2011年8月5日金曜日

「トルコまたぎ」の東電と東芝:原発の海外輸出


 古賀茂明氏は新興国への原発などの海外インフラ整備をしても、日本国民には裨益しないという。

著書の中で、様々な理由が挙げられているが、1つは新興国のビジネス環境を整えることが、日本企業の海外移転を後押しすることに繋がるからであると述べている。また今ひとつの理由としては、国が入ってビジネスを展開する場合に、国は円借款などで直接支援したり、国際協力銀行に融資をさせたり、民間のリスクの部分については、独立行政法人がやっている貿易保険をかけることになる。つまり、このようなプロジェクトは直接、間接に国の資産に影響を及ぼし、失敗した場合、結局国民の税金がつぎ込まれることになるからだという。



途上国には日本だけを特別にもうけさせるなどという発想はない、日本のようにナイーブな国は、よいかもで、大々的な宣伝をして途中で降りることができないようにしておいて、他の国との間で両天秤にかけ、交渉の段階で、次々に無理な要求をつきつけてくるという。

たとえば原発の場合だと30年保証などといった条件をいっぱい付ける。うまくいけば一時期、日立や東芝、三菱といった企業は潤うが、ひとたび事故が起これば一発で儲けは吹っ飛ぶし、たとえ事故がなかったとしても、何十年の間に相手国の政権が代わることで、ビジネス環境が一変する可能性が生じる。いずれにしも、失敗のつけは参入した企業やそれを後押しした官僚・政治家が負うわけではなく、すべて国民に回されるし、国益という視点でトータルに見た場合、儲けがでるかどうかは別だという。


トルコに対する原発の海外輸出もそのよい1例である。以下産経ニュースを転載するが、
6月半ばの時点で、福島であれだけの大きな人災を引き起こし、収拾のめどさえつかない状況であるにもかかわらず、エネ庁の幹部は自信たっぷりに、新興国の日本の原発への信頼は揺るがず、特に地震
国のトルコなどは日本の原発の耐震性を評価していると豪語しておられる。トルコも甘く見られたものである。

 しかしながら、トルコは日本の原発事故処理に不信感を頂き、交渉から東電を排除し、新たな運営主体の明確化を求めてきたばかりか、当初は関心を示していた福島原発の原子炉を設計した東芝の改良型沸騰水型軽水炉に難色を示すようになり、東芝を交渉の中心とは考えないと明言し、カナダやフランス、ロシアなどと日本を天秤にかけて、交渉を有利に進めようとしているのである。


大きな海外インフラ整備プロジェクトの受注は、政治家や官僚にとって美味しい仕事であるだけではなく、人気低迷の政府やエネ庁、経産省にとって、格好の政治的な宣伝材料である(古賀氏)からこそ、恥も外聞もなく、無理難題を付きつけられ損をするようなことになっても、とりあえず強引に受注を成功させようとやっきになる。


しかしどうなのか、トルコは地震国である。自国の原発災害すら、収拾できないで世界に放射能をまき散らしているような国の原子力技術で、果たして安全な原発が作れるのか。こと原発に関する限り、失敗の連続から学ぶような手法は余りにリスクが高すぎる。


米国NRCの委員は3日、「1000年に1度の発生率である地震・津波を、想定外と認めなかったのは、原子炉の安全という点から過ちであった」とはっきり述べている。
国の安全基準が甘すぎたということである。


討論番組などを見ていると、ロシアも中国もアメリカもフランスも、新興国に原発の輸出を計画しているのだから、日本も原発事故などで萎縮することなく、この世界競争に乗り遅れず参入していかねばならないという声が、電力会社の息のかかった産業界や経済評論家から飛び出す。


しかし良く良く考えてみれば、過去30数年間の間、ソ連も、フランスも、アメリカも、福島原発のような大事故をどこも引き起こしてはいないのである。過去に大事故を起こしたことのあるソ連とアメリカは、今ほど科学技術の発達が進んでいない大昔であったにもかかわらず、それでも他国の力を借りず、自力で短時間のうちに一応何とか原発事故を収束させるだけの技術と力を持っていたのである。


