2011年7月15日金曜日

目眩ましのストレステスト:ヤラないほうがましではありませんか。

 ストレステストのやり方についての見解が発表された。以下15日付けの毎日新聞JP.のニュースである。前回貼りつけた武田氏のストレステストについてのエッセイには若干、疑問点、不明な点があったが、以下のニュースで、このテストの何が問題なのかが明確になった。

要するに、ストレステストは「今日本に存在する原発はすべて安全である、だからこそみんな稼働が認められているのだ」という大前提に立って行われるものであり、この大前提を覆すようなテスト結果は原理的にありえないのである。

テストはそれら既存の原発がどれだけ安全か数値化するだけである。例えば津波についていえば、古い10年も前の土木学会の基準値に基づいて査定されるため、震災前のフクシマ原発もこのテストでは安全であるという結果になる可能性が高いという。

実施も、日本のテストは、他国の専門家を入れてチェックするEUのストレステストとは雲泥の差があり、ウソと隠蔽体質で凝り固まった、懲りないおなじみの面々が、国民を煙に巻くために時間と税金を投入して実施する目眩ましのテストにすぎず、気休めにもならないものであるということである。

安全委員会は国民にもっと分かりやすいものにと注文をつけたそうであるが、この期に及んでも電力会社の保護・安全を守ることに終始し、国民の安全を守るという視点には全く立っていないことは、明白である。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110716k0000m040111000c.html

原発:安全評価 機器の「余裕」調査 合格が前提に

経済産業省原子力安全・保安院が15日公表した原発の「安全評価」の手法は、地震や津波など原発の設計上の想定を超える状況で、基準に対してどのくらい余裕があるか安全性を評価するものだ。従来の安全審査では安全基準を上回るか否かが問われたが、東京電力福島第1原発事故を受け、保安院は「もともと安全は確保されているというのが前提。ただ、安全基準をぎりぎり上回っているのではないということを、テストで確認して安心していただく」と説明する。【足立旬子、岡田英、藤野基文】
保安院によると、通常の原発は設計時に安全性に「裕度」を見込んでいる。新たな安全評価は、機器などの健全性が保たれるレベルや、破壊される限界までの余裕がどれだけあるのかをみる。つまり安全基準を超えて設置や運転の許可を得ている原発が、どれだけ基準を超えているかの「程度」を数値で表すに過ぎない。さらに津波の高さの想定は02年に土木学会が示した基準を想定しているため、震災前の福島第1原発も「安全性がある」という評価になる可能性が高い。
具体的には、設計時などに想定した地震、津波で機器などにかかる力が計算され、ある材料にかかるひずみ量が求められる。
ひずみ量が大きくなると、材料は破壊される。一般に健全性が失われるひずみのレベルはその値より小さく、設計時の想定値はさらに小さい。それだけの余裕がなければ、そもそも原発の運転が認められないからだ。設計値を基準に裕度を測るため、結果として、安全評価をしても安全でないという結果は原理的に出ないということになる
定期検査で停止中の原発を「1次評価」、運転中の原発は「2次評価」と2段構えで実施することについて、報告を受けた原子力安全委員会で「違いが分からない」と不満の声が上がった。再稼働の可否を決める判断材料の1次評価では、福島第1原発事故で実際に起きた地震と津波などの複合事象を含めていないため、1次評価に加えることなどを修正したうえで再提出するよう求めた。班目(まだらめ)春樹委員長は「一般の人にも分かるよう説明資料をつけるように」と指示した。
保安院が参考にしたEU(欧州連合)のストレステストは、域内の143原発を対象とする。停止中と稼働中の原発は同じテストで、1次と2次に分けていない。また、事業者のテスト評価を各国規制機関が評価した後、さらに他の加盟国の専門家も招いた安全性の相互評価「ピアレビュー」を行う。これに対して、保安院案は事業者が1次と2次を評価したうえで、保安院がその手続きを評価。さらに内閣府安全委員会が確認する。再稼働の可否を判断するのは菅直人首相と3閣僚だ。
岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「2次評価は、ヨーロッパで行われているストレステストに近く、よく考えて作られている。ただ、1次評価は何のためにあるのか不明で、1次、2次に分ける理由が分からない」と指摘する。
毎日新聞 2011年7月15日 22時00分

