原発事故防げたと米専門家 津波リスクを過小評価
【ワシントン共同】経済産業省原子力安全・保安院や東京電力が国際的な基準に沿って津波などに対する安全対策を強化していれば、福島第1原発事故は防ぐことができたとする専門家による報告書を米シンクタンク、カーネギー国際平和財団が6日発表した。
報告書は各国の対策や国際原子力機関(IAEA)の指針を示した上で「日本は国際基準や対策事例の導入が遅れており、これが事故の原因となったことを示す証拠が多くある」と指摘。さらに「なぜ津波のリスクを過小評価したのかを探るのが最も重要な課題だ」と問題提起している。2012/03/06 23:00 【共同通信】
米国で「東電には経営責任がある」株主代表訴訟も
2011.3.30 22:44 (1/2ページ)
【ニューヨーク=松浦肇】東京電力の経営責任を問う声が米国内で強まっている。東日本大震災で事故を起した福島第1原子力発電所への対応処理、情報開示の遅さに対して、エコノミスト、大学教授からウォール街関係者まで批判的だ。東京電力が昨年9月に実施した公募増資では米国の投資家も東電株を購入しており、海外発で株主代表訴訟が起きる可能性も出てきた。
「誠に残念ですが、日本は貧しい国になるでしょう」。米国家経済会議(NEC)前委員長のローレンス・サマーズ米ハーバード大学教授が23日、ニューヨーク市内の講演で断言すると、会場が静まり返った。
米国では、震災後の落ち着いた日本の社会秩序が評価される一方で、経済の先行きが懸念されている。
米国のエコノミストは第2四半期(4~6月)の日本の国内総生産(GDP)が前年比約3%減るとみているが、減少率の半分、1・5%分が東電「発」によるネガティブ要因。放射能漏れや停電が都心部の経済活動を妨げ、消費の低迷につながるという見方だ。
経済への影響だけではない。コロンビア大学が22日開催した日本セミナーでは、出席した法律、経済、政治の専門家3人が口をそろえて、「東電には経営責任がある」と主張した。
会社法を教えるカーティス・ミルハウプト教授は「原発の安全監督など内部統制ルールに従っていない場合は取締役責任を問える」と指摘。日本政治研究のジェラルド・カーチス教授も「昨年メキシコ湾で原油流出事故を起こした英BPと同じ構図だ」とする。
経営責任はあくまで相対的な基準で問われる。大津波よりも高い場所に設置された東北電力の女川原発や、日本原子力発電の東海第2発電所が原子炉を安全に停止できたのに、福島第1原発だけで被害が拡大した点が問題視されている。
原子力損害賠償法に従って、数兆円規模に上るとされる周辺地域への補償などを国が負担すれば、東電は事実上の国有会社となる可能性が高い。巨額赤字に伴う無配はもちろん、経営トップが退陣を迫られるのは必至だ。
しかも、東電は昨年秋に4千億円超を株式調達したばかり。取締役が経営のプロとして通常期待される「善管注意義務」を果たしていなかった-として国内外の株主から代表訴訟を受ける可能性がある。
清水正孝社長が昨年9月の記者会見で述べた「社会的貢献と収益の両立」がとも倒れとなった今、「(東電の)公益会社としての経営責任の果たし方、企業統治のあり方が問われている」(米公認証券アナリスト協会のロビンソン博士)という声が高まっている。
5兆5000億円賠償請求 東電株主 経営陣に代表訴訟
2012年3月6日東京新聞
福島第一原発事故で東京電力が巨額の損失を出したのは経営陣が安全対策を怠ったためだとして、東京都や神奈川、静岡、愛知、福島県などに住む株主四十二人が五日、勝俣恒久会長ら現・旧経営陣二十七人に対し、約五兆五千億円を東電に賠償するよう求める株主代表訴訟を東京地裁に起こした。
株主側弁護団によると、国内の民事訴訟では過去最高の請求額。株主らは勝訴して賠償金が東電に支払われたら、被災者への弁償に充てるように同社に求めている。
訴えによると、東電は二〇〇八年、マグニチュード(M)8・3の地震が福島県沖で起きれば福島第一原発が最高一五・七メートルの津波に襲われると試算。しかし、歴代経営陣は、地震で想定される大災害の危険を認識しながらも、防波堤のかさ上げなど十分な安全対策を講じず、重大な原発事故に備えた訓練も怠り、事故で巨額の損害を生じさせた、と指摘。地震が頻発する日本で原発を建設し、運転したことの責任も重大だと主張している。
