ストレステストのやり方についての見解が発表された。以下15日付けの毎日新聞JP.のニュースである。前回貼りつけた武田氏のストレステストについてのエッセイには若干、疑問点、不明な点があったが、以下のニュースで、このテストの何が問題なのかが明確になった。
要するに、ストレステストは「今日本に存在する原発はすべて安全である、だからこそみんな稼働が認められているのだ」という大前提に立って行われるものであり、この大前提を覆すようなテスト結果は原理的にありえないのである。
テストはそれら既存の原発がどれだけ安全か数値化するだけである。例えば津波についていえば、古い10年も前の土木学会の基準値に基づいて査定されるため、震災前のフクシマ原発もこのテストでは安全であるという結果になる可能性が高いという。
実施も、日本のテストは、他国の専門家を入れてチェックするEUのストレステストとは雲泥の差があり、ウソと隠蔽体質で凝り固まった、懲りないおなじみの面々が、国民を煙に巻くために時間と税金を投入して実施する目眩ましのテストにすぎず、気休めにもならないものであるということである。
安全委員会は国民にもっと分かりやすいものにと注文をつけたそうであるが、この期に及んでも電力会社の保護・安全を守ることに終始し、国民の安全を守るという視点には全く立っていないことは、明白である。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110716k0000m040111000c.html
原発:安全評価 機器の「余裕」調査 合格が前提に
経済産業省原子力安全・保安院が15日公表した原発の「安全評価」の手法は、地震や津波など原発の設計上の想定を超える状況で、基準に対してどのくらい余裕があるか安全性を評価するものだ。従来の安全審査では安全基準を上回るか否かが問われたが、東京電力福島第1原発事故を受け、保安院は「もともと安全は確保されているというのが前提。ただ、安全基準をぎりぎり上回っているのではないということを、テストで確認して安心していただく」と説明する。【足立旬子、岡田英、藤野基文】
保安院によると、通常の原発は設計時に安全性に「裕度」を見込んでいる。新たな安全評価は、機器などの健全性が保たれるレベルや、破壊される限界までの余裕がどれだけあるのかをみる。つまり安全基準を超えて設置や運転の許可を得ている原発が、どれだけ基準を超えているかの「程度」を数値で表すに過ぎない。さらに津波の高さの想定は02年に土木学会が示した基準を想定しているため、震災前の福島第1原発も「安全性がある」という評価になる可能性が高い。
具体的には、設計時などに想定した地震、津波で機器などにかかる力が計算され、ある材料にかかるひずみ量が求められる。
ひずみ量が大きくなると、材料は破壊される。一般に健全性が失われるひずみのレベルはその値より小さく、設計時の想定値はさらに小さい。それだけの余裕がなければ、そもそも原発の運転が認められないからだ。設計値を基準に裕度を測るため、結果として、安全評価をしても安全でないという結果は原理的に出ないということになる。
定期検査で停止中の原発を「1次評価」、運転中の原発は「2次評価」と2段構えで実施することについて、報告を受けた原子力安全委員会で「違いが分からない」と不満の声が上がった。再稼働の可否を決める判断材料の1次評価では、福島第1原発事故で実際に起きた地震と津波などの複合事象を含めていないため、1次評価に加えることなどを修正したうえで再提出するよう求めた。班目(まだらめ)春樹委員長は「一般の人にも分かるよう説明資料をつけるように」と指示した。
保安院が参考にしたEU(欧州連合)のストレステストは、域内の143原発を対象とする。停止中と稼働中の原発は同じテストで、1次と2次に分けていない。また、事業者のテスト評価を各国規制機関が評価した後、さらに他の加盟国の専門家も招いた安全性の相互評価「ピアレビュー」を行う。これに対して、保安院案は事業者が1次と2次を評価したうえで、保安院がその手続きを評価。さらに内閣府安全委員会が確認する。再稼働の可否を判断するのは菅直人首相と3閣僚だ。
岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「2次評価は、ヨーロッパで行われているストレステストに近く、よく考えて作られている。ただ、1次評価は何のためにあるのか不明で、1次、2次に分ける理由が分からない」と指摘する。
毎日新聞 2011年7月15日 22時00分
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