Japanese Retirees : 原発行動隊の現地入りはどうなったのでしょうか。

 日本の60歳以上の原発の元原発関連の技術者集団がボランティアとして福島原発の収拾に名乗りをあげたという。現役の専門家は、事故以来、誰も進んで現場に入ろうとせず、今現場にいるのはやむを得ず収拾作業に当たっている東電社員の他は、子会社の専門性をもたない素人の作業員たちである。そんななか、被曝の影響が少なく、かつ専門的な知識を持ったリタイアした行動隊の存在は注目され、海外のメディアにまで取り上げられた。

さて彼らが、昨日フクシマの現場視察に入ったという報道があったが、その結果についてまだ何もはっきりとしたことが報道されていない。

まさかとは思うが、くれぐれもミイラ取りがミイラになるようなことがないことを願うばかりである。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201106/2011063000872

「福島原発行動隊」、始動へ=収束作業で現場視察-リタイア組400人志願

 福島第1原発事故の収束作業を志願している「福島原発行動隊」が7月中旬に現場の状況を視察することが決まった。元技術者らリタイア組約400人が参加を表明しており、政府や東京電力との打ち合わせ、1カ月程度の訓練を経て、「9月中にも作業に就きたい」という。
 同原発では、高い放射線量で被ばくする作業員が相次ぎ、人手不足が深刻化している。元技術者の山田恭暉さん(72)が「若い人よりも被ばくによる影響が小さいわれわれ引退組が作業に当たった方がいい」と呼び掛けたところ、6月末現在で、60歳以上の約400人が参加を表明したほか、約1200人が支援を申し出た。
 山田さんらは5月末、細野豪志首相補佐官(現原発事故担当相)や東電幹部と接触。細野氏らから「行動隊を受け入れたい」との意向が示されたため、志願者の経歴、能力を記載したリストを手渡したという。
 参院議員会館で30日に開かれた行動隊の説明会には、約150人が出席。山田さんは、元放射線管理士、元原子炉設計技術者ら計5人で7月中旬に現地に入り、同原発の吉田昌郎所長とも意見交換する予定であることを報告した。実際にどのような任務に就くかは視察を踏まえて検討するが、当面は原発周辺のがれきを重機で除去する作業などを想定しているという。
 奈良県生駒市から駆け付けたというプラント工事の元技術者(66)は「循環注水冷却の配管の水漏れは、完全な素人仕事。頭数だけそろえて素人ばかり集めたためだ。早く現場に入れるようにしてほしい」と話した。(2011/06/30-19:09)


http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-japan-nuclear-old-20110704,0,7843713.story


Japanese retirees volunteer to work in stricken nuclear plant

A pair of 72-year-old scientists, saying they have much to be grateful for and little to lose, have formed the Skilled Veterans Corps, enlisting volunteers willing to venture into the radioactive Fukushima Daiichi plant. Officials have accepted their offer.

They were two old friends catching up over coffee, retirees swapping stories and gasping at the unfolding nuclear nightmare at the Fukushima Daiichi power plant.

But instead of merely throwing their hands up over the disaster that shook the plant in the wake of the March 11 earthquake and tsunami, Nobuhiro Shiotani and Yasuteru Yamada, both 72-year-old scientists, decided they could do something to help.
They devised a plan that some have called heroic, others misguided and suicidal. They would enlist a small army of researchers and other skilled workers to come out of retirement to venture inside the radioactive plant and use their expertise to help stabilize its stricken reactors.

In early April, Yamada got on the phone to former colleagues and long-lost contacts. He wrote letters and emails, and joined Twitter to get the word out to 2,500 people. At last count, 400 men and women have signed up for the Skilled Veterans Corps: former electrical engineers, forklift operators, high-altitude and heavy construction workers, military special forces members, two cooks and even a singer who wants to help.

The youngest is 60, the oldest 78.