日本はアメリカに頼り、フランスに頼らなければ、独自に電源喪失の後始末さえできないような始末なのだから、目先の功を急がず、他国に人の生命の存続や健康に関わるような不完全極まりない商品を売るべきではないと自粛するのが当然ではないのか。









日本の原発 信頼揺るがず ベトナム、トルコ耐震性評価

2011.6.16 22:50 (1/2ページ)
 東京電力福島第1原子力発電所の事故後も、耐震性を中心に、日本の原発技術に対する新興国の信頼は揺らいでいない。一部先進国で脱原発の動きが強まるものの、経済成長を支える安定的な電力供給へのニーズを背景に、原発導入を計画する国は拡大している。政府は、東日本大震災後の国内経済の立て直しにもつながる原発輸出戦略を引き続き推進していく考えだ。
「これまで通り連携」
 「脱原発に向かっているのは元から原発に懐疑的だった国。多くは日本に期待してくれている」。資源エネルギー庁幹部は、福島第1原発事故後の世界の原発ニーズをこう分析する。
昨年10月に日本と原発建設で合意したベトナムのハイ副首相は5月下旬、東京で海江田万里経済産業相と会談し、「これまで通り日本との連携を進めていく」と表明した。トルコやヨルダンも日本との原発交渉を継続する方針だ。
 これらの国が日本に期待するのは、日本の原発がフランス、ロシア、韓国など地震の少ない国の原発に比べ、耐震性などの基準が高いと評価しているからだ。特に、日本と同じ地震国のトルコやヨルダンの信頼は厚い。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110802/biz11080207470009-n1.htm

トルコ原発「交渉継続」 高官言明 東電除外、東芝以外も

2011.8.2 07:46
 【カイロ=大内清】原発建設をめぐる日本との交渉が中断しているトルコのエネルギー天然資源省高官は1日、産経新聞の取材に対し、「(日本側の)企業の構成を変えた上で、日本との交渉を継続することで合意した」と述べた。同高官は、日本側の企業連合に参加する東京電力については「交渉から排除する」と明言。日立や三菱重工などの原発メーカーの名前を挙げた上で、これまで交渉の中心にあった東芝にこだわらない姿勢をみせた。
 同高官は、日本と並行して他国との交渉を進める可能性も排除せず、「これからロシアから提案があると思う」と語った。また、今後の交渉の成功には「日本政府の後押しが欠かせない」と強調した。
今年初めから正式に交渉が始まった原発交渉では、トルコ側が東芝の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)に強い関心を示していたが、3月の東日本大震災とそれに伴う原発事故の発生を受けて交渉が中断。トルコ側は、7月末までに日本側から今後の具体的な道筋が示されなければ交渉を打ち切ると表明していた


トルコ原発、仏・加と交渉も 運営主体の明確化求める

 【カイロ共同】トルコのアナトリア通信によると、同国のユルドゥズ・エネルギー天然資源相は4日、日本が受注を目指すトルコの原子力発電所建設計画について、日本との交渉が不調となり、打ち切りが決まった場合は「フランスかカナダと交渉する」と明言した
トルコ側は、営主体となる予定だった東京電力が福島第1原発事故を受けて交渉から撤退したことで、日本側に新たな運営主体を明確にするよう求めている。フランスやカナダとの交渉開始を示唆することで、日本側に早急な回答を促す狙いがあるとみられる。
2011/08/05 08:46   【共同通信】
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011080400068

「予期せぬ事故」扱いは誤り=福島原発事故で米NRC委員

【ワシントン時事】米原子力規制委員会(NRC)のアポストラキス委員は3日、ワシントン市内で講演し、福島第1原発事故を「予期せぬ事故と見なすのは誤っている」との認識を示した
同委員は、福島原発を襲った巨大地震や津波の発生確率は「1000年に1度」などとする分析があると指摘した上で、「原子炉の安全性を考える上では(放置してもよいと)認めることはできない確率だ」と語っ。(2011/08/04-06:36)