2011年9月13日火曜日

フランスの核施設爆発:サルコジさん、他国に技術を売ってるけど大丈夫なんですか。

フランスの核処理施設が爆発し、死傷者を出す大きな事故となった。日本同様、政府の原子力関連省庁である原子力庁は火消しに躍起になっているそうだ。

福島震災後、混乱でお手上げ状態の日本に早々と来日して、世界最新の原子力技術のセールスをやってのけたサルコジさん。

日本は、故障が絶えないちゃっちい汚染水装置を信じがたいような売値で有り難く購入したそうだが、京大の小出助教曰く、こんな装置を入れたところで何の抜本的解決にもなっていないという。

サルコジさんも、再選を狙うなら方向転換が必要なのではありませんかね。フランスも利権絡みで、そうそう簡単に原子力を諦めることはできないのかしら。

それから、フランスでさえ国民の60%が脱原発に向いているのですよ。日本の推進派の方?

以下毎日(電子版)とブルームバーグの関連記事を転載する。

http://mainichi.jp/photo/archive/news/2011/09/12/20110913k0000m030149000c.html
仏核施設爆発:原発大国に衝撃 政権、担当相を現地へ急派

フランス南部ガール県マルクールの位置
フランス南部ガール県マルクールの位置
 「フクシマから6カ月後、原子力が人間生活に受け入れがたいリスクをもたらし続けていることがまたも明白になった」--。フランス南部の低レベル放射性廃棄物処理施設「セントラコ」での爆発事故は、原発大国のフランスを大きく揺さぶり、来年の大統領選の新たな混迷要因となる可能性が出てきた。
 「代替エネルギーは存在する。脱原発にかじを切るべき時が来た」。来年の大統領選候補者の一人、「欧州エコロジー・緑の党」のジョリ氏は事故後すぐに声明を出し、冒頭の発言をした。ジョリ氏は「住民や職員の状況、リスクについて透明性を確保し、リアルタイムで情報を開示することを求める」と述べた。
電力の約8割を原子力に依存し、原子力発電所の数で世界第2位、また原発輸出大国でもあるフランスでは、ドイツのような脱原発のうねりは起こらなかった。サルコジ大統領ら首脳は東京電力福島第1原発事故を原子力の最新技術を売り込む「商機」ととらえた。日本では汚染水処理機などの販売、老朽化した原発を数多く抱える米国でも次世代原子炉の販路拡大を狙った。
 それだけに、今回の事故は大きな衝撃波となって政権を揺さぶった。サルコジ政権は事故からわずか2時間後にコシウスコモリゼ・エコロジー相を現地へ急派し、原子力を推進する原子力庁は爆発事故直後から「原子力事故ではなく産業事故」と位置づけ、火消しに躍起となった。
 サルコジ大統領は来年の大統領選をにらみ、仏ドービルで開かれた5月の主要8カ国首脳会議(G8サミット)で安全基準作りを提唱するなど、「フクシマ後」の世界の原子力政策で主導権を握ることで、脱原発の動きを抑えるとともに、国内向けに指導力をアピールするもくろみだ。
 だが世論調査では、社会党のオブリ第1書記、オランド前第1書記に後れを取り、極右「国民戦線」党首のルペン氏にも迫られている。「欧州エコロジー・緑の党」は現在のところ支持を伸ばしていないが、福島事故直後は原発反対派が6割を占めるなど、潜在的な支持層は存在する。「原発」が争点化した場合、大統領選はさらに混迷を深めそうだ。【宮川裕章】
 ◇IAEA、緊急事態対応センター設置
 一方、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)の天野之弥事務局長は12日、仏当局に事故の詳細報告を求める一方、緊急事態対応センター(IEC)を設置したことを明らかにした。IECは事故状況を迅速に分析し、当事国や周辺国に的確な関連情報を提供する。【ウィーン樋口直樹】
フランス核処理施設で爆発、1人死亡-放射能漏れはないとEDF (2)
  9月12日(ブルームバーグ):フランス南部のマルクール核廃棄物処理施設で12日に爆発が起き、1人が死亡、4人が負傷した。同施設を運営するフランス電力公社(EDF)が明らかにした。
  EDFの広報担当者、キャロル・トリビ氏は電話取材に応じ、放射能もしくは化学物質の漏出はないと発言した。爆発があった施設は低レベル核廃棄物の処理に使われている。欧州最大の電力会社である同社の株価はパリ市場で一時7.8%下落した。
  同施設はフランス第2の都市マルセイユから約130キロに位置する。ここを運営するEDFの部門が発表したところによると、火災は現地時間午後1時6分に鎮火した。負傷者の1人は重体という。
  また、フランス原子力安全局(ASN)は「施設外の放射能漏れはなかった」との声明を発表した。
  電力需要の4分の3を原子力に依存するフランスでは、原子力関連施設が洪水や地震、停電や冷却機能の停止にも耐えられるか、全国の施設で原子力当局が安全性点検を実施している。EDFのほか、核燃料供給で世界最大手の仏アレバと研究機関CEAは施設の対応能力に関する報告書の提出期限を今月15日に迎える。
  国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長はウィーンでの会見で、この日のフランスでの爆発は安全性について協議するだけでなく、行動に移す必要性を浮き彫りにしていると指摘した。
  コシウスコモリゼ環境相は声明で爆発が起きた事実を確認。現地を視察することを明らかにした。
記事に関するエディターへの問い合わせ先:Vidya Root atvroot@bloomberg.net
更新日時: 2011/09/13 00:02 JST


2011年9月11日日曜日

全自治体 原発新増設に反対 66% コピペ

http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011091001000686.html

原発新増設、66%が反対 全自治体アンケート

 都道府県知事と市区町村長の66%が原発の新設や増設に反対していることが10日、共同通信社のアンケートで明らかになった。新増設や再稼働の際、原発から離れた周辺自治体からも同意を得るべきだとの意見は54%に上り、電力会社と結ぶ「原子力安全協定」の対象拡大を求める声が強いことが分かった。東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質への政府対応は88%が評価できないと回答。東日本大震災の発生から11日で半年を迎え、不信感の広がりが浮き彫りになった。
アンケートに回答したのは、1793自治体のうち1697自治体(95%)。最も多かったのは、原発の新増設を「認めない」の38%。

2011/09/11 04:02   【共同通信】

北海道電力のやらせ指示:毎日新聞コピペ

http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20110908ddlk01020276000c.html