Many call the volunteers crazy, dismissing them as a Suicide Corps — an over-the-hill gang with a death wish. Others say that the effort should be left up to those who allowed the problem to occur — the plant's operator, the Tokyo Electric Power Co., known as Tepco. The group of skilled veterans, however, insists this is no pie-in-the-sky dream, but a plan based on real science, if not a bit of grim math.

They ask, why risk the health of the younger generation to perform such work in a perilous radioactive environment? Cells reproduce more slowly in the bodies of older people, they reason, so any cancer caused by absorbed radioactivity would take much longer to form.

Yamada says he'll be dead from something else long before any radiation-caused cancer can kill him.

"Young workers who may reproduce a younger generation and are themselves more susceptible to the effects of radiation should not be engaged in such work," said the retired environmental engineer and consultant. "This job is a call for senior citizens like me."

Volunteer Kazuko Sasaki, 69, said that when she and her husband told their son of their decision to join up, he just shook his head and said, "It's your life."

Friends have questioned her decision. "They say I have absolutely no idea what it's like to get cancer. It's a horrible ordeal. And I tell them that I could get cancer anyway, even if I didn't go."

Yamada and Shiotani, a retired physicist and chemist, felt personally responsible for the catastrophe at the Fukushima plant.

Even though neither had ever been to Fukushima, it was their generation that had applied its know-how to build the facility in the late 1960s and 1970s. They had also benefited greatly from the nuclear power it generated — which provided the heat and light necessary for their laboratory work, warming the bottles they fed to their children. Many people their age, they say, remain strong advocates for the future of nuclear power in Japan.

"This nuclear reactor was the brainchild of our generation," Shiotani said. "And we feel it's our job to clean up the mess."

The pair started a website for the Skilled Veterans Corps, which lays out its reasoning. Our generation, "in particular those of us who hailed the slogan that 'Nuclear Power is Safe,' should be the first to join," it says. "This is our duty to the next generation and the one thereafter."

Yamada and Shiotani have met with government and Tepco officials, who have given preliminary approval to enter the facility, which is off-limits to the public, to help design a replacement for the reactor cooling system that was knocked out by the tsunami. No date for entering the plant has yet been set.

In the coming weeks, the volunteers plan their first meeting to map out a strategy, and Yamada and Shiotani are continuing to talk with government and company officials about when they might go inside.

Government and Tepco officials did not respond to interview requests. At this point, officials are trying to enter the stricken reactors amid a hot radioactive environment to assess how to replace the plant's cooling system.

Yamada says he's nobody's hero, just someone trying to preserve youth in a country where roughly one-quarter of the population is 60 and older, making Japan one of the oldest societies in the world.

電力会社:「 鵺ぬえ」のような巧妙な金権体質

オール電化を謳い文句にしていた電力会社が、54箇所ある原発のうちの2箇所が止まってしまっただけで、全国各地で電力不足、節電が叫ばれている。

現在点検中で稼働していない日本全国にある数多くの原発は何も、今回の震災が原因で停止したわけではない。人災で壊れてしまったフクシマを除いて、震災後、危険性が認識され止められたのは中部電力の原発のみである。

それ以外は、震災があろうとなかろうと、もんじゅのように事故や故障で前から止めざるを得なくて止まっているものか、定期点検のために停止せざるを得ない原発のみである。

日本全国で節電を呼びかけなければならないような必然性は全くない。にもかかわらず、メディアは相も変わらず、熱中症と節電と原発事故後の電力供給の問題をあたかもセットのように論じ続けているのである。

熱中症の多くは、高温多湿の真夏にもかかわらず、子供たちを登校させ炎天下で部活の練習をさせ、それが忍耐力を培うには不可欠であるかのように続けられている指導体制の問題であり、加齢で脳の働きが衰えのどの渇きや、暑さを認識できない一人暮らしのお年寄りや、高齢者カップルの問題であり、暑さで体力が消耗しているにもかかわらず、大量のアルコールを摂取し、二日酔い状態で炎天下走りまわっている中年層の問題であり、酷暑が続けば、原発が止まろうが、動こうがそんなことには関係なく、熱中症患者は増える。

にもかかわらず、熱中症と節電と原発の必要性がセットで論じられるのはなぜなのか。
電力会社にとって、猛暑こそが、電力の必要性、原発の必要性を、国民に認識させるのは格好の宣伝材料となるらしい。

