東電はそこまでして、守る価値のある、あるいは存続の必然性がある会社なのだろうか。まず必然性という点からいえば、竹中平蔵はWSJのインタビューで東電は100%国有化すべきという主張をしている。
週刊ポストも、「東電を潰してしまったら、被害者に賠償金を支払う会社がなくなる」という奇妙な屈で、東電を擁護しているが、それは国民に大きな負担を強いる以上の何ものでもないことを指摘している。一時国有化して、ほとぼりが冷めたらまた東電に経営を任せ、その収益から賠償金を長期返済させるなどと言われているが、100年たっても返済できるような額ではなく、東電のつけは、どの道国民が高い電気料金か税金か、その両方または、いずれかで支払わされることになるという。
東電は守る価値のある会社かということであるが、むろんこれまでろくな仕事もせず、破格の高待遇を受けてきた社員や、電事連などの組合員、利害に群がる官僚や政治家、御用学者やメディア、株主や取引銀行にとっては守る価値が十分にある会社には違いない。しかしTOPCOの社会的な信用は世界的に見てもすでに地に落ちているし、これだけの迷惑を国民に及ぼしながら、「東電原発災害1周忌」に、西澤社長や勝俣会長は、公式な記者会見の場で、国民への謝罪を行う予定すらないという。
原発を再稼働させなければ、電力不足に陥るということがまことしやかに言われているが、竹中氏は、小泉構造改革の時代に、東電が猛反対をしたが故に、電力の自由化や発送電分離ができなかったという。もしそのときに今の西澤社長ら電力会社の連中が、反対していなければ、今頃は電力不足などというような事態は生じなかったはずだという。その1点をとってみても、西澤氏の責任は大変重いものがある。燃料費にしても、これは東電1社の問題ではないが、日本全国の電力会社ができるだけ安い燃料を買いつけるための企業努力をしていれば、今のように、世界一高い価格で天然ガスを買い取るなどというようなおかしなことにもならなかったはずである。
責任者が責任の所在をあいまいにし、都合の悪いことは何もかも隠ぺいする、尊大で、でたらめな電力会社は、債務超過になるまで放置すべきであり、こんな不良企業にこれまで多額の融資をしてきた銀行がなすべきは、債権放棄であり、株主もまた応分の責任を負うべきである。
そして、そうすることこそが、日本が世界の国々から信頼を取り戻すための最初の第一歩に他ならない。
3.11以降福島原発への対応をめぐって、この国が法治国家であること、民主主義国家であること、そして自己責任を原則とする資本主義国であることが疑わしいような出来事が次々に現実のものとなっている。
大変嘆かわしい限りである。個人の言論が監視され、言論・表現の自由が脅かされ、大きな社会的責任が問われるような重大な過失を怠慢によって引き起こしながら、責任をとらせる仕組みを作らず、一部の権力者の私利私欲のためだけに、それ以外の国民が健康で安全な暮らしを脅かされ、どこまでも犠牲を強いられるーーそんな閉塞感と欺瞞に満ち溢れた国に、いったい誰が振り向いてくれるだろうか。
大変残念なことながら、現行を維持する限り、日本は国際社会の中で、ますます疎んじられ、衰退の一途を辿るであろうことは目に見えている。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204276304577265043898920490.html
Japanese Utility Tepco to Get Help From Banks
BY MITSURU OBE
TOKYO—Japan's biggest banks are finalizing proposals to provide Tokyo Electric Power Co. with new loans and rollovers worth billions of dollars, a key part of efforts to improve the utility's financial health after the Fukushima Daiichi nuclear accident last year.