北海道電力:やらせ指示 副社長ら招致 「説明にならない」道議ら不満の声 /北海道

 「北電に自浄能力はないのか」--。泊原発を巡る北海道電力の「やらせ」問題で、北電幹部が参考人招致された7日の道議会特別委員会。社内に設置された第三者委員会の調査を盾に詳細を明らかにしない北電側に対し、質問に立った道議や傍聴者からは「説明にならない説明を何時間も聞かされた」と不満の声が相次いだ。【高山純二、片平知宏、岸川弘明】
 ◆北電
 参考人招致は午後3時から2時間半以上に及んだ。北電は川合克彦副社長ら幹部7人が出席し、冒頭に全員が頭を下げるなど終始硬い表情のまま低姿勢を見せた。道議から「やらせ指示」の詳細について質問が出ると、歯切れが悪くなる場面も目立った。
 道主催のシンポジウムで「やらせ」を指示したとされるメールについて、北電は「メールソフトの更新をしたので残っていない」と釈明。一方で、ソフトの更新時期を答えられないなどし、傍聴席からは「つじつまが合わない」などとヤジが飛んだ。また、今後の焦点となる「やらせ」を指示した人が誰かという質問には「現在の調査では解明できていない」と述べるにとどめた。
 ◆道議
 道議会の各会派からは厳しい意見や質問が相次いだ。北電の参考人聴取は09年1月、プルサーマル計画を巡る招致以来となり、福島第1原発事故以降では初めて。
 やらせ指示問題を暴露した共産党の真下紀子道議は「国から指示があったのではないか。全員にお答えいただきたい」と幹部7人全員に認識を問いただそうとしたものの、北電は浜谷将人電源立地部長が「第三者委員会で調査しており、答弁を控えたい」。真下道議は「そういう答弁だから隠していると思われる」と批判した。
 また、自民党・道民会議の千葉英守幹事長は「報道で伝わる北電の会見や社長の言動から反省の姿勢がみじんも見えないとの声も上がっている」と指摘。傍聴していた民主党・道民連合の市橋修治道議も「道民が納得いく答弁ではなかった。やらせメールを本当に反省しているのか疑問だ」と北電の説明不足を批判した。
 ◆傍聴者
 北電への参考人聴取は道民の関心も高く、30の傍聴席は満席となったほか、音声のみを流す別室にも10人前後の道民が集まった。
 傍聴を終えた札幌市北区の専業主婦、伊川静子さん(62)は「『第三者委員会で調査する』とばかり言っていて、自身の努力が見られない。今回の説明では納得いかない。道民をばかにしている」と怒りをあらわにした。
 また、反原発団体「Shut泊」の泉かおり代表=札幌市=は「すべてを『第三者委員会』の説明で逃げられた。そもそも、(北電から)独立した委員会での調査が必要であり、委員の選考なども北電がやることではない」と述べ、北電が強調した調査の信頼性に疑問を呈した。

 ◇幹部ら「第三者委に調査委ねる」

 7日の道議会特別委では、シンポジウムでの「やらせ」問題を中心に6人の道議が北電経営陣らに説明を求めた。
 星野高志氏(民主)は第三者委員会の調査対象や権限を質問。蔵田孝仁企業行動室長は「グループ企業にも広げるかどうかなど、調査範囲は第三者委の判断に委ねる」と説明。川合克彦副社長は「委員会の判断で社長ら経営陣も対象になる」と明言した。
 星野氏は、99年にも北電の泊原発3号機増設を巡る意見書提出の「やらせ」問題が発覚した点に触れて「自浄作用発揮のため内部通報制度を作ったらどうか」と詰め寄ったが、蔵田室長は「調査結果を踏まえて判断したい」と明言を避けた。
 吉井透氏(公明)は国、道主催のシンポでの「やらせ」問題に役員が関与していたかを問いただした。蔵田室長はこれも「第三者委の調査に委ねたい」とかわし、国に「問題ない」と報告した後に動員指示が判明した経緯についても「各部門で精査し、関係部長が確認して国に報告した。国からの『やらせ』指示の有無も第三者委の調査を待ちたい」と述べるにとどまった。
 千葉英守氏(自民)は99年の「やらせ」問題の経験が生かされていないと批判。これに対し蔵田室長が「行動憲章や行動指針の策定、各種啓発活動を行ってきた」と説明し、川合副社長は「意識改革に取り組んできたつもりだが、大変遺憾に思う」と陳謝した。
 また、大河昭彦氏(フロンティア)がプルサーマル計画の開始時期を確認すると、阪井一郎原子力部長は「来春開始は大変厳しい」と説明。鳥越良孝氏(北海道大地)は、3号機の営業運転再開を「早すぎたのでは」と疑問視。阪井部長は「国から2度にわたり(営業運転移行のための)最終検査を受けるよう指導があった。受けなければ法的な罰則もある」と、国の指示に基づいたものと繰り返した。
 プルサーマル計画凍結と泊原発の運転停止を求めた真下紀子氏(共産)に対しては、酒井修常務(発電本部長)が「北海道の発電電力の40%は原子力で必要な電力だ」と反論した。【吉井理記】

北海道電力:00年にも「やらせ」 泊3号機増設、住民に賛成意見促す

 北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)増設の賛否を巡り、泊村で00年に開かれた道主催の「道民のご意見を聴く会」で、北電社員が原発周辺の住民らに参加を要請していたことが9日、住民らへの取材で分かった。同3号機のプルサーマル計画を巡る08年のシンポジウムでも社員を動員していた「やらせ」問題が発覚しており、北電による多数派工作が常態化していた実態が浮き彫りになった。
 「聴く会」は00年3月30日に開催。当初は99年秋に開かれる予定だったが、開催前に社員による賛成意見の多数派工作が発覚し、道が開催を延期していたが、半年後にも同様の工作が繰り返されたことになる。
 住民らによると、多数派工作していたのは北電泊原子力事務所渉外課の社員ら。会場で増設賛成の意見を述べた後志地方の自営業男性は「商売上、渉外課の人とは付き合いがある。参加してくれと頼まれた」と話している。
 「聴く会」では道が事前に周辺住民から意見陳述希望者を募集。応募者40人のうち26人が意見陳述したが、3号機増設に対する賛否はほぼ拮抗(きっこう)した。意見陳述の内容は、当時の堀達也知事が3号機増設に同意するか否かの「判断材料の一つ」(道幹部)になったという。
 道の坂口収経済部長は「事実としたら道民の批判の声はさらに高まるだろう。慎重かつ詳細な調査を北電に求める」と述べた。北電広報部は「会社として事実を把握していない。00年までさかのぼって調査できるか分からない」としている。【岸川弘明、吉井理記】
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110901k0000m040106000c.html

北海道電力:一転、動員認める…国主催シンポでメール

国のシンポジウムでも社員動員のメールを送っていたことが発覚し、謝罪する北海道電力の高橋賢友常務(中央)ら=札幌市中央区の北電本店で2011年8月31日午後5時半過ぎ、大場あい撮影
国のシンポジウムでも社員動員のメールを送っていたことが発覚し、謝罪する北海道電力の高橋賢友常務(中央)ら=札幌市中央区の北電本店で2011年8月31日午後5時半過ぎ、大場あい撮影
 北海道電力は31日、泊原発3号機のプルサーマル計画に関する経済産業省主催のシンポジウム(08年8月)で、社員450人に電子メールを送り、参加を促していたと発表した。経産省の求めで7月に内部調査した際は「(参加)要請は行っていない」と回答していたが、一転して動員を認め「調査が甘かった」と釈明した。北電では、この2カ月後のシンポジウムで、計画に賛成する意見を社員に述べさせる「やらせ」を指示した問題が既に発覚している。北電の高橋賢友常務は31日、記者会見し「道民、関係者の信頼を大きく損なう事態となり、おわび申しあげる」と謝罪した。
 北電によると、08年10月の北海道主催のシンポでのやらせ指示が判明したのを受けて再調査し、問題のメールが見つかったという。メールを受け取った社員のうち少なくとも14人は「出席した」と話しているという。【大場あい、吉井理記】
毎日新聞 2011年8月31日 22時01分(最終更新 8月31日 22時07分)

経産相の後任人事、古賀茂明氏に

 たった9日で重要閣僚辞任、こともあろうに経済的な難局にあって、最も重責を担っているともいえる経産相が、問題発言によって、マスコミや野党の餌食になり、早々に辞表を出すなど、大臣とも思えぬほどお粗末すぎる対応である。

