2012年9月15日土曜日

規制庁の田中さん、4号機の問題を黙って放置するのですか?

 19日鳴物入りの規制庁がとうとう発足した、あの頼りがいのある保安院さんがほとんどみなさん横滑りで規制庁に入庁なさったという。なんという税金の無駄遣いだろう。原子力ムラに対して、脱原子力ムラもあると反発していた田中氏は、ここに来て原子力ムラというレッテル貼りをしないで欲しいと反発したそうである。あの原子力委員会の委員長代理まで務めておきながら、何が原子力ムラではないのか。

 原子力ムラかそうでないかなどの、くだらない弁明をしている暇があれば、現地に毎日出かけて4号機の問題を一刻も早く収束すべく現場の指揮・監督に勤めるべきではないのか。東京から高見の見物をしているだけでは現状把握さえ十分にできまい。

以下は、元スイス大使の村田光平氏の4号機の危険についての記事を転載する。このテーマについては、米上院議員ワイデン氏の報告として今春、このブログでも取り上げたが、日本の元政府筋の有識者が、メディア向けに発信したという点で大変意義深く、再度取り上げておきたい。



「現代ビジネス」
永田町デープスロート

脱原発を訴える「反骨の外交官」が緊急寄稿!
村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」
2012年9月14日(金)

 福島第一原発の事故から1年半。実は今、同原発の「4号機」が、さらなる放射性物質を地上に撒き散らし、人類を未曾有の危険にさらそうとしている。それなのに国と東電にはまるで危機感がない---。外交官時代から脱原発の志を貫いてきた信念の人・村田光平さん(元駐スイス大使)が、その空恐ろしい実情を語る。

驚くべき杜撰さが明らかになった

村田光平氏(元駐スイス大使)

 去る8月31日、「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」が衆議院第一議員会館で行われました。私も特別スピーカーとして出席しましたが、この集会で驚くべきことが判明しましたので、急ぎご報告したいと思います。

 一言で言うと、ここで明らかになったのは、呆れ果てるしかない原発事故処理体制の実態です。事態は放置できないレベルに達しており、世界的な一大事になりつつあります。少なくとも、今の事故処理体制の信じがたい杜撰さが、国内外から根本的に厳しく問われることは必至です。

 こういうと、多くの人は「福島第一原発の事故処理は一段落したんじゃないのか?」といぶかしく思うかもしれません。しかし、実態はまったく違います。一段落どころか、これまでの量をはるかに上回る放射性物質による汚染が、明日にでも起こる可能性があるのです。まずはこのことから説明しましょう。

「福島4号機」の崩壊が招くメルトダウンと世界の破局

 今、世界を脅かしている大問題があります。それは福島第一原発の「4号機問題」です。4号機には使用済み核燃料プールがあり、そこに残っている1535本の核燃料棒がさらなる惨事を引き起こす可能性があるのです。

 昨年3月11日の東日本大震災で福島第一原発が大事故を起こしたのは周知の通りですが、4号機の建屋は、このときの水素爆発で大変傷んでいます。しかも地盤に不等沈下があって、倒壊する危険もあります。

 現在、4号機のプールにある1535本の核燃料棒はかろうじて冷却されていますが、もし4号機が倒壊すれば、冷やす術はありません。そうなると、最悪の事態---核燃料棒が溶け、メルトダウンが起き、膨大な放射性物質が撒き散らされるという、いまだ人類が経験したことがない悲劇が起こります。

 そうなれば、これまで放出された分の数倍、数十倍の放射性物質が拡散し、福島第一原発の一帯には誰も近寄ることができなくなります。すべての人員が原発から撤退しなければならなくなるのは言うまでもありません。その結果、4号機のみならず、1号機から6号機までの事故後処置も難しくなり、全機がメルトダウンを起こす可能性もあります。

 今、4号機も含めて、福島第一原発に残されている核燃料棒の総数は1万4225本にのぼります。米国の核科学者ロバート・アルバレス氏によれば、チェルノブイリの85倍のセシウム137が福島第一原発に存在するそうです。4号機に限っても、セシウム137の量はチェルノブイリの10倍になるのだとか。

