収束宣言をめぐっては、東電、政府の発表がいかにご都合主義の、国民の安全を全く考慮しない科学的根拠に欠くものであるかは、毎日ウエブ版の中西拓司氏の記事や、週刊金曜日ニュースのウエブページ、現代ビジネス:経済の死角のサイトに、詳しいので、以下、転載する。
聞くところによれば今、東電の経営陣の間では、フクシマ第2原発の再稼働に余念がないそうだが、中西氏の記事を読めば、第2原発もはラッキーとしかいいようのない偶然の重なりIあいと、たまたまその日原発の現場にいた下請け会社の作業員の人たちの働きによって、辛うじて大災害をまぬがれただけにすぎなかったという事実が明らかになるであろう。
決してフクイチだけが問題であったわけではなく、それ以外の原発でも「安全性が確保されている」などと冗談にでも言えたものではなく、安全性からは程遠いお粗末な状況にあることがよくわかる。未曽有の大災害とされるフクイチでさえ、ラッキーな偶然の重なりによって、もっと悲惨な大災害を辛うじてまぬがれたにすぎないことについても、明らかにされている。何が原発の再稼働か、何が避難民の帰宅、地元の復興か、ずぶの素人でさえ疑義を抱かざるをえないような気休めにすらならない宣言をすることで、国の威信や信頼を自ら貶めていることに、東電・政府の人間はどうして思い至らないのだろうか。
さて、駐日アメリカ大使ルース氏は、この収束宣言から、1ヶ月後の1月16日、NRCの専門家らと共に、フクイチを初視察し、復旧の進み具合を確認し、報道陣の前で、「ここで暮らす人達の危機は去っていない」 とはっきり言い切っている。何をかいわんやである。
以下、47newsのウェブサイトを転載する。
http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011601002128.html
ルース米大使、福島を初視察 「住民の危機去ってない」福島第1原発の視察は非公開。米国のエネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)の専門家らとともに、復旧の進み具合を見て回ったという。 視察後、津波で409世帯が浸水したいわき市の久之浜地区を訪れ、堤防に上がって花を手向け黙とう。 2012/01/16 21:52 【共同通信】 |
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20111222k0000m070118000c.html 記者の目:福島第1原発の「収束宣言」=中西拓司 政府は今月、東京電力福島第1原発を「冷温停止状態」と判断し、事故の収束を宣言した。だが冷温停止状態という言葉は曖昧なうえ、政府が「完了」を主張する「工程表」の中身は過去、7回も書き換えられている。国際社会に早期収束をアピールするため、「自作自演」で幕引きを図った姿勢が透けて見える。 事故から9カ月が経過した。当時の危機的状況を検証してみよう。 ◇首都避難の恐れ、偶然重なり回避 「第1原発も深刻だが、同様に深刻だった第2原発は奇跡的に冷却できたと認識できた」。5月下旬、現地視察した国際原子力機関(IAEA)調査団は、経済産業省幹部に対し「奇跡」という言葉を持ち出してねぎらった。 津波後も一部電源が残った第2原発では、仮設ケーブルを柏崎刈羽原発(新潟県)などから集め、電気を通して4基の原子炉を冷却することが急務だった。作業員を大量投入して敷地の野球場フェンスを徹夜で撤去し、ヘリポートに改造、ケーブルを積んだヘリを社員の車20台のヘッドライトで誘導した。総延長9キロのケーブルを2日で敷設し、ぎりぎり冷却が間に合った。通常20日かかる作業だった。 人海戦術ができたのは、地震発生が金曜日の午後で、協力企業の作業員数千人がたまたま施設内にいたためだ。「もし発生が翌日の土曜日だったらと思うとぞっとする」。