その一方で、テロは歴史的必然と言ったり、原発事故は天罰と、言いたい放題の、ある政治家はいつもマスコミの追及をうまく免れている事を思うと、政治家が問題発言の度に、メディアの集中砲火を受けて、すごすごと辞任に追い込まれることに、何か釈然としないものがいつも残るのだけれどもーーー。

そんなことを考えていくと、海江田氏のように原発行政について推進することもせず、どちらかといえば、中立的な立場をとってきた鉢呂氏の経産大臣就任を快く思わないメディアの罠に、見事にはまり、梯子を外されたということも十分に考えられる。それにしても、大臣にもなって国を牽引していたかなければならない立場にある人間が、そんな罠に安々と落ちる事自体、軽率にすぎる。

後任は、誰が相応しいだろうか。
国の経済政策の抜本的な立て直しと、原発行政を所管するという重責が担えるような
人材は残念ながら、今の国会議員の中には誰も見当たらない。

この時局を乗り越えられるかもしれない人材という点でいうならば、後任に相応しいのは古賀茂明氏を登用することぐらいだろうか。

むろん古賀氏が就任すれば、抵抗勢力によって、逆風が吹き荒れるであろうが、野田氏も、泥臭さを売り物にして、皆、おててつないで仲良く行きましょうと悠長なことをやっているような事態ではないということをしっかり自覚し、古賀氏を登用し、自ら防波堤になって守り切るぐらいの気概を持って、この国の抜本的な立て直しに真剣に取り組むべき時なのではないか。

2011年9月10日土曜日

遅い文化人の動き:やっと出て来た大江健三郎さん

震災後、それまで何かにつけて茶の間に登場していたような文化人がマスメディアから姿を消した。

一部のオピニオンリーダーたちは、玄人専門の雑誌に投稿したり、本の出版をしたりしては、いるけれども、公の場で国民に対して広く原発に対する意見表明をする文化人の姿は、ほとんど見られなかった。

多くの文化人は福島原発の事象や原発の存続、電力会社やメディアの問題について、貝のように沈黙を守ったままであった。特に震災直後から、日本国内で声を上げていたのは、大衆週刊誌と一部の志の高いジャーナリストと素人の一般ブロガーぐらいのものであった。

東電や情報を操作する政府に楯突くことを一言でも言えば、即時「風評被害」と斬り捨てられ、民主国家とは思えないような言論統制が行われる中、海外メディアが隠された情報を次々と開示し、一部ジャーナリストや一般市民がめげずに声を上げ、露払いを続けた甲斐あって、震災直後は原発推進に諸手を上げていた国民の多くが、反対意見に転じるという世論の逆転劇が現実のものとなった。

原発再稼働賛成派の野田氏ですら、さすがにそうした世論の動きに鈍感ではいられず、首相就任挨拶の際には、玉虫色であったとはいえ一応脱原発依存の意見表明を行った。その露払いが終わった絶妙のタイミングで、大江健三郎氏らが登場したのである。

文化人が原発関連番組に登場しないのは、原発推進派のメディアに、自分たちやスポンサーにとって不都合な意見をあえて電波に乗せたくないという強い意思が働いているからであろう。しかし原因はそれだけでもなさそうである。

日本社会において脱原発・反原発・東電・メディア批判は、タブーである。現に6月、脱原発運動に率先して参加していた俳優はドラマからの降板を余儀なくされた。首相は、脱原発宣言をしたとたんに四面楚歌になり梯子を外された。発送電分離の必要性を主張した経産官僚は、窓際に追いやられ、原発の危険性を指摘する専門家は心ない人達から異端扱いを受けることとなる。メディアや国、東電などの大企業を敵に回せば、制裁を受けるという見せしめが行われている以上、よほどの信念と勇気を持たない限り、二の足を踏んでも当然であろう。

そんな中、村上春樹氏は原発震災から3ヶ月後目に、世界の人々に向けて単身で反原発の強い意思を表明した。

大江と村上、文学の評価は、どちらが高いのかわからない。しかし少なくとも、単身でしっかりと、日本社会が決して容認しているわけではないような反原発の明確なメッセージを、あの時期に世界に向けて発信したという勇気と、文筆家としての覚悟や社会的責任の自覚という点においては、大江氏より、村上氏の方に軍配をあげたい。

遅いながらも、しっかりと再稼働反対の意思を明らかにした大江氏らも、震災後半年にもなるのに、未だ様子見をしているような他の多くの文化人に比べれば、よしとしなければならないのかもしれないけれどもーー。

http://www.asahi.com/national/update/0906/TKY201109060665.html 

「原発再稼働やめて」大江健三郎さんら、野田政権に声明

関連トピックス

写真:脱原発への思いを語る大江健三郎さんら=6日、東京都千代田区拡大脱原発への思いを語る大江健三郎さんら=6日、東京都千代田区
ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが6日、東京都内で記者会見を開き、「経済活動を生命の危機より優先すべきではない」として、野田政権に停止中の原発を再稼働させないことなどを求める声明を出した。
 大江さんのほか、作家の落合恵子さん、鎌田慧さん、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長が出席。大江さんは「原発を廃炉にするという震災直後の国民的合意が、すでに失われつつある。事故を二度と起こさせないために、新しい法律を作るような動きを市民が起こさなければならない」と訴えた。
大江さんは音楽家の坂本龍一さんらとともに、脱原発への政策転換を求める1千万人署名を呼びかけている。19日には東京の明治公園で、5万人規模の集会を開く予定。


2011年9月9日金曜日

ハイリスク・ハイリターンは常識ですよ、東電さん、原発関連自治体の首長さん!

野田さん、随分弱腰ですね。あなたが率先してやることは、原発被災地で頭を下げて、税金をばらまくことだけですか、他人が収めた血税をただばらまいて、いい顔をするだけですか。そんなことなら、子どもにでもできますね。そんな弱腰では、とてもこの難局、乗りきれませんよ。

中間貯蔵施設の建設、地元の首長とこれからじっくり議論するなんて悠長なことを言っている間にどんどん台風や大雨で高濃度の放射性物質は、撒き散らされ、全国各地に広がる一方です。

大体何なんですか?

福島県をはじめ、原発地元自治体は復興基金を要求することばかり考えてるみたいですけど、原発を率先して誘致したり、原発事業の推進に加担したりしてきた張本人はあなた方ではないのですか?