 したがって4号機の崩壊は、日本のみならず、世界的な広範囲の汚染を招くでしょう。「究極の破局に繋がることは確実」と多くの科学者は見ています。

政府と東電は「4号機は震度6強の地震に耐えられる」としていますが、逆に見ると、この震度を超える地震が発生したらきわめて危険ということです。しかも、傷んでいる建屋が本当に震度6強までの地震に耐えられるかについては、何の保証もありません。

 今年3月、私は参議院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、この4号機問題には世界の安全保障問題として最大限の対応が必要であることを訴えました。8月24日から3日間、広島市で開催された核戦争防止世界大会でも、世界に向けて4号機危機への注意を喚起するスピーチを行いました。

 私たちの訴えは各国で少しずつ聞き入れられていき、今や4号機問題は世界の安全保障上、最も重大な関心事になっているのです。

「水では消火できない」ことを知らなかった国と東電

 冒頭に述べた「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」は、このような背景で開催されるに至りました。13人の国会議員が呼びかけ人となり、脱原発政策実現全国ネットワークの主催で行われました。

 第1部では、アメリカの原子力技術者アーニー・ガンダーセンさんが講演を行い、私は特別スピーカーとしてコメントを述べました。第2部では、経産省から資源エネルギー庁の課長と、東電から課長クラス7名が出席し、彼らに対するヒヤリングが行われました。

 あらかじめ、東電に対しては、飛散防止剤の影響や鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて、質問書を提出してありました。また原子力安全・保安院(資源エネルギー庁の特別機関)に対しては、企業任せの事故処理を改めて国が前面に出て迅速に対応する必要があることや、国際技術協力チームが必要であることなどにつき、やはり質問書を提出していました。

 第1部でガンダーセンさんは、以下のような重要な指摘をしました。これが後に、処理体制の驚くべき実態が明らかになることにつながります。

①4号機の燃料プールの水が地震で抜け、燃料棒がむき出しになると、1535本の燃料棒に火がつく。このことはアメリカで、すでに実験によって確認されている。
②その火がついたときの破壊力は、核兵器程度ではすまない。東北、関東圏は壊滅し、放射能で人がいなくなれば、福島第一原発の1、2、3、5、6号機も管理不能となり 核の暴走が勃発する。
③燃料棒に一度火がつくと、燃料棒を包むジルコニウムが水を分解し、そのときに生じる酸素で発火が起こり、水素爆発に至る危険がある。したがって、消火に水を使用することは許されない。
④消火のための化学製品はアメリカで開発されているので、これを用意しておくことが望まれる

集会が第2部に入ると、ガンダーセン氏は東電の7名に対し、

「最悪の事態に備えて、(第1部で説明した)化学製品の活用を考えていますか」

 と質問しました。これに対し、東電側からの答えは以下のような趣旨のものでした。

「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ない」

「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」

 これを聞いて、会場に集まった人々は一様に愕然としました。東電の面々は、水による消火が問題外であることなど、まったく理解していない様子だったのです。世界中が固唾を呑んで見守っている4号機問題という重大問題について、当事者である東電の認識があまりにもお寒いものであることが暴露された瞬間でした。

会場から「全然わかってない!」と罵声

 会場からはたちまち罵声や怒号、叱声が次々と起こりました。

「何をバカなことを言ってるの?」「燃えるものがあるだろう!」「想定外じゃすまないんだよ!」

 騒然とした雰囲気の中、資源エネルギー庁の課長が話を引き取って、次のような趣旨の発言をしました。

「万が一、プールが損壊して水が漏れた場合、コンクリートポンプ車を用意して水を・・・」

 課長はこの発言を最後まで続けることができませんでした。会場から遮るように、「ガンダーセンさんの話を聞いていたの?」「水はダメだって言ってるじゃないか」「全然わかってないだろう!」といった罵声が次々と上がったからです。

 そう、東電だけでなく、国の実務責任者も「燃料棒の消火に水を使うことが許されない」という重要な事実を知らなかったのです。

 注目を集めたのは、菅直人前首相の政策秘書・松田光世氏の発言でした。松田氏は、ガンダーセン氏が述べた消火のための化学薬剤に関して、こんな趣旨のことを述べました。

「福島第一原発の事故の直後、日本政府はアメリカ軍にこの消火薬剤を送ってもらっている。だが、東電にはまだ渡していない。東電には管理能力がないと判断しているので、消火薬剤の到着を知らせてもいない。

