2012年9月8日土曜日

再稼働不要の裏付け:2012年夏




再稼働不要裏付け 今夏消費5~11%減    2012年9月7日 07時12分

政府は、関西、四国、九州の三電力管内に求めた夏の節電の数値目標を七日午後八時に解除する。家庭と企業に節電の意識が浸透。実際の消費電力は電力各社の事前の予想を大きく下回った。中でも「15%の電力不足に陥る」と主張していた関西電力の需要予測は過大だったことが明らか。専門家からは「大飯原発(福井県おおい町)の再稼働は必要なかった」との声が出ている。 (吉田通夫)
 電力各社は四月に政府の要請を受け、二〇一〇年並みの猛暑と、平年並みの場合とに分けて夏の電力需給見通しをまとめていた。
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 実際の電力各社の電力消費をみると「猛暑」の想定より5・2~11・1%少なく、「平年並み」の想定に対しても東北電力を除く全社で2・2~9・1%少なかった。
 気象庁のまとめでは七月の気温は全国的に高く、特に下旬は猛暑日を観測する地域も多かった。八月も沖縄県を除いて気温は初旬と下旬に平年を大きく上回り、月間平均でも平年を一度上回った。今年は「暑い夏」だったのに、実際の電力消費は平年並みを前提にした予想も下回り、夏の電力不足の恐れを強く主張していた政府と電力会社への信頼が揺らいでいる。
 特に大飯原発の再稼働に踏み切った関電の需要見通しは過大だったことが鮮明になった。仮に大飯原発の稼働がなくても最大消費電力を記録した八月三日の供給余力は2・7%あった計算。政府が「最低限必要」と主張する3%は下回ってはいたが「他社から余った電力を購入して供給力を高めることもできた」との指摘もある。
 大阪府と大阪市が設置した専門家らによる大阪府市エネルギー戦略会議(座長・植田和弘京都大教授)は「西日本全体でみると(電力供給に)余裕があった。野田佳彦首相の再稼働の判断は根拠がない」と大飯原発の停止を求めている。
 関電以外の電力各社の管内の電力消費も軒並み予想を下回った。理由について東北電力の佐竹勤副社長は六日の記者会見で「省エネ機能を高めた空調機器に交換するなど、当初に想定した二十万キロワットを上回る節電があった」と分析した。
 家庭では窓際に植物を植えるグリーンカーテンや省エネ家電といった節電策が普及。企業や事業所の間にも重油などを燃やして熱を利用する際に発電もする「コージェネレーション(熱電併給)システム」を増やすなど、自衛策が広がったことも節電につながった。
(東京新聞)



世界のジャーナリストはどう見るのか?:日本の優良放送番組お取り潰しの危機

 3.11以降も、これまでタブー視されてきた小出裕章氏を番組に登場させ、原発の状況について、唯一真実の報道を行ってきた関西放送のラジオ番組、たね蒔きジャーナルの存続が今、危うい。

 関西電力や原発関連企業にとって、原発の存続に加担しない人たちの真実の報道や、批判的な声は誠につごうの悪い内容であり、資金繰りの難しいラジオ放送局に、これらの企業から強い圧力がかかっていることは容易に想像がつく。
 
 存続の危機に瀕している事を知った小出氏は、自分の出演料はなくてもいい、自分がじゃまなのであれば、自分を起用してもらわなくてもいいから、番組を存続させてもらいたいと訴えた。

 こうしたことから、番組の存続を願うネット署名の活動と、募金活動が始まった。

むろん一般市民による1000万円足らずの募金など、消費者から高すぎる電気料金を当然のように搾取し、分不相応な高収入を得ている電力会社の社員や、原発のマネーの蜜漬になったメインバンクを含めた関連企業の社員にとっては、取るに足りない、へのようなものにちがいない。

しかし経済低迷に歯止めがかからない中、情け容赦なく消費税増税が決まり、追い打ちをかけるように電気料金の値上げが当然のように行われ、干ばつや洪水やらで、物価はじりじり上がり続けて家計を直撃し、庶民は日一日と厳しい状況に追い込まれる状況下、組織から動員されたわけでもないのに、遠くから自前で関西放送の前までかけつけ、番組存続の呼びかけを静かに見守り、応援しようとする視聴者の姿、なけなしのポケットマネーから番組存続のための寄付を行う、名もない人たちの存在こそ、放送局が何よりも大切にしていかなければならないものなのではないのか。

毎日放送は、そのような真摯な視聴者の声に、どう応えていくつもりなのだろうか。

番組が存続するか否かの最終的な判断は19日に出されるというが、7日、放送局との交渉のあたった呼びかけ人のニュアンスから判断して、そのままの形で存続する可能性はあまり期待できない。

7日、呼びかけ人との話し合いに応じた関西放送の総務部長は、番組の名前を変えても発展的に継続させていきたいと、すでに番組変更の決定を匂わせるような発言を行っているからだ。

世界のジャーナリストたちは、アメリカやドイツのジャーナリストは、日本のMBSラジオ放送の「優良番組、お取り潰しの危機」をどう見るのか?