株主側弁護団の河合弘之弁護士は「歴代役員個人の責任を追及することで、原発業界にはびこる集団無責任体制を是正し、原発の再稼働を阻止したい」としている。
株主側は昨年十一月、東電の監査役に歴代経営陣への損害賠償請求訴訟を起こすよう求めた。だが東電は一月、「事故は対策の前提を大きく超える津波の影響。津波対策などについて全取締役の責任は認められない」として、訴訟を起こさないと通知していた。
東京電力は「株主の方が提訴したとの報道は認識しているが、正式に承知していない」とコメントした。
福島第一原発事故で東京電力が巨額の損失を出したのは経営陣が安全対策を怠ったためだとして、東京都や神奈川、静岡、愛知、福島県などに住む株主四十二人が五日、勝俣恒久会長ら現・旧経営陣二十七人に対し、約五兆五千億円を東電に賠償するよう求める株主代表訴訟を東京地裁に起こした。
株主側弁護団によると、国内の民事訴訟では過去最高の請求額。株主らは勝訴して賠償金が東電に支払われたら、被災者への弁償に充てるように同社に求めている。
訴えによると、東電は二〇〇八年、マグニチュード(M)8・3の地震が福島県沖で起きれば福島第一原発が最高一五・七メートルの津波に襲われると試算。しかし、歴代経営陣は、地震で想定される大災害の危険を認識しながらも、防波堤のかさ上げなど十分な安全対策を講じず、重大な原発事故に備えた訓練も怠り、事故で巨額の損害を生じさせた、と指摘。地震が頻発する日本で原発を建設し、運転したことの責任も重大だと主張している。
株主側弁護団の河合弘之弁護士は「歴代役員個人の責任を追及することで、原発業界にはびこる集団無責任体制を是正し、原発の再稼働を阻止したい」としている。
株主側は昨年十一月、東電の監査役に歴代経営陣への損害賠償請求訴訟を起こすよう求めた。だが東電は一月、「事故は対策の前提を大きく超える津波の影響。津波対策などについて全取締役の責任は認められない」として、訴訟を起こさないと通知していた。
東京電力は「株主の方が提訴したとの報道は認識しているが、正式に承知していない」とコメントした。
耐震性2割減「妥当」 伊方3号機耐性評価で保安院方針
経済産業省原子力安全・保安院は20日、四国電力伊方原子力発電所3号機(加圧水型炉、出力89万キロワット、愛媛県)のストレステスト(耐性評価)について、1次評価の論点をまとめた。四電は原発が耐えられる地震が想定の1.86倍と主張したが、2割程度低い1.5倍に下がる可能性が高いことがわかった。
保安院は近く、現地調査をしたうえで全体的には「妥当」との評価案を示す方針。保安院による判断は関西電力大飯原発3、4号機に続き3基目になる。ただ、当初の主張より安全性の余裕が減るため、再稼働に向けて地元の理解が得にくくなりそうだ。
四電は昨年11月14日、評価書を保安院に提出。伊方3号機について、想定する地震の揺れの1.86倍、津波は高さ14.2メートルまでは、核燃料が壊れる事故にならず、耐えられると評価していた。
伊方原発2号機、30年超運転認可へ 震災後初めて
経済産業省原子力安全・保安院は6日、今月19日に運転開始から30年を迎える四国電力伊方原発2号機(愛媛県)について、今後10年間の運転延長を妥当とする審査結果案をまとめた。専門家会合で了承された。東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転延長が認められるのは初めて。
四国電力は昨年3月に運転延長を申請。原発事故後、保安院は11月から専門家会合を開いて審査してきた。同原発3号機で02年と04年にポンプの主軸が折れるなどのトラブルが起きたため、点検の充実などを同電力に求める意見が出たが、保安院は近く運転延長の認可を出す。
原発は運転開始から30年目以降、10年ごとに高経年化(老朽化)対策の報告書を作り、保安院から認可を受けている。国内の原発全54基のうち、30年を超えて運転が認められるのは20基目。