 もし、4号機の燃料棒に火がつくような事態が起きたら、米軍機が山形空港から飛び立って、4号機の燃料プールに消火薬剤を投げ入れることができるようになっている。だが、そのことにさえ反対する国会議員の勢力がある」

活断層の上にある核燃料プール

 思わぬ情報に身を乗り出して聞く会場に向かって、松田氏は続けました。

「4号機の建屋の下の、南側3分の1くらいのところに活断層がある。核燃料プールはその上にある。大震災のとき、4号機は80㎝も右に傾いた。そこに東電は40本の棒を打ちこんで補強した。

 しかし、60㎝沈んだところや40㎝沈んだところもあって、地面はあちこちが凸凹になっている。それを東電の報告書では『平均58㎝の地盤沈下』と言っているが、いったい何のことやら、実態を反映していない。

 コンクリートもひびが入ったので、底が割れないようにさらに厚くしたが、鉄筋も入れず、ただ厚くしただけ。だから横揺れには弱い。そういうことを、国と東電は正直にすべて言うべきではないか。データを公開すべきだ。

 現行の国の基準では、活断層の上に原子炉を建ててはならないことになっている。しかし、その建てられないところに4号機の建屋がある。原子力安全・保安院ですら、『4号機の建屋が震度6強に耐えられるかどうかは言えない』と言っている。情報をもっと世の中に真面目に公表してほしい」

 この松田氏の発言にショックを受けた議場からは、さまざまな発言が飛び出しました。中でも

「燃料棒に火がついたら、私たちが受ける被害は広島の原爆の数千倍になる」

「震度6強を上回る地震が起こる可能性は十分にある。スマトラでは、マグニチュード9の地震の起きた18ヵ月後に、マグニチュード8.4の余震があった」

といった発言が印象に残りました。

なぜ、今すぐ燃料棒を取り出さないのか

 そんな中、ガンダーセン氏から次のような提言がありました。

国は来年12月から核燃料棒を運び出すと言っているが、それでは遅すぎる。実は、もう、燃料棒の3分の2が十分に冷えているのだから、今から1年半ほどかけて、冷えているものから順に取り出せばいい。それが終わる頃には、残りの3分の1も冷えているだろう。そうやって一刻も早く、効率的に取り出すことを考えるべきだ。地震は待ってはくれない

 また現状のプランでは、水中から取り出した燃料棒を100トンのキャニスター(核物質を入れる容器)で運ぼうとしているが、これは40トンから50トンくらいに小さく分けて回数を多く運ぶ方がよい」

この提言に対しても、東電側は冷淡でした。彼らの言い分は、

「放射能の拡散の問題があるから、現状の屋根がない状態では、燃料棒を取り出す作業はできない。屋根をつける作業を先にする今は、100トンの重量の燃料棒をクレーンで上げられる機械を企業に発注し、作ってもらっているところだ」

 というもので、早急な問題解決への積極的な意欲が全然と言っていいほど感じられませんでした。燃料棒の取り出しがいかに急を要するものであるか、その認識がまったく欠けた回答ぶりでした。私はこの件について、東電に強い不満を表明しました。

米国の専門家も東電の言い分に「戦慄した」と

 今回の集会で判明した二つの重要な事実を整理しておきます。

 第一に、世界が安全保障問題として注目している4号機問題につき、経産省と東電が、事故から1年半を経てもその重大さを理解しておらず、最悪の場合の想定も対策も一切考えていなかったことが明らかになりました。会場が罵声と怒号で包まれたのは当然です。この体たらくにつき、私のもとにもすでに全国から怒りと失望の反響が伝わっています

 第二に、原子力の現場を熟知した専門家アーニー・ガンダーセン氏は、「今すぐ4号機からの燃料棒の取り出しが可能だ」と指摘しました。来年末まで待つことなく作業を始められる。との見解が示されたのです。

 実は、現場で事故処理に携わる会社の責任者も、私にこう語ったことがあります。

「処理の予算を東電が半分に削ったりするような現状を改め、国が全責任を担う体制にすれば、ガンダーセンさんの提言に沿うことは、困難が伴うかもしれませんが実行が可能です

