2011年5月15日日曜日

減資さえないことに違和感:東電賠償スキーム

以下ロイターの記事によれば、東電の賠償スキームは、外資系証券幹部に究極のモラルハザードだと評され、財務省の役人でさえ、「原資さえないことに違和感を表明している」という。

結局のところ、これだけ甚大かつ深刻な人災を引き起こした私企業の経営陣、株主、社債権者は、免責され、電気料金、消費税の値上げという形で国民につけを回し、公務員給料を削減し、融資銀国に一部負担を求めて手打ちにするつもりだろうか。

確かに原子力安全委員会や保安院、通産省などで原発推進を促し、原発の安全性を維持するための努力を怠り、他の新しいエネルギー開発事業の促進に歯止めをかけてきた役人の責任は重大であるし、こうした関係者の給料をカットすることにだれも異論を唱える者はないだろう。しかし、だからといってすべての国家公務員の給料をカットする必要性がどこにあるのだろうか。

OECD23か国のうちで、すでに公務員の人件費のGDP比が最下位なのは他ならない日本なのである。こうした給与カットについては震災復興を妨げ、財政を悪化させるという意見もある。


http://news.livedoor.com/article/detail/5557641/

政府の国家公務員給与10%削減は震災復興を妨げ財政を悪化させ貧困を深刻化する

説明: すくらむ

 昨日、政府が国公労連に対して、国家公務員給与の10%削減を2013年度までの3年間にわたって実施する方針案を提示してきました。
 
片山善博総務大臣は、給与削減が必要な理由として、主に財政事情と震災復興財源への対応をあげています。しかし、国家公務員給与の削減は、財政事業や震災復興にプラスになるどころか、逆にさらなる財政悪化と震災復興にもマイナスになる日本経済の悪化をもたらすだけです。

 長くなりますので、結論を先に書いておきます。

 ▼今回の国家公務員給与削減の主な問題点

 ①「国家公務員準拠」などによって625.8万人の労働者の賃金が切り下げられ「賃下げの悪循環」を加速する。

 ②震災復興財源が増加するどころか、国と地方の税収マイナスをもたらし、財政危機はさらに悪化する。【625.8万人労働者の賃金カット→家計収入マイナス→家計消費マイナス→GDPマイナス→国と地方の税収マイナス】

 ③日本の経済全体をさらに悪化させ、震災復興にも大きな悪影響を与える。【給与10%カットで、GDPはマイナス0.6%】

 ④「小さな政府」「自己責任社会」を加速させ貧困問題をさらに悪化させる。【現時点でも先進諸国の中で日本は公務員人件費が最も低い「小さな政府」。日本の「小さな政府」の特徴は、国民生活を支える部門が極端に「小さな」「自己責任社会」であること。「小さな政府」は「国民の自己負担の大きな政府」であり、貧困者のところに最もしわ寄せが来る。そして、「小さな政府」は財政赤字を拡大する】

 ⑤ 国家公務員の労働基本権制約のもとでは人事院勧告にもとづかない労働条件の切り下げは、明確に憲法に違反する。

 それでは、いくつかの点について少しくわしく見えていきましょう。

 国家公務員の給与は、「国家公務員準拠」「人勧準拠」などによって、地方公務員をはじめ625.8万人もの労働者の賃金に影響を与えます。労働総研と国公労連などで産業連関表を用いて計算した結果は以下のようになります。(※具体的なエクセル表など詳細な計算結果については来週記者会見を行い発表します)

 ▼国家公務員の人件費を10%カットした場合

 ① 家計収入の減少総額は34,710億円
 ② 家計消費の減少額は25,937億円
 ③ 国内生産の減少額は58,472億円
 ④ 付加価値(≒GDP)の減少額は3431億円。GDPを0.6%押し下げる
 ⑤ 国と地方の税収の減少額は5,401億円

 以上の数字が示すように、国家公務員の人件費を10%削減すると、震災復興財源を増やすどころか、逆に国と地方の税収は5,401億円もマイナスになってしまいます。さらに財政状況は悪化し、日本のGDPはマイナス0.6%となり東日本大震災からの復旧・復興にも甚大な悪影響を及ぼすことになります。

 ▼以下は、国公労連のブログ「くろすろーど」の記事「どうみる?日本の財政赤字(5)-公務員人件費が高いから財政赤字が増えた?(山家悠紀夫さんに聞く)」の一部です。

 上のグラフは、公務員と公的部門職員の人件費の対GDP比の国際比較です。人件費を見ても、数字がわかっているOECD23カ国の中で日本は一番少なく、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランスの半分以下です。上のグラフは、8カ国だけですが、23カ国を高い方からすべて紹介すると、(1)デンマーク16.9%、(2)スウェーデン15.1%、(3)フィンランド13.0%、(4)ポルトガル12.9%、(5)フランス12.8%、(6)ノルウェー12.3%、(7)ベルギー11.7%、(8)ハンガリー11.5%、(9)ギリシャ11.1%、(10)イギリス10.9%、(11)イタリア10.7%、(12)スペイン10.2%、(13)アメリカ9.9%、(14)ポーランド9.6%、(15)アイルランド9.3%、(16)オランダ9.1%、(17)オーストリア9.1%、(18)チェコ7.6%、(19)韓国7.3%、(20)ルクセンブルグ7.1%、(21)ドイツ6.9%、(22)スロバキア6.8%、(23)日本6.2%、となっています。

