斑目氏が未だ安全委員会委員長の椅子に座り続けていること、国民の信頼を失墜させたはずの電力会社とその利権に群がる御用学者、保安院、安全委員会が原発再稼働のためのストレステストの実施・チェックに携わっていること、原発災害を引き起こした当事者である東電社員に未だ原発災害現場の報告を任せきってしまっていることが、この1年間、日本政府が、国民のための原発安全をどれほど真剣に考え直し、多少なりとも改善しようと努めてきたかを知る上での、大きな指標となるのではないか。
「現代ビジネス、ニュースの深層」で、町田徹氏が、4月の発足予定の原発規制庁について、手続き的な問題もさることながら、それより深刻な組織の問題があることを指摘しているが、悲しいかな、民主党政権の対応はまことに持ってお粗末な限りである。
「死の町」発言をしたと言われている、脱原発推進派の蜂呂経産相は、メディアの総攻撃をくらい、わずか10日ばかりで辞任に追い込まれたが、斑目氏が委員会に居残っていることも、増税路線を突っ走る安住財務相の「死んだ土地」発言についても、全く問題にもならない、それが今の日本の偽らざる現実である。
震災以来、原子力ムラの議論は、津波対策と予備電源装置整備の2点のみに集中しているようだが、地震の専門家によって想定されている、来るべき大地震に対して、築40年も50年もたった原発が、どんな根拠で安全だと言いきれるのだろうか。
これもまた日本のどこかで取り返しのつかない大きな災害が起きてしまってから、ただ「対応に瑕疵があったことを認めざるを得ない。組織を代表してお詫びする」の一言で済まされてしまうのだろうか。
余りにも軽い、軽すぎませんか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120215-00000952-yom-pol
原発安全指針に「明らかな誤り」…班目氏が陳謝
読売新聞 2月15日(水)20時49分配信
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東電福島第一原発事故調委員会に参考人として出席した班目春樹・原子力安全委員会委員長(15日午後、国会で)=増田教三撮影 |
班目氏は従来の指針の問題点に関して、「津波に対して十分な記載がなかったことや、原発の電源喪失は『長時間は考えなくていい』と書くなど、明らかな誤りがあった」と指摘した。
そのうえで、「諸外国で(厳しい安全指針が)検討されている時に、日本ではそこまでやらなくていいという言い訳ばかり時間をかけて、意思決定ができにくいシステムになっている。そのあたりに問題の根っこがあるのではないか」と語り、構造的な問題があるとの認識を示した。
今回は事故調査委にとって初の本格的なヒアリングとなった。班目氏のほか、経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長も参考人として出席し、「(原発事故への)備えができていないままに今回の事故が生じてしまった。規制当局としても問題があった」と述べ、安全対策が不十分だったと認めた。最終更新:2月15日(水)20時49分
2トップ、福島事故で謝罪「言い訳に時間をかけた」「私は文系で…」
産経新聞 2月15日(水)22時43分配信
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表情をゆがめながら答弁する原子力安全委員会の班目春樹委員長=15日午後、国会・衆院第16委員室(酒巻俊介撮影)(写真:産経新聞) |
国会が設置した東京電力福島第1原発事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)の第4回委員会が15日、国会・衆院別館で開かれ、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が、原子力の安全規制当局として事故を防げなかったことについて陳謝した。
班目氏は津波や全電源喪失に備える原発の安全指針について「瑕疵(かし)があったと認めざるを得ない。おわびしたい」と謝罪。指針が改善されなかった背景について「低い安全基準を事業者が提案し、規制当局がのんでしまう。国がお墨付きを与えたから安全だとなり、事業者が安全性を向上させる努力をしなくなる悪循環に陥っていた」と言及し、「わが国は(対策を)やらなくてもいいという言い訳に時間をかけ、抵抗があってもやるという意思決定ができにくいシステムになっている」と述べた。
寺坂氏は平成16年の美浜原発配管破断事故などを挙げ、「(保安院は)安全規制を進めようとしていたが、個別の問題の改善や安全確保に相当な時間や人員をとられた」と釈明した。