 集会の後、ガンダーセン氏は私宛のメールの中で、次のような意見を述べてきました。

①東電は最悪の事態が発生しうることを想像できていない。そのため、対策の必要も感じていないことが今回の集会により証明された。
②「4号機の冷却プールに燃えるものは何もない」という東電側の言い分に戦慄を覚えた。原発事故が起こった後も、東電の世界観は事故の前と一切変わっていない。
③「独立した専門家が必要」とのご意見には賛成するが、IAEA(国際原子力機関)の専門家は排除すべきである。

 4号機について、フランスの有力誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』は8月、「最悪の事故はこれから起きる」とするショッキングな記事を掲載しました。この記事では、北澤宏一元JST理事長など、4号機の施設のデータを分析した専門家を取材し、「北半球全体が長期にわたって深刻な汚染にさらされ、現代日本は滅亡する」と指摘する声を伝えています。

また同誌は、この事態の危険性を日本の政府やマスコミはいっさい伝えていないが、欧米諸国では早くから危惧されてきており、米上院エネルギー委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員が昨年6月、ヒラリー・クリントン国務長官に深刻な状況を報告した---と指摘しています。

「原発ゼロ政策を確立せよ」と野田首相に手紙

 前述したように、私は8月下旬、広島で開催された核戦争防止世界大会に出席しスピーチをしましたが、海外の出席者が4号機問題に寄せる関心は高まる一方でした。特に、日本政府が世界を脅かすこの大問題への対応を東電に委ねたままで最大限の対応をしていないことや、放射能汚染による加害国としての罪悪感に欠けることについて、海外から厳しい批判の目が向けられています。

 以上のことを踏まえ、私はこのたび野田首相宛に手紙を出し、広島、長崎、そして福島を経験した日本が当然打ち出すべき脱原発政策の確立と、日本の名誉挽回のため、次の諸点を要望する旨を申し入れました。

①原発ゼロ政策を確立すること
②事故収拾については国が全責任を負い、4号機からの燃料棒取り出しの作業を早急に開始すること
③4号機問題の解決に人類の叡智を動員するため、中立評価委員会及び国際技術協力委員会を設置すること

④福島事故は、原発事故が人類の受容できない惨禍であることを立証するものであるから、そのような事態が起こる可能性を完全にゼロにする必要があると世界に発信すること

 今、「原発の存在自体が、倫理と責任の欠如に深く結びついたものである」という認識が、急速に国際的に広がりつつあります。それなのに日本では、福島第一原発事故の後も原発推進体制が改められることなく、原発輸出や再稼働などによって国は「不道徳」の烙印を押されたも同然で、名誉は大きく傷つけられています。

 先の集会でわかったように、原発事故の収拾体制に驚くべき欠陥があると露呈したことで、上記4項目は、一刻も早く実現しなければならない最優先の国民的ミッションとなったのです。

村田光平(むらた・みつへい)

1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=RCCTctlJegQ

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=mUopQRPEeQQ



<原子力規制委>「ムラ」批判に反発…田中委員長

毎日新聞 9月19日(水)23時59分配信


 原子力規制委員長に就任した田中俊一氏(67)は福島市出身。1967年、東北大工学部原子核工学科を卒業し、日本原子力研究所(旧原研、現日本原子力研究開発機構)に入った。一貫して原子力畑を歩み、同副理事長のほか、内閣府原子力委員会委員長代理などを歴任。こうした経歴が「原子力ムラ」との批判を浴びたが、旧原研はもともと基礎研究が主で、電力会社や商用原発を監督する経済産業省とは関係が薄い。委員長就任は、「ムラ」からの距離感も考慮されたとみられる。

【初会合では】原子力規制委:原発再稼働、新基準策定まで不可能

 99年に発生したJCO臨界事故(茨城県東海村)では、旧原研東海研究所副所長として収束作業に従事。昨年4月には、福島原発事故を反省する専門家16人の緊急提言を取りまとめた。細野豪志・原発事故担当相は「JCO事故では真っ先に陣頭指揮を執り、福島事故では福島県除染アドバイザーとして先頭に立って除染活動を担った人物」と高く評価する。

 その一方で、原発事故の地元・福島県では「除染が中途半端で線量が下がらない地域もあり、地元を混乱させた」(飯舘村住民)との声があるほか、反原発団体は「日本原子力研究開発機構は高速増殖原型炉もんじゅを運営しており、原子力ムラの中心人物だ」と辞任を求めるなど、評価は分かれる。


 19日の就任記者会見で田中氏は「原子力ムラ」批判について「出身や仕事によって十把一からげに判断することには反対だ」と述べ、レッテルを貼られることに反発した政府の革新的エネルギー・環境戦略が掲げる「原発ゼロ」方針が迷走していることへの見解を尋ねる質問には、「何もコメントしない」と慎重な発言を繰り返した。【中西拓司】 





保安院は原発ムラの安全と保安に勤しみ、規制庁は反原発を規制するためのお役所か?

