でも、よくよく考えてみる必要がある。そのテストは妥当かどうか、テストを作った人間が公正な立場から作ったかどうか。テストをして結果を出し、分析する人間が信頼に足るかどうかをーー。
首相のみならず、細野氏、枝野氏のいずれも、霞が関を取り込んでいる原子力ムラの言いなりのようである。それが証拠に慶応の金子勝氏のツイッターによれば、環境省が作った新しい専門家委員会は全員が原子力ムラのムラ人だそうである。また環境省に保安院さんと原子力機講が合体して除染が行われるという。
環境省が放射性廃棄物の専門家委員会を作ったが、原子力機構、原子力バックエンド機構など原子力ムラの全員集合です。これで汚泥処理やる?しかも、非公開なはずなのにまた朝日新聞は1面で取り上げ。また、あたかも専門家がやっているかのような情報操作?http://goo.gl/oB3cZ
どうしょうもならない原子力ムラの無反省・無責任が再び横行。放射性物質を知らない環境省のもと、Speedi隠し、校庭20ミリの原子力安全委が除染基準を作り、原発事故責任回避の保安院が合体し、もんじゅ失敗の原子力機構が除染活動を行う。東電は事故手順書も国会に出さず、事故調査委は…。
菅総理は何もしなかった。しかし少なくとも四面楚歌の状況下で、脱原発を主張し、浜岡原発を止め、再稼働を許さなかっただけでも、口先三寸の、つかみどころのないにゅるにゅるどじょうの面々よりは、まだましかもしれない。ただし彼が主張したストレステストには様々な問題がありすぎる。
こんなテストにパスしたからといって、日本中の原発が安全だなどと思い込むのはひどい錯覚である。それは以下のWSJの記事にも明らかである。
メディアはもっと、国民にストレステストの内実をしっかり伝え、ストレステストの基準の見直し、その前に、ガイドラインを作成したり、テストに携わる人材の総入れ替えをやらなければ、フクシマの教訓は何も活きては来ない。
安全評価委員会は、東電から与えられた資料のみを根拠に、安全性評価の見直しをしようとしているという。その資料に基づいて、送電線の鉄塔を地盤のしっかりしたところに設置し、海水タンクを施設の中に収めれば、フクシマの教訓は活かされるのだろうか。
WSJの記事を読む限り、委員会はどうやら安くて簡便な対策でお茶を濁そうとしてるらしいが、そうではないだろう。まず責任回避のための隠蔽と、原子力産業の継続しか頭にない東電から一方的にしか降りて来ない資料の信憑性はどこにあるのかというところから始めなければ、フクシマの災害はまた想定外の名のもとに、すぐまたどこかで繰り返されるに違いない。
安全性を配慮した原発の稼働などというものは、今の日本の科学技術では到底無理であることは、この六ヶ月のフクシマでの専門家と呼ばれるお歴々の対応から、もはや素人目にもはっきりと露呈しているのである。
原子力災害は、失敗学の先生がこれまでにとり扱ってきたような、失敗を何度も何度も繰り返すことによって徐々に発展することが許されるような軽いものではない。わずかなケアレスミスが、世界の科学技術の歴史に残るほど深刻かつ、何十年、何百年の長きにわたって多くの人々に大きな被害をもたらす大災害の原因になりかねないのだから。
何の意味も持たないストレステストの実施ではなく、第1になすべきことは、東大の児玉龍彦氏がいみじくもおっしゃったように、政府の原子力関連の委員会にメンバーから、原子力ムラのメンバーを一掃し、児玉氏や小出氏、今中氏などを中心としたメンバーに対応を委ねるべきである。
http://jp.wsj.com/Japan/node_307587
日本の原発再稼働に潜むリスク
【東京】京都大学名誉教授で、原子力安全委員会の耐震安全性評価特別委員会で委員長を務める入倉孝次郎氏は、日本の原子力発電所に関するガイドラインについて、地震や津波の最悪のケースを想定しておらず、改定の必要があるとの考えを示した。運転休止中の原子炉の再開を目指す政府の動きがさらに遅れる可能性が高まることになる。
入倉氏はインタビューで、「新規も含めて(原子力)発電所は、最低でもマグニチュード9の地震と15メートルの津波に対して対策を実施する必要性がある」と指摘した。原子炉のいわゆるストレステストに使われる基準の改定には、数カ月ではなく数年かかりそうだという。
日本政府は地方自治体に対して、東日本大震災のあとに休止した原子炉の運転を再開するよう促してきた。福島第1原発に対する懸念は、ストレステストにより和らげようとしてきた。
運転再開ができなければ、日本は原子力発電による電力をすべて失う可能性があるだけに、この問題についてのコンセンサスを得ることは非常に重要である。日本の商業用原子炉は、13カ月ごとに点検を受けなければならない。3月11日の大震災のあと定期点検のために休止した原子炉は、1基も運転再開を認められていない。その結果、全部で54基ある原子炉のうち、11基しか稼働していない状況となっている。これら11基も、来年5月までには定期点検のため休止される。