これまでさんざん国から補助金をもらい、甘い汁を吸えるだけ、吸い続けてきたのではないのですか。あなた方がこれまで何をしてきたのか、玄海原発の古川知事がそのよい例でしょう。

首相に対して、憮然とした態度をとり、「自分たちは被害者だ、自分たちには何の責任もなく、責任を追うのは東電であり、政府である」というお顔をなさっていますが、何かが大きく違っているのではありませんか。

世の中ハイリスク・ハイリターンの原理で動いていること、常識でしょう?そんなことは、自治体の長になるほどのお偉い皆さんなら、百もご承知のはずです。

原発を推進して、その見返りに、一般庶民には想像もつかないほど多くの利益を得るという己の選択こそが間違っていたのです。その厳然とした事実に、襟を正してしっかり向き合い、己の非をまず認めるべきでしょう。それでこそ、長たるものです。なんとなれば、貴方方にも、山口県の祝島のような選択肢も当然あったはずなのですからーー。

もちろん、あなた方だけに責任があると言っているわけではありません。原発推進政策を掲げる首長を選挙で選び、美味しすぎる既得権を何十年にもわたって享受してきた地元住民にも同じことが言えるわけですからね。

そもそも「そこに住んでいるだけで莫大な助成金や特典が得られる」なんて、そんな結構なこと、常識的に考えても絶対にあり得ないことです。本当にそんないいことづくしの、楽園のような場所が日本の中に存在するのであれば、日本中の人々が原発周辺地域に引っ越して、そこら辺は首都以上の人口密度になっているはずです。

何か大きなリスクや問題があるからこそ、美味しい餌がばらまかれるのです。つまりね、地元に対する原発から受けるかもしれない、被曝のリスクを含めた迷惑量は、過去40年以上にわたってすでに血税の中から十二分に支払われ続けてきたのです。

政府が、地元への配慮も何もなしに、勝手にピンポイントで電力会社に原発を設置させ、それが事故を起したというのであれば、地元は大いに怒ればいいと思いますし、東電を恨み、政府を恨み、弔慰金でも、賠償金でも何でもとれるだけのものを要求すればいいと思います。でも実際は、全くそういう話ではないわけです。

誤解のないように申しますけど、福島で被災された方々が気の毒ではないと思っているわけではありません。わずかな収入の中から、義捐金も出しています。

ただ原発災害の被害者は、純粋な自然災害で被災した、不運としかいいようのない方々とは全く性質が違うことをしっかり認識する必要があると言っているのです。

そして今後、もしこんな悲惨な原発災害の被害者になりたくないと思うのであれば、決して他人事ではなく、日本中の原発を即時廃止する以外、方法はないということを、全国各地の自治体の首長さんや、電力会社の方々は、しっかり認識し、即行動に移すしかないのではないでしょうか。

ところで東電さん、己がまき散らした迷惑なゴミは、己のところで黙って引き取るのが筋でしょう?

日本では、ちょっとしたゴミ、別に誰に迷惑をかけるわけでもないようなゴミを野山に捨てたというだけでも、不法投棄とか言って、罰せられるぐらいなんですよ。

あなた方は、暴利を貪るだけむさぼり続けた結果、大きな人災を引き起こし、迷惑極まりないゴミを世界中に撒き散らしてるんです。そのゴミすら、さっさと引き取りもしないで渋っているなんて、一体どういう了見なのでしょうか?

何度もブログに書いてきましたけど、漏れ出た放射性物質の貯蔵場所は福島第1の敷地内に、そこでは狭すぎるならば、福島第2に、それでも足りなければ他の東電原発関連施設の敷地内に、それでもまだ足りなければ、東電本店に持っていくしか選択肢はないんじゃありませんか。

世のお父さん、お母さん方、おじいちゃん、おばあちゃん方、「自分たちはいい目だけをして、嫌なことは全部他人に押しつける」ーー原発関連自治体の代表や国を代表するような電力会社や中央官僚がそんなことやったり、加担したりしてるのを、黙って認めているようでは、これからの日本社会、ろくな子供が育たず、ますますお先真っ暗ですよ。

以下、関連記事をいくつか転載します。

http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210909004.html


【原発】「中間貯蔵施設で議論を…」野田総理大臣(09/09




就任後初めて福島を訪れた野田総理大臣は、放射性物質を含んだ土壌の中間貯蔵施設を福島県内に設置することについて、関係自治体と協議していく姿勢を強調しました。

 野田総理大臣:「改めて県ともそうですが、関係する市町村の皆さまをお集めして、そこでじっくりと議論させて頂きたいというふうに思います」
 中間貯蔵施設をめぐっては、菅前総理や細野原発担当大臣が福島県内の設置に言及して佐藤知事らが猛反発しています。佐藤知事と会談した野田総理は、中間貯蔵施設には触れず、除染活動に対して予備費2200億円を使うことを明らかにしました。一方、佐藤知事が自由に使える財源として基金を創設するよう求めたのに対し、野田総理は「適切に対応したい」と応じました。野田総理は、9日に台風12号の豪雨被害を受けた紀伊半島を訪れるほか、10日も東日本大震災の被災地、岩手県と宮城県を視察する予定です。







汚染された土などを保管する中間貯蔵施設について、福島の地元では、第一原発の敷地内への設置を求める声が出ていますが、政府は「候補地はまだ検討中だ」としています。
 中間貯蔵施設は、除染した土や汚染されたがれきなどを最終処分する前に貯蔵しておく施設で、政府は、福島県内への設置を検討しています。7日、福島県議会は、全員協議会に出席した東電の西澤社長に対し、中間貯蔵施設を受け入れるべきと指摘。西澤社長も「重く受け止める。国とも相談して対応する」と答えていました。細野大臣も原発敷地内の設置を検討しているとの見方もありましたが、8日の統合対策本部の記者会見で、園田康博政務官は「政府としては、敷地内とは言っていない」と否定しました。東電は、敷地内は作業用のスペースや資機材を置く場所を確保するために森林を伐採している状態で、大規模な中間貯蔵施設は難しいとの見方を示しています。




http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110909ddm002010090000c.html

野田首相:福島原発視察 復興基金に前向き 知事に意向示す

野田佳彦首相は8日、就任後初めて福島県を訪れ、東京電力福島第1原発を視察した。首相は東電社員らを前に「事故の収束は世界が望んでいる。克服できるかは皆さんがカギだ」と激励。さらに福島県庁で佐藤雄平知事と会談し、放射性物質の除染のため、11年度第2次補正予算の予備費2200億円を活用する方針を伝えるとともに、福島復興のための基金設立を第3次補正予算案で検討する考えを示した。
福島第1原発で首相は、東電の小森明生常務、同原発の吉田昌郎所長から説明を受け、車内から原子炉建屋などの施設を視察した。
佐藤知事との会談では、「福島ではいまだに厳しい被災生活をされている方が数多くいる。も大変大きな責任があり、心からおわび申し上げる」と陳謝。「『福島の再生なくして元気な日本の再生はない』と申し上げてきた。その気持ちをぜひ共有したい」と述べ、新政権の最優先課題として事故収束に取り組む姿勢を強調した。
一方、佐藤知事は、震災復興や事故対応のため、県が自由に使える基金の創設を要望した。首相は「3次補正にできるだけ反映できるよう努力したい」と答えた。
首相は会談後、放射性物質で汚染されたがれきや土などの中間貯蔵施設について記者団に「(建設への)理解をいただく方法をどうするか、安全性を説明しながら市町村と議論したい」との意向を表明した。【笈田直樹】
毎日新聞 2011年9月9日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110909ddm001040056000c.html