また、放射性物質の拡散予測システム(SPEEDI)を避難に活用しなかったと政府事故調などで指摘されていることについて、班目氏は「SPEEDIがあればうまく避難できたというのは全くの誤解だ」と反論。寺坂氏は「避難方向など何らかの形で有用な情報になったのではないかという思いはある」と述べ、異なる認識を示した。
「死んだ土地生き返らせる」 放射能汚染地で安住氏
2012/02/10 23:25
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120215-00000971-yom-pol
言い訳づくりばかりしていた…班目氏発言の要旨
読売新聞 2月15日(水)21時5分配信
国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会での班目春樹原子力安全委員会委員長の発言要旨は次の通り。
【原発の安全審査体制】
原子力安全委員会の安全審査指針に瑕疵(かし)があったことははっきりと認めざるを得ない。津波に対して十分な記載がなく、全電源喪失については、解説で「長時間そういうものは考えなくてもよい」とまで書いている。原子力安全委員会を代表しておわびする。
【原発の安全確保】
国際的に安全基準を高める動きがある中、日本では、「なぜそれをしなくていいか」という言い訳づくりばかりしていて、まじめに対応していなかったのではないか。
安全指針一つ取っても、変えるのにあまりに時間がかかり過ぎている。そもそもシビアアクシデント(過酷事故)を(前提に)考えていなかったのは大変な間違いだった。
【原発事故時の住民避難】
放射性物質拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」の計算には1時間かかる。今回のような原発事故にはとても間に合わなかった。
予測計算などに頼った避難計画を立てたのが間違いで、発電所で大変なことになっているという宣言があったら、ただちにすぐそばの方には避難してもらうというルールにしておくべきだった。スピーディが生きていたら、もうちょっとうまく避難できたというのはまったくの誤解だ。最終更新:2月15日(水)21時5分
現代ビジネス
ニュースの深層
2012年2月7日 町田徹 (抜粋)
「原発規制庁」は安全の守護神になれるか?:「手続き」より深刻な「組織」の欠陥も
原子力の安全確保の切り札として、政府が、今年4月の設置を目指している「原子力規制庁」のあり方に大きな疑問符が付きつけられた。
問題を提起したのは、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の黒川清委員長だ。同委員長は今月2日、異例の声明を公表し、野田佳彦内閣が先月末、規制庁設置関連法案を閣議決定したことに対して、「行政組織の見直しを含めて提言する国会の事故調が調査をしている最中であるにもかかわらず、(政府が)組織のあり方を定めた法案を決定したことは理解できない」と厳しく批判した。
黒川委員長の批判は的を射た議論だ。しかし、問題は、そうした設置手続きにとどまらない。
というのは、規制庁は組織としてのステイタスが低いうえ、非常時の指揮命令系統が複雑で、福島原発事故と同じ失敗を繰り返す恐れが大きいからだ。これでは、原子力の安全は「絵に描いた餅」である。
2月2日の黒川委員長の声明文は、事故調のホームページに掲載されているので、詳細はそちらを参照して頂きたい。
福島原発事故を巡っては、作業員全員が退避せざるを得なくなった場合に断続的な放射性物質の大量放出が1年程度続くとされた「最悪シナリオ」(内閣府の近藤駿介原子力委員長が作成)をなかったものとして封印していた問題や、事故の対応のために設置された「原子力災害対策本部」の議事録がまったく残されていなかった問題が1月下旬に相次いで露呈し、政府への信頼は地に堕ちている。
そうした中で、黒川・事故調は、昨年10月の「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」の成立を受けて、ようやく同12月から本格的な事故の実態調査を開始したばかり。その役割には、「事故の直接、間接の原因」「講じた措置の内容、経緯、効果」などを究明するだけでなく、「原子力に関する基本的な政策」「行政組織の在り方の見直し」の提言も含まれている。
それにもかかわらず、野田政権は先月31日、見切り発車で、原子力規制庁の設置を定めた「原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(原子力組織制度改革法案)」と「原子力安全調査委員会設置法案」を閣議決定。そのうえで、細野豪志環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当大臣名で談話を公表し、「国会において早期にご審議いただき、是非とも4月1日発足を目指したい」と公言した。
