2011年11月22日火曜日

官僚と政治家の欲の皮

事業仕分けが提言型政策仕分けと名前を代え、参考人として公務員改革、政府の原子力政策を批判してきた古賀茂明氏が参加した。しかし、法的拘束力を持たない今回の事業仕分けも実効性、有効性は全く期待できない。

この提言型政策仕分けも先ごろ公表された会計検査院の決算報告も結局のところ、増税反対の逆風を抑えるために、「歳費削減のために、政府はいろいろやっているよ」という政府のパフォーマンスに過ぎないのではないか。

それにしても高級官僚と国会議員の既得権益への執着心にはほとほと愛想が尽きる。
以下、それらに関連する記事を転載する。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/26760
「会計検査院は信用できるか」  ドクターZ 11月20日週刊現代より



会計検査院は11月7日、'10年度決算検査報告を公表した。税金の無駄遣いなど、国や政府出資法人の不適切な経理処理は568件で総額約4284億円。前年度(986件、約1兆7905億円)に次いで史上2番目の規模となったが、果たして本当にこれだけか、という疑問は消えない。
 指摘金額が500億円を超えた省庁は、国土交通省が約728億円(41件)、経産省が約662億円(16件)、財務省約655億円(9件)、文科省約629億円(8件)、厚生労働省約513億円(271件)。税金などしょせん人のカネ---そんな声が聞こえてきそうな使いっぷりだ。
内訳を見ると、住宅金融支援機構への政府出資金で約291億円、原発の新設用に積み立てられた周辺地域整備資金で約657億円、余剰となっている国有不動産で約619億円、地方に移管した奨学金事業で約576億円、年金保険料で建設された福祉施設運営で約223億円など、不適切な予算支出があった。
ほかにも、4284億円には含まれないが、各都道府県に設置された基金の使い残しも指摘された。リーマンショック以後、緊急経済対策等の一環として各都道府県に基金が設置されたが、'11年度までに事業終了することとなっているものに関しては、'10年度末時点で残高が1兆円もあり、執行率は45%にとどまっている。また、'12年度以降に事業終了となる基金についても、やはり1兆円の残高がある(執行率は36%)と指摘された。多額の使い残しになるのは確実だ。
 野田政権は増税一直線だが、こんな無駄遣いを見せられては国民としては納得できない。それに、会計検査院もしょせん役所だ。役人が役人を本気で監視できるのかという疑念もある。
 例えば今回の報告書の中にも、こんな事例を見つけた。交通施設バリアフリー化に関して、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)---政府と東京都が出資する特殊会社なので会計検査院の検査対象だ---が約121億円の事業費について、改善の必要ありとの指摘を受けているのだが、121億円という大きな額の割に、「指摘」が甘めなのだ。調べてみると、検査期間とほぼ同時期の'10年9月に会計検査院から東京メトロに天下りがあった。
かねて会計検査院については、こんな噂話がある。ある省庁やその所管法人の予算執行で大きな問題が見つかった場合、それを見逃してもらう代わりに会計検査院に天下りポストを提供することがある、と。邪推かもしれないが、今回も東京メトロと会計検査院の間で何らかの取引があって、「改善要求」にとどまった可能性があるのではないか。
 実は、この手の話はほかにもある。最近では日本原子力研究開発機構の放射能除染事業だ。実際に除染を行うのは民間業者だが、政府は原研にいったん委託して、それを民間に再委託する。2次補正予算で委託費は118億円ついたが、そのうち三十数億円が原研に落ちる。これは「中抜き」「ピンハネ」そのものだ。
 一方、原研の役員には天下りが4名(うち現役出向1名)いるが、会計検査院はポストをちゃっかり一つ確保している。この10月に「公募の結果」と称して、天下りの監事として高山丈二氏が就任したのだ。同氏は会計検査院第5局長まで務めた人物。第5局は総務省、経産省の担当だ。
 原研の「中抜き」は紛れもなく税金の無駄遣い。だが、高山氏受け入れで、会計検査院に指摘されることはなくなっただろう。
週刊現代2011年11月26日号より