 ◆国・地方の総支出に占める人件費も少ない


 さらに、上のグラフにあるように、国・地方の総支出と、国家公務員・地方公務員・公的企業を合わせた人件費の割合を見ても日本は主要国の中で最低です。金額ベースで見ても日本の国家公務員の2010年度の人件費は5.2兆円で、しかもその半分ほどは自衛官の人件費で占められているのです。




いずれにしても、リスク・リターンの原則を無視した賠償スキームは、理不尽であるとしかいいようがない。



http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-21084820110513


東電賠償スキーム、事実上株主・社債権者などを免責

2011年 05月 13日 12:33 JST
 
 [東京 13日 ロイター] 政府が13日発表した福島第1原子力発電所事故による東京電力(9501.T: 株価ニュースレポート)の損害賠償支援スキームは、株主や社債権者などの各ステークホルダーを事実上、免責するものとなった。巨額の損害賠償が発生し、債務超過に陥れば優先・劣後関係の中で損失を負担していくのが金融市場の原則だが、”too big to fail”(大きすぎて潰せない)との主張の前に、最初にき損されるべき株主も守られるスキームだ。「リスク・リターンの原則もないがしろ。究極のモラルハザード案」(外資系証券幹部)との指摘も出ている。
  <破綻しないことが確約された企業の誕生>
 別の外資系証券幹部は今回の政府のスキームについて「海外の投資家には理解できないスキームになっている」と指摘する。巨額の賠償債務を抱えることになった東電は、通常ならまず株式が最初にき損することになる。東電の株主資本は約2.5兆円ある一方で、賠償額の総額は現時点で判明していないものの、政府は5兆円のシミュレーションを作成している。少なくとも2.5兆円を超える賠償債務を追った時点で株式は100%減資となり、次に貸出金や社債がき損していく順番をたどるのが、市場原理に基づいた通常の破綻処理のケースだ。
 しかし、政府案では、東電が債務超過に陥って破綻しないように、特別法を策定して設立する「機構」が優先株を注入する。「援助には上限を設けず、機構は必要があれば何度でも支援し、電力会社の債務超過を防ぐ」と盛り込んだ。破綻しないことが確約された上場企業が誕生したことになる。同スキームの作成に関わった財務省や融資銀行団の一部にさえ、「減資さえないことには、違和感を感じる」との指摘がある。
 今回のスキーム作りには、経産省や財務省に加え、融資銀行の一角も参画した。主力銀行の三井住友銀行は特別チームを立ち上げ、東電から賠償リスクを切り離す案を策定し、与野党や財務省に積極的に働きかけた。同行の接触を受けたある民主党議員の秘書は「破綻に準ずる処理を進めれば、資本市場に与える打撃が大きい、と訴えられていた」と言う。東電の株式は年金基金も多く組み込んでいるほか、社債の発行額は国内最大の約5兆円に上る。東電の破綻処理は金融市場のシステミック・リスクに直結しかねず、“too big to fail”(大きすぎて潰せない)というわけだ。ある財務省幹部は「銀行としては減資という事態になれば、その先には債権放棄や社債カットの世界が待ち受ける。それを避けたかったのではないか」とみている。
  <融資銀行団が一部負担する可能性も>
 だが、最終的なスキーム案では、当の銀行サイドも当てが外れた格好だ。政府は東電を支援する条件の一つに「金融機関から得られる協力」について政府に報告するよう求めた。協力の具体的な中身については「民間同士の問題なので東電と銀行で話してほしい」(枝野幸男官房長官)としているものの、政府が銀行に対して金利減免などの条件緩和を暗に求めていると受け止められている。
 三井住友銀などメガバンクは震災後の3月末に総額1兆9000億円の緊急融資を実行しているが、震災前の融資残高は約2兆円。いずれも低スプレッドとされ、金利減免を実行しても数百億円程度とみられ、東電にとっての効果は限定的。そもそも金融支援を実行すれば、条件緩和債権となってしまうために通常のルールでは追加融資も難しくなる。「株主責任も問われていないのに、なぜ銀行負担を求めてくるのか理解できない。順番が違う」(融資銀行幹部)との不満も銀行からは漏れてくる。
 海江田万里経済産業相は11日の都内の講演で、東電の救済策で経営破たんした日本航空(JAL)と同様な減資や債権カットの手法を取らない理由を問われ「JALとの決定的な違いは損害賠償を受ける人たちが大変たくさんいることだ」と述べたうえで、「説明責任をしっかり果たす」と強調。今後は、国会の論戦に耐えうる政策になっているのが問われることになる。
 (ロイターニュース 布施太郎 平田紀之:編集 石田仁志) 