But people familiar with the matter say the proposals, expected to be submitted to Tepco and the government by Wednesday, won't be enough to address the company's more fundamental problems over the longer term: its massive outstanding liabilities and the huge cost of dealing with the aftermath of the disaster.
http://jp.wsj.com/Japan/Companies/node_404849?mod=WSJ3items
【インタビュー】東電処理は足利銀行モデルに、完全国有化が必要=竹中平蔵慶大教授
東京電力と原子力損害賠償支援機構が今月まとめる「総合特別事業計画」に、東電の財務基盤強化を目的とする1兆円の公的資金注入申請が明記される。これに伴い、東電の経営形態や経営トップの人選をめぐる駆け引きが交錯している。
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は8日、小泉政権で金融機関の再生を目指した政策案「金融再生プログラム」を立案した元金融担当相の竹中平蔵慶応大学教授に、東電の処理について話を聞いた。
──金融担当相当時、経営難に陥った金融機関に公的資金を注入し、大胆な不良債権処理を進めた。今回の東電の処理をどうみるか。
よく、りそなの例を出されるが、東電はりそなのケースではなくて、完全に足利銀行のケースだ。
金融の場合は特殊だ。預金保険法102条に基づき、自己資本が不足したら公的資金を注入する。債務超過、つまり資本金がゼロ以下になった場合は、一時国有化する。(注釈:前者はりそなホールディングス、後者は足利銀行に相当する)
電力会社にはこういった法律はない。それを現行の法律の枠組みでできるかどうかは微妙な法律判断になる。それがもしできないと判断するなら、新しい法律を作ればいい。法律はすぐできる。預金保険法102条に準じた、公的な機能を持った電力会社に関する法律を作ればいい。
──国はどの程度の議決権を握るべきか。
東電の場合は銀行ではないので、資本が少なくなってもかまわない。債務超過になるまでは放っておけばいい。債務超過になれば、価値がゼロになるわけで、一時国有化する必要が生じる。その場合、議決権は100%国が持つべきだ。
「実質的」国有化という言葉がよく使われるが、これはおかしい。名目的に、完全な国有化が必要だ。要はこのような問題を起こしてしまったが、電力を供給するという機能は公的に必要だから、国が一時、それを肩代わりしましょう、ということだ。国有化している間、つまり議決権を100%持っている間に経営者に責任を取らせ、新しい経営者を入れ、必要なリストラを全部行う。その上で、それを民間に売ればいい。ストラクチャーは非常に簡単だと思う。まさに足利銀行の時にそうした。
(現在のプロセスは)東京電力という会社を残すためのものだ。国民からみれば、電力会社は必要だが、それが東京電力という会社である必要はまったくない。別の会社でもいい。その機能を一時国が担って、きちっとした形にして民間に売ればいい。こんな問題を起こしたのに、公的資金で生き残るというのでは国民が納得しない。
──東電の経営を担える人材を外部から登用するのは困難との見方もある。
だからこそ、100%国有化する必要がある。そうすれば、政府が任命責任を完全に握ることができる。政府が全責任を負うということだ。全面的に責任を負っている国が人選をして、(登用した人材が)ダメだったらクビにして、いい人材が出てくるまでそれを続けるということだ。
今のような形だと、いったいだれが責任を負っているのか分からない。最終的な責任は東京電力にあるわけだが、責任の所在は非常に不明確だ。公的な機能を負っている以上、電力会社そのものをなくすわけにはいかないのだから、今回は国が全部責任を持つ。そのような形で責任の所在を明確にしなければならない。
──国有化後の東電の姿はどうあるべきか。
東電を民間に売るということが極めて重要だ。国有化はするが、それは一時的なものだ。ただし、その間は政府がすべて責任を持つ。リストラをできるだけ行い、価値を高める必要がある。