日本でたったひとつ、民放ながら商業主義に踊らされず、地道に真実の報道に努めてきた良心的な放送番組がなくなるーーそんなことがあっていいのだろうか。

言論の自由が憲法で定められた国家であるにもかかわらず、日本のジャーナリズムは死に体となり、ブログやツイッターは厳しい監視下におかれ、まさに言論統制の時代さながらになっていく。。。

例えばNY Timesの日本支局長などは、こうした状況をどのように見るのか、是非聞いてみたい。

以下7日晩、MBS前でジャーナリストが現地の模様を記録した動画の一部と、朝日新聞のたねまきジャーナル打ち切りに関する記事、そしてBLOGOSに掲載された、たね蒔きジャーナル打ち切りの背景について広告関係の仕事に携わった経験のある方が書かれた記事を転載する。


脱原発報道のラジオ番組打ち切り検討 毎日放送

原発問題を積極的に取り上げ、脱原発派の間で話題のラジオ番組、毎日放送(大阪市北区)の「たね蒔(ま)きジャーナル」の打ち切りが検討されている。31日には聴取者らが放送局前に集まり、存続を求めた。

 「たね蒔きジャーナル」は2009年10月に始まり、平日午後9~10時に放送中の報道番組。毎日放送のアナウンサーが司会を務め、様々なゲストと共に時事問題を幅広く取り上げてきた東日本大震災後は原発報道に力を入れ、危険性を訴える京都大学原子炉実験所の小出裕章助教の解説などを伝えている。

 今年3月には一連の原発報道が評価されて、坂田記念ジャーナリズム賞特別賞を受賞した。テレビの視聴率に当たる聴取率も堅調という番組の内容がネットを通じて広まるなど、脱原発を掲げる人々を中心に支持されている。

http://blogos.com/article/44145/

マスメディアの正体 その2広告とメディア~「たね蒔きジャーナル」の打ち切りを考える

2012年07月31日 14:13

本日二本目のエントリー。
まずは以下のリンク先の記事をご覧いただきたい。

「憂国呆談」 (浅田彰、田中康夫)

この二人の対談は複数の雑誌を渡り歩いている。私はもう十年以上前になるだろうと思うが、自動車雑誌「NAVI」に連載されるようになってから読むようになったが、その後も「週刊ダイヤモンド」に移り、そして現在は「ソトコト」で連載されている。
田中康夫ファンの私は、できるだけ目を通すようにしているのだが、今回の「憂国呆談」を読んで一つ「ほお~っ」と思ったことがある。それはこの対談の中で浅田、田中のご両人が厳しい東電批判をしていることと関係している。
といっても、この二人が東電を批判していることに驚いたのではもちろんない。対談の内容自体は私にとっては至極当然でまことにもって腑に落ちるものだ。
では、何に対しての「ほお~っ」かというと、「ソトコト」が東電批判が語られている対談を掲載したことについての「ほお~っ」なのである。

3・11以前、「ソトコト」は東電のタイアップ記事を毎号掲載していた。私は以前にそのことについて、以下のようなエントリーを書いたことがある。

広告で雑誌のお里が知れる?

上記のエントリーでは書かなかったが、このタイアップにおける1号あたりの東電の出稿金額は、私の試算では500万である(ソトコトの広告料金から試算)。年間に直すと6000万。タイアップ記事なので制作費はかかるが、それは別途徴収しているはずだ。

広告という商売のうま味は、、それだけの金額がほぼ“真水”で入ってくるという点にある(上記の私の試算では、広告代理店が手にするマージンはのぞいてある)。つまり恐ろしく利益率が高い。そして、「ソトコト」の例でいえば、これだけのカネを出してくれるクライアントは第一級である。
であるならば、3・11以前であれば、このような内容の対談は絶対に掲載されることはなかった。
というのも、業界用語で言えば「記事同載」(同じ号に広告とそのクライアントのネガティブ記事が掲載されること)というのは絶対に避けなければならない、広告マンの初歩の初歩であるからだ。

