いずれの場合も、諸悪の根源は、霞が関官僚の天下り制度にあることは自明であり、それこそ、民主党政権がマニフェストの中で、高々と掲げていた目玉の一つではなかったのか。
ところが、野田政権になってからは、増税と復興の掛け声しか聞かれない。そして、増税をしないという公約を破ったということばかりがクローズアップされているが、天下りの「あ」の字も出なくなってしまったことが、もっと致命的かつ大きな問題なのではないか。
天下りの悪弊に歯止めをかける制度改革への意欲・姿勢の片鱗すら見えない民主党政権には、もはや何の存在価値もない。むろんこれまで、天下り制度を温存し続けた自公政権も同罪であるが。。
政治家や官僚の失政や、天下りがあけた大穴など、不始末の尻拭いのたびに、増税をされていたら、この国のふつうの真面目な国民は、全くたまったものではない。
政治家であれ、官僚であれ、国の政策決定に携わる人間の個人責任を厳しく問うことができるような法改正も必要不可欠である。
本来責任を負う覚悟すらないような人間が国政など担うべきではない。「個人責任を負わなきゃいけないなんていわれるんだったら、やってられないよ」と考えるような無責任な官僚や政治家は、断じて国政など担う資格はないし、そういう了見の方々には、ただちに自主的にご退場頂ければいいのではないか。ただでさえも定員削減が叫ばれているのだから。
政府の原発事故対策関連会議で議事録をとらなかったという由々しき問題が露呈したが、国の指針や政策決定が行われる場が、誰も責任をとらなくても済まされるような緊張感のない、馴れ合いの職場と化してしまっているからこそ、ケアレス・ミスなどと軽くは済ませられない、決してあってはならない事態が生じたのである。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20120305dde001020018000c.html
AIJ企業年金消失:旧社保庁OB600人、500厚生年金基金に天下り 7割、運用責任者--05年
投資顧問会社「AIJ投資顧問」の企業年金消失問題に絡み、旧社会保険庁(現日本年金機構)幹部23人の厚生年金基金への再就職が判明したが、ノンキャリアを含めると05年当時、全国約500の厚生年金基金に600人以上の同庁OBが天下っていたことが、毎日新聞の入手した資料で分かった。その約7割は資産運用の責任者を務める常務理事だった。AIJは同庁OBのネットワークを営業に利用したとされ、小宮山洋子厚生労働相は実態を調査する方針を示しているが、その大枠が判明した。
社保庁OBらでつくる親睦団体が05年12月に作成した内部資料を毎日新聞が入手した。
05年度末時点で厚生年金基金は全国に687あったが、内部資料によると、このうち約500の基金に旧社保庁職員600人以上が再就職。その約7割が、通常は基金の運用責任者を務める常務理事、約2割は事務長や事務局長で、複数のOBが同じ基金に再就職していたケースもあった。
厚労省は、天下りの社保庁職員が退任した後は公募に切り替えるよう厚生年金基金に指導しているが、強制力はなく、現在も相当数のOB職員が在籍しているとみられる。
AIJの企業年金消失問題では、10年度末時点で同社に運用委託をした企業年金84基金のうち74基金が厚生年金基金だった。また、99~10年に旧社保庁幹部23人が全国の厚生年金基金の常務理事などに就いていたことが明らかになっている。
旧社保庁職員は資産運用経験がない場合がほとんどとされるが、中小の同業者でつくる「総合型」の基金では年金の実務や制度に詳しい人材が必要になるため、運用経験が乏しくても旧社保庁OBに頼らざるを得ない面もあったとみられる。【石川隆宣、松田真】
毎日新聞 2012年3月5日 東京夕刊
厚生年金基金:運用経験者ゼロ、8割 知識不足浮き彫り
全国595の厚生年金基金(昨年3月末時点)のうち、資産運用経験を持つ役職員のいない基金が8割に上ることが厚生労働省の調査で分かった。投資顧問会社「AIJ投資顧問」の企業年金消失問題では、運用知識の乏しい基金が高利回りを求めて同社に駆け込んだとされる。
調査は昨年2月、資産規模に応じ100基金を抽出した。調査によると、運用経験者を役職員に採用していない基金は全体の79%。中小の同業者らでつくる「総合型」は82%に達した。同省は指針で、同基金の役職員には投資理論、資産運用への理解に努めるよう求めている。だが、現実は旧社会保険庁から天下った元役人ら未経験者が役職に就く例も多い。【鈴木直】
毎日新聞 2012年3月3日 東京朝刊