2012年8月5日日曜日

東電、原発事故直後のテレビ会議の公開のあるべき姿

 東電は、震災直後のテレビ会議の映像に加工を加え、映像公開するにあたって、メディアにさまざまな規制を加えようと言う。国民に絶大な被害をもたらした原発災害を引き起こしながら、公的支援のおなさけで、かろうじて露命を繋いだような不良企業に対して、政府やメディアはどこまで弱腰で迎合・譲歩し続けるのか。

 社員のプライバシーもへったくれもあったものではない。大災害を引き起こす危険性を十分に認識しながら、何ら危険性を最小限にするための手を打たず、人災を引き起こした会社や加害者は、バス会社であれ、飲食店チェーン店であれ、何であれ容赦なくマスコミの徹底的な取材攻撃のもとプライバシーを洗いざらしにさらけ出され、厳しい社会的な審判を受けるのが、世の常ではないのか。どうして電力会社の社員にだけ、日本のメディアは例外を認め、そんなに甘いのか?

日本の大型メディアは、オリンピック報道一色。
国民の間で反原発の抗議行動が広がっているにもかかわらず、彼等は原発問題にはほとんど触れずして、悠長にスポーツ・ナショナリズムを駆り立てることに懸命である。

少なくとも国民の受信料で成り立っている公共放送は、国民の知る権利を尊重し、東電のテレビ会議をノーカットの編集なしで、毎夜連続で報道すべきではないのか。事実上国営化された東電の原発事故直後のノーカットの映像全面公開すら、経産大臣が命令できないとは、一体どういうことなのだろうか? 


社説:東電テレビ会議 報道規制は筋違いだ

毎日新聞 2012年08月04日 02時32分

 福島第1原発事故が発生した直後の社内テレビ会議の映像を6日から東京電力が報道機関に公開する。映像は、社員のプライバシーに配慮して、一部を加工したものだ。

 公開に当たり、東電は報道側にさまざまな条件を突きつけている。公開映像の録音・録画を禁止した。東電の事故調査報告書に記載されていない一般社員名の報道もしないよう求めた。さらに報道側が映像を独自に入手した場合の報道も禁じた。

 従わないメディアやフリージャーナリストは、視聴室からの退出を求めたり、今後の会見参加を拒否したりする可能性も示唆している。

 映像の持つ公共的な意味合いと、「国民の知る権利」、取材・報道の自由の原則に照らしても、規制は筋違いだ。東電には硬直的な対応を取らないように強く求めたい。

 公開されるのは、昨年3月11日の震災発生から同15日までの150時間分の録画映像だ。東電本店と発電所のやりとりが録画されている。

 この間、1、3、4号機で水素爆発が起き、一部原子炉建屋が吹き飛んだ。2号機も冷却機能が失われ、1〜3号機で海水注入が行われた。そんな中、15日早朝に当時の菅直人首相が東電本店を訪れ、「原発からの撤退はあり得ない」と責した。

 http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120708/cpb1207080749000-n1.htm

東電、テレビ会議の録画映像 「プライバシー」盾に公開拒否 記録消失恐れ                 2012.7.8 07:47


福島第1原発事故で、東京電力が録画していた福島第1原発と東京の本店などを結ぶテレビ会議の録画映像を公開するよう求める声が強まっている。事故解明の“一級資料”とされ、その一端は5日に公表された国会の事故調査委員会の報告書で明らかにされたが、東電は「プライバシーの問題がある」と映像の公開を拒否したままだ。(原子力取材班)

 生の声を収録

 「こんな悠長でいいのか」「物だけもらっても人がいない」-。5日公表された国会事故調報告書に盛り込まれたテレビ会議の記録は、事故対応に追われ、官邸の介入で混乱する現場の声を生々しく再現した。

 政府と東電で主張が対立している東電社員の全面撤退問題について、国会事故調が「菅直人首相(当時)が『全面撤退』を阻止した事実は認められない」と結論づけた根拠のひとつも、テレビ会議の映像だった。

 映像には菅氏の東電本店での“叱責”や、政府・東電統合対策本部での政治家の発言も残されているとされ、事故対応の検証に欠かせない重要資料だ。

 枝野幸男経済産業相も「なぜ公開しないのか意味不明だ」と公開を求めているが、東電は「社内資料でプライバシーの問題がある」と拒否し続けている。

 ルール定めず

 そもそも、東電のテレビ会議システムはどういうものなのか。東電によると、テレビ会議システムは東電本店と第1原発のほか、第2原発やオフサイトセンター、柏崎刈羽原発などに設置されている。画面は分割され、発言があるとその部分が強調されて情報共有できる仕組みという。

 ただ、映像は自動的には記録されない。東電本店での録画が始まったのは、事故翌日の昨年3月12日午後11時ごろから。東電は「担当者が機転を利かせて録画を始めた」としており「非常時にテレビ会議を録画するルールを定めていなかった」と釈明する。

 さらに、15日午前0時ごろ、本店の録画装置のハードディスクの容量がいっぱいになり、16日午前3時半ごろまで録画は中断した。

 一方、第2原発では11日午後6時半ごろから録画を開始。だが、担当者が「音声録音の設定を失念した」(東電)ため、音声なしの録画が17日午前まで続いたという。このため15日早朝の菅氏の映像は、第2原発の録画で音声はないと東電は説明しており、「本店と第2原発以外の録画は存在しない」としている。

 「国民の共有財産」

 東電が公開を拒み続け、貴重な記録が失われるとの懸念も広がっている。

 原発事故をめぐる東電株主代表訴訟の株主側は6月29日、「国民全体の共有財産だ」として、録音、録画記録の証拠保全を東京地裁に申し立てた。

 株主側は、公開の可否が東電に委ねられている現状を「異常だ」と指摘。政府と国会の事故調査が終了した後に「東電が責任回避のため記録を消去する危険性が大きい」と危惧している。

 映像に登場する菅氏も公開を強く要求している。国会事故調の官邸対応などの評価が「私の理解と異なる」と反論する菅氏は「事実関係を明らかにするため、東電のテレビ会議など客観記録の公開が不可欠だ」と強調している。

 これに対し東電新社長に就任した広瀬直己氏は6月28日の会見で、「(公開の)リクエストが強いのは理解している。まず見て、プライバシーの問題がどの程度か判断したい」と述べた。

 東電の情報公開は複数の事故調でも批判され続けてきた。批判を真摯(しんし)に受け止め、事故の真相解明に向き合えるか、新生東電の姿勢が問われている。