2011年8月1日月曜日

喫緊の課題では?

 原発災害の問題は、電力会社の地域独占に起因するといっても決して過言ではない。独占企業を野放しにすることがどんなに危険なことか、福島原発事件以来、嫌気がさすほど、思い知らされた。

電話が自由化されたように、電力も自由化されなければ、電力会社は地域の産業界、自治体、御用メディア、御用学者、官僚、政治家、地元住民をアメとムチで抱き込み、やらせも隠蔽も絶大な権力を行使する最高権力組織として君臨し続けるであろう。

パナソニックはシンガポール政府とタグを組んで、太陽電池とリチウムイオン蓄電池システムを設置し、共用部の電力を賄う。また各家庭に電力などの使用状況を表示するシステムを導入して省エネを目指すという。日本企業等で自家発電がいまいち進まなかったり、イタリアやデンマーク、スゥエーデンのようなスマートグリッドが一向進まないのも、資源王国でありながら原発のエネルギーばかりにばかり依存しているのは、東電を始めとする電力会社が地域の発送電を独占しているからである。

発送電分離に関しては、経産省の改革派の官僚たちが以前推進しようとしたが、清水氏に代わって東電の新社長に就任した西沢氏らの猛烈な反対を食らい、経産省を追われてしまったことは、周知の事実である。以下ブルームバーグは、発送電網分離に対する電力会社の反対があり、実現可能性が高くないことを匂わせているが、それは日本の電力会社のピラミッドの上に君臨する東電の新社長として、それは西沢氏が就任する時点からわかっていたことである。

政財官が完全に癒着して、電力会社を死守し、電気事業法に基づいた「総括原価方式」のしくみそのものを存続させる限り、電力会社はベスト・ミックスという美名の中のもとに、この小さな地震王国で原発再稼働・新規建設を続けることを、国が滅びるその瞬間まで諦めることはないだろう。 

地域住民や地元自治体の癒着ぶりは、玄海原発のやらせ、佐賀県知事と九州電力の結託、世論操作の状況1つをとってみてもはっきりしているし、以下では自治体の住民や首長と電力会社の癒着ぶりを示すサイトも転載した。

このやらせ事件で、保安院だけが悪者にされ、とかげの尻尾切りがなされるような勢いである。
しかし、資源エネルギー庁や、経産省を始めとする省庁の省益と経済性(企業の保護)ばかりを最優先し、国民の健康、命の大切さを軽視することを当然と考える風潮に、しっかり歯止めをかけなければ、原発推進派の体質は何も変わらず、その驕りが次の取り返しのつかない大きな災厄を引き起こすことに繋がるのではないか。

大企業がエネルギーコストを理由に生産拠点を海外移転をすることを懸念するのであれば(昨日のブログに書いた通り、海外移転の主たる理由は円高によるところが大きいと思うが)、発送電分離を直ちに行い、電力の規制緩和をして、電気代を安くすべきであろう。

玄葉氏は、発送電の分離を、中長期的な政策の中に入れているが、資源エネルギー庁の再編、発送電の分離、電気事業をめぐる様々な法律の改正は、喫緊の課題なのではないか。

青木理氏らも言うようにこのような信頼感が持てないような政府機関が、既得権益を守る口実として実施するストレステストなどに我々や我々の子孫の命を託すことなど誰ができようか。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920019&sid=aPMHV8cFSpxI

発送電分離、実現の可能性高くないとの指摘も-新エネルギー政策




  8月1日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、菅直人首相が脱原発など新しいエネルギー政策の一環として提起する電力の発送電を分離するというアイデアは電力会社からの反発があって早急には実現しそうにない
  菅首相は29日、今後のエネルギー政策の在り方を検討するエネルギー・環境会議や東日本大震災復興対策本部の会合を相次いで開催。エネルギー・環境会議では、原発事故を踏まえた中長期的なエネルギー政策に関する「革新的エネルギー・環境戦略」に向けた「中間的整理」、復興本部では復興基本方針をそれぞれ決めた。

 立花証券の平野憲一執行役員はブルームバーグ・ニュースの取材に対し「発送電の分離は理想ではあるが、電力会社は反対しているし、実現の可能性はかなり難しいだろう強権を持って政府方針で実行するのでなければ議論は議論で終わるのではないか。電力各社が今よりも潤うような方法が見つかればいいが、そうでなければ現実問題としてはなかなか進まないだろう」と語った。


 29日夜に会見した首相は「今日の決定をベースとしてさらに議論を重ねていく。今後、原発に依存しない社会を目指し、計画的、段階的に原発への依存度を下げていく、このことを政府としても進める」と語った。首相は同日の国会答弁で、「電力自由化や発送電分離を含むエネルギー政策については今後、国民各層の意見を聞きながら、予断なく検討を行うこととしている」とも述べた。


机上プラン 


 平野氏は、「今までやってきた民主党の机上プランに飽き飽きしているので、それが出てもただのアクションとして受け止められるだけだろう。来週の株価への影響も限定的だろう」との見通しを示した。


