2011年5月25日水曜日

人の噂も75日?:めっきり減ったテレビ各社の原発報道、これでいいのか?

事態は深刻だという。IAEAの査察団が入ったせいか、勢い東電からいろいろ都合の悪いデータが汚染水のごとくに湧出し始めた。海外メディアのニュースに着目していれば、このような情報はすでに事故前後にわかりきっていたことだ。

メディアの中で事件後初めてメルトダウンという言葉が使われ、原発の状況を危ぶみ、それに伴う放射能汚染による健康被害を危惧するような発言がネットを通して専門家や市民の中から出始めた途端に、政府のあるお偉い方が、メルトダウンなどというような表現は軽々しく用いるべきではないと宣うた。

そして別のお偉い方が、1つ、2つとるに足らないデマを例に挙げて、ことほどさように、政府筋の正しい情報を黙って有り難く拝聴するにとどまらず、それを超えるような、あるいはそれに反するような情報を流すことは、人命に関わる悪質な犯罪行為であり、処罰の対象になるものと考え、大いに慎むべきであるとの厳しい言論統制を行ったことは、いまだ我々の記憶に新しいと思う。

メルトダウンや深刻な放射能汚染が本当にデマ・風評であり、心配するような事象でないのであれば、新聞の第1面やテレビに見たこともないような大きな見出しで、MELT DOWNと踊らせた世界のメディアに対して政府や外務省は、猛烈に各国のメディアに対して厳しく抗議声明を行うべきだったはずだ。それが本当にデマならば、安全神話の国にとって、これほど著しく国益を損ねる由々しい報道はないはずだからである。

そういった政府の動き一つをとって見ても、真実は奈辺にあるのか見え隠れしている。

それから77日、人の噂も75日というが、これだけ事態は深刻だというのに、めっきり原発報道がテレビから激減してしまっている。

朝から晩までテレビにかじりついている訳ではない。しかし早朝や休日のニュース番組や討論番組、トーク番組などをとってみても、福島第1に関しては、次々に明らかになる深刻な事態について、ほんの申し訳程度に短い報道がなされるだけで、各社「臭いものには蓋をする」という報道姿勢が顕わである。

たとえば昨日の早朝、また浜通りを震源地とする震度5弱の余震があったようだが、そのことについても全くといっていいほど報道がなされていない。今のような状況下で震度5クラスの地震が溶け落ちた燃料にどのような影響を与えるのだろうか。今こそ専門家の説明が頂きたい。

「これはまだほんの一部」とされている東電の広告宣伝費90億円と交際費20億円の鼻薬の効果は、テレビ局にとってよほど絶大と見える。むろん電力各社がメディアに及ぼす絶大なる権力は何も東電に限ったことではないがーー。

福島第一は今こそ世界の叡智を結集させて、問題収束への手がかりを見出すべく最善の努力をすると同時に、厳しい目で徹底的に事象の原因究明・責任追及を行う必要がある。

残念ながら、今はもはやまったりバラエティ番組にうつつを抜かして薄ら笑いをしてすまされるような時局ではない。

国民は今この瞬間にも原発で何が起こっているのか真実を知る権利があるし、全電源喪失の瞬間のあの日から、福島でいつ何がどのような形で誰によって対処され、それが誰を通してどのように報じられてきた・いるのか、この事態が完全に収束するまで、目を見開き、えりを正してしっかり見守り続ける義務を背負わされたのだから。