九州電力:原発やらせメール 「佐賀知事発言が発端」--第三者委、中間報告

 ◇新たな疑惑も浮上

九州電力の「やらせメール」問題を調査している同社の第三者委員会(委員長=郷原信郎・名城大教授)は8日、同社幹部と面会した古川康・佐賀県知事の発言がやらせの発端となったと結論付ける中間報告をまとめた。また、やらせメールの舞台となった6月26日の原発説明番組より以前の5月17日にあった別のインターネット中継でも、知事側が同社に意見投稿などを求めていたと指摘した。
第三者委は9月末までに最終報告をまとめるが、新たなやらせ要請疑惑が浮上したことで知事の進退問題に発展する可能性が大きくなった。中間報告によると、6月21日に同社の段上守・原子力担当副社長(当時)や大坪潔晴・佐賀支社長らが知事と面談した際に、5日後に予定されていた国主催の説明番組への対応が話題になった。支社に戻ってから支社長は知事発言としてメモを作成したが、そこには知事が県議への働きかけと意見投稿を求める記載があった。メモには、意見投稿の方法として5月17日のインターネット中継と同じ手法を使うという九電側の考え方がただし書きで書かれていた。
5月17日には原子力安全・保安院の担当者が玄海原発(佐賀県玄海町)で実施された緊急安全対策について古川知事ら県幹部に説明したが、その模様はインターネットで中継され、視聴者が意見投稿できる仕組みだった。大坪支社長は前日の16日に県の担当者から電話を受け「知事の強い希望」として「県民にアクセスしてほしい」と要請されたという。
新たなやらせ要請疑惑について、古川知事は8日夜、取材に応じ「私の真意と違うところでメモが作られ流通した」と語り、辞職する考えがないことを強調した。【斎藤良太、小原擁】
毎日新聞 2011年9月9日 東京朝刊

2011年9月8日木曜日

遅い文化人の動き:やっと出て来た大江さん:コピペ

http://www.asahi.com/national/update/0906/TKY201109060665.html 

「原発再稼働やめて」大江健三郎さんら、野田政権に声明

関連トピックス

写真:脱原発への思いを語る大江健三郎さんら=6日、東京都千代田区拡大脱原発への思いを語る大江健三郎さんら=6日、東京都千代田区
 ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが6日、東京都内で記者会見を開き、「経済活動を生命の危機より優先すべきではない」として、野田政権に停止中の原発を再稼働させないことなどを求める声明を出した。
 大江さんのほか、作家の落合恵子さん、鎌田慧さん、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長が出席。大江さんは「原発を廃炉にするという震災直後の国民的合意が、すでに失われつつある。事故を二度と起こさせないために、新しい法律を作るような動きを市民が起こさなければならない」と訴えた。
 大江さんは音楽家の坂本龍一さんらとともに、脱原発への政策転換を求める1千万人署名を呼びかけている。19日には東京の明治公園で、5万人規模の集会を開く予定。


 

2011年9月6日火曜日

むなだ歳費を削減するってことではなかったのですか、民主党さん?

民主党のマニュフェストは何を目玉にしていたのだろうか。子ども手当、高速道路無料化、農業戸別所得補償など税金のばら撒きも、むろんそのひとつではあるが、「霞が関に対抗し、無駄な歳費を削減し、増税をしない」という謳い文句に、多くの国民がわずかなりとも期待を持ったからではないのか。

そんな謳い文句に踊らされた国民が馬鹿といえばそれまでであるし、大震災が起これば、無駄な税金のばら撒きを即時中止することは当然である。

まず、ばら撒きの1つである、富裕層に子ども手当を支給する、税的な手当をすることなど全く無意味である。わずかな手当が貰えるから子どもを生もうなどと選択する親は全く0とは言わないが、まずいない。政府は若いカップルがなぜ子どもを作らないのかもっとしっかり分析する必要がある。

そもそも、親は子どもに対して扶養の義務を負うものであり、社会が子どもを育てるなどという考えは、移民・難民が溢れ、その国の公用語さえまともに操れないような貧困層を多く抱えた国にこそ必要な施策である。十二分な教育を受け、劣悪でない生活環境を維持している親たちが、子育てに責任を持たず、扶養の義務を半ば放棄するようなことを社会が奨励すればするほど、モンスター・ペアレンツがますます跋扈し、しつけも常識も、生きる力も覇気も希望もない、次の世の中を託せないような子供たちが世に溢れ、日本社会は外国人の力にでも頼らなければ、完全に機能不全となる。

次に高速道路であるが、二酸化炭素の環境汚染を喧しく主張するならば、高速道路の無料化はそれとは全く相容れない施策である。土日の交通事故は増え、レジャーに繰り出すマイカーが、否が応でも一分、一秒を惜しんで高速を走らなければならない営業車や緊急車両の通行をどれほど妨害するかを考えただけでも即時、中止すべきである。

また「農協の支持を得なければ、自民党に勝てない」という気持ちは分からぬでもない。農業政策は重要であるが、まともに農業をやっているのかいないのか定かでないような兼業農家にまで所得保障をし、結果的に専業で懸命にがんばっている農家を圧迫するような制度は廃するべきである。

その上で、政府は、今こそ、徹底的に無駄な歳費を削減し、増税をしないというマニュフェストの根幹の部分は何があっても死守しなければならないのではないか。

まず何を置いても、国会議員の定数と歳費のカットを第一に行うべきである。

無駄な公共事業や歳費も大幅にカットすべきである。仕分けが単なる政治的なパフォーマンスに終わり、仕分けされたはずの事業の大半を、復活折衝ですぐさま名前を変えてゾンビのように蘇らせることを許してしまった責任は厳しく追及されるべきであり、猛省すべきである。一度廃止と決定したものは軽々に覆すべきではない。

亀井氏が金融相になった2年前、「特別会計は役人の小遣いになっている。これに切り込めば20~30兆円はすぐにでる」と言った。特別会計はどうなっているのか、野田氏は全くメスを入れる気配すらないが、何としてもこれに切りこまなければ、民主党は中央官僚と与した自民党と何も変わらず、国民の期待を欺いた口先三寸の詐欺師とそしりを受けても致し方あるまい。

結局、閣僚は霞が関に取り込まれ、民主党の政治家たちも、自民党の政治家同様、官僚の掌の上で転がされるだけのブザマな存在でしかないのか。その象徴が野田氏である。

財務官僚に安々と取り込まれ、軽々に増税を打ちあげた。その一方で、この国難のとき、事業仕分けで、新規建設凍結が決まったはずの朝霞に総工費105億円もの公務員宿舎の建設工事を認め、原発賛成の細野氏を原発担当相、環境庁長官に配置するなどなど、党内融和といえばいかにも聞こえがいい。周りを手懐けたおかげで、官僚や原発を推進する大企業からの激しい向かい風を受けることもなく、順風満帆に帆を上げて、「安定感のあるリーダー」などとメディアからは褒めそやかされているようだがーー。

AERA8月22日によれば、電力会社は原子力発電に関連して、「電力埋蔵金」とも言うべき積立金を保有しているという。これを取り崩すだけで、3兆2千億円もの資金が原発補償、被災者支援にすぐに使えるという。

むろんこの埋蔵金の実質は、電気料金の中にこっそり加算・徴収されてきたものであり、国民がせっせと積み立ててきたものなのであるから、政府は、政治的な意志をもって、緊急の議員立法で特例法案を提出し、国民の負担を減らすことを第1になすべきなのではないか。

AERAによれば、原子力村の地下にはまだまだ埋蔵金が眠っているそうである。

ちなみに公務員宿舎は被災者に提供し、公務員は社会常識に見合った住居費を支払うべきであるし、公僕であることを忘れた中央省庁の官僚、とりわけ管理職の給料・手当・退職金は当然大幅に見直しを行い、カットすべきであろう。

それだけのことを徹底的に行えば、増税などしなくても、復興財源などなんとでもなるし、赤字財政は解消されるかもしれない。万が一、それでも解消できないときは、震災復旧・復興で、需要が増えた企業や、円高差益で莫大な利益を生んでいる企業、富裕層にターゲットを絞った増税を行うべきである。