一方、玄葉光一郎国家戦略担当相は同日の会見で、原発について短期的には「徹底した安全対策を行い、安全性を確認した原発は活用する」との考えを示した。その上で、中長期的なエネルギー戦略については「原子力依存度の低減とグリーンイノベーション戦略の強化、前倒しを軸として新たなエネルギーベストミックスのシナリオを描きたい」と述べ、来年には戦略の具体案を決定する考えを示した。



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更新日時: 2011/08/01 01:00 JST


http://www.news-postseven.com/archives/20110730_26490.html

原発誘致で潤う自治体の住民が「こんなに儲かっていいの?」

2011.07.30 16:00


原発の立地には過疎地が選ばれ、“迷惑料”を支払う形で折り合いをつけてきた。過疎化に悩む地方自治体が原発誘致によって地域振興を図ろうとしたこと自体は非難されることではない。だが、安全神話が崩壊し、あらためて原発の巨大なリスクが顕在化した今、原発マネーに依存してしまった自治体の悩みは深い。フリーライターの池田道大氏が報告する。
 * * *
「東京に造れないものを造る。造ってどんどん東京からカネを送らせるんだ」
 
 地元・柏崎刈羽原発についてこう熱弁を振るったのは故・田中角栄氏だった。この言葉が日本の原発の“生きる道”を決めた。
 
 日本の原子力政策の嚆矢は、中曽根康弘議員が原子力関連の予算を初めて提出・成立させた1954年。翌年、原子力基本法が成立し、1960年代には電力会社が相次いで立地を計画する。しかし、1970年代初頭に原発反対の声が高まり、立地計画は頓挫していた。
 
 閉塞状況を打破したのが時の首相・田中氏だった。田中氏は原発立地自治体にカネをばらまく仕掛けを作る。それが1974年に過疎地を振興する名目で成立した「電源三法」(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の総称)に他ならない。
 
 この法律により、電力会社は販売電力量に応じて1kW時あたり37.5銭の「電源開発促進税」を電気料金に上乗せして国に納付する。その額は標準家庭で年間1400円ほどだ。主に都市部で徴収した税金を特別会計に繰り入れ、交付金として過疎地の原発自治体に還元する仕組みである。
 
 実際、今年度予算案では一般会計、特別会計合わせて4000億円を超える巨額の予算が原子力分野に投下される
 
 原発を1基造るとどれほど儲かるのか。資源エネルギー庁のモデルケースによると、出力135万kWの原発(建設期間7年)を新設する場合、環境影響評価が始まった翌年度から3年間、年5.2億円の交付金が支払われる。交付金は4年目の着工年度に79.2億円まで一気に跳ね上がり、その後40億~80億円で推移。運転開始までの10年間で約481億円もの莫大なカネが地元に流れこみ、50年間の総計は約1359億円というケタ外れの額になる。さらに、運転開始後は巨額の固定資産税収がプラスされる
 
 原発立地自治体はこの“打ち出の小槌”を使ってせっせとハコモノ造りに励んだ
 
 5月6日に菅首相が運転停止を要請した静岡県御前崎市の浜岡原発。旧浜岡町(2004年に御前崎町と合併)に原発誘致が持ち上がったのは1967年だった。当時の財界有力者は「泥田に金の卵をうむ鶴が舞い降りた」と喜び勇んだ。
 
 地元は1975年度以降、2005年度までに231億円もの交付金を使い、豪勢な市立図書館「アスパル」や屋内・屋外利用の市民プール「ぷるる」などの大型施設を建設し続けた。
 
 御前崎市の今年度の一般会計当初予算167億8000万円のうち原発関連の交付金や固定資産税は総額71億2100万円に上る。実に4割以上が原発マネーである
 
アメ”はカネだけではない
 
 原発は雇用を生む。下請けなどを含めると雇用数は地域を凌駕し、福島第一原発と第二原発は地元で1万1000人を雇用した。およそ2世帯からひとりの割合である。
 
 地元優遇は徹底される。たとえば設備の拡張工事や花壇の整備、機材の納入などを地元の業者に発注お中元など贈答品は地元デパートに大量注文し、商店街や町内会の小さなイベントにも電力会社から“心づけ”が届く
 
 福島第一原発の地元で長年反対運動を行なってきた石丸小四郎さんがいう。
 
「地元の商店、住民は様々なかたちで電力会社の恩恵にあずかります。私の地元でも東電は地元の金物屋から貴金属を購入し、ガソリンスタンドの給油まで割り振った。原発関係者で潤い『こんなに儲かっていいの』とうそぶく飲み屋も多かった。地元では夜な夜な地主や有力者が接待され、土地譲渡などで貢献した人は東電に優先的に採用されるといわれたものです。こうして地元の隅々まで手を回すことで唯々諾々の“原発城下町”が作られました
 
 電力会社が大量のカネを投下できるのは電気料金がかかったコストに一定の報酬を上乗せする「総括原価」方式で決まるからだ。このため、電力会社はそれらの費用をユーザーの払う電気料金に転嫁できるのである。
 
 多くの原発城下町では、原発の恩恵にあずかる人が増えれば増えるほど、「ものいえば唇寒し」の空気が広がり、反対運動は追いやられてきた
※SAPIO2011年8月3日号