寧にも同文書には、そうした批判を予想して、

〈当社から社外の方に何らかの依頼や働きかけを行うことは、公平な議論を妨害する「やらせ」と受け止められる恐れがあります。

 このため、「当社の考えのご説明」というスタンスを徹底し、当社意見の代弁を依頼していると受け止められかねない言動は絶対に行わないでください

 という注意が書かれている。しかし、「説明しただけで、要請はしてない」という理論が通用すると思っているのなら、呆れるよりほかない。これが原発から離れられない「原発ポチ」のマインドなのである。

 福島第一原発事故の影響について研究する、福島大学の後藤忍准教授は、この内部文書を一読した上でこう指摘する。

「中国電力は現在山口県に上関原発を建設中ですが、ゼロシナリオや15シナリオが選択されれば、新しい原発を建設する必要がなくなるため、上関原発は無用の長物となる。それでは経営上大きな損害を被るということで、なんとしてでもゼロもしくは15シナリオを阻止したいのでしょう。経済的利益を優先して、事故のリスクなどについてはフタをしてしまうその姿勢は、3・11以前となにも変わっていませんね」

 中国電力の呼びかけによって、社員やオピニオンリーダーがパブリックコメントに意見を寄せても、国民の多数が「ゼロシナリオ」を支持しているなら、さほど影響はないのでは---。普通はそう考えるが、後藤准教授は「政府は国民の声とは関係なく、原発を残すシナリオを選択するのではないか」と危惧を示す。

「政府が国民に提示した資料を読むと、原発依存度が低くなった場合の経済的ダメージばかりが強調され、〝原発を維持するにはどれくらいのコストがかかるのか〟〝再び原発事故が起きた場合、日本全土でどれぐらいの被害が想定されるのか〟についての説明がまったくないのです。『原発ゼロだと、国民経済が台無しですよ』と言って、『だから15シナリオにしましょうよ』ともっていきたい思惑が透けて見えるのです。公正な議論をする気など、ハナからなかったのかもしれません」

 たしかに政府は「多数決で決める」とは言っていない。それどころか、

〈寄せられた意見をもとに、有識者会議を開いて分析する〉

〈統計学に詳しい専門家を呼んで、寄せられた意見を分析する〉

〈8月中には決められないので、9月まで検討する〉

 などといくつもの要件を「後出し」し、さらには枝野経産大臣が「2030年ではなく、2050年を目標にしてもいいのではないか」とまで言い出す始末である。

 さまざまな意見を分析した結果、「原発が必要という意見が少なからず存在し」、「有識者にもそう考える人がいるので」、やっぱり原発は必要です、という結論を導きだす可能性は十分にある。原発ポチたちが必死に叫び続けているのは、そうなるのを望んでのことなのだ。

 ゼロシナリオか、15シナリオか、20あるいはそれ以上か。はたして政府はどんな結論を出すのだろうか。その選択次第では、政府に対する国民の信頼が「ゼロ」となることを、覚悟しておかねばなるまい。

「週刊現代」2012年9月1日号より


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