前回公開された、原発人災発生直後の3月11日と12日の画像は、音声が消された上に、編集でつぎ合わされた証拠隠滅の跡が見え見えのひどい代物であった。これを、「記録」として、堂々と公開する東電の自己保身しか頭にない姿勢にはあきれ果てるし、国有化され、もはや国民の共有財産となった東電が、国民に対して情報すらまともに開示しないとは、一体何を履き違えているのかと言いたくもなる。
想像もできないほど大量の放射性物質をまき散らされたせいで、美しい日本の大地や水や空気や農作物、水産物は瞬時にして放射能まみれになったし、計画停電のおかげで、国民生活は著しい被害を被った。フクイチの原発災害のせいで、東北は3県は津波被害からなかなか立ち直れず、1企業が国民全体の生活や健康をここまで脅かしたことはないというほどの大それた人災を引き起こしながら、こんな企業がまだわがもの顔で首都圏の電力の地域独占を続け、ぼんくらで尊大な東電役員の高い給料や原発訴訟に対抗する顧問弁護団に対する費用までもが、今や国民の負担となってのしかかっているのである。
古賀茂明氏はブログに次のように書いている。
古賀茂明氏のブログより
東電国有化の意義。国有化で、東電は、所管官庁である経産省の支配下に入りました。枝野経産大臣は、東電に、福島第一原発事故後のテレビ会議映像をすぐに全てホームページに公開しなさいと指示できます。嫌だと言ったら、社長を替えればいいだけです。枝野さん、今すぐ、広瀬社長に電話して下さい。2012年10月7日 - 22:17 · 詳細
会社が国有化した時点から、東電のテレビ会議のビデオ記録は、国の共有財産になったはずである。それを一企業の恣意で自由に編集させていること自体が問題である。うかうかしている間に、我々は東電のビデオ編集の費用まで支払わされているのである。
経産相は東電にビデオ公開を命じることができるはずであるにもかかわらず、それをやらずに、黙って見ている理由は何なのかを国民はしっかり考えるべきである。
以下双葉町での災害直後の高線量が、1年半もたってから、小出しにひっそり発表されたが、政府の意図的な情報隠しは一体どこまで続くのだろうか。
前代未聞のでたらめ独裁政権も、原発処分に手をつけない限りは、財界や大型メディアの批判を受けず、手厚く守られるということらしい。
福島県民の訴えでようやく検察が重い腰を上げたようだが、まだ立件できるか可否を判断する前段階であるという。これほどの大きな人災を引き起こしながら、誰も司直の手で裁かれないなどというようなことが、法治国家において許されてよいはずはない。
この災害の被害者は福島県民だけではない。長年騙され続け、少数の人間の既得権益のために大きなつけを回された原子力ムラに加担しない国民全体が、実に大きな被害を被ったのであるから。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20121003153317702
福島・双葉町の高線量 1年半後に発表のナゾ
北陸中日新聞 2012年10月3日朝刊
集団避難し、さいたまスーパーアリーナに入る福島県双葉町の住民ら=昨年3月19日、さいたま市中央区で
毎時1.59ミリシーベルト−。昨年3月12日、東京電力福島第1原発1号機建屋の水素爆発直前、福島県双葉町で年間の許容被ばく線量をわずか1時間で突破する放射線量が観測されていた。この数値を同県が発表したのは、民主党代表選のあった先月21日。なぜ、発表までに1年半もかかったのか。 (林啓太)
「こんなに高い数値が出るとは思わなかった。本当かと思った」。福島県原子力センターの安江高秀所長が振り返る。
福島県飯舘村長泥地区にある放射線量のモニタリングポスト=今年2月
昨年3月12日の午後2時から1時間に毎時1.59ミリシーベルトを観測したのは、双葉町上羽鳥に設置されていたモニタリングポスト。東日本大震災で通信回線が途絶したが、線量を記録したメモリーカードは昨年5月、原子力センターの職員が回収していた。
ところが、メモリーカードは1年以上「放置」された。同センターでコンピューターを使った解析作業が本格的に始まったのは、今年7月。解析された数値が、データの公表などを担当する県災害対策本部に送られてきたのは「8月中旬−下旬ごろ」(災害対策本部担当者)だったという。
安江所長は作業が遅れた理由について「現在進行形の線量の情報を把握することを優先した」と説明する。福島原発周辺には23台のポストがあったが、いずれも震災で故障し、その復旧に労力を集中したという。
メモリーカードを情報解析できる専門知識を持った職員は4人いるが、安江所長は「他の業務でも核になって働く人材たちで、事故前のデータの解析に回す余裕はなかった」と釈明する。
法で定められた一般の人の被ばく線量限度は年間1ミリシーベルトで、毎時1.59ミリシーベルトの数値はこれをわずか1時間で突破する。1号機の爆発は午後3時36分で、直前には放射性物質が漏れ出していた証左とみられる。
古川路明・名古屋大名誉教授(放射化学)は「当然、ただごとではない数値。付近にいた人は慎重に健康面の経過を観察していく必要がある。現場が忙しかったとはいえ、問題意識を持ってすぐに解析に取り掛かるべきだった」と話す。
災害対策本部の遠藤光義主幹は「結果として公表が遅れて申し訳ない」と謝罪する。それにしても、1年半も解析の作業が遅れた理由は「現場の忙しさ」だけなのか。
安江所長は「業務の優先順位は、災害対策本部と相談しながら決める」と語る。その災害対策本部の担当者は「データを公表する前に、(国が所管する)現地のオフサイトセンターに報告した。しかし、公表するか否かについて、国が指図することはない」と言う。
しかし、古川名誉教授は「国には、あまり線量のことを大げさにしたくない雰囲気があった。今回の数値は人前に出すと大騒ぎになる数値。発表を遅らせる、という最悪の判断が働いたのではないか」といぶかる。
京都大原子炉実験所の小出裕章助教も「放射線量の観測は人命を守るためにやっている。過去の観測結果はすぐに公開するのが筋で、福島県はあまりに無能だ。国が都合の悪い情報を隠そうと県に圧力をかけた可能性も否定しきれない」と語りつつ、そう疑う根拠をこう端的に言い切った。
「福島原発事故後の東電や行政の対応を振り返れば、情報統制のオンパレードだった。本当にひどい国だと思う」
http://www.asahi.com/national/update/1005/TKY201210040725.html
http://www.asahi.com/national/update/1005/TKY201210040725.html
東電、会議の録画映像を検察に提出 原発事故めぐり
東京電力福島第一原発の事故をめぐり、東電が震災発生後の社内のやりとりを収めたテレビ会議の録画映像などの関係資料を、検察当局に任意で提出したことがわかった。検察当局は映像などの分析を踏まえて関係者の事情聴取を進め、東電幹部や政府関係者の業務上過失致死傷容疑などについて、今年度中にも立件の可否を判断する模様だ。
関係者によると、検察当局の要請に応じて東電が提出したのは、録画映像のほか、政府や国会の事故調査委員会に出した資料だという。録画には第一原発と東電本店の間のやりとりなどが記録されており、映像や音声の一部が加工処理されたものが報道機関にも公開されている。
捜査の主体は東京、福島両地検で、他の地検などから応援検事を集めて態勢を強化している。告訴・告発したのは福島県内の住民などで、東電幹部や政府関係者が地震や津波の危険性が指摘されていたのに、安全対策を怠ったなどと訴えている。業務上過失致死傷のほか、震災発生直後に適切な応急措置を取らなかったとする原子炉等規制法違反などの容疑でも告訴・告発されており、震災後の対応も捜査の焦点となる。