2012年12月1日、kinkin.tv 愛川欽也「パックインニュース」の小出さん出演部分を文字起こししました。
前半と後半に分けて文字起こししています。今回は後半です。
▼出演者
司会:愛川欽也
ゲスト・小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
山田厚史(ジャーナリスト)
樋口恵子(評論家)
内田 誠(ジャーナリスト)
升味佐江子(弁護士)
横尾和博(社会評論家)
▼文字起こしは以下。
◆愛川
まああの小出先生のお話を聞いていると、よくこの頃ね、もう選挙ももうすぐ始まりますが、なんかこうちゃんと原子力安全委員会みたいなところが大丈夫、で、やるだけのことをやって安全性を確保出来たら。
確保出来るって言っちゃうんですからね、政治家って人は。
そしたらそれは運転してもいいんじゃないかってこと言ってますね。
小出先生から見て、これは福島でここはもう完全に使いものになんないけど、あと51基ぐらい、今1基しか動いてないんですけどね、
これも強引に動かしたみたいですけども、大飯を(2基ですね)。
これで、ほかは今止まっているんだけど順を追って動かしたいらしいんですよ。
そのときにそういう人たちがまずまずの安全性を確認したと言うことを言うらしいんですけど、こういう話を聞いてて、小出さんがまあ原子力の学者としてこう見てらしてどう思いますか?
◆小出
この福島の原子力発電所も彼らは安全性を確認したと言って動かした!そうです。
東京電力も安全だと言ったし、国もその東京電力の言っている主張を調べて、ちゃんと安全性を確認したと言って許可を出した原子炉が今こういう状態になっている、のです。
それとそういう許可を出した人たちと同じ人たち、私は原子力ムラという言葉で読んできましたけれども、そのムラというものがまったく無傷のまま生き延びていまして、まあ組織はだいぶ名前が変わったりして、今は原子力規制庁、原子力規制委員会とかなっていますけれども、やってる人はみんな一緒なんですね。その人たちがまた安全性を確認して動かすというようなことを言ってるわけですけれども、皆さん、ちゃんと事実をまずは見てくださいと私はお願いしたいと思います。
◆山田
でも、先ほどの使用済み燃料の問題なんですけども、例えば4号機っていうのは今非常に不安定な状況で、まあその柱が付いて大丈夫だと言っているけれども、グラッと来たら分かんないですよね。
で、ちょうど3.11の後、あの年末かなんかにあのディスクローズされたんですけれども、あの時に一番大変なことが起きるのだったら首都圏の3〜4千万人がみんな避難しなきゃなんないんだっていう状況があったんだっていうことを12月頃になってこう表に出てきたんですけどね、今はそういう状況になるっていうことは絶対もうないような安全になっているんですか?
さっき伺ったらあのガラガラと使用済み燃料が落っこっちゃったらですね、相当なことが起きるんじゃないかと思うんですけど、その辺はどうなんでしょうか?
◆小出
もちろん起きるのです。
ですから去年の事故の直後に、え〜原子力を進めてきた人たちも4号機の使用済み燃料プールが倒壊するようなことになったら大変だということに気が付いて、すぐに評価をしているのですね。
原子力委員会の近藤駿介さんという委員長を中心として評価をして、もし4号機の使用済み燃料プールが倒壊するようなことになれば、燃料がまたそこで溶けて、膨大な放射性物質が吹き出してきて、東京を含めてもう避難をせざるを得なくなるという、そういう報告を彼らが作ったのです。
その状況は今でもまったく変わっていませんので、もしそこにある使用済み燃料プールが今でも毎日あるような余震、次に大きな余震が来て崩れ落ちるようなことになればもちろんその可能性はあるのです。
ただし、運なのです。
要するに放射能が吹き出して来てしまえば、後は風に乗って流れるだけなので、風が太平洋に向かって流れて行ってくれれば東京は助かるかもしれないし、北風が吹いていれば東京はやられるということになります。
◆樋口
その風に乗って流れて行って、それで実はあのう原発の恩恵なんか何にも被ってなかった福島県の飯館村なんてところがほとんど全村帰れないような状況でいますね。
あれいったいいつになったら本当に帰れると思って希望を持っていいんでしょうか?
