今年の1月1日の朝日新聞の第1面のトップ記事は秀逸だった。普通ならば正月らしい記事に彩られるところだが、正月早々、原子力安全委員会委員長の斑目氏をはじめとする委員、審査委員だった24人が過去5年間電力会社や原子力関連企業から約8500万円の寄付を受けていたというのである。
このたび明らかにされたのは、過去5年間のデータにすぎないから、御用学者たちが過去何十年にもわたって、我々が支払わされてきた高い電気料金から、もっと巨額な資金を黙って受けていたことは、想像に難くない。
斑目氏は「便宜図っていない」というが、多くの国民の命に関わるような原発の安全審査に関わる国の要にいる人達が、企業と金のパイプで堅く結びついているなどというようなことが黙って許されていいのだろうか。
朝日新聞には斑目委員長と代谷京大原子炉実験所長の他9名ほどの名前が挙げられていたが、本来は全員の名前を記すべきであるし、どんな研究支援を受けた某が、審査の場や、原発再稼働に関する議論の場で、これまでどんな審査・発言をしてきたか白日のもとにさらし、その彼らが今後どのような立場でどんな審査・発言をするのか、メディア各社は、目を光らせ、しっかり報道すべきである。
原発を支えてきた御用学者たちはせめてもの罪滅ぼしとして、これまで企業から供与された寄付金全額をフクシマの被災者支援のために返還して当然であると考えるのは、薔薇っ子だけだろうか。
12月29日(木)、テレビ朝日モーニングバード「そもそも総研」に小出裕章氏がVTR出演されました。録画情報をstakさま、しんちゃんさまより教えていただき、文字おこしをしんちゃん様よりご提供いただきました。
今回のテーマは、「そもそも今年のキーパーソン2人は日本の危機をどう捉えているのか?」で、出演者のもうお一人は古賀茂明氏です。
録画
内容文字おこしは以下の通りです。(小出裕章氏の発言箇所周辺のみ)
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「反原発訴え続け40年 ”冷温停止”はもうできない」
玉川「原発のリスクについては小出助教にうかがっています。VTR
小出「私から見ると今現在、戦争が続いているのです。」
ナレーション:12月16日、政府による事実上の原発事故”収束宣
言”が出されました。あたかも原子炉の状況がこれ以上悪くなること
がないとでも言いたげな印象を与えました。しかし、原発の危険性
を訴え続けてきた小出助教は、いまだ私達が安心できる状況に
はないと警鐘を鳴らします。
玉川「原子力の専門家の方々の中では”冷温停止”というのは何を
指す言葉なのですか?どういう状態をいうのですか?」
小出「原子炉圧力容器という圧力釜が健全で、中に水がたまると、
穴が開いていないというそういう状態で、炉心がその水の中に浸
かっている、そしてその水の温度が100℃を超えないというの
が”冷温停止”という概念。」
玉川「ということは、圧力容器をもう破って、格納容器すら破ってい
るという状況の中で、もう”冷温停止”っていう言葉自体が本当は
おかしいわけですね。」
小出「そうです。そんな言葉を使うこと自身がもう著しくおかしい
し、工学的に言うならば、常識をはるかに逸脱したことを言って
いるわけです。」
玉川「政府が言っている”冷温停止”を解釈するとですよ、何をもっ
て”冷温停止”しているという言い方になっているわけですか?」
小出「少なくとも”冷温停止”という概念が適用できないということは
確実なんですけども、政府や東京電力はもう仕方がないから”冷温
停止相当”のというような、まあそういうような表現にしているわけで
すが、圧力容器もまあ100℃を超えていないで蒸気がどんどん噴
き出してくるような状態ではないということをもって”冷温停止”と。」
ナレーション:小出助教は、1号機で落ちた燃料の高熱によってコ
ンクリートが65㎝溶けている可能性があるという東京電力の見解
も、科学的にはなんら証明されたものではないと言うのです。
小出「皆さん想像してほしいんですけれど、コンクリートの床があっ
てですね、その上に2800℃を超えた瀬戸物の・・溶けた瀬戸物
が落ちてくるわけです。その溶けた瀬戸物がコンクリートを溶かし
ながら今下にめり込んでいっていると言っててるわけですね。東京