本来ならば、富裕層には欧米並みに自主的に多額の寄付をしていただきたいところだが、日本ではごく一部の奇特な方々を除いて、noblesse oblige のかけらすらなく富裕層にいる方ほどお金と権力に執着されるようなので、もはや増税に頼るしかあるまい。

今のような経済不況で、お先真っ暗な時代に、国民に増税を実施することはタブーであり、非道である。日経やNHKを始めとするメディア各紙はまた都合のよいサンプリングをして、「国民の6割が増税に賛成している」などと報じているが、増税によって一般庶民の消費が低迷すれば、日本の経済がどうなるかは、火を見るよりも明らかなのではないだろうか。

以下は富裕層増税に関する記事である。ところで、日本において富裕層とは年収いくら以上の方々のことを指すのだろうか。元経産相の海江田氏の金銭感覚によれば、「年収1500万円は中流層」にすぎないらしいがーー。

http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Finance/node_301031


富裕層増税の提唱へ、かつてない読者の反応=バフェット氏


 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は長年、新聞の投書欄に大きな反響を呼ぶ意見を数多く発表してきたことで知られる。
ウォーレン・バフェット氏Mario Tama/Getty Images
ウォーレン・バフェット氏
 2008年10月には経済危機の最も深刻なときに株を購入するよう訴えた。1990年代初頭には財政赤字削減を求めた。そして2000年代には遺産相続税や贈与税を強く勧告した。
 しかしバフェット氏は、富裕層への増税を求めた先月の米紙ニューヨーク・タイムズの寄稿文に対する反応はこれまでにないほど大きかったかもしれないと述べている。
 同氏は筆者に、「わたしがかつて書いたものの中では今回の反応が最も大きかった」と述べ、「それは今日では電子メールによって反応することが比較的容易になっているという事情もあるだろうから、ある程度まで技術的な要因があるかもしれない。しかし、これまでに見なかったほどの反応だった」と語った。
 同氏は、富裕層に増税せよとの彼の意見に対する反応は、ほぼ3対1の割合で賛成が多かったと述べた。年間100万ドル稼ぐ人々と1000万ドル稼ぐ人々に増税するとの内容だ。これは、2対1の割合で同氏の意見への賛成が多かったオンライン上の反応よりやや積極派が多い。
 バフェット氏は、彼自身への反応は賛成に傾くのが自然だとして、「そのことに大きな意味はない」と述べた。そして「非常に裕福な人々の中には、1セントでも多くのカネを手元に置きたいと執着する人々も必ずいると思う」と述べた。
 しかし同氏は同時に、「フォーブス400(米国の資産家400人)」番付けの幾人かのメンバーの反応もあったし、同氏らが立ち上げた慈善事業キャンペーン「ギビング・プレッジ」の署名者もいたと指摘し、 「実際のところ、彼らはいま起こっている現実の世界に対してある程度共感している」と述べた。
 バフェット氏がこれまでにも富裕層課税について書いたことがあるのは言うまでもない。しかし彼の最新の提唱に対する反応は、富と税に関する政治的駆け引きがこれほどに物議を醸したことはなかったことを示唆している。そしてこの論争は向こう2年間にわたってさらに白熱する公算が大きい。
 バフェット氏の提唱が、これまでにないほど多くの反応を得たのはなぜだと読者の皆さんはお考えだろうか?

2011年9月4日日曜日

My parience carried me through this far.

 日本の主要メディアは、相変わらず政府に都合の悪い福島原発や東電の不始末に関するニュースは報じなかったり、申し訳のように取り上げることはあって、気づかないほど小さく取り上げ「不見、不聞、不言」 を徹底している。さすがに、インターネットは即時に世界中の人間に読まれる可能性があるため、そのときはネット上に出るが、フルテキストをコピーしておかないと、特にNHKや日経新聞はすぐに都合の悪いニュースは削除する。

以下のニュースも同様である。出張中忙しくてこんな報道があったとは知らず、後から聞いて検索してみたけれども、NHKニュースからはみごとに削除されており、他のニュースソースも、なぜかGoogleの検索の上位には出てこない。時事通信の記事をコピーしている人があり、やっと入手できた。


http://www.jiji.com/jc/zc?k=201108/2011082300740

電力使用実績で誤り=プログラムミス、低めに表示-東電

 東京電力は23日、ホームページなどで日々公表している電力の使用実績に誤りが発見されたと発表した。プログラムのミスにより、自社発電設備を持つ3社からの受電分が加算されていなかったため。7月1日から8月17日までの48日間、使用量が最大で62万キロワット低く表示されていた。供給力に誤りはなかった。
 3社については7月1日から受電を開始したが、使用実績を自動作成するプログラムには反映されていなかった。実績が不正確だったことにより、翌日や当日の需要と供給力の見通しを示す「でんき予報」も、需要が若干低く見積もられていたという。(2011/08/23-18:44)

 我々は東電のいい加減な試算に基づいて、この夏さんざん驚かされ、無理な節電を煽られてきたわけである。東電の隠蔽体質は今に始まったことではなく、他にもどんなミスや操作、隠蔽行為があったか、発表されていないだけで分かったものではない。

東電のでたらめな試算のおかげで真面目に無理な節電をして命を失った被害者がいるとすれば、単なる計算ミスなどという軽々しい言葉で済まされるべき事柄ではない。

東電さん、昨日のブログに書いた3月11日の緊急冷却系の3回にも及ぶ意図的な停止など、日本を誇る大企業にしては、あまりにも人為ミスが多すぎませんか。高所得の社員さんにできることはたかがその程度ですか。

悔しければ、せめて国民に迷惑をかけない仕事をして見せて下さい。本店から社員総出で福島へ出向き、さっさと地下ダムを作るなり、なんなりして放射能漏れ、できるだけ早く地下水や海に流さないような措置をしてください。原発に覆いなんかしたって、放射能物質撒き散らしの現実は、何も改善されないこと、もうド素人の私たちでさえ知ってしまっていますよ。



何も言わない日本のメディアに対して、海外のジャーナリストは、今こそ日本に「アラブの春」を引き起こすことが重要だというけれどもーー。





http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=aTH5uqQEEY3o
【コラム】今こそ日本に「アラブの春」を巻き起こせ-W・ペセック