◆小出
え〜、帰れません。
◆樋口
帰れませんですか?
◆小出
はい。
え〜、今、日本の政府、あるいは原子力をこれまで進めてきた人、そしてこれからも進めようとしている人たちは、除染をすれば帰れるというようなことを言って人々に幻想を持たせているのですが、飯館村を含めて猛烈な汚染は今しています。
日本は法治国家と言われて来ましたが、その法治国家である日本がもし自分が作った法律を守ろうとするのであれば、放射線の管理区域という場所に指定して、私のような極々特殊な人間しか入ってはいけない、でもその私のような特殊な人間が入っても水すら飲んでもいけないというそういう場所に指定しなければいけないほどの汚染、それの10倍汚染しているんです、飯館村などは。
え〜到底帰れないと私は思いますし、たいへんお気の毒で私は言うのも辛いですけども、やはり帰れないということをしっかりと国として伝えて、早く飯館村が再建出来る、その場所ではない、残念ながらその場所ではないけれども、コミュニティごとどこかに移動して、そこで新たな飯館村を作るというそういう作業を早く始めるべきだと私は思います。
◆愛川
このね、そんな危険な原発がまだあちこちにあって、おっしゃった通り風の吹くままみたいで風が太平洋に向かって吹けば東京は大丈夫だっていうような、偶然のなんかことを頼りに原発をあっちこっちでこれから動かしていくと、その今の原子力規制安全委員会、ここがOKとしたならばということを言ってるし、私たちの頭の中でもとりあえず俺んとこは大丈夫なんだということを言ってるんですね。
こういうことを言ってる人たちに対して、小出さんはとんでもない奴だと思いませんか?
◆小出もちろん思います。
え〜どこか町のですね小ちゃな工場が例えばなんか事故を起こして、毒物をどこかに流したというようなことになれば、すぐに警察が踏み込んでそこの人たちを逮捕して、刑事罰でも何でも加えると私は思いますけれども、今この福島の事故が起きて、猛烈な放射能が東北地方、関東地方の広大なところに降り注いで、人々を苦しめている。それでも誰も処罰されないんですね。
東京電力の会長、社長、これまで原子力を進めてきた原子力委員会、原子力安全委員会、政府の人たち、誰一人として処罰もされないと、たいへん不思議なことだとそれだけでも思いますし、その人たちが未だに原子力の実権を握っていて、相変わらず安全性を確認したら動かしますと言っているわけで、私の常識からすれば到底信じられないことが起きています。
◆内田
ちょっと戻るようで申し訳ないんで二つお聞きしたいんですけど、あの〜4号機の使用済み燃料プールがもし崩壊した場合ですね、1号機から3号機は今注水循環冷却なるもので溶けたメルトダウンしたものを冷やして、また水を回収するということをやってますよね。
これがいったいどうなるかっていうことと、もう一つはさっき石棺というものをおっしゃいましたけど石棺を作るという方針ではないですよね、今のところ。
それから地下ダムの問題もあって、実際抑えるという正しい方向に今の日本政府は向かっているかどうかということについていかがですか?
◆小出
え〜4号機の使用済み燃料プールが倒壊したときに、実際どんなことが起きるかということは、なかなか正確に予測できないです。
でも、本当に使用済み燃料の中に含まれている放射性物質が全量出てくるようなことになれば、もうもちろん福島原発の中に、敷地の中に人が止まることはできませんから、全員が撤退すると。
つまり1号機から3号機で今事故収束というか、なんとか放射能が出てくることを食い止めようとしている作業すらを全て放棄するしかないと思います。
もうそうなれば放射能が出るに任せるということになってしまうと思います。
それから石棺のことに関しては、え〜現在政府あるいは東京電力が描いているやりかたというのは、私が先ほど石棺を作るだろうと言ったこととはちょっと違うのです。
そのやりかたというのは、まずは使用済み燃料プールの中の使用済みの燃料は、とにかく安全な場所に移そうというのは私といっしょです。
たぶんそのために10年あるいは20年かかると私は思います。
そのあとで彼らは、溶け落ちてしまった炉心をまたつかみ出したいと言っているのです。
でも、私はたぶんそれはできないと思います。
それをやろうとするとまた猛烈な被ばくになってしまいますし、たぶんできない。
できない以上は私は石棺を作るしかないと思っているわけですし、今内田さんおっしゃってくださったように地下に遮水壁というものを張り巡らせて、地下水と接触しないようなこともやらなければいけないと思います。
でもまあ政府のほうがそうではなくて、とにかく全部つかみ出すというのが政府の計画でそれをもし本当にやることになれば、20年、30年あるいは40年、もっと長い時間が結局かかっていくだろうと思います。
◆愛川
じゃそのつかみ出して今小出さんもどこか安全なところにそれをって、その安全なところってどこですか?
