2011年9月3日土曜日

外国の巨額賠償請求にどう対処するつもりですか?

愚かしいにも程がある。
日本政府は、今年の5月になるまで、安全神話の名のもと、国際的な原発賠償条約の加盟を勧められてきたにもかかわらず、前向きに考えることさえしてこなかったという。

8月になってあわてて、アメリカ主導の条約に加盟したが、条約に加盟したから大丈夫などと大きく構えていたら、大間違いである。条約は、加盟する前に起こった事象に対して、適用されるわけではないからである。そして誠に残念なことながら、すでに賠償に向けての準備を着々と始めた国が出てきているという。

東電をはじめ経団連や電事連、経産官僚、三井住友銀行や第一生命などのメインバンクや大株主のご機嫌とりばかりを続けて、いつまでも東電を守っていると、国を滅ぼすことにもなりかねない。それを慶応の岸博幸氏が指摘しているので、以下に転載する。

東電から献金をもらったり、助成金を受けたり、接待を受けたり、天下りのポストを用意してもらったり、娘や息子の就職の世話をしてもらったりなどなど、これまでにもらった蜜の甘さや誘惑があまりにも大きすぎて、諦めきれない権力者が少なくないことはよくわかる。

彼らは東電を死守することの引換に、日本の国が諸外国から巨額の賠償金を請求されることなど何とも思ってはいないに違いない。彼らの共通認識は、増税で、国民の貯蓄を全部吐き出させれば、何とかなるだろうという程度のものなのであろう。(増税をするならば、原発を推進してきた富裕者層や、震災復興に関わって、利益を上げている企業を対象に限定的にやっていただきたいものである。)

どこまでも東電を死守するというならば、その引き換えに東電関係者及び東電からこれまでさんざん恩恵を受けてきた企業や個人に、海外からの巨額の賠償金を全額負担して頂いてても余りあると思うのは、薔薇っ子だけだろうか。

今でこそネットでいろいろな情報を入手できる時代になったけれども、我々大多数の国民は、施政者や官僚と結託したメディアによってこの数十年間欺かれ、都合の悪いことは何も聞かされず、原発の賛否について十分な判断ができるだけの情報から、全く疎外されてきたのだから。

http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY201105280573.html
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原発賠償条約、加盟を検討 海外から巨額請求の恐れ

2011年5月29日3時5分
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図:原発事故の賠償条約の仕組み拡大原発事故の賠償条約の仕組み
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、国際原子力機関(IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた。
 このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある。
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-08/15/content_23215742.htm

日本、原発賠償条約加盟へ 海外からの巨額賠償防ぐ

タグ: 日本 原発 賠償 条約 加盟 海外 

発信時間: 2011-08-15 17:02:15 | チャイナネット | 編集者にメールを送る
日本政府は15日、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)加盟について米国と協議を始める。海外から条約以外の基準で福島第一原発事故の損害賠償を請求されないようにするねらいがある。英国放送協会(BBC)が伝えた。
同条約は原発事故による国際間の賠償請求について裁判基準を明確に定めているほか、加盟国の相互支援に関する条項も含まれている。
現在CSCに加盟している国は米国、モロッコ、ルーマニア、アルゼンチンの4カ国で、5カ国以上加盟していないため、規定により条約はまだ発効していない。
このほか欧州連合(EU)やロシアが主導する国際条約がある。
米国はかつてCSC加盟を勧めていたが、日本政府は3月の福島第一原発事故発生後、国内の損害賠償問題が浮上し、周辺国からも海洋汚染の被害状況に応じて巨額の賠償を負わされる恐れがあると考え、国際条約加盟の本格検討に着手したと朝日新聞が5月、伝えた。
日本経済新聞が15日伝えたところによると、政府は最終的に米国主導の同条約が最も有利だと判断、将来原子力発電の建設を計画しているアジアの国への原子力発電設備輸出につながるとみて、米国と協議しながら、国内法を整備する方向で調整を進めることを決定した
日本政府は外務省と経済産業省の担当官を米国に派遣、15日から米国側とCSC加盟について協議、国内法の整備と加盟に向けた準備については文部科学省と法務省が検討に加わる予定。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年8月15日
【第153回】 2011年9月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
野田政権は東電破綻処理を急げ――このままでは日本は中国やロシアからの巨額賠償請求の餌食になる


今日にも組閣が行われ、野田政権が発足します。迷走を続けた菅政権の後だけに、被災地の復旧・復興の加速、エネルギー政策の抜本的転換、デフレと円高の克服に向けた経済財政運営など、取り組むべき政策課題が山積であり、世の関心も増税など目立つ問題に行きがちですが、日本全体のリスクを低減する観点から早急に取り組むべき課題があることにも留意すべきです。それは東電の破綻処理です。