8月末までの夏の気温をまとめた気象庁は、今年の夏の猛暑日の日数は東・西日本で平年を上回った所が多かったと結論づけている。そして今もまだ最高気温30度以上の猛暑が連日のように続いている。

ところが不思議なのは、8月後半からこの3週間、相変わらず厳しい残暑が続いているにもかかわらず、熱中症報道をさっぱり聞かなくなった。熱中症と高温は関係がないのか、それとも暦が8月後半になったとたんに人は熱中症にかからなくなるものなのか、そんな奇妙なことはないはずである。

6月中旬から、8月なかばにかけての約2ヵ月間、マスコミはうるさいほどに熱中症報道を繰り返していたが、あれはいったい何だったのか。

熱中症→電力不足→生命の危機→原発の必要性を、サブリミナルに埋め込み、原発再稼働やむなしの方向へと洗脳するための大型メディア戦略と考えたくもなる。

こうしたメディア攻勢は、電力の地域独占が続く限り、そして原子力ムラが完全に力を盛りかえすまで、列島が厳しい冬と夏を前にするたびに、しぶとく執拗に続けられるはずである。

日本の大型メディア同様、最近のWSJのウエブ日本版に掲載される原発、エネルギー関連の記事は、政府寄りと思えるような記事が目立ったが、ここに来て「原子力ムラの敗北」という幾分かセンセーショナルなサブタイトルのついた記事が掲載された。

暑い東京、節電、節電とはいわれたけれども、どこのビルも、バスや電車など公共の乗り物の中も冷房はしっかりきいていたし、夜のネオンが消えることもなかった。つまらない電気紙芝居は、自主規制をするどころか、当然のように早朝から深夜まで、ろくでもない番組を垂れ流し続けた。にもかかわらず、電力供給が切迫しているという話は、一切なかった。

全国でもっとも電力供給が多いとされている東京圏内で、すべての原発が停止しても、全く電力供給に問題はないという事実が白日のもとに晒された。

原発という、危険で、バカのように大量の専門家集団が群がっているにもかかわらず、誰一人としてしっかりコントロールすることができない、そんなやっかいな無用の長物を全国各地に設置し、そのつけをすべて消費者に回してきた日本のエネルギー政策が、全く誤ったものであったということを、この夏、はっきり我々ははっきりと認識させられたのである。

メディアはだんまりを決め込んでいないで、その点についてしっかり議論を行い、これまで何十年間もの間、野放図に電力会社の乱脈経営を許してきた責任の所在を、無駄な電力料金を聴取してきた地域独占の電力会社の責任を今こそ正していくべき時ではないのか。

原子力規制庁と委員会が新たに発足することになったが、委員会の委員長は、原子力ムラの副村長が就任し、規制庁には、3.11以降、原発に対する専門的知識の欠落が著しいと厳しく指摘されたはずの保安院の職員が大量に横滑りし、警察官僚のトップが長官の座につくという官僚主導の、なんの反省もない、溜息のでるような人事が行われた。

保安院と安全委員会が、原子力発電所の保安・安全ではなく、ひたすら原子力ムラの安寧と保安に勤しんでいたように、新しい規制庁も、原子力規制とは程遠く、反原発規制のための言論統制・取り締まり強化に勤しむだけの省庁になるのではないのか。

危機管理を軸に人選を行ったといえばいかにも聞こえがいい。しかし、3.11の際政府によって行われた大本営発表と言論統制が、今後不幸にして日本のどこかの原発で大災害が発生したとき、警察の権力をもってさらに徹底・強化されるとしたら、全くもって空恐ろしい限りである。