◆小出
ないんですね。
少なくても、でも、そこの使用済み燃料プール4号機のは、もう建物地震が崩れようとしているのですから、まずそこからは出さなくてはいけないということになっているわけですね。
手前の右下のほうにあるのが、共用の使用済み燃料プールという建屋なんですが、そこには今あのう建屋自身倒壊していないし、まだ少し健全な形のプールがありますので、そこに多分まずは移すことになると思います。
でも、最終的にこれから何十年、何百年、毒性が消えるまで100万年という毒物ですので、本当にどうすることが安全なのか、それすらが分からないということです。
◆愛川
よく言うのがね、つまりまあ日本はこうやって止めてもいいけど、よその国はどんどん作っているじゃないかと。
で、そういうことなんだからこっちも造っていないとということを言う人たちは、ここに一体安全の根拠はどこ行っちゃったのかと僕なんかは見ていると思います。
だけど、普通の人はそういうことなんだよねでそこで終わっちゃうんですね。
そういうところで終わっちゃうところを見て、小出さんから見ててやっぱ僕らはメディアから教わるわけですね。
日本の、こういうこと言っちゃなんだけど新聞とかテレビとか見てて、あのイライラしませんか?
◆小出
んふっ…。
◆愛川
ごめんなさいね。
◆小出
たいへんイライラします。
◆愛川
あのね、僕もね、つくづく思うんですよ。
我々の知恵なんて本当にタカが知れているんで、小出さんにお話を聞いて、もう〜ですから1年ぐらいですかね、あのう前に来てもらって。
で、その時から小出さんは、その前に来た時も大体同じ様な話しを聞かせてもらったんだけど、つまりこれをどういう風にして私たちは、これをなくすのは、それはまあ、毎週金曜日には首相官邸の周りをね、大勢の人たちが行進して、そういう意思表示はしているけれども、近頃新聞にも写真も載らなくなっちゃったけど、そういうのが実際にしかし本当に怖いんだぞっていうことを、今まで安全で安くて怖くなくて、もう一回、プルサーマルなんてもう一回使えるって、いつまでも使える燃料だなんて滅多にないよということで騙され続けた私たちが、この〜目を覚ますには、小出さんはそういう仕事をしていらっしゃらないんだけど、どうしたらいいと思いますかね?
しょっちゅう小出さんにきてもらうしかないかな。
◆小出私はもちろん原子力の専門家として、自分の知り得たことを皆さんにお伝えするというのは私の仕事だと思っていますので、今日もこうやって愛川さんに呼んで頂いてたいへんありがといことだと思っています。ただし、日本の報道全体で言えば、この場所が非常に特殊なのであって、ジャーナリズム全体は、これまでも国家、あるいは経済界、大きな企業と一体になって、え〜原子力を進めるということもやってきたわけですし、原子力の持っている危険性なんてものは、一切報道しない。大丈夫なんだ、いいもんだと、いうことでしか来なかったわけで、私はたいへんこれまでもイライラするというか悲しい思いできましたし、え〜、これからもきっとそうなんだろうなと半ば、半分諦めています。
◆愛川
これ、こういうこと?