  8月31日(ブルームバーグ):日本にも「アラブの春」が必要だ。
  私が10年前に東京に赴任した時、今この時点で8人目の首相について書くことになるなどとは思いもよらなかった。しかし、野田佳彦新首相が果たして前任者5人よりその座に長くとどまれるのか、こうして分析したり考えたりする羽目になっている。
2001年4月に小泉純一郎氏が森喜朗氏の後任として首相に就任。小泉氏は5年という今では考えられないほど長期間、首相の座にとどまった。同氏の後は、記憶には薄いが安部晋三氏が就任、福田康夫氏と麻生太郎氏が後に続いた。
09年8月には政権交代が実現。有権者は約54年間の自民党一党支配と決別した。民主党は力量不足の鳩山由紀夫氏を首相に選ばなければまだましな状態でいたかもしれない。次に首相に就任した菅直人氏は先週辞任し、また新たに首相が誕生することになった。
世界経済が安定からは程遠いこの時期に、無難な選択として野田氏を選んだと、アナリストや批評家は政治家批判に忙しい。しかし、本当に非難されるべきは1億2700万人の日本国民だ。
国民は自分たちにふさわしい指導者を選ぶという古いことわざには一理ある。日本の場合、有権者は指導者に対しもっと要求し、変革を強く求める必要がある。それなのに、日本人はまるでまひしたかのように沈黙したままだ。
インドの反政府運動
私はインドに数日間滞在した際、政治腐敗に反対する74歳の活動家のもとに何万人もの有権者が集結するのを見た。アンナ・ハザレ氏は格別カリスマのある人物ではない。だが、チュニジアの青年の焼身自殺が同国の革命の発端になったように、ハザレ氏のハンガーストライキはまさに時宜を得た行動だった。
インドやマレーシアやタイなどで最近起きている反政府運動が日本で起きないのには、明確な理由が二つある。その一つは豊かさだ。いくら日本が景気後退やデフレや賃金の伸び停滞などの問題を抱えているとはいえ、家計の貯蓄は数兆ドルにも上る。日本の失業率も4.6%と、米国の9.1%よりも低い。もう一つの理由は文化的なものだ。礼儀やしきたりが過度に尊重される日本では、街頭で旗を振りかざし、声を上げることはあまり人の心に訴えない。
無気力な日本
弱気で無力な政治家のために日本が何もできないでいる間、世界はスピードアップしている。中国は日本を追い越して世界第2位の経済大国の座に就き、その9.5%という高い成長率は多くの先進国とは対照的だ。また、ソニーなど日本を代表する企業がデフレで苦しむ中、韓国のサムスン電子などの新興企業は好調だ。
東日本大震災と原発事故が起こる以前から、日本政府の足取りは重かった。世界最大の公的債務を削減し、ゼロ金利政策から脱却する方法を考えようとする意志はほとんど見られなかった。経済的競争力の向上や高齢化対策、出生率引き上げや移民関連の法律の緩和に関して真剣な議論が行われることはなかった。
震災直後は、日本はこのような無気力な自動操縦の状態から脱し、経済を別の方向に進めていかざるを得なくなるとみられていた。しかし、この5カ月余りで証明されたことといえば、日本の無気力の根強さだ。政治家は菅降ろしに夢中だった。その任務が果たされた今、一体どうするのか。
陳腐な政策
東北では今でも何万人もの被災者が避難所や仮設住宅で生活する。被災者は福島第一原子力発電所の放射能漏れの影響や長期的な雇用の見通しに不安を抱いている。それなのに政府の対応といえば、いつもと変わらない小競り合いや、陳腐としか言いようのない経済政策だ。官僚は相変わらず国民にはほとんど目を向けず、自分の狭い利権を守ろうとするだけだ。
野田氏が財務相として示した政策能力は一つだけだった。同氏の時間やエネルギーの大半は円高や輸出対策に占められた。円高なのは投資家がドルやユーロを避けているためだ同氏がすべきことは、技術革新や生産性の向上で円高に対抗するよう企業に促すことだ。
首相になっても野田氏は変わらず、復興増税について大いに語るだろう。増税で経済が打撃を受けることを考えれば、野田氏はまず無駄な公共投資を復興財源に振り向けるべきだ。だが、野田氏は新しい考え方とか大胆な発想で知られているわけではない。同氏が無難な選択だったということを忘れてはならない。
だが、もはや無難では済まされない状況になっており、日本人はいら立ち始めている。カイロやトリポリで普通の人々が立ち上がったように、東京や大阪の街頭で変革を求める時が来た。日本の革命が始まってしかるべき時だ。(ウィリアム・ペセック)
ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
記事に関する記者への問い合わせ先:William Pesek in Tokyo atwpesek@bloomberg.net.
記事に関するエディターへの問い合わせ先:James Greiff atjgreiff@bloomberg.net.
更新日時: 2011/08/31 15:39 JST

2011年9月3日土曜日

外国の巨額賠償請求にどう対処するつもりですか?

愚かしいにも程がある。
日本政府は、今年の5月になるまで、安全神話の名のもと、国際的な原発賠償条約の加盟を勧められてきたにもかかわらず、前向きに考えることさえしてこなかったという。

8月になってあわてて、アメリカ主導の条約に加盟したが、条約に加盟したから大丈夫などと大きく構えていたら、大間違いである。条約は、加盟する前に起こった事象に対して、適用されるわけではないからである。そして誠に残念なことながら、すでに賠償に向けての準備を着々と始めた国が出てきているという。

東電をはじめ経団連や電事連、経産官僚、三井住友銀行や第一生命などのメインバンクや大株主のご機嫌とりばかりを続けて、いつまでも東電を守っていると、国を滅ぼすことにもなりかねない。それを慶応の岸博幸氏が指摘しているので、以下に転載する。

東電から献金をもらったり、助成金を受けたり、接待を受けたり、天下りのポストを用意してもらったり、娘や息子の就職の世話をしてもらったりなどなど、これまでにもらった蜜の甘さや誘惑があまりにも大きすぎて、諦めきれない権力者が少なくないことはよくわかる。

彼らは東電を死守することの引換に、日本の国が諸外国から巨額の賠償金を請求されることなど何とも思ってはいないに違いない。彼らの共通認識は、増税で、国民の貯蓄を全部吐き出させれば、何とかなるだろうという程度のものなのであろう。(増税をするならば、原発を推進してきた富裕者層や、震災復興に関わって、利益を上げている企業を対象に限定的にやっていただきたいものである。)

どこまでも東電を死守するというならば、その引き換えに東電関係者及び東電からこれまでさんざん恩恵を受けてきた企業や個人に、海外からの巨額の賠償金を全額負担して頂いてても余りあると思うのは、薔薇っ子だけだろうか。

今でこそネットでいろいろな情報を入手できる時代になったけれども、我々大多数の国民は、施政者や官僚と結託したメディアによってこの数十年間欺かれ、都合の悪いことは何も聞かされず、原発の賛否について十分な判断ができるだけの情報から、全く疎外されてきたのだから。

http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY201105280573.html
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原発賠償条約、加盟を検討 海外から巨額請求の恐れ

2011年5月29日3時5分
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図:原発事故の賠償条約の仕組み拡大原発事故の賠償条約の仕組み
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、国際原子力機関(IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた。
 このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある。
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-08/15/content_23215742.htm

日本、原発賠償条約加盟へ 海外からの巨額賠償防ぐ

タグ: 日本 原発 賠償 条約 加盟 海外 

発信時間: 2011-08-15 17:02:15 | チャイナネット | 編集者にメールを送る
日本政府は15日、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)加盟について米国と協議を始める。海外から条約以外の基準で福島第一原発事故の損害賠償を請求されないようにするねらいがある。英国放送協会(BBC)が伝えた。
同条約は原発事故による国際間の賠償請求について裁判基準を明確に定めているほか、加盟国の相互支援に関する条項も含まれている。
現在CSCに加盟している国は米国、モロッコ、ルーマニア、アルゼンチンの4カ国で、5カ国以上加盟していないため、規定により条約はまだ発効していない。
このほか欧州連合(EU)やロシアが主導する国際条約がある。
米国はかつてCSC加盟を勧めていたが、日本政府は3月の福島第一原発事故発生後、国内の損害賠償問題が浮上し、周辺国からも海洋汚染の被害状況に応じて巨額の賠償を負わされる恐れがあると考え、国際条約加盟の本格検討に着手したと朝日新聞が5月、伝えた。
日本経済新聞が15日伝えたところによると、政府は最終的に米国主導の同条約が最も有利だと判断、将来原子力発電の建設を計画しているアジアの国への原子力発電設備輸出につながるとみて、米国と協議しながら、国内法を整備する方向で調整を進めることを決定した
日本政府は外務省と経済産業省の担当官を米国に派遣、15日から米国側とCSC加盟について協議、国内法の整備と加盟に向けた準備については文部科学省と法務省が検討に加わる予定。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年8月15日
【第153回】 2011年9月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
野田政権は東電破綻処理を急げ――このままでは日本は中国やロシアからの巨額賠償請求の餌食になる