先ごろ、2030年までに原発ゼロにするなどという宣言をした与党だが、必要もない原発の再稼働を強引に実施させ、電力会社や原子力ムラを擁護し、原発官僚の言うなりの人事をごり押しで進めていることから判断して、民主党の原発ゼロ宣言は、懲りない口先三寸のその場しのぎの選挙対策以外のなにものでもなく、何の期待もできないことを、既に多くの賢い国民は見抜いているはずである。


【オピニオン】停電にならなかった日本の夏―原子力村の敗北

ジョセフ・スターンバーグ

2012年 9月 13日 16:02 JST


 読者が知りたいのは何が起きたのかであり、起きなかったかではないので、記事の冒頭に起きなかったことを書くべきではない、とある編集者に叱られたことがある。とはいえ、この夏、日本で「電力不足」が起きなかったという事実はニュースである。この数カ月間、日本で明かりが消えることはなかった。

Bloomberg News

東京電力の広瀬直巳社長

 これは少なくとも一部の人たちにとって驚くべき事実である。というのも、この間、日本はほとんど原子力発電に依存していなかったからだ。昨年の福島第1原発の事故以来、国民の原発に対する反感はあまりにも大きく、日本政府としては定期検査で停止していた原発2基を再稼働させるのが精一杯だった。

 電力会社、原子力施設の製造業者、原子力に既原発のほぼ完全停止状態は日本経済と国民生活にかなりの悪影響をもたらすはずだった。既得権があり、日本のエネルギー政策を具現化してきた官僚や原発推進派の政治家などで構成される「原子力村」は輪番停電を警告していた。

 原子力村は、福島原発事故以前、原子力発電が総発電量の3分の1近くを占めていたこと、夏の電力需要が原発なしでの発電量を上回る公算が大きいということを指摘した。照明は暗くなり、エアコンが止まり、工場も操業停止になると脅したのである。

 結局、夏の気温は予想よりも低く、日本人が予想以上の節電努力をしたために、警告者たちは恥をかくことになった。「停電にならなかった夏」は、政府のエネルギー政策立案者たちの信用が失われた瞬間として歴史に刻まれることになるのかもしれない。手遅れにならなくて良かった。

 その最大の証拠として、日本はそもそも原子力エネルギーを使い続けるべきかという議論が起きている。野田佳彦首相は2030年までに原発をゼロにせよという国民の要求を受け入れる可能性が高まっている。政府と電力会社の複合体は、福島原発事故以前、総発電量に占める原発の割合を半分にまで増やすことを計画していた。

 原子力村にとって原発の段階的廃止を阻止するのは難しい。なぜなら、原発を放棄すると大変なことになるという主張を国民はもはや信じていないからである。この夏も非常事態に陥ると聞かされていたが、余剰電力が最大10%に達する電力会社もあった。そして今、同じ官僚や電力会社が向こう数年間に原発が再稼働されなかった場合の経済崩壊を予言している。懐疑的な国民はもはや聞く耳を持っていない。

 原発の次に何が来るのかについては、最も意外なところからヒントが出始めている。福島第1原発を所有する東京電力だ。

 東京電力やその他の電力会社は、一般家庭向けの次世代電力計、いわゆるスマートメーターの投入を加速させてきた。電力消費動向がより詳細に把握できるその高性能機器は、消費量がピークとなる時間帯に価格を上げるといった革新的な料金システムへの道も開く。だが、その前にそうしたメーターの調達の問題をクリアする必要がある。東電は今年に入り、設置を予定しているスマートメーターに関して、米国や欧州ですでに使われている標準技術を導入するのではなく、独自仕様のものを開発したと発表した。

 東電はたまたま独自仕様に沿ったものを製造している2つの子会社にメーターを発注したかったようだが、東電に対する国民の信頼は(「停電にならなかった夏」以前においてさえも)あまりにも低く、ファミリー企業優遇との物議を醸したため、原子力損害賠償支援機構は7月、同社に国際標準の通信規格の採用を義務付けた。

 このことは当時、一部で東電の物資調達におけるコスト効率の勝利だと喧伝された。しかし、より興味深いのは、一般家庭が東電独自開発のものではなく、国際標準のスマートメーターで送電網にアクセスできて、市場の規制緩和も十分に進んだ場合、他の電力事業者が消費者を横取りしやすくなるという見通しである。一方で、これも規制緩和が十分に進むことが前提になるが、他の電力事業者も国際標準のスマートメーターが集積した消費動向データを大いに活用できるようになる可能性が高い。

