原発担当大臣もIAEAの会合で冷温停止の時期ばかりを強調していたが、総理も同様で、いかにも冷温停止が着々と進んで、福島原発は収束しているかのような演説内容である。しかし、京大の小出助教は、炉心から圧力容器の外にとっくに落っこちてしまっているのに、そこの温度ばかりを計って、冷温停止といくら喜んでみても、始まらないと指摘している。
また野田氏は、事故情報を迅速、正確に開示するといっているが、未だ保安院は東電と一緒になってマニュアル隠しを行っている始末である。事故対処マニュアルは「事務本館が破損しているから、入手が困難」と保安院は妙に納得しているが、免震重要棟に一式備え付けるのが、常識ではないか。
日本は新興国に対して原子力安全向上を含めた支援を行ってきたという。しかし、日本国内で原子力安全に関する政府機関がやってきたことは、自己保身、つまり、原子力関係者の安全を保障するための汚い堅牢なシステムを構築してきたことのみ。とすれば、日本はその汚いテクニックを新興国に伝授してきたというのか。
そして再生エネルギーに関する計画は来年の夏をめどに牛のようにゆっくり進めるそうである。
もちろん、再生エネルギー計画の着工が遅ければ遅いほど、原発をいつまでも引き伸ばし、長く営業を続ける口実になるから、容易に腰をあげる気はさらさらないということであろう。
最後にスピーチの後に、格好をつけて、日本は事故当事者国として、全力で責務を負い、行動するなどとおっしゃっているが、これは、東電の責任を国が丸抱えした形である。
一国の首相が、こんな発言を公的な場でしてしまえば、世界中がこぞって、放射能汚染の損害賠償を求めてきても、何も文句は言えない。「まぁ、そうなればどんどん増税して、これでも足りない、あれでも足りないと国民の預貯金を全部吸い上げればいいさ」って腹なのだろう。
この不況に増税などされたためしには、生活が逼迫して、預貯金もひったくれもないけれど。
こんな首相を大方のジャーナリストたちは批判もせず、黙って淡々と受け入れているんだから怖いよね、この国のメディアはーー。国民のために何かしようとすれば、よってたかって、足を引っ張り、
官僚や企業の言いなりになってれば、認められるのだから。
以下小出助教の冷温停止に対する意見、東電マニュアル黒塗り問題、ヨウ素の汚染マップを転載する。
汚染マップに関しては、計測の場所、やり方にもよっていくらでも都合のいいデータは操作可能であり、政府の発表するデータなど誰ももはや信用していない。とはいえども、少なくとも最小限、こんなに広範囲に飛散しているという現実がある。
なのに何が風評被害かと改めて問いたい。
「放射能物質は北西方向にしか飛んでいないのに、原発の南側で作られた農作物を買わない、食べないのは風評被害だ」としきりに繰り返しておられた専門家がいたが、きちんと出るところに出てきて、あれはどういうことだったのか、説明をしてもらいものである。
半減期が短いから、何も大したことがないようにふるまっているけれども、半減期というのは単に半分になるだけで、決して消えるわけではない。無防備に最初の数日に大量のヨウ素を吸い込んでしまった内部被曝が決してちゃらになるわけではない。
同じような汚染マップを、ストロンチウムやセシウムについても「迅速かつ正確に」公表すべきである。
日本の首相が何を置いてもまずやるべきことは、原発の廃止とフクシマ原発事件及び日本のこれまでのエネルギー政策に関する徹底検証と責任の追求である。東電、政治家や官僚の禊をやらない限り、この国は何も変わらないし、何も前には進めない。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110923ddm005010129000c.html
野田首相:原子力安全会合演説(要旨)
野田佳彦首相が国連の「原子力安全会合」で行った演説要旨は次の通り。
◆福島第1原発事故
巨大地震と津波に被災した日本国民は、世界中から心温まる励ましと支援をいただいた。全国民を代表し、深く感謝する。わが国は半世紀以上にわたって原子力の安全な活用の方途を研究・応用し、原子力産業を育成・発展させてきた。それだけに今回の事故は日本国民に深い衝撃を与えた。
関係者のひたむきな努力により、事故は着実に収束に向かっている。原子炉の冷温停止状態は予定を早めて年内を目途に達成すべく全力を挙げている。津波への備えに過信があったことは疑いがない。炉心損傷に至る過酷事故を想定した準備も不十分で、ベントの作業に手間取り、貴重な時間を失った。何よりも急がれるのは、教訓に基づいて内外で原発安全性の総点検を進めることだ。
◆事故情報の開示
事故の全てを迅速かつ正確に国際社会に開示する。事故調査・検証委員会が来年には最終報告を示す。国際原子力機関(IAEA)と共催の国際会議を来年、わが国で開催し、原子力の安全利用への取り組みの方向性を国際社会と共有する。
◆エネルギー政策
原子力発電の安全性を世界最高水準に高める。原子力利用を模索する国々の関心に応える。新興諸国をはじめ世界の多くの国々が原子力の利用を真剣に模索し、わが国は原子力安全の向上を含めた支援をしてきた。今後とも、これらの国々の高い関心に応えていく。