今日にも組閣が行われ、野田政権が発足します。迷走を続けた菅政権の後だけに、被災地の復旧・復興の加速、エネルギー政策の抜本的転換、デフレと円高の克服に向けた経済財政運営など、取り組むべき政策課題が山積であり、世の関心も増税など目立つ問題に行きがちですが、日本全体のリスクを低減する観点から早急に取り組むべき課題があることにも留意すべきです。それは東電の破綻処理です。

外国からの損害賠償という巨大リスク

 これから長期にわたり原発事故の損害賠償など巨額の債務を抱える東電をどうするかについては、菅政権で既に決着しています。原子力損害賠償支援機構法が成立したことにより、
・原発事故の責任のある東電が損害賠償を行なう
・機構が東電に対して、賠償のための資金支援を行なう
・国にも原発事故の責任があるので、必要があれば機構に対していくらでも予算を投入する(=東電に対して予算支援を行う)
 というスキームとなりました。東電に責任を持って被災者への損害賠償を行わせるという名目の下で、東電を債務超過にしない(=破綻処理しない)という政官の強い意思により、事実上政府が東電を救済することになったのです。
 多くの識者の方が指摘しているように、このスキームには、東電のリストラが不十分、ステークホルダーである株主や債権者が責任を負っていないなど、市場のルールの観点から問題が多いのですが、それに加え、別の観点からも大きな問題を生じさせかねません。
 それは、外国からの損害賠償請求への対応です。
 原発事故以降、汚染水の放出などを通じて大量の放射能が海に流出していると考えられます。放射能が付着したがれきが他国に流れ着く可能性もあります。それらを通じて、他国の領海に放射能汚染が拡散したり、他国の漁業に被害を与えるなど、放射能汚染の被害は日本国内にとどまらず、外国にも及んでいるのです。
 そうした事実を考えると、原発事故の被害について、今後外国からも損害賠償請求を起こされる可能性が大きいと言わざるを得ません。特に日本の近隣には中国やロシアなど色々な意味で難しい国があることを考えると、東電が8月30日に発表した「原発事故に伴う損害賠償の算定基準」を遥かに超える規模の損害賠償が外国から請求される可能性があるのです。一部には、海洋汚染への損害賠償の請求が数百兆円にも上る可能性がある、という声もあります。
そして、残念ながらそうした外国からの損害賠償請求の可能性を裏付ける情報が入ってきてしまいました。ある国は、もう損害賠償の請求のための情報収集と準備を始めているのです。

いかに日本の国益を守るか

 そして、留意すべきは、損害賠償請求をしようと考えている外国にとって、機構法による東電救済スキームは“非常に美味しい”ということです。今のスキームの下では、損害賠償を請求する相手である東電は潰れないし、国も責任を認めている、かつ国が東電に無制限に予算を投入する仕組みになっているのですから、いくらでも損害賠償を請求できます。
 しかし、それで巷で言われるように数百兆もの損害賠償が外国から本当に請求されたら、東電は当然払い切れないので、ツケはすべて国に回ってきます。1000兆円近い日本政府の債務に数百兆円が上乗せされたらどうなるか。大変なことになるはずです。東電より先に国が破産してしまうのではないでしょうか。戦後賠償よりも重い負担を日本全体として背負わされかねないのです。
 それでは、外国からの損害賠償請求にはどのように対応すべきでしょうか。この点について、メディアでは、海外からの巨額の損害賠償に対応するため、これまで未加盟だった原発賠償条約への加盟を政府が検討していると報道されています。
 この条約は、原発事故の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めています。つまり、もしこの条約に加盟していれば、例えば中国人が損害賠償を請求する場合でも、日本の裁判所で訴訟を起こさなければなりません。その場合、外国で訴訟を起こすこと自体大変だし、裁判所も外国人より自国企業を守る方に重きを置くはずですので、損害賠償を起こされても、それがあまりに巨額になることは防げるはずです。
 しかし、仮にこれからこの条約に加盟したとしても、過去の事故にまで条約の効力が遡及するとは考えられません。従って、中国人が中国の裁判所に損害賠償の訴訟を起こすことができるのです。そうなったら、当然ながら、日本の企業である東電よりも自国民の利益が優先されるでしょう。
 従って、条約に加盟していない中で、海外からの巨額の損害賠償に国としてどう対処するかを真剣に考えなくてはなりません。その手は二つしかないように思えます。
 一つは、東電にも国にも原発事故の責任はないとすることです。そうすれば、外国が損害賠償を請求できる相手がなくなるからです。そのためには、今回の原発事故が原子力賠償法上の“天災地変”に該当するとしなければなりません。事故の責任は東電にあるので東電は賠償責任を負うという、事故が起きて以来の政府の見解を変えなければならないのです。かつ、東電の責任が前提の機構法も廃止しなければなりません。
 しかし、特に原発事故で深刻な被害を受けている福島県民の心情を慮れば、いくら国を守るためとは言え、東電に事故の責任なしと政府が判断を翻すのは現実には困難です。
 そう考えると、もう一つの方法が現実的です。それは、東電を無理に延命させず、事実上債務超過なのだから淡々と破綻処理を進めることです。賠償責任を負う東電がなくなり、機構法から国の責任を謳った部分を削除すれば、テクニカルには外国が損害賠償を請求する相手がいなくなります。
 この場合、東電を潰すと福島の被災者の賠償債権もカットされてしまうという反論が出ると思いますが、“事故の損害賠償”ではなく“被災者への支援”として政府が肩代わりして十分な金額を支払うことで対応できるはずです。国内の被災者相手に“損害賠償”という言葉を使い続けると、外国からの損害賠償にも応じざるを得なくなるので、被災者への給付の性質を変えるのです。

東電より国を守るべき

 私自身、東電と国の双方に原発事故の責任があるという考えにはいささかも変化はありません。それにも拘らず、上述のように自らの考えを曲げた主張をしているのは、日本を海外からの損害賠償請求から守るためです。
 現在の東電救済スキームの下で本当に外国が数百兆円もの損害賠償を請求してきたら、日本はおしまいです。戦後賠償以上に後世に負担を残すことになります。また、もし私が中国やロシアの政府の当事者なら、領土交渉や漁業権の交渉などにこの損害賠償を絡めます。損害賠償は勘弁してやるから、代償として尖閣諸島や北方領土への領有権の主張は放棄しろと言うでしょう。
 このように、外国からの損害賠償問題は、東電という一企業を超えて日本の国益に大きく関わるのです。野田政権は、菅政権が国内のことだけを考えて作った東電救済スキームを早急に修正し、日本の国益が確実に守られるようにすべきです。そうしないと、本当に“東電栄えて国滅びる”となりかねません。