このため、黒川委員長は、前述の異例の声明文を公表するとともに、内閣総理大臣、衆・参両院議長、衆・参両院全議員に声明文を提出、国会の権威を盾にとる形で、政府に再考を迫ったのだ。これでは法的な使命を果たせないと黒川委員長が危機感を募らせ、こうした問題提起を行うのは当然と言えば当然の行動と言えよう。
とはいえ、問題は、手続きにとどまらない。重要なのは、「原子力ムラ」などと言われてきた産、官、学、政がもたれ合う慣れ合いの構造を打破して、真の意味で原子力発電の安全を確保できる組織を構築できるかどうかである。
この点で、法案に盛り込まれた「原子力規制庁」は、生温い存在と言わざるを得ないのだ。というのは、問題の環境省設置法改正案をみると、「原子力規制庁」は、環境省の外局に過ぎないからだ。長となる原子力規制庁長官は、環境大臣が委任するとなっている。加えて、旧原子力安全委員会に相当する「原子力安全調査委員会」は、「原子力規制庁」の下部組織とされている。
つまり、原子力規制庁はもちろん、その下部組織の原子力安全調査委員会の長もそろって、環境大臣の部下にななる。そして、当たり前だが、環境大臣は内閣総理大臣の部下である。ということは、規制庁も安全調査委員会も、安全より、環境大臣や内閣総理大臣の意向に従わざるを得ない宿命を負うことになるのだ。安全を最優先するならば、総理が長を兼ねるか、少なくとも総理直属の組織とするのが筋である。
さらに気掛かりなのは、規制庁を平時の規制機関とし、今回の行政組織の見直しを、形ばかりの法整備にとどめた結果、今回の事故で明らかになった「危機対応の拙さ」が手付かずのまま放置されようとしている点だ。
例えば、原子力災害対策特別措置法のポイントはこれといった見直しがほとんどない。
まず、「主務大臣は、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、公示及び指示の案を提出しなければならない」(第十五条、原子力緊急事態宣言等)との報告が最初にありきで、これを受けて、「内閣総理大臣は、直ちに、原子力緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示( 以下「原子力緊急事態宣言」という) をするものとする」(第十五条二2)ほか、「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言をしたときは、当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策を推進するため、臨時に内閣府に原子力災害対策本部を設置するものとする」(第十六条)、「原子力災害対策本部の長は、原子力災害対策本部長とし、内閣総理大臣をもって充てる」(第十七条)といった流れがそのまま継承されているのだ。
唯一の変更点が、これまで「原子力災害対策副本部長は、主務大臣をもって充てる」(第17条4)などとなっていた部分で、これについて「副本部長や本部員の拡充により原子力災害対策本部の強化を図る」ことが盛り込まれている程度なのだ。
昨年3月11日の福島原発事故における、菅直人前首相と海江田万里前経済産業大臣の目に余った連絡の無さや混乱、見解の齟齬などを見れば、米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)のような常設の危機管理対応組織がないことに伴う日本の危機対応の脆弱さは明らかだ。これは首相や閣僚の能力の問題だけに矮小化して済む問題ではないはずだ。
実際のところ、今回の法案について、専門家の中には、「小手先の対応で、原発の安全が確保できるかのように演出しているだけだ。これでは安全が確保できるかどうか危ぶまれる」と顔をしかめる向きも少なくない。
拙速で、信頼できない原子力規制庁の4月設置に拘るのは愚の骨頂だ。大切なのは、むしろ、本当の安全の確立である。
原子力規制庁は、数え切れないほど繰り返された政府や東京電力の失敗によって失われた原発の安全と信頼の確保のための最後の切り札だ。その組織作りに何年もの時間を費やす時間的な猶予はないが、その一方で今年4月の設置のために中身を犠牲にしてよいものでもないはずである。
事故以来、国民の信頼を損ない続けた政府・与党だけでなく、長年、杜撰な原発政策を放置してきた旧与党・自民党も含めて、今一度、稚拙な構想をゼロから見直して、真の意味での「原発の安全の守護神」となる「規制庁」を設置する責務があるのではないだろうか。