売却の際には、発電の部分と送電の部分を分ける必要がある。送電については規模の経済性があるから、これは1社でやる方がいい。これは公的な機能を持った民間会社になる。しかし発電に関しては規模の経済性はない。むしろできるだけ競争してもらう方がいい。それを商社が買っても関西電力が買っても、どこが買ってもいい。実際、足利銀行は野村証券を中心とするグループが買った。そういう形で、きれいにしてできるだけ高く売ればいい。
1つ問題になるのが原子力発電所だ。原発については国の方針がまだ決まっていないのでこれは当分、国の組織が持ち続けるというのが選択としてはあり得るものだと思う。
東電をモデルケースにして、同じような枠組みを全国の電力会社にあてはめていく。10年前、小泉内閣のもと、経済財政諮問会議ですでに、電力の新規参入や発送電の分離に関する議論を散々行った。それに最も強く抵抗したのが東電だった。あの時、もっと発電に競争原理を導入し、たくさんの発電業者を入れていれば、電力不足にはならなかった。
東京電力:社員食堂運営、子会社が丸投げ 電気料金に上乗せ--都調査で判明
東京電力が、同社OBの受け皿となっている子会社の利益をかさ上げするため、この子会社に委託した社員専用レストランの運営を、実際は別会社に丸投げし、東電に入るべき利益が入らず、結果的に電気料金上乗せにつながったことが5日、東京都の調査で明らかになった。都は「他の子会社とも、こうした取引が常態化し、電気料金に上乗せされている」(猪瀬直樹副知事)として、近く枝野幸男経済産業相に調査を要請する。【永井大介】
都によると、問題の子会社は東京リビングサービス。東電独身寮の運営や旅行事業など東電の福利厚生や介護、保育園事業にも乗り出している。社員数は1000人で、10年度の売上高は約140億円。「東電OBの受け皿で、取引の7割は東電が相手」(東電関係者)という。
リビング社が、東電から運営を委託されていたのは東京・渋谷の社員専用の高級レストラン「渋谷東友クラブ」。リビング社は実際は、別の会社に高級レストランの運営業務を丸投げし、一部の利益を吸い上げていたという。
都は、東電がOBのいるリビング社に利益が生じるよう、こうした取引をした結果、東電に入るべき利益が大幅に減ったとみている。
レストランは昨年5月末に東電がリビング社との契約を解除したため、現在は外部業者の直営店となっている。東電広報部は子会社を間に挟む取引を認めた上で、「リビング社は売却する方針。今後も取引形態の見直しは進める」としている。
子会社の絡む不明朗な取引については、東電の経営状況を調査した政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」の報告書でも「(子会社を含めた)関係会社は東電向け取引で稼いでいる」と分析。都の調査で不透明な取引の具体的事例が浮かび上がった形だ。
毎日新聞 2012年3月6日 東京朝刊
東電1兆円追加融資 銀行団と支援機構、基本合意
2012.3.1 01:37
東京電力への経営支援をめぐり、三井住友銀行などの取引銀行団が計約1兆円の追加金融支援を実施することで、政府の原子力損害賠償支援機構と基本合意したことが29日、分かった。3月中にまとめる総合特別事業計画に盛り込む。金融支援は1兆円の公的資金による資本注入と並ぶ経営再建の柱。
銀行団は支援の条件として、家庭向けの電気料金の値上げや原発の再稼働による収益改善を求めていた。いずれも見通しは立っていないが、計画取りまとめ期限が迫るなか、要請を受け入れざるを得ないと判断した。
支援機構と東電は、3月7日を回答期限として追加金融支援を要請していた。原発停止に伴い増大している火力発電用燃料の調達費や福島第1原発の廃炉費用などに充てる資金で、実施されないと、資金繰りに行き詰まる恐れがある。
支援の内訳は、(1)新規融資5千億円(2)必要時に随時引き出せる融資枠4千億円(3)既存融資の残高維持のための借り換え1700億円-計1兆700億円。これまでの協議で、日本政策投資銀行が約5千億円、三井住友銀行が約1千億円、みずほコーポレート銀行が約600億円、三菱東京UFJ銀行が約400億円を負担し、残る約2千億円を日本生命保険や三井住友トラスト・ホールディングスなどが引き受けることが固まった。
支援機構は銀行団に平成24年度中に家庭用を含め平均10%の料金値上げを実施することや25年度以降に柏崎刈羽原発を再稼働させることを提示している。値上げには政府が反対姿勢を崩していないうえ、再稼働も地元の同意を得られるかは不透明だ。ただ、銀行団が支援を拒否すれば、事業計画の策定が行き詰まるのは避けられず、銀行団は公的資金の投入決定に先駆ける形で支援を受け入れた。