外国からの損害賠償という巨大リスク

 これから長期にわたり原発事故の損害賠償など巨額の債務を抱える東電をどうするかについては、菅政権で既に決着しています。原子力損害賠償支援機構法が成立したことにより、
・原発事故の責任のある東電が損害賠償を行なう
・機構が東電に対して、賠償のための資金支援を行なう
・国にも原発事故の責任があるので、必要があれば機構に対していくらでも予算を投入する(=東電に対して予算支援を行う)
 というスキームとなりました。東電に責任を持って被災者への損害賠償を行わせるという名目の下で、東電を債務超過にしない(=破綻処理しない)という政官の強い意思により、事実上政府が東電を救済することになったのです。
 多くの識者の方が指摘しているように、このスキームには、東電のリストラが不十分、ステークホルダーである株主や債権者が責任を負っていないなど、市場のルールの観点から問題が多いのですが、それに加え、別の観点からも大きな問題を生じさせかねません。
 それは、外国からの損害賠償請求への対応です。
 原発事故以降、汚染水の放出などを通じて大量の放射能が海に流出していると考えられます。放射能が付着したがれきが他国に流れ着く可能性もあります。それらを通じて、他国の領海に放射能汚染が拡散したり、他国の漁業に被害を与えるなど、放射能汚染の被害は日本国内にとどまらず、外国にも及んでいるのです。
 そうした事実を考えると、原発事故の被害について、今後外国からも損害賠償請求を起こされる可能性が大きいと言わざるを得ません。特に日本の近隣には中国やロシアなど色々な意味で難しい国があることを考えると、東電が8月30日に発表した「原発事故に伴う損害賠償の算定基準」を遥かに超える規模の損害賠償が外国から請求される可能性があるのです。一部には、海洋汚染への損害賠償の請求が数百兆円にも上る可能性がある、という声もあります。
そして、残念ながらそうした外国からの損害賠償請求の可能性を裏付ける情報が入ってきてしまいました。ある国は、もう損害賠償の請求のための情報収集と準備を始めているのです。

いかに日本の国益を守るか

 そして、留意すべきは、損害賠償請求をしようと考えている外国にとって、機構法による東電救済スキームは“非常に美味しい”ということです。今のスキームの下では、損害賠償を請求する相手である東電は潰れないし、国も責任を認めている、かつ国が東電に無制限に予算を投入する仕組みになっているのですから、いくらでも損害賠償を請求できます。
 しかし、それで巷で言われるように数百兆もの損害賠償が外国から本当に請求されたら、東電は当然払い切れないので、ツケはすべて国に回ってきます。1000兆円近い日本政府の債務に数百兆円が上乗せされたらどうなるか。大変なことになるはずです。東電より先に国が破産してしまうのではないでしょうか。戦後賠償よりも重い負担を日本全体として背負わされかねないのです。
 それでは、外国からの損害賠償請求にはどのように対応すべきでしょうか。この点について、メディアでは、海外からの巨額の損害賠償に対応するため、これまで未加盟だった原発賠償条約への加盟を政府が検討していると報道されています。
 この条約は、原発事故の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めています。つまり、もしこの条約に加盟していれば、例えば中国人が損害賠償を請求する場合でも、日本の裁判所で訴訟を起こさなければなりません。その場合、外国で訴訟を起こすこと自体大変だし、裁判所も外国人より自国企業を守る方に重きを置くはずですので、損害賠償を起こされても、それがあまりに巨額になることは防げるはずです。
 しかし、仮にこれからこの条約に加盟したとしても、過去の事故にまで条約の効力が遡及するとは考えられません。従って、中国人が中国の裁判所に損害賠償の訴訟を起こすことができるのです。そうなったら、当然ながら、日本の企業である東電よりも自国民の利益が優先されるでしょう。
 従って、条約に加盟していない中で、海外からの巨額の損害賠償に国としてどう対処するかを真剣に考えなくてはなりません。その手は二つしかないように思えます。
 一つは、東電にも国にも原発事故の責任はないとすることです。そうすれば、外国が損害賠償を請求できる相手がなくなるからです。そのためには、今回の原発事故が原子力賠償法上の“天災地変”に該当するとしなければなりません。事故の責任は東電にあるので東電は賠償責任を負うという、事故が起きて以来の政府の見解を変えなければならないのです。かつ、東電の責任が前提の機構法も廃止しなければなりません。
 しかし、特に原発事故で深刻な被害を受けている福島県民の心情を慮れば、いくら国を守るためとは言え、東電に事故の責任なしと政府が判断を翻すのは現実には困難です。
 そう考えると、もう一つの方法が現実的です。それは、東電を無理に延命させず、事実上債務超過なのだから淡々と破綻処理を進めることです。賠償責任を負う東電がなくなり、機構法から国の責任を謳った部分を削除すれば、テクニカルには外国が損害賠償を請求する相手がいなくなります。
 この場合、東電を潰すと福島の被災者の賠償債権もカットされてしまうという反論が出ると思いますが、“事故の損害賠償”ではなく“被災者への支援”として政府が肩代わりして十分な金額を支払うことで対応できるはずです。国内の被災者相手に“損害賠償”という言葉を使い続けると、外国からの損害賠償にも応じざるを得なくなるので、被災者への給付の性質を変えるのです。

東電より国を守るべき

 私自身、東電と国の双方に原発事故の責任があるという考えにはいささかも変化はありません。それにも拘らず、上述のように自らの考えを曲げた主張をしているのは、日本を海外からの損害賠償請求から守るためです。
 現在の東電救済スキームの下で本当に外国が数百兆円もの損害賠償を請求してきたら、日本はおしまいです。戦後賠償以上に後世に負担を残すことになります。また、もし私が中国やロシアの政府の当事者なら、領土交渉や漁業権の交渉などにこの損害賠償を絡めます。損害賠償は勘弁してやるから、代償として尖閣諸島や北方領土への領有権の主張は放棄しろと言うでしょう。
 このように、外国からの損害賠償問題は、東電という一企業を超えて日本の国益に大きく関わるのです。野田政権は、菅政権が国内のことだけを考えて作った東電救済スキームを早急に修正し、日本の国益が確実に守られるようにすべきです。そうしないと、本当に“東電栄えて国滅びる”となりかねません。