電力もそう言っている。その時に、水を例えば上からかけたとして
も、瀬戸物の表面は冷やすことが出来るだろうけれども、コンクリー
トの中にめり込んでいっているその溶けている塊はもう冷やせない
わけですよ。」
玉川「ということは、そのままもっとめり込んでいっていることが・・」
小出「多分めり込んでいっているんだろうと思っているのですね。
それがもうすでに突き抜けているのかもしれないわけだし、誰もそ
れを確認することができないという状態。」
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「収束はしていない原発に潜むさらなる”危険性”」
ナレーション:さらに彼の心配は原子炉以外にも及んでいます
小出「今現在、4号機のプール等が崩壊するかもしれない。」
ナ:福島第一原発で過酷事故を起こした4つの原子炉。その中で
原発2基分の使用済み核燃料を今も冷やし続けているのが4号機
の燃料プールです。
玉川「4号機のプールの崩壊というのは、例えば新たな地震とかそ
ういうふうなものでということですか?」
小出「はい。私が怖れているのは、”地震”ですし、多分東京電力も
それを怖れていて、4号機のプールが崩壊をしてしまうかもしれな
いということで、プールを支える柱とか壁とかの補強工事を、かなり
長い時間をかけてやったと思います。プール自身が崩壊するよう
なことになれば、水はもちろん流れちゃうわけですし、燃料棒とい
うものが空気中に剥き出しになりますので、そうなれば溶けてしま
います。」
玉川「使用済みだけど冷やさなきゃ、やっぱりそれでも溶けるんで
すね。溶けてしまえば・・」
小出「飛び出てきてしまいます。」
玉川「あーっ」
小出「4号機はかなりあの際どい状態に私はあると思いますし、そ
のプールを崩壊させないようなことはやらなければいけない。」
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「反原発訴え続け40年”学者としての責任”」
ナレーション:事故の第一義的な責任はもちろん東京電力にありま
す。しかしこの事故の背景には、何が何でも原子力政策を推し進
めたかった政府と官僚の思惑があり、そしてその思惑を裏から支
え続けた大学の研究者たちの存在がありました。
玉川「今回ほどいわゆるその学者の責任が問われたことはない
んじゃないかと思うんですが、いわゆるまあ御用学者というよう
な人たちの存在がずいぶんあのクローズアップされたと思うんで
すけれども、そういう人たちの存在をまあ対極にいらっしゃった立
場としてはどういうふうに見ますか?」
小出「自分が何か間違いをすれば自分で責任を取るしかないと思
いますし、原子力を推進してきた人たちだって、自分がこれまで
やってきたことの意味というのをちゃんと自分で考えてそれなり
の責任を明確にする、そして責任を取るということをやるべきだ
と私は思っているのですが、残念ながら誰一人としてやらな
い。チャップリンが(殺人狂時代という)映画を作った。えー、その
中で「一人殺せば殺人者だけれども、100万殺せば英雄だ」という
言葉を言わせているんですね。もし私が誰かに被ばくをさせる、法
律を超えて被ばくをさせるようなことをすれば、私は犯罪者として
国から処罰をされたはずだと思いますけれども、その国、あるいは
まあ巨大産業である東京電力は、何百万人の人に今被ばくをさ
せているわけですね。それでも誰も責任を取らない。ぬけぬけ
とこのまま逃げおおせるというようなことは、私は許したくないと
思います。」
ナレーション:廃炉まで少なくとも数十年。次の世代まで引き継が
れるあまりに重いこの現実。最後に私はこの問いを投げかけた
玉川「ずっと今まで小出先生が主張してきたことが、事故という形
で正しいということが立証されてしまったわけですよね。それにつ
いてはどうですか?」
小出「言葉に尽くせず無念ですね。もう最終的な敗北を私はさせ
られたと。」
スタジオ玉川「敗北したと。この敗北は小出先生だけじゃなくて日
本人全体の敗北だと思いますけど。」
玉川まとめ「私が一番心配してるのは、そういう危機に対する関
心がですね、この原発に関してもやっぱり落ちてきているんで
すよ。これが一番危機だと思います。」
===文字おこし以上です===