◆山田
確かにね、運次第なんですよね。
運が良ければ、本当にうま〜く渡っていければ、何もなくて取り出して20年かけて処理出来るかもわかりませんけれども、そんな保証はないですよね。
ガラガラガラときて、4号機のとこにある使用済み燃料が下に落ちただけで、もう日本は事実上もう、政治的にもパニックになるのは間違いないでしょうね。
◆小出
もちろんそうですね。
◆山田
そういうリスク、俺たちには隣り合わせで生活しているってことじゃないですか。
◆小出
そうです。
未だにそうであって、事故が収束したわけでもなんでもないということはまず皆さん承知しておいて頂かなければいけません。
そして仮に崩れ落ちなかったらいいのかって言えば、そうではないのです。崩れ落ちなかったとしても、放射能は消えずにそこにある。
どこかに移さなければいけないし、それを10万年、100万年、これから閉じ込め続けなければいけないというようなものを、私たちがずうっと原子力を選択することで作って来てしまったという
◆横尾
それは福島だけでなく、今出てる核のゴミもですよね。
◆小出
そうです。
◆横尾
また、ほかの原発から出たゴミも含めて地層処理としても、何万年も何十万年というリスクを負わなければいけないということですね。
◆小出
そうです。
これまで日本では、原子力の電気が一番安いとかこれやらないと経済が立ち行かないとか言いながら、50基を越える原子力発電所を造ってしまったわけですが、それが今日まで生み出して来た核分裂生成物は、広島原爆がバラまいた核分裂生成物の120万発分。
◆横尾
120万発分作っちゃったのか。
◆小出
これをこれから10万年、100万年どこかで閉じ込めなければならない。
私たちが享楽的な生活を何十年かしたかもしれませんけども、子々孫々ゴミだけを押し付けることになる。
◆愛川
それでね、これはもう地震でぶっ壊れちゃったんだけども、そうじゃない奴でも、原子炉というもうつくっちゃったやつはね、現にもうスタンバイしているわけです。
もう早く動かしたくてうずうずしている人たちがいっぱいいるんですね。
動かしたとして、その普通にね、地震も無くて、風もそよがないで、寿命っていうのもあるでしょ?
◆小出
もちろんあります。
◆愛川
それはどのくらい?
◆小出
元々は40年だと思ってきたんですね。
ただ要するに人類が経験したことのない機械を今動かしているわけで、本当に何年持つかわからなかった。
とりあえず40年だろうと思ってやってきたわけですが、え〜、敦賀とか美浜とかいう原子力発電所も既に42年経っているわけですね。
そこに構造物としてまだあるわけだし、機械として動きそうだから、まだこれから10年、20年動かし続けたいということで、これまできていたのです。
で、福島の事故が起きて、やはりそれはまずいだろうということで、40年を限度にしようという案も出てはきていますけれども、でも特例として、またさらに10年、20年の運転を認めてもいいというようなことまで、もうすでに言われているわけですから、寿命はもっと長くされてしまうこともあると思います。
◆愛川ただ、原子炉ってのは、その、僕らが便利になっちゃっているクルマだとか汽車だとかなんだとかは、事故があって、その事故があって、そこは綺麗に片付いて、犠牲者は出ますけど、そこで終わるんですね、一応。コイツばっかりは終わりがないですね、これは。
◆小出
そうです。
これはもう事故でたまたまこんな形になってしまっていて、これから何10年何100年苦闘が続くのか、私にはわかりませんが、事故を起こさなかったとしても、もう放射能まみれになってしまった原子炉がそこに残ってしまう。
◆愛川
なにも言えなくなっちゃうね。
◆山田
原子炉の問題って、なんか経済性とかですね、安全保障とかそういうことで語られるんですけど、倫理的にやっぱり、相当問題な、やっぱり装置ですよね
◆小出もちろん安全性に問題性があるからこそ原子力発電所だけは東京に建てなかったんですね。
まあ石原さんが東京に建てろとおっしゃってるけれど、是非建てて欲しいと私は思います。
◆愛川
本当ですね。
だから、私たちやっぱりもう一回こんなにねあっという間に熱しやすくて冷めやすい日本人ってよく言われますけど、この原発だけはね、あのとんでもないものを皆さんが造っちゃった。
で、造っちゃったんで出来上がっちゃったものをもう本当にうまく上手に終わらせなかったらこれ大変ですね、本当にね。
◆小出
まあ私たちの世代が原子力なんていうものをやってしまったわけですから、私たちの世代で何としても引導を渡したいと私は思います。
◆横尾
あ〜分かりました。
私も頑張りますんで、印籠渡すように。
◆小出
よろしく〜。
◆愛川
また一つ小出さん出てきてくださいますかね。
今日はありがとうございました。小出さん、ここで失礼させてもらいます。
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