省庁に勤めている友人から昔、「東電の社員は、日本中で自分たち程偉い人間はいないと思っている、鼻持ちならない不遜な人々だ」と聞いたことがある。

東電に限らず、全国の主要電力会社の体質は大なり小なり同じであり、ヤラセメールや動員などは日常茶飯事で、利権を得るためならば、ウソでも隠蔽工作でも何でもこいといった一般常識とはかけ離れた非常識が平然とまかり通る世界であり、それをよいしょ、よいしょと支えているのが、保安院であり、安全委員会であり、組合票に支えられている民主党政権であり、交付金だの、献金だの、協力講座だの、接待だのによってさんざん美味しい思いをして骨抜きにされてしまった地元住民や、地元自治体の首長、自民党の政治家たち、御用学者やメディアであり、電力会社のおかげで巨額の利益を得ている金融機関や、原発に関連する様々な企業に属する人々、及びその株主たちである。

「原発がなければ、安定した電力供給が受けられない」というのが、最近の産業界に共通するご意見のようだが、エネルギー不足と叫ばれてきたこの数十年間の間、一向産業構造の変革も図らず、資源のない国が旧態依然として、エネルギー源を大量に必要とするような製品の生産、アメリカ型の大量生産によって多くの利益をあげようとしてきたこと自体に大きな問題があるのではないか。

本当に質の良いもの、その国の高い技術を持ってしか他で作れないものは、少数しか生産しなくても、高価格で販売し、高い利益を上げることができる。スイスの高級時計のように。

我が国の産業界は、わずかなエネルギーでも生産できる高い技術を必要とする新しい製品の商品開発や製造に力を入れず、一方では「ゴミを減らすべきだ」といいながら、他方では、必要以上の電気を使って広告業、製紙業、インク製造業、印刷業者などは、誰も読みもしないような無駄なダイレクトメールを毎日山のように大量生産し続けている。

石油製品を大量に作る化学会社は、仰々しい過剰包装に相も変わらず大きな貢献をし、これまた希少なエネルギーの無駄遣いをして、「際限のない無駄作り」を今なお飽きずに続けようとしているーーーそうしたことに対して、産業界は今こそ猛省すべきであり、方向転換すべき段階にさしかかっているという認識をもつことが大切なのではないだろうか。

以下はプレジデント ロイターからの転載である。日本の電力会社の 「鵺ぬえ」のような金権体質がよくわかる。

http://president.jp.reuters.com/article/2011/07/15/171DEACA-A7AF-11E0-A6F6-8B073F99CD51.php

原発新設の莫大なコストが莫大な儲けに直結

東電のウラ側、原発の儲かるカラクリ【3】

電力会社が原発推進のみに狂奔してきた背景には、それだけの資産を築き上げられた「料金制度」の仕組みがある。
福島の災厄にピリオドを打てぬ政府。だが、国の新たなエネルギー戦略案には、重要な柱の一つとして「原子力」が明記されている。なぜか──その謎を解くには電気事業法に加え、とある省令の掘り起こしが必要だ。