2011年11月18日 フライデー

ふざけるな!国会議員の海外視察(公費)徹底調査: 
わずか3ヶ月で90人がゾロゾロと、税金投入額は年に5億5000万円超!」



自民党の前衆議院議員で、議員時代に「税金の無駄遣いを一円たりとも許さない若手の会」のメンバーだった弁護士の牧原秀樹氏が憤る。
「国会議員が海外へ出張する場合、個人や議員連盟などで、自費を使って行くのは自由でしょう。しかし政府の一員として多額の公費で海外に行く場合は、問題があります。税金の無駄遣いと言われても仕方がない。大臣や副大臣クラスの議員が行く際には、多いと80人もの専門スタッフが同行するのです。
しかも大臣や副大臣の飛行機の席はファーストクラス。秘書官やSPも、その周りのファーストクラスを占拠します。
以前は一般の議員もファーストクラスを使っていましたが、ビジネスクラスに落とせば年間5000万円ほどの節約になると私は'08年に提案しました。ようやく一般議員がビジネスクラスを使うようになったのは、昨年になってからのことです」
今年度、国会議員が海外視察するために計上されている公費は、衆議院が約4億4100万円。参議院が約1億1200万円。両院合わせて、実に5億5000万円超の税金が投入されているのである。
今年は、3月11日に東日本大震災が起きて以降、海外視察は自粛傾向にあった。通常は国会閉会中の8月を中心に行なわれるのだが、今年は9月に臨時国会が閉幕すると再び視察が活発化。8月からの3ヵ月間で、衆参両院の公費での議員海外公式派遣は14件にのぼる。出張したのは延べ90人以上。
4ページの表は、それぞれの視察の議員名や期間、目的などを衆院と参院ごとにまとめたものだ。参加議員の数が特に多いのは、福島第一原発事故の調査を目的とした、ウクライナのチェルノブイリやアメリカのスリーマイル島への視察だろう。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長で、弁護士の新海聡氏が解説する。
今さらチェルノブイリやスリーマイルを見に行って、どうするのでしょうか。帰国後の参加議員の動きを見ても、それらの場所を調査に行くほど関心があったとは思えない。
 彼らのうちどれだけの議員が、原発事故の対策に意見を言い、東京電力の対応の問題点を指摘したでしょう。視察後に、国会で原子力やエネルギーに関する議論が盛り上がったとも聞きません。
 チェルノブイリに行ったのなら原発を今後どうするのか、視察をどう自身の政策に活かすのか、国民に説明すべきです。国民の目には、海外視察が国会議員の特権的ツアーとしか映りません」
 議員の海外出張は、これまでにもたびたび問題視されてきた。昨年10月には、8月19日から10日間ギリシャやベルギーなどを訪れ各国の閣僚と会談した民主党の中塚一宏衆議院議員(46)が、妻子を帯同し議員団のバスに同乗させていたことが判明。
 中塚氏は「家族の旅費は自ら手配したが、バスは半分以上空席だったので同乗させた。誤解を招いたのなら申し訳ない」と陳謝する事態に発展したのである。前出の牧原氏が振り返る。
「'05年の11月に衆議院の憲法調査会は大議員団を編成し、2週間ほどヨーロッパを視察しました。その時は、かなりの人数の議員が奥さんを同行させています。私もある議員から、『フランスの美味しいレストランで一緒に食事を楽しんだよ』と聞きました。毎晩、夕食会があるわけではありませんから、空いた時間は夫婦で海外旅行を楽しむんです。議員にとって海外視察は『俺が頑張ったから、こんな晴れの舞台に立てるんだよ』と奥さんに自慢できる機会でもあります。大臣の出張となると、さらに大変です。奥さんが『買い物はあの店がいい』などと言えば、付き添いの官僚たちがエスコートしなければならないのですから」
また、中には、こんな不届きな議員もいると牧原氏は続ける。
「海外視察で、マイレージを溜めるのを趣味にしているような人も結構います。彼らは税金を使って出張し、そこで溜めたマイレージを私的に使っているのです。特にファーストクラスなら、マイレージがすぐに溜まる。それを自分のもののように使うのは、大問題でしょう」