規制当局は、すべての原子炉が来年はじめまでにストレステストを受けるよう命じている。ストレステストとは、原発が地震や津波、電力の欠如といった異常な状況に耐える能力を測るものだ。共同通信によると、これまでに休止している13基でテストが始められたという。
だが、ストレステストの基盤となっている基準は、東日本大震災のような巨大な地震や津波を想定したものではない。2006年にその大半が作成されたガイドラインは、政府内外の専門家から疑問視されている。入倉氏の委員会は来年3月までに報告書を出す予定だが、そこでは既存のガイドラインのなかで修正すべき箇所が示される。
こうした状況により、政府が原子炉運転再開に向けて動いているにもかかわらず、地方自治体はためらいを見せている。
福井県の西川一誠知事は15日、東京で枝野幸男経済産業相と会談したあと、現在のストレステストでは不十分と述べ、地方自治体は原子炉の再開の前提として、福島第1原発規模の災害を想定した厳しい基準を求める可能性があることを示唆した。福島県には日本の都道府県中最も多い、13基の原発がある。
岩倉氏が委員長を務める委員会は、福島からの教訓について研究している。同氏は、新たなガイドラインをつくるプロセスは長期的なものになるだろうと言う。2006年の改訂にも5年がかかり、その後も津波に対処する基準を修正するため、2010年12月まで4年の歳月を要したという。入倉氏は2006年の基準を作成する委員会にも所属していた。取材の中で入倉氏は、そのプロセスに欠けていたと思われるものについて振り返った。
入倉氏は、最悪のケースについては焦点を当てなかったと言い、津波のような異常値について評価はしたが、それらに注意すべきだとしただけで、必ずしもそれが起こることを考えるようにとはアドバイスしなかったと話す。
大震災前に決めた基準が非常に楽観的なものとなった理由の1つとして、入倉氏は国内外の原子力業界からの圧力を挙げる。原発運営企業は、原子力安全委員会が過剰なルールを押しつけようとし、最新の工学技術に追いついていないとして批判した。
入倉氏によると、原発の技術者からは基準を緩めるよう大きな圧力を受けたという。彼らは2006年の基準が厳しすぎ、商業用原子炉では経済的に見合わないと考えた。科学的なデータでは解明できない部分について原発エンジニアたちは、科学が解決できない疑問でも、先進的なエンジニアリングなら解決できる可能性があると話したという。
業界が2006年に基準を緩めるよう圧力をかけたのに対し、一部では基準が甘すぎるとの批判もあった。たとえば、基準の緩和を求める声に押されて、原発は岩盤の上に建設しなければならないとの要件が、「十分な支持性能がある地盤」での建設に変更され、そうした点が批判された。委員会のメンバーだった神戸大学名誉教授の石橋克彦氏は、ガイドラインが認可される前に、最後の会合で辞任した。同氏は規制が弱められたと考え、それに対する抗議を示したのだ。
石橋氏はこの記事へのコメントは控えたが、福島第1原発の事故のあと、日本の原発はどれも安全とは考えられないと発言している。だが、入倉氏はこの結論を受け入れず、石橋氏の懸念は2006年のガイドラインにも生かされていると言う。
入倉氏の委員会は、巨大地震や津波への防御の観点から、福島第1で何が問題だったのかに関して新たな見解を投げかける。東京電力の資料を用いて、同委員会は電源喪失を引き起こすきっかけとなった多数の弱点を発見した。電源喪失が原子炉3基のメルトダウン(炉心溶融)につながり、福島第1原発の大規模な損傷が起こった。
取材の中で入倉氏は、これまであまり注目されていなかった問題点を指摘した。原子炉を冷やすのに必要な発電機が津波で使えなくなったことは広く知られているが、入倉氏は、地震により地盤が動いたことで外部の送電線が機能しなくなり、外部電源が断たれたという。
発電所に向かって、あるいは発電所から伸びている送電線は、重要な機器としては分類されていなかった。したがって、送電塔は発電所の他の設備ほどしっかりとした場所には建てられていなかった。その結果、重要な送電塔の1つが、津波に襲われなかったにもかかわらず倒れてしまった。
入倉氏は、その送電塔が倒れなければ、メルトダウンが起こる前に電力が回復できていたかもしれないと言う。同氏は、分類基準を一度破棄し、重要な原子力機器の定義を広げる必要があると話す。
また、仮に福島第1原発の海水タンクが海岸近くの外部に露出した場所になかったとしたら、事故は防げたか、少なくとも小さくなった可能性があると、入倉氏は言う。10キロ先の福島第2原発では、海水タンクが頑丈な建物の内部にあり、津波の影響を受けなかったという。