東京電力の総資産は、今年3月期現在で約14兆8000億円。前述の面々や金融機関、電力会社の株主を除けば、これを原発事故の補償や再生可能エネルギーの開発と市場拡張に注ぎ込むべきだ、と考えるのが常識的だ。
実は、電力会社がその選択肢を捨てて原発推進のみに狂奔してきた背景には、それだけの資産を築き上げられた「料金制度」の仕組みがある。
電力会社の“利潤”を決める「総括原価方式」とは……
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電力会社の“利潤”を決める「総括原価方式」とは……
電力は生活に必須のエネルギーゆえ、供給側の安定を図るとの名目で、投下費用を確実に回収できる「総括原価方式」(以下、総括原価)なる料金設定がなされている(右図参照)。その要は、膨大な数に上る経済産業省令の底に埋もれている。「電気事業法」を根拠法とする省令「一般電気事業供給約款料金算定規則」に記された計算式だ。
同規則第19条は「電力料金収入=総原価+報酬」となるよう規定している。「報酬」とは「利潤」のことだ。報酬額は、特定固定資産・建設中の資産・核燃料資産・特定投資・運転資本および繰延償却資産から成る「レートベース=原価」に「報酬率」を掛けて弾き出される。報酬率の計算方法は規則第4条が規定している。料金を値上げする際、電力会社は資源エネルギー庁に申請し、査定後の報酬率が次の改定時まで適用される。6月3日現在、電力会社全社の平均報酬率は3.05%。担当部局によれば、かつては報酬率8%前後の時代もあったという。
例えば、電力会社A社のある時期の報酬率が5%として、電気料金の請求金額が月1万円だとしたら、うち500円が電力会社の利潤だ。客から徴収した料金の合計は、儲けを含む総原価と同額ということになる。原子力発電所の建設コストの高さは他の電源の比ではない。仮に3000億円の原発を2基新設すれば、6000億円の5%=300億円の利潤を得られる。莫大なコストがそのまま莫大な儲けに直結するため、投資は洩れなく回収され、金融機関は際限なく融資する。社債発行による資金調達が容易にできるため、金融機関は電力債を特上で評価してきた。自民党政権下で原発の建設に拍車がかかったのも頷ける。電力会社お抱えの族議員も膨れ上がり、政・官・財・民・学・マスコミによる原発推進の一大シンジケートが完成した。
原発新設による高コスト体質の常態化と高い報酬率は、主要先進国の1.5~2倍に電気料金を押し上げ、電力会社は巨万の富を手にする。ほとんどの国民は、その内外価格差を知らない
しかし、その勢いは90年代の電力自由化論議と先進諸国との内外価格差問題で失速する。料金値上げは限界を超え、燃料費も高騰し、自由化の動きへの牽制も必須となった電力会社は、高コスト路線からコスト削減路線へとシフトしていく。当時5%台に下がっていた報酬率は、その後も4%台から3%台へと下げざるをえなくなる。
そこで、電力会社はどうしたか。膨大な費用を投じた既存原発の稼働率を上げ、その「元を取る」形で実質的な利益の低下に歯止めをかけ始めたのだ。基準コストを料金設定の査定に反映させ、低コスト実現に超過利潤を認める「ヤードスティック方式」や、原油価格上昇などをヘッジする「燃料費調整制度」が新設されたのも95年である。

原発新設の莫大なコストが莫大な儲けに直結

東電のウラ側、原発の儲かるカラクリ【3】

電力会社が原発推進のみに狂奔してきた背景には、それだけの資産を築き上げられた「料金制度」の仕組みがある。

原発優先で稼働率を上げれば、自動的に他の電源の稼働率は落ちる。発電能力に余力を残したまま休眠する火力発電所が増え、動いている火力も低稼働に抑えられるのは、こうした経緯と事情に影響されている可能性が高い。
巨大市場への可能性に満ちた再生可能エネルギーは、「政策誘導と電力会社の協力で広がる市場」を起点に始まる産業である。公共的使命があるからこそ、民営化以降も総括原価と莫大な財政支出で守られてきた電力会社が、国民の期待と利益を無視して飽くなき利潤追求に奔走すれば、国民に「安全で廉価なエネルギー」が届くはずもない。低コスト電源は、総括原価で利潤を上げてきた電力会社の儲けには役立たなかったはずだし、原発の稼働を高めてそのコスト低減を図らなければ都合が悪い時代に他の電源の稼働を上げるのは、電力会社にとって得策ではないからだ。
電力会社が原発にこだわるのは結局、総括原価と原発が金儲けの切り札だからだ。そして経営環境の変化に応じて、事故前までは原発の稼働率向上で儲けを維持しようとしてきたのである。しかし、総括原価そのものに問題があるのではない。「公共の立場として責任がある身ゆえ」と国民に語りかけて補助金や制度上の特別保護を受ける身でありながら、他方では、「とはいえ民間企業ですから、普通の企業と同様、金儲けもさせていただかねば」と、まるで“鵺ぬえ”のような処世を恥じないことが問題なのである。その巧妙さが結局「嘘と隠蔽の体質」を深めてきた。今回の事故も、そうした金権体質に起因しているのではないか。