旅費814万を「妥当な支出」

はたして本誌が表にまとめた最近の海外視察は、本当に意味のあるものなのだろうか。掲載した議員のうち団長を中心に10人ほどへ質問状を送ったが、回答はほとんどなかった。明確な回答があったのは、わずかに2件だけ。まず10月2日~8日までアメリカを訪れた衆院「安全保障委員会」について、団長の民主党・東祥三議員(60)の事務所の説明を紹介しよう(文書による回答、カッコ内は編集部による注)。まず経費について。
旅費850万7095円。国政調査活動費(議員や国会職員が国や政治の問題について調査するために、参考書などを購入するための費用)39万5612円。他に私費での支払いあり」
こうした経費については「より多くの有識者等と会うことを優先にした日程であり、公的な予算も最小限の出費に抑えることが出来たと考えている」と回答したが、庶民感覚からすれば目が眩む金額である。成果については、こう答えた。
米国の議員、有識者等との意見交換により、東アジアにおける戦略環境が厳しい状況になる中で日米関係の強化及び日米議員間の交流の必要性について共通の認識を持つことが出来たと考えている
10月8日~14日までニュージーランドやオーストラリアなどを訪問した衆院の「国土交通委員会」について、団長の民主党・伴野豊議員(50)の事務所からの文書はこうだ。経費については「旅費814万1985円。国政調査活動費56万3938円。他に私費での支払いあり」と答えた上で、「法規に基づいた妥当な支出と考える」と返答した。視察の成果については、こう綴っている。
「東日本大震災の被災地における復旧・復興政策の参考に、ニュージーランドのクライストチャーチにおける地震被害('11年2月)からの復旧・復興状況について、また、インドネシアのバンダ・アチェにおける津波被害('04年12月)からの復旧・復興状況について、それぞれ調査を行った」
だが政治評論家の有馬晴海氏は、こうした議員の視察を批判する。
税金の無駄遣いです。日本の債務超過はギリシャ以上なんですよ。インターネットで調べれば済むレベルの視察なら、行かないほうがましです。震災復興を考えるなら、福島に行くほうがよっぽどいい。議員たちは海外に出張するより、汚泥の処理や瓦礫の片付けなどのボランティア活動をしたらどうでしょうか。被災地の仮設住宅で暮らす知人は、『畳さえない』と嘆いています。海外に行くカネがあったら、被災者のために畳を買うべきです。1度の海外視察で何百万円もかかっている事実に、国民は納得しないでしょう。『無駄をなくす』と言っているのは、政権与党の民主党ですよ」。
国民の常識からかけ離れた、国会議員の海外視察。「ふざけるのもいいかげんにしろ!」と、声を大にして言いたい。
「フライデー」 2011年11月25日号より










国会版「事業仕分け」:きょうから 古賀氏も参考人に

衆院決算行政監視委員会の新藤義孝委員長は15日の記者会見で、政府の行政刷新会議にならった国会版「事業仕分け」を16、17日の2日間の日程で行うと発表した。世界一のスーパーコンピューター「京」など革新的インフラ構築や、計画を凍結された「朝霞住宅」を含む国家公務員宿舎の建設維持費など4事業が対象。結果を12年度予算に反映させるため今月下旬に勧告か決議を出す予定だ。
仕分けのための小委員会を設置しており、委員14人のほか、参考人として民間有識者8人が参加。事業を所管する府省の政務三役から事業内容を聴取し、「廃止」「予算要求の縮減」など6段階で評価する。参考人には、経済産業省時代から公務員改革や原発事故対応で政府批判を行ってきた古賀茂明氏も選ばれた。【吉永康朗】
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◆国会版「事業仕分け」の仕分け人
<衆院議員14人>
▽民主(9人)岡島一正、岡田康裕、奥野総一郎、熊谷貞俊、黒田雄、階猛、平智之、初鹿明博、村井宗明▽自民(4人)新藤義孝、木村太郎、河野太郎、平将明▽公明(1人)遠山清彦
<民間有識者8人>
▽全事業 永久寿夫・PHP研究所常務、小幡純子・上智大法科大学院長
▽スーパーコンピューター開発など 金田康正・東大情報基盤センター教授、亀井善太郎・東京財団研究員
▽診療報酬明細書審査事務 小瀬村寿美子・神奈川県厚木市人権男女参画課長、中村卓・埼玉県草加市副市長
▽公務員宿舎・原子力関連独立行政法人など 原田泰・大和総研顧問、古賀茂明・元国家公務員制度改革推進本部事務局審議官
毎日新聞 2011年11月16日 東京朝刊