 この夏、原子力村の信用が失墜したことを考慮に入れないと、こうしたことはすべて現実離れした話に聞こえたことだろう。東電の広瀬直巳社長はこの数週間、原発の再稼働が許可されなかった場合、東電は厳しい道を歩むことになると警告している。同社の経営は福島第1原発に関連した莫大な除染費用や賠償費用と、火力発電所のタービンを回し続けるのに必要な化石燃料の値上りでかなり追い詰められている。

 7月に東電を実質国有化した日本政府は、同社がユニタリー(単一)企業として機能しなくなった場合にその分離を余儀なくされるのだろうかそうなったら、他の垂直統合型で独占的な公益事業会社の解体にもつながっていくのか。そのような改革は、日本のエネルギー政策の(かつてのテクノクラート化に対して)政治問題化が進んだ結果としてすでに実現している、国際標準のスマートメーターのようなほとんど感知できないほど小さなステップの積み重ねとして成り立っていくのだろうか。

 そうかもしれないし、そうではないかもしれない。いずれにしても「停電にならなかった夏」以前、原子力村がまだ日本のエネルギー政策を支配していた時分に、日本が今のような切迫感を持ち、前向きにこうした疑問に向き合っていなかったことだけは確かである。

(筆者のジョセフ・スターンバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル・アジアのコラム『ビジネス・アジア』のエディター)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1302H_T10C12A9EA1000/

首相「原発ゼロ」方針を明言 経団連会長は反対 2012/9/14 0:51

 野田佳彦首相は13日、大阪市で開いた民主党代表選の演説会で「党から原発ゼロを目指す提言をいただいた。その方向で政府の考え方をまとめたい」と明言した。そのうえで「強烈な批判もあるが、国民の覚悟だと思っている」と語った。一方、経団連の米倉弘昌会長は電話で首相に「原発ゼロ」方針に反対する考えを示した。

 政府は14日、「2030年代に原発稼働ゼロ」と示したエネルギー戦略をまとめる。首相は演説会で原発ゼロの方針に関して「大きな転換だ。その課題を乗り越えて責任ある判断をしようと思っている」と強調。「原子力行政を推進してきたのは歴代政権だ。ツケを我々が払わなければいけない」と語り、自民党政権時代にさかのぼって政策を批判した。

 米倉氏は13日、首相と電話で協議し、政府の原発稼働ゼロ方針に「了承しかねる」と伝えた。首相は「これから色々説明したい」と応じた。

 原子力政策に関連して経済産業省の牧野聖修副大臣は13日、福井県庁で西川一誠知事と会談。敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」を研究炉を活用後に廃炉とする政府の方針について西川氏は「あいまいな方針で極めて受け入れがたい。迷惑千万だ」と厳しく批判した。

 牧野氏は首相が先に原子力の重要性を訴えたことに触れ「舌の根も乾かないうちに百八十度違うお願いをするのは複雑な思い」と釈明した。


金子勝氏のツイッターより

世論を軽視し、原子力ムラ官僚の言うことを聞く細野環境相が妥協と先送りを繰り返す。規制庁長官に「原子力ムラ」でない警視総監、次長は環境省出身の原子力規制室準備室長を当て、原発の安全性という重要課題を官僚ポストのバランスとしか考えていない。
2012年9月13日 - 15:02

原子力規制庁、初代長官に池田前警視総監 危機管理に軸  

                                         2012年9月12日11時23分

新たな原発規制を担う原子力規制委員会の事務局となる原子力規制庁の初代長官に池田克彦前警視総監(59)が起用されることが固まった。原発事故などに対応する危機管理を重視した。原子力規制委が発足する19日付で委員長に就く田中俊一・前内閣府原子力委員長代理が任命する。

 池田氏は1976年に警察庁に入り、警備局長などを経て2010年1月から昨年8月まで警視総監を務めた。規制庁には、経済産業省原子力安全・保安院などから職員が移り、最終的には千人規模になる。初代長官の人選は、田中氏と細野豪志環境相が調整。事務局のトップに原発と関係のない省庁出身者を充てることで、「原子力ムラ」のイメージを払う狙いもある。

 任命に先立ち、14日に閣議了解される。規制庁の次長には森本英香・内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長が就く。