8割が「その他の原発も中止すべき」: ロイター・オンライン調査の投票結果

全国紙各紙の統計を見ていると、(福島第1・浜岡以外の)「原発を止めるべき」という意見があたかも少数であるかの如くに見える。

大体、新聞各紙や放送局各社が実施する世論調査ほどあてにならないものはない。

私は、昔からいったいどんなデータのとり方をしているのか大変興味があり、これまで何十年にもわたって、いろんな場面で接触した日本国籍を有する何千人もの、様々な年齢層、出身地、業種(主婦・無職も含む)の成人男女を対象に、「自身や兄弟姉妹、友人、知人、家族の中に、新聞各社や放送局などが実施する世論調査の類に協力を求められたことがある人がいるか」問い続けてきた。

大変興味深いことに、「ある」(本人ではなく、家族の中に)と答えた者は、いまだかつてたった一人しかいなかった。

しかも、その70代の農業従事者の男性一人に限っては、これまで新聞やテレビなど、複数の世論調査への協力を求められていたというのである。

このことから考えても、いかにこの種の調査がうさんくさく、偏ったものであるかがわかるし、結局、マスコミが、自分たちの都合のいい方向に大衆を誘導する意図で実施していると疑いをもっても致し方がないような方法で、行われていることが容易に推察される。

前のブログに、最近行われたNHKの原発の賛否を問うた世論調査の結果について書いた。原発の周辺住民に賛成するものが多く、それ以外の人たちに反対者が多いというような、わざわざ調査しなくてもいいような陳腐な結果が公表されていた。

いうまでもなく電力会社やその恩恵を浴してきた関連企業の社員やその株主、賄賂や交付金などを受け、さんざん甘い汁を吸ってきたメディア各社のジャーナリストや政治家、御用学者、原子力関連事業に関わってきた公務員とその家族は、震度8クラスの地震に伴う大津波が列島の海岸沿いにあと何回押し寄せ、各地の原発の冷却装置が故障し放射能漏れが続いたところで、自分がそこの住人ではない限り、みんな声を大にして、脱原発に大反対をするだろう。

しかし、ことさら原発がなくても何の支障もない、それどころかお粗末で無責任極まりない電力会社や国のつけを、支払わされるはめになる国民が、原発の危険性とコストの大きさを知った今なお、原発を温存させる意見に賛成であるとは、いくらおかみに弱い日本人とはいえ、常識的にみて、非常に考えにくい。

唯一そうした人々が「原発に賛成せざるを得ない」と考えている大きな理由があるとすれば、それは、「日本の電力は原発に頼らなければやっていけない。原発を一つ止めただけで大停電を覚悟しなければならず、国の経済活動が停滞してしまうのだから、止めてしまっては大変なことになる」とか「原発以外だと、非常に高いコストがかかり、たちまち電気代に跳ね返る」と、信じこまされていることに拠るものであろう。

現に、私自身も福島の原発事件が起こるまでは、そのように信じ込んでいた一人である。

しかし、「原発に頼らなければ何ともしようがない」といった考えが、実際、何の根拠もないものであることについては、小出裕章氏が、今日本各地にある火力発電所を遊ばせずにきちんと稼働させるだけで(水力発電までフル稼働させなくても)十分にまかなえることを力説されている。

また原発がいかに高コスト事業であるかという点についても、大島教授や河野太郎氏が説明している。

そうしたこれまでは、原発推進派によって社会の片隅に押しやられてきた人たちの意見に、真摯に耳を傾ければ、地震大国の日本が、海外線上に54基もの原発を持つということが、いかに無謀で危険極まりないことであり、致命的であるかは、火をみるよりも明らかである。

実際、今日のロイターの日本語版のウエブページの、ロイターオンライン調査の結果は、新聞やテレビ局の世論調査の結果とは異なり、納得できるものであった。、

「30年以内にM8級の東海地震発生の可能性87%」を根拠に浜岡原発の全面停止を菅総理が要請し、それを中部電力が受諾。あなたの考えはーーという質問に対して

●停止の必要なし
●停止決定に満足
●他の原発も停止すべき


の3択の回答項目に対する、投票結果は


停止の必要なし  (7128 votes, 9%)
停止決定に満足   (9094 votes, 12%)
他の原発も停止すべき  (61371 votes, 79%)

http://jp.reuters.com/

となっており、「他の原発も停止すべき」といった意見が圧倒的多数を占めているのである。 

むろんロイターのウェブページを見るような人たちは、世界の出来事に関心をもった人々であり、
わざわざ投票をする人はこの問題に関心の高い人といえるが、少なくとも日本の電力会社や政府の圧力からフリーな報道機関が実施した世論調査結果の一つとして高く評価できるものと言えるのではないか。