かつて私は自分が広告営業マンだった時代、担当する媒体にどうしても入れたいクライアントがあった。そこで、その扱い代理店から調べて、細いツテをたどってようやく「お試し」ということで軽いタイアップ広告を掲載するところまで辿りついた。
ところが、その記事が掲載された同号の編集ページで、このクライアントのタブーに触れる記事があったのである。といっても、その記事は一つの特集で、その中の数行にそのクライアントの創設者についての表現があった。しかもそれは悪く書いてあるわけではない。だが、そもそも「触れること自体がNG」だったのだ。
これはもちろん、そういう記事が掲載されることに気がつかなかった私の責任である(もちろん掲載台割は確認していたが、この特集記事についてはタイトルだけが書いてあり、中身まではチェックをしていなかった)。
まあそれでも大きなもめ事にはならなかったのは幸いだが、少なからぬペナルティを科せられたものだった。

あるいは──
これは私自身の身にふりかかったわけではないが、やはり広告営業時代、ある雑誌の編集が超第一級のクライアントを怒らせてしまったことがあった。このクライアントは当時、私が勤務していた会社の複数の雑誌に非常に大きな出稿をしており、つね日頃から注意はしていたのだが、ひょんなことから広告部の気がつかないところでミスが起きたのである。
この時はしばらくの間、当該雑誌だけでなく、他にも出稿のあった全雑誌での広告が止まったものだった。この事態をなんとか打開するには、詫びに詫びるしかない。そして、最終的には、このクライアントのトップが会社を訪れ、出稿のなかった雑誌も含む(私の担当する雑誌はまったく関係がなかった)全誌の編集長が招集され、このトップの話(ブランド戦略等)を拝聴するということで解決が図られたのであった。

くどくどと書いてしまったが、つまり私がここで何を言いたかったかというと、一つの政権を葬り去るぐらいの強大な力を持つマスメディアも、広告主(それも大きな広告主ほど)にはからきし弱いということだ。
といって、「だから広告はいけない」と言うつもりは私にはない。電通や博報堂が裏でとんでもないことをやり放題やっているというつもりもない。
むしろ、本来、媒体社は広告主や広告代理店に対して最低限譲れないラインを敷くことこそが必要で、そこに媒体社の“見識”が現れると思う。
もっとも広告不況と呼ばれるなか、広告主の力は実際問題としてどんどん上がってきているのだが……。

広告不況がもたらすマスメディアのもう一つの劣化

そこで本エントリーのメインテーマに移る。

毎日放送(MBS)のラジオ番組、「たね蒔きジャーナル」が打ち切られる可能性が高いという。

・ざまあみやがれい!

マスメディア総崩れ状態の今日、そのなかで一定のクオリティを維持しているのがラジオである。
それはテレビや新聞に比べて、「現場」の規模が圧倒的に小さく、かつ機動性があるからで、だからプロデューサーやディレクターの意向がわりと強く出せる
のだと思う。

私は関東在住なので、関西圏のラジオを聴くことはできない。だが、この「たね蒔きジャーナル」については、その放送がYouTubeにアップされるため、私はこれをいつも聴いているもちろん本来は違法だが、おそらく毎日放送(というより現場のプロデューサー)もその内容を幅広く伝えたいがために削除要請をしていないのだろう。

ご存じの方も多いと思うが、この番組には京都大学の小出裕章助教が定期的に出演している。
この小出氏は改めて言うまでもないが反原発派の大御所である。したがって、他のメディアに出演することはほとんどない(テレビ朝日の朝の番組に時々出るが)。
本来、福島第一原発の事故は起こり得ると警告を発してきた学者と、絶対に起きないと断言していた学者のどちらを今日の状況で信用すべきかと言えば、明らかに前者のはずだ。
にもかかわらず、マスメディアに登場するのは、いわゆる御用学者のみ。

そういうなかで、小出助教が出演して、現状の福島第一原発や他の原発、あるいは原子力関連施設の分析、知見を話してくれたり、リスナーからの疑問に答えてくれる「たね蒔きジャーナル」は私のような者にとってはとてつもなく重要な情報源であった。
その番組が打ちきりの瀬戸際にある
という。

おそらく毎日放送はその理由について、「以前から決まっていたこと」とか「番組編成の見直しの一環」としか言わないだろうが、その内容からして、番組に強い圧力がかかっていたことは間違いないと思う。
なかでも放送局にとってもっともキツイのは広告がらみの圧力で、となると関西電力あたりからの圧力である可能性が高い。
パナソニックやシャープといった関西資本のメーカーの業績が悪化している。となると、当然、真っ先に削ってくるのは宣伝費で、それが関西の放送局の広告収入を直撃する可能性は高い。そうしたなかで、数少ない有力クライアントからの圧力がかかれば、現場がどれだけ抵抗しても、会社として屈してしまうのではないだろうか……。

と、まあこれはあくまで私の推測である。