IAEAに、第2原発の増田尚宏所長は証言した。 そのころ第1原発では1~4号機が電源喪失で冷却機能を失った。最多の1535本(460トン)を保管する4号機の使用済み核燃料プールは沸騰。溶融すれば最悪の場合、首都圏の3000万人が避難を強いられる事態が目前だった。だが空だき直前、4号機内で起きた水素爆発の衝撃で核燃料プール横の別なプールの水が偶然、核燃料プールに流れ込み危機を免れた。 2号機では、原子炉建屋の窓が、隣接する1号機の水素爆発の衝撃でたまたま開き、水素が排気されて建屋内の爆発が回避された。もし4号機プールが空だきとなり2号機も爆発したら、放射性物質の汚染は今の比ではなかった。 「日本だから収束できた。海外だったら無理」。東電幹部は私の取材にこう証言した。作業員が被ばくにおびえながら復旧に尽くしたことには頭が下がる。だが事故への対応では「偶然」が重なった面も忘れないでほしい。 ◇政治判断を優先、「一里塚」は疑問 これに加え、政府・東電が収束に向けて作成した工程表では、根本問題を先送りし、形式的な「収束」にこだわったことが分かる。 工程表は、原子炉の安定冷却を目指すステップ1(4~7月)、「冷温停止状態」に持ち込むステップ2(7月~来年1月)で構成。政府は、ステップ2の年内の前倒し達成を目指していた。東電は当初ステップ2の目標として、格納容器を水で満たす冠水(水棺)計画を公表したが、格納容器に穴が開いていたことを受け撤回。結局、この重要課題は、5年後以降に先送りされた。「放射性汚染水を処理し減少させる」とのステップ2での目標も、工程表書き直しの過程で「終了後も処理を継続」と変えられた。 今回発表された「工程表達成」は、ハードルを自分で下げた結果にほかならない。第二次世界大戦当時、大本営発表が軍の撤退を「転進」と言い換えたことを想起させる。 「冷温停止状態」の定義は、(1)圧力容器底部の温度が100度以下(2)原発敷地境界の放射線量が年1ミリシーベルト未満--などだが、現場の温度計の誤差は最大20度で、実際の温度は不明だ。また、線量は気体分だけで海への流出は含めておらず、曖昧さは否定できない。内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長でさえ「冷温停止状態なる言葉は使ったことはない。メルトダウン(炉心溶融)した原子炉の定義は難しい」という。 「サイト内(原発敷地内)は収束したが、サイト外(敷地外)は別」(細野豪志・原発事故担当相)という政府の論法も、原子炉内部をだれも見たことがなく状況証拠でしかない。「収束」は、科学的根拠より、早期収束を印象づける政治判断を優先させたと言わざるを得ない。国民の生命、財産を守るはずの政府の姿勢としては疑問だ。 西沢俊夫・東電社長は16日の記者会見で「工程表終了は一里塚」と言ったが、目標設定を下げた「一里塚」には意味がない。政府は、廃炉終了まで東電を監視し、必要な情報を公開し続ける義務を負う。「収束」「冷温停止状態」などの言い繕いは要らない。誠実に「本当の収束」を目指すことが、今の政府と東電に求められている。 毎日新聞 2011年12月22日 0時42分 事故を収束させたい東電・政府にーーばかにするなと抗議殺到 (週刊金曜日ニュース) 2012 年 1 月 18 日 6:40 PM | カテゴリー: 政治, 社会 | by admin | タグ:事故収束宣言, 冷温停止, 原発, 東京電力, 福島第一, 細野豪志, 統合対策室, 西澤俊夫, 野田佳彦, 除染 野田佳彦首相が東京電力福島第一原発事故の「事故収束宣言」をした一二月一六日夜、東京・内幸町の東電本店で開かれた政府・東京電力統合対策室合同記者会見は、出席した記者らから批判や疑問の声が相次いだ。専門家や海外メディアからも批判や懐疑の声が上がり、細野豪志原発担当相は一八日、「表現が至らなかった」などと陳謝した。 