再生可能エネルギーの開発・利用の拡大も主導。中長期的なエネルギー構成の在り方は来夏を目途に具体的な戦略と計画を示す。
◆核セキュリティー
核セキュリティー確保に積極的に参画。来年の核セキュリティー・サミットに参加し、国際社会の共同作業に積極的に参画するとともに核物質や原子力施設に対する防護の取り組みを強化する。
◆結び
人類が英知によって原発事故の突きつけた挑戦を克服し、福島が「人々の強い意志と勇気によって人類の未来を切り開いた場所」として思い起こされる日が訪れると確信する。日本は事故の当事国として全力で責務を担い、行動する。【共同】
毎日新聞 2011年9月23日 東京朝刊
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/09/22/tvasahi-sep20/#more-2233
これから問題なのは、落っこちてしまった炉心がどこにあるか 小出裕章(報ステ)
2010年9月20日(水)、小出裕章氏が、テレビ朝日「報道ステーション」にVTR出演し、『冷温停止』について専門家として、批判を行ないました。
録画
小出裕章:『冷温停止』について
内容の文字おこしや関連記事はは以下のとおり
内容文字起こし
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小出裕章「冷温停止というのは圧力容器が健全の形でその中に水を蓄えられて。その中に炉心というものがまだ存在しているということを前提にして、圧力容器の温度が100度を下がるか上がるかという。そういうことを議論しているわけで。そもそも融けて、炉心が融けてしまって圧力容器の外に出てしまっているという、状態であれば。そこの温度をいくら測ったところで意味のない事を言っていて。これから問題なのは落っこちてしまった炉心が、いったいどこにあるのか。それをどうやって閉じ込めることができるかという、そういう議論こそ、本当はしなければいけません。」
小出「地震に襲われていますので、そこら中で割れが生じているはずです。えー地下に流れだして汚染を広げて、海にも多分流れ出ているのだと私は、思います。一刻も早く、えー地下に遮水壁、あるいはバリアー、バウンダリーというものを作るべきだと思います。
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上記のテレビ朝日報道の記事を転載。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110922k0000m040168000c.html
福島第1原発:放射性ヨウ素131 南部でも高い地域
東京電力福島第1原発事故で、大量の放射性ヨウ素131が原発の北西部だけでなく南部にも拡散していたことが21日、文部科学省の調査で分かった。土壌に含まれる放射性セシウム137は原発北西部で特に高濃度になっていたが、ヨウ素はセシウムより気化しやすく、風や雨の気象条件が影響したとみられる。
調査は6~7月、原発から半径100キロ圏内の約2200カ所で実施。ヨウ素は半減期が8日と短いため、データが得られた約400地点の数値を6月14日時点に換算。その結果、ヨウ素の濃度はセシウム137と比べ、北西部で170分の1だったが、南部では最大40分の1と、セシウムに対する比率に差があることが分かった。
最も高濃度だったのは、原発から南南西約6キロにある福島県富岡町で、1平方メートル当たり5万5400ベクレルだった。【野田武】
毎日新聞 2011年9月22日 0時23分(最終更新 9月22日 13時02分)
福島第1原発:「黒塗り」手順書、保安院開示せず 衆院委
衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会からの福島第1原発の事故時の手順書の開示請求に対して東京電力がほとんど黒塗りして提出した問題で、経済産業省原子力安全・保安院は再請求の締め切りだった22日、「法令上の手続きを精査していて間に合わなかった」として同委員会に手順書を提出しなかった。
保安院はこの日、同委員会に対し、原子炉が自動停止した場合の運転操作の規定「原子炉施設保安規定」(A4判1枚)と、1号機の非常用復水器が原子炉の圧力が高くなると自動的に作動し、原子炉を冷却減圧すると記された原子炉設置許可申請書の本文(同2枚)だけを提出。手順書については「法律に基づく請求をするため、事故調査に必要な箇所を精査している」として同社に請求もしていない。
また、保安院は同委員会が求めた米GE社の手順書についても「事故で発電所事務本館が破損しているため、同資料の入手は困難」という見解を示した。
これまでに同委員会が作業手順書などの提出を東電に求めたのに対し、東電は「事故時運転操作手順書」の大半を黒く塗りつぶして提出。同委が再提出を求めると、特別委理事会に手順書の一つの「シビアアクシデント(過酷事故)発生時の手順書」の表紙と目次の一部のみを開示した。同委員は電気事業法などに基づいて再度手順書の提出を東電に求める方針。【大野友嘉子】
毎日新聞 2011年9月22日 22時32分
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