細野原発担当相(環境大臣)は会見で、(1)冷温停止状態、(2)放射性物質の放出抑制、(3)冷却システムの中期的安定――の三点をもって「ステップ2の完了」を宣言し、「オンサイト(事故そのもの)は収束、今後はオフサイト(除染や賠償など)の問題に取り組む」とし、「統合対策室を廃止し、新たに政府・東電中長期対策会議を設置する。統合対策室としての会見は今回が最後」と説明した。 しかし、出席者からは「燃料棒がどこにあるかわからない状態で冷温停止と言えるのか」「放射性物質の飛散は続いており、住民が安全に戻れる状態ではない」「合同会見をやめるのは情報の隠蔽だ」などの発言が続いた。 合同会見終了について細野原発担当相が「マスコミから、もういいだろうとの声があった」と発言したことから、「マスコミとはどこか」と詰め寄られる場面も。また、会見開始から一時間二〇分ほどして細野原発担当相とともに東電の西澤俊夫社長も退席したことに、「なぜひと言も言わずに退席するのか!」「国民をバカにするな!」など怒号が飛び交い一時騒然となった。 同会見に出席した弁護士の日隅一雄さん、フリーの木野龍逸さん、おしどりマコさんらは同日深夜、自由報道協会で緊急記者会見をし、「『冷温停止』にもなっていないのに事故の収束を印象づけようとしている」として、政府・東電の無責任な姿勢を強く批判した。政府が重点を置いている福島県の除染について「放射性物質の線量はほとんど低下しない。除染作業者の被曝の危険性があるのに、強行する必要があるのか」(おしどり)、「除染で人が住めるようになるか疑問だ。政府や自治体ではなく、県を汚染させた東電がまず責任を取って費用を負担すべきだ」(木野さん)といった意見が相次いだ。 (本誌取材班、12月23日号) 徹底追及! 収束宣言の大嘘!冷温停止はしていない 「現代ビジネス 経済の死角」より 2012年1月13日フライデー 東電・政府はツイッターで報告された「上がり続ける蒸気」を無視するのか。他にも原子力安全・保安院も認めた「汚染水を運ぶホースに穴」や「1京ベクレル超の海への流出」など解決不能の問題が山積しているじゃないか 「政府は、原子炉が冷温停止状態になったということで事故の収束を宣言しましたが、いまだに原子炉の状況は正確に把握できていません。燃料が、圧力容器内にどれだけ残っているのか、格納容器内に落ちた燃料がどんな形をしているのか。何もかも分からない状態なんです。〝収束〟という言葉で事実をごまかしているだけで、現実は甘くありません」 元東芝の技術者で、福島第一原発の設計者でもある後藤政志氏は、こう言いきった。12月16日、東京電力は、福島第一原発1~3号機において、原子炉の内部が100℃未満になる「冷温停止状態」に至っていると発表した。それを受けた形で、野田佳彦首相(54)は、「原子炉の安定化」が達成されたとして、政府と東京電力が独自に作成した「事故収束に向けた工程表」の「ステップ2」の完了を宣言した。事実上、「福島第一原発事故の収束」を謳ったものだった。 ニューヨーク・タイムズ紙は、電子版記事で「事故に対する世論の怒りを鎮めるためだけの勝利宣言だ。誇張された印象を与える」と批判。また、CNNは「約半年間の原発の状況は基本的に変わっていない」と懐疑的な見方を示した。 東電は、現実に起きている危険の数々を無視した。実際には何が起きているのか、後藤氏らの分析を基に解説しよう。 溶融燃料の行方 後藤氏は、メルトアウトした核燃料について、こう指摘する。 「融けた燃料の現状を把握していない点が、大問題です。原子炉内の温度が100℃未満だといっても、見当違いの箇所を測定している可能性もあります。融け落ちた核燃料が格納容器のコンクリートを深く浸食して、冷却水と触れ合う面積が少なくなり、充分に冷却できていない可能性もあるのです」 |